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介護保険施設とは?施設の特徴や入所までの手続きについて徹底解説!

2024-09-30

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護保険施設はみなさんの地域にも多数ありますが、それぞれの施設がどのような位置づけで、どのような役割を担っているのかは、あまり詳しくは知られていません。介護現場で働いている方でも、ある程度は知っているものの、正確に説明できる方は少ないのが実際のところです。

介護保険施設それぞれの役割や目的の違いを知ることで、地域の中での施設間連携にも大いに役立ちます。今回の記事では介護保険施設について、それぞれの特色や役割、サービス内容や費用などについて詳細に解説します。

介護保険施設とは?

介護保険施設は、介護保険の認定を受けた要介護者が、安全で安定した生活を送るための施設です。介護保険の施設なので、要介護認定を受けた高齢者が対象となります。

施設には高齢者の身体的・精神的な支援をするため、多様なケアが提供されています。食事・排泄・入浴などの日常生活の支援から医療ケアまで、入所者に合わせて幅広いサービスが包括的に提供されます。介護保険制度により、介護が必要な高齢者の受け皿として介護保険施設が急速に増え、自宅での生活が困難な状況でも、施設で専門的な介護サービスを常時受けられるようになりました。

要介護高齢者数の増加スピードは著しく、介護保険施設の数はまだ需要を大きく下回っていることから、入所待機する高齢者はまだまだ後を絶たないのが現状です。介護保険施設はこの高齢化社会において欠かせない重要な存在となっています。

介護保険施設の種類は3種類

介護保険施設は、大きく分類すると3種類に分かれます。施設種別によって、提供するサービス内容や入所基準が異なります。ここではそれぞれの違いを、表を使ってわかりやすく紹介します。

特別養護老人ホーム介護老人保健施設介護医療院
目的介護を必要とする高齢者に対して、日常生活全般の介助と医療的ケアを提供する。
主に重度の要介護者を対象としている。
病院での治療を終えた高齢者が、自宅復帰を目指してリハビリテーションを受けるための施設。
基本的には短期間の入所を前提とし、医療と介護の中間施設の役割を持つ。
長期間の療養が必要で、医療的ケアが欠かせない高齢者に対し、必要な医療ケアを提供しながら、介護をおこなう。
運営者社会福祉法人や地方自治体など医療法人など医療法人など
対象者要介護3以上の認定を受けた方(特例として要介護1・2の方も入所可)要介護1以上の認定を受けた方で、自宅復帰を目指すことが可能な方要介護1以上の認定を受け、慢性疾患などで医療的ケアが必要な方
サービス内容食事、入浴、排泄などの日常生活の支援、健康管理、機能訓練、レクリエーション活動などリハビリテーション、医療ケア、日常生活支援など医療ケア、日常生活支援、リハビリテーションなど
費用介護度や施設の体制に応じて異なる。居住費、食費、介護サービス費用など。介護度や施設の体制によって異なる。居住費、食費、介護サービス費用など。基本的に医療費の負担はない。介護度や施設の体制によって異なる。居住費、食費、介護サービス費用など。
入所期間長期短期から中期長期
医療体制常駐する看護師による日常的な健康管理。必要に応じて医師の診療が受けられる医師、看護師が常駐。リハビリ専門職と協力して医療を提供医師、看護師が常駐。重度な医療ケアを提供
施設数8,494施設4,273施設730施設

参考:厚生労働省令和4年介護サービス施設・事業所調査

介護保険施設3種別の比較をまとめました。最も大きな違いは医療体制や提供できる医療ケアに関する点です。次の章で施設種別ごとに詳細を解説します。

介護老人福祉施設とは?

介護老人福祉施設とは、介護保険に位置づけられた入所施設で、一般的には特別養護老人ホーム(特養)として知られています。

常時介護を必要とする高齢者を対象に、長期的な生活支援や介護、健康管理などのサービスを提供する場所です。

自宅で生活することが困難な要介護3以上の認定を受けている高齢者を対象としています。長期間の入所施設であり、「終の住処」としての役割も果たします。他の介護施設等と比べて費用負担が少ないために人気があり、入所待機者が多いことでも知られています。

対象者

  • 要介護3以上の認定を受けた高齢者
    ※もともとは要介護1〜5の認定を受けた方が入所対象でしたが、2015年の報酬改定により、原則として要介護3以上という基準に変更。
  • 要介護1・2の方でも、やむを得ない事情があれば、特例入所として、入所が認められる場合あり。具体的には、
  • 重度の認知症や精神疾患や、家庭内での深刻な虐待などで、心身の安全の確保が困難な場合

サービス内容

介護老人福祉施設では、食事・入浴・排泄など、生活全般に渡る介護が提供されています。また、健康管理や機能訓練などを通して、本人の能力の維持向上など、自立支援のためのサポートも提供されます。
その他、レクリエーションや行事・クラブ活動など、入所者の生活の質を向上させるための活動も提供されています。医療やリハビリテーションのための施設というよりも、生活の場としての位置づけにある施設です。
人生の最後を過ごす場所としての役割も担い、近年では医療と連携しつつ、施設内での看取り・ターミナルケアなどを提供することも増えています。

費用負担

介護老人福祉施設の利用にかかる費用は、大きく分けると介護保険対象分と介護保険対象外の部分に分かれます。

介護保険対象分

    基本報酬は要介護度によって異なります。要介護度が高いほど費用も高く、要介護度5の方の費用が最も高くなります。基本報酬以外にも、職員体制や実施しているケア内容により、加算が設定されています。施設によって算定する加算が異なるため、どのような加算を算定しているのか、各施設に確認することが必要です。

    介護保険対象外

    • 食費
    • 居住費(部屋代)
    • 日用品費
    • 医療費(診療費・薬代)など

    介護保険対象外分は介護保険と違い全額自己負担なので利用者側が支払う費用は大きくなります。ただし、所得や貯蓄の金額によって、自己負担金額の減免を受けることも可能です。

    食費と居住費に関しては、介護保険負担限度額認定証の認定を受けることで、定められた限度額以上の自己負担をしないで済みます。減免される金額は所得段階等によって異なり、最も自己負担の少ない第一段階であれば、1日分の食費自己負担は300円、居住費は320円にまで軽減されます。

    費用負担の軽減として、高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算制度、医療費控除などの減免が適用される場合もありますので、どの制度の対象になるか必ず確認しましょう。

    また、減免の対象とならなかったとしても、特別養護老人ホームの入居費用は、民間の介護付有料老人ホームの費用よりも一般的には少なくなります。特別養護老人ホームが人気な理由のひとつは、この費用負担の少なさにあります。

    地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護とは?

    地域密着型介護老人福祉施設は特別養護老人ホームと同じように介護保険に位置付けられた生活施設です。これは、主に少人数の入居者を対象とした介護施設で、地域密着型特養とも呼ばれます。2006年の介護保険制度改正によって生まれた地域密着型サービスのひとつです。

    特別養護老人ホームとの大きな違いは入所定員と対象者の居住地域です。地域密着型特養は入所定員が29名以下と定められています。また、入所対象者は施設の所在する地域に限定されます。

    それ以外のサービスについては特別養護老人ホームと大きく変わりありません。少人数という特性を活かし、個々のニーズにきめ細かく対応しつつ、柔軟なサービスを提供できることが特徴です。

    介護老人保健施設とは?

    介護老人保健施設は一般的に「老健」と呼ばれる施設で、主に自宅復帰に向けてのリハビリテーションを受ける施設です。

    病院等での治療が終了した後、日常生活に復帰するためのリハビリテーションを集中的におこなうことを目的としています。病院から、自宅もしくは特別養護老人ホームなどの介護施設に復帰するための中間施設という役割を持っています。

    入所期間は短く、一般的な入所期間の目安は3ヵ月とされています。

    対象者

    要介護1以上の認定を受けた方が対象で、自宅へ復帰するためのリハビリテーションが必要な方が対象です。自宅や特別養護老人ホーム等の介護施設などの生活の場に移行が可能な方が対象であるため、重度な医療的ケアが常時必要で、在宅復帰が不可能な方は、基本的には対象外となります。

    サービス内容

    介護老人保健施設には常勤医師の配置もあり、医療によるサポートも充実しています。特別養護老人ホームよりも、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリテーション専門職や看護師等の配置が充実しており、充実した医療ケアを受けることができます。看護やリハビリテーションなどの医療的ケアと、日常生活の介護を合わせて提供し、本人の機能改善を目指します。在宅復帰のための取り組みとして、地域の社会資源との連携や、在宅復帰のために必要な生活環境の調整、退所後のフォローなども提供しています。

    費用負担

    介護老人保健施設も特別養護老人ホーム同様、介護保険対象分と介護保険対象外の料金があります。
    介護老人保健施設は施設のリハビリ体制などにより施設類型が異なり、料金・自己負担も大きく異なります。短期間で集中的なリハビリテーションを受けることができる超強化型・強化型の施設が最も基本報酬が高く、費用負担も大きくなります。
    職員体制やリハビリ体制によって、施設ごとに加算が異なります。リハビリ体制が充実している施設の方が加算の金額は大きくなります。

    介護保険対象外

    • 食費
    • 居住費(部屋代)
    • 日用品費など

    介護老人保健施設も特別養護老人ホーム同様に介護保険負担限度額認定により、費用の減免を受けることができます。

    その他、高額介護サービス費や高額医療・高額介護合算制度などの対象になれば自己負担の金額を軽減することができます。

    一般的に、特別養護老人ホームよりも自己負担は大きくなります。介護老人保健施設の大きな特徴として、医療費の負担が発生しない点が挙げられます。基本的に介護老人保健施設内でおこなわれる診察や処方は全て施設側の負担となります。

    介護医療院とは?

    介護医療院は、長期にわたり高度な医療的ケアが必要で、在宅で生活をすることが難しい要介護高齢者を対象にした施設です。病院での治療は必要ないものの、高度な医療ケアが必要で、在宅やその他の介護施設等で必要なケアを提供できない場合には、介護医療院で生活を支援します。

    以前は、介護療養型医療施設(療養病床)という施設が対応していました。介護療養型医療施設の廃止に伴い、2018年に創設されたのが介護医療院です。介護療養型医療施設のうち一部が介護医療院に転換され、在宅復帰が困難な高齢者の医療ケアや介護を提供しています。

    対象者

    介護医療院の入所対象者は要介護1以上の認定を受けた方で、医療的ケアが継続的に必要な方です。慢性的で治療・回復が困難な状態であり、医学管理が必要な方もたくさんいます。このような医療的ケアが必要な状態で、自宅や一般的な介護施設での生活が困難な方が対象となっています。

    サービス内容

    常勤医師も配置され、重度な医療的ケアにも対応しています。点滴、経管栄養、頻回なたん吸引、重度な褥瘡などの創傷ケアなどにも対応しています。また、日常生活の介護やリハビリテーションなども提供されています。介護老人保健施設と異なり、在宅復帰を目的とする施設ではなく、長期的な入所施設となるため、看取りなども含めたケアが提供される施設です。

    費用負担

    介護医療院も費用は、介護保険対象分と介護保険対象外で分けられます。

    介護保険対象分

    • サービス費用:基本報酬サービス費用:加算

    基本報酬は施設の類型によって異なります。Ⅰ型とⅡ型の2類型があり、Ⅰ型はさらに強化型A・強化型Bというタイプに分かれています。Ⅰ型よりⅡ型のほうが比較的状態が安定した方が対象でとなっており、自己負担の金額もⅡ型のほうが安くなります。

    介護保険対象外

    • 食費
    • 居住費
    • 日用品費など

    特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同様、負担限度額認定証により、食費・居住費の減免を受けることができます。高額介護サービス費や高額医療・高額介護合算制度などの減免を受けることも可能です。

    また、医療費控除の対象となる金額も大きいため、減免される金額も大きくなります。重度な医療ケアに対応していますが、介護保険対象施設であるため費用負担は抑えられているのが特徴です。

    介護保険施設への入所方法や手続きは?

    介護保険施設への入所方法や手続きについて解説します。施設への入所にはどのような手順が必要か、また、施設を選ぶにはどうしたらいいのか。順を追って、一般的な流れを解説します。

    まずは担当のケアマネジャーへ相談

    まずは担当のケアマネジャーへ相談しましょう。ケアマネジャーは要介護者の状況を十分把握しており、地域の介護施設の状況や制度に関する知識を持っています。施設入所に関しての最も身近な相談相手となります。施設入所を考えるようになったら、現在の身体状況や家庭での介護状況などを踏まえて、適切な施設があるのか、ケアマネジャーとよく相談しましょう。

    入院中の場合は、医療的なケアや改善の可能性などの評価が必要です。入院している病院の地域連携室や担当医師・担当看護師・担当のリハビリ専門職などが多職種で協議しながら、退院後の生活の場について検討をおこないます。

    退院前カンファレンスという会議などを通して、本人や家族の意向も踏まえて、退院後の生活を検討します。自宅ではなく、施設に入所するのであればどのような施設が本人に合っているのか、相談します。

    見学・相談

    地域にはたくさんの介護保険施設があります。どの施設に入所するか、決めるためには実際に施設を見学することが重要です。候補となる施設の見学に行き、その環境やサービス内容について確認します。施設の雰囲気なども重要な判断材料のひとつです。

    評判のいい施設だからといって、必ず気に入るとは限りません。しっかりその目で見て、職員の話を聞いてから決断しましょう。

    施設の相談員などの説明を受けるとともに、本人の状況や要望なども伝えることができます。本人が見学できない場合は家族だけで見学することも可能です。

    詳細な情報については、ケアマネジャーや入院中の病院が情報提供をおこないます。関係者間で密な情報連携をおこなうことで、継続的な支援をおこなう仕組みができています。

    入所のお申込み

    希望の施設が決まったら、入所の申し込みをおこないます。基本的には施設ごとに入所申し込みをおこないます。面談や見学時に渡される入所に必要な書類などを確認し、提出書類を作成します。介護保険の情報や詳細な医療情報、飲んでいる薬の内容なども書きます。わからない部分があれば、ケアマネジャーや、入院先の病院の相談員に確認することをおすすめします。

    申し込みは一か所だけではなく、複数の施設に申し込むこともできます。待機が長くなる見込みがあり、自宅での介護が難しい場合は別の施設にも申し込むことをおすすめします。

    入所判定・判定結果のご連絡

    施設側で入所判定会議がおこなわれ、入所が決定します。施設の空き状況・待機状況などによってすぐに入所できない場合もあります。

    入所の順番は先着順ではなく、身体状況や家族状況なども踏まえて優先度が決定されます。待機者が多いからといって、待機期間が長くなるとは限りません。施設相談員との面談などを通して、現在の状況を伝えていくことが重要です。

    契約・入所

    入所が決定したら、契約など手続きをおこないます。契約締結後、入所日が決定し、準備が整い次第施設入所となります。入所後は、施設のケアマネジャーがケアプランを作成し、それをもとに介護職員をはじめとする様々なスタッフが施設での生活をサポートします。

    特別養護老人ホームで長期入所のための枠がない場合、一時的にショートステイ(短期入所)の枠を使って入所することもあります。長期入所の枠ができ次第、ショートステイから長期入所に切り替えるパターンが多く見られます。

    まとめ

    介護保険施設は高齢者の生活支援や医療ケア、リハビリテーションなどを提供する重要な拠点です。少子高齢化や核家族化などにより、家族の介護力にも限界がある中、介護施設の果たす役割は非常に大きいです。

    介護保険施設はそれぞれの種類により、様々な役割や機能があります。特徴をよく理解することで、施設間連携や家族へのサポートもスムーズに進めていくことができます。

    近年は介護保険施設が地域の交流拠点の機能を果たすことや、地域防災での役割を担うことなども多く、地域社会との関係を強化しています。介護施設を含めた地域の介護力が向上することにより、多くの高齢者の自立支援につながることが期待されます。

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