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【専門家が回答】同じ話を繰り返す認知症の母にイライラ…どうしたらいいでしょうか?

2024-10-22

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

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認知症の母親を介護している方の中には、同じ話を繰り返されることに対して、つい感情的になってしまう方も多いのではないでしょうか。

介護する方は「認知症の症状なので仕方がない」と頭でわかっていても、ずっと隣で同じ話をされるとストレスを抱えてしまうものです。同じ話を繰り返す認知症の方とストレスなく接するためには、正しい対処方法を理解することが大切です。

この記事では、10年以上介護の現場で活躍した筆者が、実際の事例を紹介しつつ、同じ話を繰り返す認知症の方への対処方法について詳しく解説します。

事例:同じ話を繰り返す母親とどう接すればいいのかわからない

80代女性。認知症と診断を受けてから娘家族と同居を始めました。最初の頃は、ちょっとした物忘れ程度だったのですが、だんだんと記憶力が低下して、ほんの数分前に話したことも忘れてしまいます。

最初は、毎回きちんと会話をしていた娘ですが、数分ごとに同じ話を繰り返す母親に対して、イライラしてしまいます。無視をすることもできず、母親の対応をするだけでかなりの時間を取られてしまうので困っています。

回答:対応方法を知っておくと気持ちが落ち着きます

認知症の方は、徐々に記憶力が低下していきます。認知症の影響によって、記憶力が低下してくると、数分前に起きた出来事を忘れてしまい、同じ話を繰り返してしまうのです。

また、認知症の方は、感情のコントロールができなくなることで、常に不安な気持ちを抱えています。そのため、信頼できる家族に対して安全を確認する意味でも、同じ質問を繰り返してしまう場合もあるでしょう。同居している家族は、話しかけてくる母親を無視することもできず、コミュニケーションに時間を取られてしまうため、精神的・身体的な負担が大きくなってしまうのです。

こうした状況を解消するためには、認知症の特性を正しく理解したうえで、適切な対応方法を知っておくことが大切です。適切な対処法を知っておくことで、心に余裕を持って接することができます。

同じ話を繰り返す認知症の方への対応方法

認知症の方が同じ話を繰り返す場合、コミュニケーションの取り方を工夫するだけで相手が落ち着いてくれることもあります。ここでは、同じ話を繰り返す認知症の方への対応方法について解説します。

言葉を繰り返して確認する

認知症の方が話しかけた際に、相手が発した言葉を繰り返して確認することが大切です。相手の言葉を繰り返すことで「あなたの話を聞いていますよ」という姿勢が伝わり、話しかけた方も安心して会話を続けられます。例えば、認知症の方が「ご飯を食べたい」と言ったら「ご飯が食べたいんだね」と繰り返します。これだけでも「聞いてもらえた」と感じて、訴えが軽減することもあるでしょう。

逆に、相手の話に対して上の空で「うん、うん」と相槌を打つだけでは、自分の訴えを聞いてくれていない印象を与えてしまいます。話を聞いてもらえない認知症の方は、より強く訴えるようになり、さらに同じ話を繰り返す可能性もあるので注意しましょう。

理由を聞く

認知症の方が繰り返し発言している理由について、直接本人に聞いてみることも大切です。例えば「ご飯を食べたくない」と言った場合に、つい「ご飯を食べないと薬が飲めないから早く食べて!」と頭ごなしに言ってしまいがちです。しかし、まずは「なんで食べたくないの?」と理由を聞きましょう。

もし「30分前に食べたから」と言っているのであれば、ご飯を食べた時間がわからなくなっている可能性があります。その場合は、ご飯を食べた時間がわかるように記録を残しておくことで、すんなりとご飯を食べてくれるかもしれません。

このように、同じ話を繰り返す理由に応じた解決策がわかる可能性もあるため、相手の主張に対して、その理由を聞くようにするとよいでしょう。

相手の主張を受け入れる

認知症の方が、事実と違うことを話していた場合、すぐに否定しないことも大切です。

例えば、まだご飯を食べていないのに「さっきご飯を食べたから、今は食べない」といった発言があった場合、すぐに「まだ食べてないでしょう」と否定するのは避けましょう。すぐに否定してしまうことで、それは認知症の方の失敗体験として記憶に残りやすいので、関係性の悪化や自信の喪失に繋がってしまいます。

仮に「さっきご飯を食べたから、今は食べない」という発言があった場合、相手に対して「どんなご飯を食べたの?」「美味しかった?」と問いかけ、ある程度会話に付き合うことも大切です。それによって、認知症の方は満足しつつ、話題を別な方向へ持っていくこともできます。

丁寧に説明する

認知症の方の話を丁寧に聞くことは大切ですが、相手の主張ばかりを聞いていては、対応にかなりの時間を取られてしまいます。もし、認知症の方に何かをしてほしい時には、穏やかに説明するとよいでしょう。例えば、薬を飲んでほしいのに「さっき薬を飲んだから、今は飲まない」と拒否され続けてしまうと、健康にも悪い影響を与えてしまいます。

服薬など、相手の健康を守るために、どうしてもやってもらいたい行動がある場合は、「なぜそうしなければいけないのか?」という理由を丁寧に説明することで、理解してくれることもあります。

環境を工夫する

認知症の方が同じ話を繰り返す場合、会話の方法だけでなく、生活環境を工夫することで症状が緩和する場合もあります。

例えば、認知症の方がいつも「お腹がすいた」と言っている場合、常に目に入りやすい場所に大きな時計を置き、その横に「ご飯は12時」と記載した紙を貼っておきます。そうすることで、仮にお腹が空いたとしても、次のご飯を食べる時間がすぐにわかるので、安心して生活できるでしょう。

同じ訴えを繰り返しているのであれば、環境の工夫で問題を解消できないか、一度考えてみることも大切です。

何度も同じ話をしてしまう原因

何度も同じ話をしてしまう大きな原因が、記憶障害と見当識障害です。記憶には、数日以上前のことに関する長期記憶と数分前の出来事に関する短期記憶、数秒前の出来事に関する即時記憶という3種類があります。主に、短期記憶や即時記憶が低下すると同じ話を繰り返してしまう傾向があります。

また、見当識障害とは、今自分がいる場所や時間などの情報がわからなくなる症状のことです。その為、身の安全を確認するために何度も質問するのです。

何度も同じ話をする方と接する際の注意点

何度も同じ話をする認知症の方と接する際には、感情的にならず、相手の主張を頭ごなしに否定しないことが大切です。ここでは、何度も同じ話をする認知症の方への接し方について詳しく解説します。

感情的にならない

同じ話を繰り返す認知症の方と接する際には、感情的にならないように注意しましょう。同じ話を何度も繰り返されると、ついイライラしてしまいます。

しかし、感情のままコミュニケーションをとってしまうと、相手との関係性が悪化するだけでなく、認知症の症状を悪化させることに繋がる可能性があります。コミュニケーションを取る中で感情的になりそうな場合は、一度その場を離れて深呼吸をするなどの対策も大切です。

頭ごなしに否定しない

認知症の方が間違った発言をした際には、すぐに「それは違うよ」と言いたくなります。しかし、家族に訂正された出来事は、失敗体験として記憶に残ってしまいやすいので注意しましょう。

一般的に負の感情は記憶に残りやすいため、実際にそこで起きた出来事は忘れてしまっても「恥ずかしい、失敗した」という嫌な感情だけは覚えている可能性があります。

認知症の方は、失敗体験を繰り返すことで、だんだんと自分から発言しなくなり、コミュニケーションの回数が減ってしまいます。その結果、さらに認知機能が低下して症状が悪化する悪循環に陥る可能性もあるため注意しましょう。

認知症の介護に疲れたら

同じ話を繰り返す母への対応をするのは大変です。認知症の方の介護に疲れ果ててしまうこともあるでしょう。その場合は、専門家へ相談したり、介護サービスを利用したりすることをおすすめします。ここでは、認知症の介護に疲れた方の対策法について解説します。

専門家に相談する

認知症の介護を1人で続けるには限界があります。もし、認知症の介護に疲れているのであれば、1人で介護を続ける限界地点にきているのかもしれません。介護に疲れたと感じている方は、無理に1人で介護を続けようとするのではなく、まずは専門家に相談するとよいでしょう。

主な相談窓口は、市区町村の窓口や地域包括支援センターのケアマネジャー、精神科医師などです。このような窓口に相談することで、悩みが解決したり、生活における必要なサポートを紹介してもらえたりします。

介護サービスを利用する

認知症の介護をしている方が介護疲れの状態になればなるほど、心に余裕がなくなり、親子の関係性も崩れてしまいます。

介護疲れを感じている方は、積極的に介護保険サービスを活用しましょう。介護サービスによる支援を受けることで、精神的に余裕が生まれます。心に余裕を持って介護をすることで、同じ話を繰り返す母に対しても余裕を持って対応できるでしょう。

心に余裕を持てる環境で話を聞いてあげましょう

同じ話を繰り返す認知症の母と毎日生活している方は、どうしても精神的に疲れてしまいます。しかし、その状態が続いてしてしまうと、つい感情的になったり、頭ごなしに否定してしまったりして親子関係が悪化する可能性もあるでしょう。まずは、心に余裕を持って、相手の主張を聞くことが大切です。また、介護に疲れを感じたら、無理せず周囲の人に助けを求めることも大切です。

周囲の力を借りることで、心に余裕が生まれ、母親が同じ話を繰り返したとしても、ゆっくりと話を聞いてあげられるようになります。同じ話を繰り返す母との関係性に悩んでしまうのは、決してあなたが悪いからではありません。むしろ、良い関係性を続けたいと思っているからこそ悩んでしまうのです。

母親とお互いにとって心地よく生活できる環境を整えるためにも、積極的に介護保険サービスなどを活用しましょう。

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