訪問介護、通所介護などお役立ち情報・書式が満載

  1. HOME
  2. その他
  3. 【専門家監修】介護ストレスが大きくなってしまう原因と対策は?

【専門家監修】介護ストレスが大きくなってしまう原因と対策は?

2024-10-09

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

詳細プロフィール

続きを読む

介護は、身体的・精神的に大きな負担がかかります。そのため、介護をしている方の中には、日々大きなストレスを抱えている方も多いでしょう。

介護者が大きなストレスを抱えた状態は、介護を受けている方にとっても望ましい状況ではないため、介護ストレスを解消したいと考えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、実際に介護現場で介護ストレスを抱えた家族と関わってきた専門家が、介護ストレスを抱える原因や対策について解説します。

介護ストレスが大きい時には周囲の力を借りましょう

介護ストレスを感じている方は、まず周囲に相談しましょう。なぜなら、介護ストレスを感じているのであれば、精神的・体力的な負担が、ご自身のキャパシティを越えている可能性が高いからです。

介護者が、身体的・精神的に余裕を持って介護できる環境でこそ、よい介護ができます。介護がストレスになっている状態が続くと、介護者の身体的・精神的に悪い影響を与えるだけでなく、介護を受けている方にとっても望ましい環境ではありません。

もし、介護ストレスを感じているのであれば、自分が余裕を持って介護できる環境を整えるため周囲の力を借りることも大切です。

介護ストレスで家族関係が悪化するリスクも

実際に介護ストレスが原因で家族関係が悪化してしまった事例をご紹介します。

Aさんは病院で認知症と診断され、近くに住む娘の介護を受けながら一緒に暮らすことになりました。最初は、娘も献身的に介護をしていたのですが、数年が経過すると認知症の症状は進行して、介護の負担も大きくなってきました。

仕事をしながら介護をしているご家族は、仕事のストレスと介護のストレスで徐々に精神的にも身体的にも追い込まれてしまいます。そうして、ちょっとしたAさんの行動や言動にイライラしてしまい、つい強い口調で話してしまうようになっていました。

娘は、Aさんに対して厳しい言葉をかけてしまったことを後悔して、さらに精神的に追い込まれます。この状況を変えたい娘ですが、自分で介護すると言ってしまった手前、簡単に周囲の人に頼ることができません。徐々にAさんと娘の関係性も悪化していき、会話をする機会すら減ってしまいました。

Aさんの事例の他にも、過去には介護疲れで殺人事件が起きる事例も発生しています。介護は1人の力ではどうにもならないことが多くあります。家族関係が悪化してしまう前に、ストレスなく介護できる環境を整えることが大切です。

介護ストレスの状態を確認する方法

介護ストレスの問題は、自分が思っている以上に悪い影響を与える可能性があります。自分の介護ストレスを自覚できている方は、自ら市役所などで相談し、早めに助けを求められます。

しかし、自分が大きな介護ストレスを抱えていることに気付けない人は要注意です。自覚がないため、知らないうちに精神的・身体的に疲弊してしまい、何か問題が発生してから自分の状態に気付きます。

もし、以下の状況に心当たりがある方は、大きな介護ストレスを抱えている可能性が高いため注意しましょう。

  • 介護を考えずに自分1人で過ごせる時間がない。
  • 要介護者の言動や行動にイライラする。
  • 睡眠時間が少ない。眠れない。
  • 介護によって社会と隔離されていると感じる。
  • 介護している時につい手を出してしまう。
  • 介護をしているとだんだん口調が荒くなってしまう。
  • 「このままの状態が続くのか」と将来に不安を感じる。

介護ストレスを感じてしまう原因

介護者が大きなストレスを感じる根本的な原因は、介護者が1人で抱え切れる介護量を越えてしまっていることです。

介護は、1人でどうにかできるものではありません。最初の頃は1人で対応できていたとしても、介護されている方の身体機能や認知機能が衰えてくると、必ずどこかで1人では対応できなくなるタイミングがやってきます。

1人で対応できない問題が発生した際に、相手の性格や自分の対応方法に問題があると考えてしまう方もいます。しかし、これはどちらが悪いという問題ではありません。ただ、1人で介護できるフェーズが終わりを迎えているということに原因があります。

3種類の介護ストレスがある

介護ストレスは、身体的なストレスと心理的なストレス、経済的なストレスの3つに分けられます。各ストレスの種類ごとに特徴と解決策が異なるため、自分が感じているストレスの特性を理解して対策を立てる考え方も重要です。

身体的なストレス

介護をする際には、体へも大きな負担がかかるため注意が必要です。

例えば、トイレ動作の際に身体を抱えて立ち上がらせる、車椅子からベッドへ移乗させる、などの介護動作は介護者の身体への負担も大きくなります。

さらに、介護している方も年齢とともに体力が落ちていきます。徐々に身体へかかる負担も大きくなるため、いずれ必ず1人では介護できなくなるタイミングが来ることを理解しておきましょう。

心理的なストレス

介護では、心理的なストレスにも注意しましょう。特に、認知症の介護では、身体的な負荷よりも、心理的なストレスが大きくなりがちです。

認知機能が低下すると、介護している方が予測できない行動をする場合もあります。安全を確保するためには、常に目が離せない状態が続きます。その結果、自分の時間をゆっくりと取ることもできなくなり、心理的なストレスが蓄積していくのです。

また、認知症の方は徐々にコミュニケーションが取れなくなってくるため、さらに心理的なストレスが大きくなります。

経済的なストレス

介護において無視できないのが、お金の問題です。特に、重度な疾患や障がいを持った方の場合、治療費や介護サービスの利用費などの負担が大きくなります。

介護されている方自身のお金が利用できればよいのですが、もし金銭的に余裕がない方を介護しなければいけない場合、介護している方の経済的な負担が大きくなります。

経済的な負担が大きくなると、介護している方の生活にも大きな影響を及ぼすため、非常に深刻な問題に発展することもあるでしょう。介護に必要な金銭面の問題で、家族の信頼関係が崩れてしまった事例もあります。

介護ストレスを軽減する方法

介護ストレスを軽減するには、国の制度やコミュニティを積極的に活用することが大切です。ここでは、介護ストレスを軽減する具体的な方法について解説します。

介護保険制度を使う

介護保険制度は、要介護認定を受けることで、介護サービスを原則1割負担で利用できる制度です。要介護度に見合った限度額が設定されており、限度額内であれば少ない自己負担額で介護サービスを利用できます。

介護保険で利用できる介護サービスの種類は豊富で、自宅から通える通所介護や自宅で介護をしてもらう訪問介護、施設に入所する有料老人ホームなどがあります。介護サービスを利用したい方は、まず介護保険制度を活用しましょう。

自分の時間を大切にする

介護をしていると、常に同じ時間を過ごしている状態になります。一緒に過ごす時間が長いほど、相手の嫌な部分が見えてしまい、心に余裕がなくなってしまいます。

同居していたとしても、たまにはお互いに距離をとって、自分の時間を持つことも大切です。お互いに自分の時間を保つため、積極的に介護サービスや周囲の人の力を借りましょう。

相談できる人を見つける

初めて介護をしていると、さまざまな悩みが出てきます。答えのない中で悩みを抱えるのは、かなりのストレスになってしまうでしょう。介護の悩みを相談できる人が周囲にいるだけでも、介護ストレスを軽減できます。

例えば、知人や友人の中で介護している方と話をしてみることや、地域の認知症ケアコミュニティなどに参加するのもよいでしょう。同じ悩みを抱えている人同士で情報を交換することも、介護ストレス解消に効果的です。

介護について勉強する

介護には専門的な知識が必要になる場面もあります。問題の解決策がわからない状態がストレスになり、その状態が続くことで精神的に追い込まれてしまう場合もあるでしょう。

介護に関する知識が増えることで、問題の解決策がわかるため、心に余裕を持って介護を続けられます。ただし、あまり勉強にエネルギーを使いすぎると、勉強することがストレスになってしまう可能性もあります。気楽な気持ちで勉強し、少しずつ知識を増やしていくことが大切です。

家族や友人などに頼る

介護ストレスを感じる前に、家族や友人など、周囲の人の力を借りることも大切です。普段は、周囲の人と頻繁に交流している方も、介護となると「どうにか1人で解決しよう」と考えてしまう方もいます。しかし、介護を1人で継続するのは困難です。1人で解決することにこだわらず、積極的に家族や友人の力を借りましょう。

特に家族の場合、自分が思っている以上に「できることがあれば手伝いたい」と思っている人がいることもあります。一回親族に相談してみると、意外と快く引き受けてくれる可能性もあるでしょう。

介護ストレスを溜めないための心得

介護ストレスを溜めないためには、考え方を変えることも大切です。特に、自分1人でなんとかしようと考えている方は、以下の心得を意識して介護をしましょう。

完璧を求めない

介護は、思ったようにいかなくて当たり前です。特に、介護未経験者の方が、思った通りの介護を実行しようとしてもうまくいかないのは当然でしょう。

そのため、自分の思った通りの介護ができないことに対して、自分を責めてはいけません。もし、失敗したとしても「思ったようにいかなくて当然だ」という感覚を持ちましょう。

施設に頼るのは悪いことじゃない

介護をしている方の中には、自分の親を介護施設へ入れることに罪悪感を持つ方もいます。しかし、介護施設に頼ることは決して悪いことではありません。

介護施設の中でも、清潔な空間で利用者が過ごしやすいように工夫している施設が数多くあります。無理に在宅介護を続けて親子関係が悪化するよりも、環境の整った介護施設へ入所して適度な距離を保つことが、お互いにとってよい影響を与える場合もあります。

1人ではできないことを知る

介護は、1人でできるものではありません。仮に、今は1人で介護できていたとしても、いずれ1人で介護をする限界の時がやってきます。

常に「いずれ他の人に頼らなければいけない」と考えておけば、何か問題が発生した際に、早めに相談できます。介護は、最後まで1人でするものではないということを常に意識しておきましょう。

まとめ:頼れるものは全て活用して介護ストレスを最小限に

介護ストレスを感じている状態は、すでに1人で介護できる段階を越えている可能性が高いでしょう。介護ストレスのある状態を解決するためには、誰かに相談して、介護を手伝ってもらうことが大切です。

介護保険制度を活用すれば、比較的安価で必要な介護サービスを受けられます。介護ストレスを感じているのであれば、介護保険サービスなどの支援を積極的に活用して、介護を手伝ってもらいましょう。

介護ストレスを感じている状態は、介護を受ける側にとっても悪い影響を与える可能性があります。介護ストレスを感じながら介護を続けるのではなく、頼れるものは全て活用して、ストレスなく介護ができる環境を整えましょう。

カテゴリ・タグ