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【専門家が回答】認知症の人にやってはいけないことは?接し方や注意点について解説!

2024-10-10

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

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認知症は進行性の病気です。長く付き合っていく病気だからこそ、認知症の方に対してどう対応すべきか知っておきたいと考える方も多いでしょう。

認知症の方と接していると、つい言葉が強くなってしまうことや、ちょっとした発言で相手を傷つけてしまうこともあります。そうしたことを避けるためには、相手を尊重する姿勢が大切です。

この記事では、認知症の人にやってはいけないことについて、介護の現場をよく知る専門家が解説します。

認知症の人の意思を尊重しない言動や行動に注意

認知症の方と接する際には、相手の意思を尊重しない言動や行動に注意しましょう。

認知症になると、これまで当たり前にできていたことが徐々にできなくなっていきます。その結果、常に介護をしている家族の介護負担は大きくなり、つい「何もしなくていいから、座っていて」と指示してしまうのです。

そうしたコミュニケーションを繰り返すうちに、認知症の方は自分の意思を訴えづらくなり、さらに認知症の症状が悪化してしまうことにも繋がります。認知症の方の意思を無視した言動や行動は、できる限り避けましょう。

現場で見た認知症介護の失敗例

認知症の方の意思を無視した言動や声かけによって、逆に認知症が悪化した事例もあります。

認知症と診断を受けたAさんは、娘夫婦と孫と一緒に同居していました。同居する前は1人で暮らしており、もともと明るい性格だったことから、近所の方々とグランドゴルフを楽しんでいました。しかし、徐々に認知症の症状が進行し、ひとりでの生活が難しくなってきたため、娘家族との同居を始めたのです。

娘の家周辺には、Aさんの知り合いがいません。さらに、娘夫婦は日中働きに出て、孫は学校に行っています。その結果、Aさんは、娘家族の家の中で完全に孤立していました。認知機能が低下しているため、1人で散歩や料理などをさせてもらうこともできず、家に引きこもる生活になっていたのです。

結果的に認知症の症状がさらに悪化し、家族だけで介護を続けられなくなったことで、介護サービスの利用に踏み切りました。デイサービス利用後は、持ち前の明るさを取り戻し、利用者仲間とも仲良くなり、週3回通っているデイサービスを楽しみに日々過ごしています。

Aさんは、もしかすると自宅で独居を続けながら訪問介護や通所介護を利用して生活できていたかもしれません。また、ショートステイなども併用して、住み慣れた地域での生活を続けられる可能性もあります。

認知症になると、安全に過ごしてもらうことを最優先に考え、行動範囲を制限してしまいがちです。もちろん、安全を確保することは大切ですが、ある程度は本人の意思を尊重することも考えておくとよいでしょう。

認知症の人にやってはいけないこと10項目

ここでは、認知症の人にやってはいけないことを10個リストアップしました。どれも、ついやってしまう言動や行動です。各項目の内容と避けるポイントについて解説しています。

1.大声で怒鳴る

認知症の方を介護していると、コミュニケーションがスムーズにできないことにフラストレーションが溜まってしまいます。

頭では「大きな声を出したらダメだ」と思っていても、溜まったフラストレーションをどのように処理していいのかわからず、つい声が大きくなってしまうこともあるでしょう。しかし、認知症の方に対して大きな声を出すと、相手が萎縮してしまい、さらにコミュニケーションが取りにくくなります。

イライラしてきた際には、可能であれば一旦その場を離れて気持ちを整理することをおすすめします。ただし、介護をする側も人間です。頭でわかっていても、つい大声が出てしまうこともあるでしょう。介護をしている方は、つい大声を出してしまったとしても、過剰に自分を責めすぎないようにしましょう。

2.行動を強制する

認知症の方の行動を制限しすぎないように注意しましょう。家族は本人の安全を確保するために制限しているつもりでも、それが本人の大きなストレスになってしまう場合もあります。

特に、強制してしまいがちなのが、脳トレや散歩などです。脳トレや散歩は、認知症予防のために効果的だとされているため、積極的に本人へ声掛けをしてしまいます。しかし、それが認知症の方を追い詰めてしまう可能性もあるのです。

相手が脳トレや散歩を拒否した際には、無理に勧めるのではなく、説明の方法や誘導するタイミングなどを工夫しましょう。

3.否定的な言葉をかける

家族のように気心知れた仲だと、つい強めの口調で会話してしまうこともあります。しかし、認知症の本人は、以前よりも自分に自信を失っている状態であることを意識しておきましょう。

介護の現場でも、家族の何気ない一言が、本人の心に大きな傷を残してしまう場面を何度も見かけました。気心知れた仲であっても、本人の気持ちを考えて、慎重に言葉を選びましょう。

4.過去の記憶を無理に思い出させる

認知症の方と関わる際に、積極的に昔話をして、思い出させようとする方がいますが、過去の記憶を無理に思い出させようとするのは避けましょう。

もし、過去の記憶を思い出せなかった場合、認知症の方は自分に自信がなくなってしまうこともあります。昔話をすることは問題ありませんが、周囲の人が無理に思い出させようとするのではなく、本人が自然と思い出すのを待つことが大切です。

昔話をする時に「忘れちゃったの?」「思い出して!」といった声かけは、本人を追い詰めてしまう可能性があるので避けましょう。

5.子供扱いする

認知症になると、日常生活の中でできないことも増えてきます。そのため、元気だったころと比較して、周囲の態度が変わってしまうこともあるでしょう。

例えば、自分の息子や娘から急に子供扱いをされることにショックを受ける方や、家庭の中に居場所がなくなってしまったように感じる方もいます。

認知症の症状によって、何もできなくなったからといって変に特別扱いするのではなく、これまで通り「お父さん」「お母さん」として、相手を尊重する姿勢と態度で接することを心がけましょう。

6.行動を急がせる

認知症の症状が進行すると、何気ない日常生活の動作に時間がかかるようになります。同居している家族としては、行動が遅いことにイライラして「介護してもらおうと甘えているのでは?」と感じてしまう方もいます。

その結果、認知症の方に対して「急いで!」「自分でこれくらいはやってね」と行動を急かせるような言動をして、家族間の関係性が悪化する場合もあるでしょう。

介護している方は、行動に時間がかかることを見越して、余裕を持ったスケジュールで動くことが大切です。また、環境の工夫次第で、スムーズに行動できるようになる場合もあります。

7.役割を取り上げて行動を制限する

認知症の方は、予測できない行動をすることもあります。そのため、同居している家族としては、安全のために行動を制限したくなるでしょう。

しかし、家庭の中での役割を取り上げて、行動を制限してしまうと、余計に認知症が進行するおそれもあります。

全ての役割を取り上げるのではなく、安全にできる仕事は残しておき、できるだけ行動を制限しないことが大切です。

8.家の外に出さない

認知症の方を1人で外出させることには、大きなリスクがあります。しかし、一切家の外に出さないこともよくあります。

散歩や日光浴は、認知症予防に効果的だとされています。家の外に出る機会を増やすことで認知症の進行を遅らせる効果も期待できるでしょう。

もし、家族の時間が取れるのであれば、家族と一緒に散歩や日光浴の時間を取ることも大切です。

9.本人の同意なく検査や治療を受けさせる

認知症になると、理解力が低下します。検査や治療を受ける際の説明について、家族が「本人に説明してもよくわかっていないから」と、家族の同意だけで検査や治療を受けさせる場合もあります。

しかし、同意を得ないまま検査や治療方針を決めることで、本人と家族との信頼関係が壊れてしまう可能性もあります。

ただし、家族が介護を続けられなくなった場合は、緊急で施設に入所する手続きが必要です。その場合は、本人の同意なく、入院治療や施設入所が決定する必要があるでしょう。

10.間違いを指摘する

認知症の方は、理解力や記憶力が低下していくことで、日常生活の中で間違った言動や行動をする場面も多くあります。

家族の方が、本人のためを思って間違いを訂正したくなる気持ちもわかります。しかし、特に生活に支障がない程度の間違いであれば、あえて訂正しないことも大切です。

認知症の方が、自分の行動や言動に対する間違いを強く指摘されることで、その出来事は失敗体験として認識されます。失敗体験を繰り返す度に自信を失い、しだいに自分から意思表示をしなくなってしまう場合もあるのです。

本人の安全を脅かさない程度の間違いであれば、ある程度許容して、あえて訂正しないことも意識しておくとよいでしょう。

認知症の人にやってはいけないことをした場合は?

認知症の方への対応を間違うことで、相手との信頼関係が崩れてしまいます。その結果、自発的な行動や発言の機会が減少し、さらに認知症の症状が進行する可能性が高くなるでしょう。

認知症の症状が進行することで、介護する方の心理的な余裕がなくなり、さらに不適切な対応を取ってしまうかもしれません。結果的に、認知症は悪化し、介護者の負担がさらに大きくなる悪循環に発展してしまう場合もあります。

認知症の人を介護する際に大切なこと

認知症の人を介護する際には、認知症介護の基礎知識を知っておくことが大切です。また、介護サービスなどを積極的に活用すると、心理的な負担も軽減できるでしょう。ここでは、認知症の人を介護する際に大切なことについて詳しく解説します。

認知症介護の基礎知識を身につける

認知症に対する基礎知識を身につけることは大切です。なぜなら、認知症がどういった病気なのかわからなければ、相手の言動や行動の原因を理解できないからです。

逆に、認知症の基礎知識を理解しておくことで、トラブルが発生した際に適切な対応ができるようになります。

もし、勉強する時間が取れない場合は、医師やケアマネジャーなどの専門家に直接相談して教えてもらってもよいでしょう。

介護保険サービスや公的なサポートを活用する

認知症の方へ適切な介護を実践するためには、心身ともに余裕をもって介護することが大切です。しかし、認知症の介護をひとりで続けると、精神的・肉体的に大きな負荷がかかってしまい、心身ともに余裕を持った介護を継続できなくなる場合もあります。

無理に1人で介護しようとするのではなく、積極的に介護サービスを活用して、心身ともに余裕を持った状態で介護できる環境を整えましょう。

在宅が難しい場合は施設入所も検討する

介護している方の中には、介護施設に入所させることに対して罪悪感を覚える方もいます。しかし、介護施設に入所させることは決して悪いことではありません。

設備の整っていない在宅での介護を継続することで、介護している方の心身へ大きな負担がかかり、認知症の方へ悪影響を与えてしまう可能性もあります。

介護保険サービスの中には、認知症ケアに特化した入所施設もあります。そういった施設を利用することで、適度な距離感を持って、お互いに落ち着いた生活を送れるようになるでしょう。

まとめ:認知症の人にやってはいけない行動や言動に注意しましょう

認知症の人を介護する際には、相手の気持ちを尊重することが大切です。しかし、日々忙しい中で介護をしていると、つい感情的になってしまうこともあるでしょう。

特に、長い年月を一緒に過ごしてきた家族だと、つい言動が強くなってしまったり、行動を制限してしまったりすることもあります。親しい関係性だったとしても、相手の気持ちを考えて、どう声かけすべきなのか、どんな行動をしてはいけないか常に考えることが大切です。

認知症の方への対処法について悩んでいる際には、本などで認知症の基礎知識を身につけることや、周囲にいる介護の専門家へ相談することで解決策が見つかる場合もあります。介護保険サービス等も積極的に活用しつつ、心に余裕を持った介護ができるように心がけましょう。

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