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【専門家が回答】認知症がひどくても入れる施設はあるの?

2024-10-18

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

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認知症の症状が強い場合、介護している家族の負担は大きくなります。自宅での介護負担が大きくなることで、介護施設へ入所させたいと考えている方も多いでしょう。一方で、認知症の症状がひどいと「施設に入れないのではないか?」と不安に感じてしまう方もいます。

認知症の症状がひどくても施設に入ることは可能です。しかし、一定の条件下では利用を断られる可能性もあるため注意しましょう。この記事では、長年介護の現場で働いてきた専門家の意見をもとに、認知症がひどくても入れる施設について詳しく解説します。

事例:認知症がひどくても施設を利用できますか?

80代男性のAさんは、自宅で1人暮らしをしています。もともとは温厚な性格で地域の人からも慕われていたのですが、徐々に認知機能が低下。突然怒り出したり、家族に暴言を浴びせたりするようになりました。

その後、病院で認知症と診断され、要介護認定を受けます。しかし、家族は仕事で忙しく、常に介護することはできません。家族は介護施設へ入所させたいのですが、すぐに感情的になってしまい、暴言や暴力のあるAさんが介護施設に入れるのか、不安に感じています。

回答:認知症でも入れる施設はあります

介護保険サービスの施設では、正当な理由なくサービスの提供を拒否できないというルールがあるため、基本的には「認知症があるから」という理由だけで利用を拒否されることはありません。

しかし、認知症の症状で、暴力行為などの症状がある場合、他の利用者や本人の安全を確保するために利用を拒否される場合もあります。

暴力行為などが顕著な場合は、認知症対応に特化した介護施設に相談すると、受け入れてもらえる可能性があります。認知症によって、暴言や暴力などの症状が出ている方は、認知症対応に特化した介護施設に相談するとよいでしょう。

認知症の症状がひどくても入所できる介護施設

認知症の症状がひどくても入所しやすい介護施設は、以下の4種類です。

  • グループホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者住宅

上記の施設以外でも受け入れてもらえる可能性はあります。しかし、複数ある介護サービスの中でも、特に認知症高齢者の利用を想定して、設備やスタッフを配置している特徴を持っているのが上記の4施設です。ここでは、認知症の症状がひどくても入所できる介護施設について、詳しく解説します。

グループホーム

グループホームとは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送るための施設です。入居者は家庭的な環境で生活し、日常の家事や活動を通じて認知症の進行を緩やかにすることを目的としています。

入居条件として、認知症の診断を受けていることや、要支援2以上の認定が必要です。また、地域密着型サービスの一環として、住民票が施設のある市区町村にあることが求められます。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームとは、常に介護を必要とする高齢者が入所するための公的施設です。通称「特養」とも呼ばれ、24時間体制で介護や看取りなどのサービスを提供しています。

入所条件は、原則として要介護3以上の認定を受けた65歳以上の高齢者ですが、特例的に要介護1〜2でも入所が認められる場合もあります。

特別養護老人ホームでは、入浴や食事などの日常生活の支援、レクリエーションなどのサービスが提供されており、他の入所系施設に比べて費用が低く抑えられているのも特徴です。

有料老人ホーム

有料老人ホームとは、高齢者が安心して生活できるように、日常生活上の介護や健康管理などのサービスを提供する施設です。主に、以下の3種類の有料老人ホームがあります。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • 健康型有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームでは、24時間体制で介護サービスが提供され、日常生活の支援や医療ケアも受けられます。住宅型有料老人ホームは、基本的な生活支援サービスが提供され、必要に応じて外部の介護サービスを利用できるのが特徴です。健康型有料老人ホームは、自立した高齢者が入居し、健康維持を目的としたサービスが充実しています。

入居費用は施設の種類や提供されるサービスによって異なり、介護保険が適用される場合もあります。認知症の方の場合、介護サービスが必要になる場合が多いため、主に介護付き有料老人ホームを利用する方が多くいらっしゃいます。

サービス付き高齢者住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者が安心して暮らせるように設計されたバリアフリーの賃貸住宅です。通称「サ高住」とも呼ばれ、安否確認や生活相談などのサービスが提供されます。

入居者は自立した生活を送りながら、必要に応じて外部の介護サービスを利用できます。サ高住は、一般型と介護型に分かれ、介護型では施設内で介護サービスを受けられます。

入居条件は60歳以上の高齢者や要介護認定を受けた方が対象で、夫婦での入居も可能です。認知症の方は、将来的に手厚い介護が必要になるため、介護型を利用しつつ、外部のサービスを組み合わせる場合が多いでしょう。

施設によってサービス内容が異なるので注意

認知症でも利用できる介護サービスは複数ありますが、同じ介護サービスでも施設ごとに詳細なサービス内容が異なる点には注意しましょう。

例えば、同じサービス付き高齢者住宅でも、毎日安否確認をおこなってくれる施設もあれば、緊急通報システムを設置して、異常が発生した時のみ職員が対応する施設などもあります。

施設を選ぶ際には、施設が提供するサービスや設備の内容、利用される方の能力を総合的に考えて、適切な施設を選ぶとよいでしょう。また、気になる施設があれば積極的に見学することも大切です。

認知症の方が入る施設を探す際のポイント

認知症の方が利用する施設を探す際には、事前に条件の優先順位を決めておくことや、リスク管理体制について確認するのが大切です。ここでは、認知症の方が入る施設を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。

条件の優先順位を決めておく

施設を探す際に、認知症の方やご家族の全員が納得する条件を満たした施設は、簡単には見つかりません。施設を探し始めてから、お互いの主張が食い違い、施設選びが難航することはよくあります。

施設を探す段階になってからお互いの主張を話すのではなく、施設を探す前に本人と家族でよく話し合って、条件を決めておくことが大切です。また、話し合った条件の中でも優先順位を決めて「ここだけは譲れない」というポイントを絞っておくと、スムーズに施設をみつけられます。

本人と見学にいく

施設を見学する際には、必ず本人と一緒に行くことが大切です。家族が気に入るポイントと、本人が気に入るポイントは異なります。

家族が一方的に施設を決めるのではなく、本人も納得したうえで施設を決めなければ、施設に入ったあとにトラブルが発生する可能性もあります。必ず本人と一緒に施設を選び、本人の主張を聞きながら施設を選びましょう。

リスク管理体制について確認する

認知症の方が利用する施設を選ぶ際には、施設のリスク管理体制に注目して選ぶとよいでしょう。認知症の症状が重くなると、暴力や異食といった危険な行為が見られる可能性があります。

もし、そうした症状が発生しても安全に過ごせるほどの人員配置や設備を整えているのかは、認知症の方が利用する施設の基準において重要なポイントです。

入居者の様子を確認する

施設選びの際には、実際に入居している人の様子を確認することも大切です。入居している方の表情や行動などを確認すれば、施設の過ごしやすさや雰囲気を把握できます。

また、見学の際には、実際に施設の職員に「認知症の人はどれくらいいますか?」「認知症の人にはどんなケアを提供していますか?」と気になったことを直接聞いてみるのも大切です。

施設に入所するまでの手順

認知症の方が利用できる施設の多くは、介護保険サービスです。ここでは、介護保険制度を利用して施設に入るまでの具体的な手順について解説します。

厳密には、サービス付き高齢者住宅の場合は、介護保険を利用しなくても利用できる施設ですが、認知症の症状がひどい場合は介護保険サービスも組み合わせて利用する方が多いため、介護保険制度の利用方法を確認しておきましょう。

1.要介護認定を受ける

介護保険サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定の申請は、市区町村の窓口で受け付けているため、まずは役場の介護保険窓口へ問い合わせましょう。

介護保険を申請する場合、直接市役所の窓口へ行って手続きをすることもできますが、地域包括支援センターのケアマネジャーが代理で申請してくれる場合もあります。役場へ相談に行けない場合は、お近くの地域包括支援センターに問い合わせてみてもよいでしょう。

2.ケアマネジャーに相談する

市役所で要介護認定が認可されると、そのまま担当のケアマネジャーを紹介されるのが一般的な流れです。ケアマネジャーは、本人や家族の要望を確認したうえでケアプランを作成し、介護保険サービスへ橋渡しをしてくれる役割を持った方です。

担当のケアマネジャーが決定したら、自宅の状況や希望する施設の条件などを伝えて、今後の方針について話し合いましょう。

3.施設見学に行く

ケアマネジャーとの面談で今後の方針が決定すると、ケアマネジャーが要望に沿った施設をいくつか紹介してくれます。

紹介された施設の中から気になる施設をいくつかピックアップして、実際に施設へ見学に行きましょう。また、何年も利用する施設のため、見学の際に気になる点があれば、遠慮なく質問するのが大切です。

4.入所の契約をする

施設見学の結果、入所したい施設が見つかれば、利用したいことをケアマネジャーへ伝えましょう。その後、ケアマネジャーがケアプランを作成します。

ケアプランが完成したあと、実際に利用を開始するまでの間に担当者会議を開催します。担当者会議とは、本人と家族、介護保険で利用するサービス事業所の担当者、ケアマネジャーが集まって今後の方向性について話し合う会議です。担当者会議の結果、施設入所の方向性が固まれば、実際に施設との契約を結んで利用開始が正式に決定します。

5.施設入所

介護施設との契約を済ませると、入所にあたっての留意事項などの説明を受けます。その後、施設の空き状況を確認しながら、具体的な施設入所日が決定します。施設入所日までに、必要な物品等を準備しましょう。

認知症の症状がひどいからこそ施設を検討しましょう

認知症の方を介護していると、認知症の症状がひどいことで、施設を利用できないのではないかと不安に思ってしまう方も多いでしょう。

しかし、そういった方の支援をするためにあるのが介護施設です。介護保険サービスは、原則として、認知症の症状があるだけで利用を断ることはありません。また、グループホームなどの認知症ケアに特化した施設も複数あります。認知症の症状によって施設を利用できるのか不安な方は、認知症ケアに特化した施設に相談するとよいでしょう。

認知症は進行性の病気です。認知症の症状がひどくなると、いずれ家族だけで介護できなくなるタイミングがきます。そうした方々を支援するために存在しているのが、介護保険サービスです。「認知症の症状がひどいから」といった理由で施設利用を諦めるのではなく、認知症がひどいからこそ、施設利用を積極的に検討しましょう。

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