現在介護保険サービスを受けている状況の時、医師やケアマネジャーから訪問介護だけではなく訪問看護も受けた方がよいといわれたら、どうしてよいか分からなくなるでしょう。医師などの勧めであれば訪問看護を受けるべきだと考えるでしょうが、そのような場合に気になるのは費用面だと思います。
訪問看護も訪問介護同様に介護保険サービスを受けることができると考えてしまいますが、訪問看護は医療保険が該当するため、介護保険サービスは使えません。医療保険が使えるといわれたとしても、詳細な料金まで詳しく分からなくて不安になることもあるでしょう。
そこで今回は訪問看護にかかる費用や医療保険について詳しく解説していきます。
目次
医療保険による訪問看護料金の基本は、次にあげる3つの合計で計算されます。
3つの中で必ず発生する費用は基本療養費と管理療養費の2つです。ここから健康保険証を利用し1~3割負担の金額がかかるのが一般的とされています。また、加算については加算の種類や事業所によって算定されるものが変わります。こちらも基本的には健康保険証の負担割合が適用されます。
訪問看護基本療養費(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)の料金の一例を表にまとめてみました。次からそれぞれの詳しい内容についてみていきます。
金額(円) | ||
訪問看護基本療養費(Ⅰ) | 週3回まで | 5,550 |
週4日以降 | 6,550 | |
訪問看護基本療養費(Ⅱ) | 2名まで週3回まで | 5,550 |
2名まで週4日以降 | 6,550 | |
3名まで週3回まで | 2,780 | |
3名まで週4日以降 | 3,280 | |
訪問看護基本療養費(Ⅲ) | 入院中の外泊時に訪問した場合、1回のみ | 8,500 |
訪問看護基本療養費(Ⅰ)は、同一建物居住者以外の利用者に対して、訪問看護をサービスを提供したときに算定される療養費のことを指し、「イ・ロ・ハ・ニ」に分類されます。これらは訪問看護サービスを提供する職種により異なります。下記にそれぞれの内容をまとめていきます。
イ:保健師、助産師、看護師が訪問看護サービスを提供
ロ:准看護師が訪問看護サービスを提供
ニ:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問看護サービスを提供
最後は、専門の研修を受けた看護師が所属する訪問看護ステーションが算定できる療養費となっています。
訪問看護基本療養費(Ⅱ)は、同一日に同一建物居住者である利用者に対し、訪問看護サービスを提供した場合に算定されます。該当する利用者が「2人」もしくは「3人以上」により、算定する額が異なります。
ここでも「イ・ロ・ハ・ニ」に分類ができますが、内容は訪問看護基本療養費(Ⅰ)で解説した内容と同じです。
訪問看護基本療養費(Ⅲ)は、在宅療養に向けて外泊している入院患者のうち、厚生労働省が定める状態の利用者に対して、訪問看護サービスを提供したときに算定される療養費のことをいいます。
対象者は「厚生労働大臣が定める末期の悪性腫瘍などの疾病等」と「特掲診療科の施設基準等別表第八(在宅悪性腫瘍等患者指導管理などが該当)」「そのほか在宅医療に備えた一時的な外泊にあたり、訪問看護が必要であると認められたもの」です。
訪問看護管理療養費には、機能強化型1~3と機能強化型以外という類型があります。さらに月の初日か2日目以降の訪問日かによっても算定料が異なります。また、提供する訪問看護サービスの内容や利用者の状況等に応じて、訪問看護管理療養費に加えて算定できる「加算」もあります。
まず、訪問看護管理療養費の主な算定料の一例を表にまとめてみました。
訪問看護管理療養費の類型 | 算定料(円) |
月の初回の訪問日 機能強化型以外 | 7,670 |
月の初回の訪問日 機能強化型1 | 13,230 |
月の初回の訪問日 機能強化型2 | 10,030 |
月の初回の訪問日 機能強化型3 | 8,700 |
月の2日目以降の訪問日 訪問看護管理療養費1 | 3,000 |
月の2回目以降の訪問日 訪問看護管理療養費2 | 2,500 |
次に訪問看護管理療養費の算定要件を以下にまとめてみました。
これらを満たすことにより、訪問看護管理療養費は算定されます。
各種加算は同意した人もしくは対象者のみ算定されます。ここでは各種加算とその算定料の例を表にまとめてみました。
金額(円) | ||
24時間対応体制加算 | 月に1回加算(同意のある人のみ) | 5,400 |
特別管理加算(Ⅰ) | 月に1回加算(対象者のみ) | 5,000 |
特別管理加算(Ⅱ) | 月に1回加算(対象者のみ) | 2,500 |
難病等複数回訪問看護加算 | 1日の2回目 | 4,500 |
1日の3回目以降 | 8,000 | |
緊急訪問看護加算 | 緊急訪問したときに1日1回加算 | 2,650 |
複数名訪問看護加算 | 看護師、理学療法士等、週に1回のみ | 4,300 |
看護助手、週に3回まで | 3,000 | |
夜間・早朝訪問看護加算 | 18~22時、6~8時まで | 2,100 |
深夜訪問看護加算 | 22~6時 | 4,200 |
ターミナルケア療養費 | 対象者のみ1回 | 2,000 |
長時間訪問看護加算 | 90分以上訪問した場合 | 5,200 |
訪問看護情報提供療養費 | 同意のある人のみ月に1回 | 1,500 |
交通費 | 1回の訪問につき | 300 |
その他加算 | 退院時共同指導加算など | 500~6,000 |
公費負担医療制度とは、社会福祉や公衆衛生の向上を目的とし、法律に基づいて医療費の全額もしくは一部を国や各自治体が負担する制度のことをいいます。この制度は次の5つから成り立っているため、それぞれを簡潔に見ていきましょう。
この5つを柱とし、公費負担医療制度は成り立っています。
医療保険を利用して訪問看護を受ける場合、介護保険を利用して訪問看護を受ける時と同様に受ける条件が定められています。次からそれぞれの条件を簡単に見ていきましょう。
40歳未満でも訪問看護を利用することができ、その条件は医師が訪問看護の必要性を承認した人が利用できます。また、40歳未満の医療保険の加入者と妊産婦や乳幼児を含む家族も該当します。
末期がんなど16特定疾病の対象であったとしても、要支援・要介護に該当しない人が利用できます。
医師が訪問看護の必要性を承認した人や、末期がんなど16特定疾病の対象ではない人が該当します。
厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)に該当する人も、医療保険の訪問看護を受けることができます。これには介護保険利用中の人も含まれます。
該当する疾病は次にあげる20の疾病です。
特別訪問看護指示書が交付された場合も、医療保険の訪問看護を受けることができます。
特別訪問看護指示書は次にあげる3つに該当する場合、1ヵ月に1回交付されます。
- 急性感染症等の急性増悪期
- 末期の悪性腫瘍等以外の終末期
- 退院直後で週4日以上の頻回の訪問看護の必要がある場合
次にあげる2つに該当する場合は、1ヵ月に2回まで交付されます。
- 気管カニューレを使用している状態
- 真皮をこえる褥瘡がある状態
特別訪問看護指示書は主治医が疾病の急性増悪等により頻回の訪問が必要と判断したときに交付されます。この交付を受けた利用者に対し訪問看護は、14日間医療保険適用となります。
特別訪問看護指示書による指示がある有効期間内は、週に4日以上の訪問が可能となります。
訪問看護では次の8つのサービスを受けることができます。
ここでは訪問看護に関する質問に答えていきます。主な質問は3つあるため、それぞれみていきましょう。
まず介護保険で訪問看護を受けた場合、サービスを単位で計算します。大体の場合、1単位は10~12円くらいです。これに通常の訪問看護の時間や初回加算などを加えると、1割負担の人で1ヵ月4,000円程度になります。ただし使える単位数は介護度によって決まっているため、注意が必要です。
一方医療保険で訪問看護を受けると、基本療養費で5,550~6,550円かかります。これに管理療養費(月の初日7,400円、2日目以降2,980円)がプラスで算定されます。それに他の加算が追加されますが、1週間に1回1時間のサービスを受ける場合は、1割負担の人で1ヵ月4,400円程度になります。こちらは高齢医療制度などで上限が定められているため、一定以上の料金は請求されません。
1ヵ月の料金を比較すると、医療保険の方が若干高いですが、あまり大差がない事が分かります。
65~74歳の平均訪問看護料金は99,000円です。75歳以上で114,000円となっています。ここから医療保険の自己負担分の金額が請求されます。65~74歳で自己負担額を3割とすると、29,700円になります。75歳以上を1割負担とすると、11,400円となります。
使用できます。限度額認定証を提示すると、一定額以上の請求をされることはありません。訪問看護は1~3割負担であったとしても高額になる可能性があります。そのため、一定額以上請求されない限度額認定証を取得しておいた方が、経済的な負担も少なくなります。
医療保険で訪問看護を受けると、確実に請求される金額プラスで加算額が請求されます。しかし、限度額認定証を活用することで一定額以上の請求はありません。訪問看護の料金だけをみると、負担が大きく感じます。利用者が快適な生活を送るためには重要です。医療保険での訪問看護を受けるために必要な金額はこの記事で解説しましたので、この記事を参考に訪問看護に備えておきましょう。