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【専門家が回答】暴力行為のある認知症高齢者でも受け入れてくれる介護施設はある?

2024-09-19

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

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認知症は脳の認知機能が低下する病気です。特に、前頭葉の萎縮が見られ、症状が進行すると感情をコントロールできなくなる場合もあります。認知症によって出現する症状は個人によって異なりますが、穏やかな性格だった方が急に暴力的になることもあるため注意が必要です。

暴力行為のある認知症高齢者を介護している方の中には、介護施設の利用を断られるのではないかと不安に思っている方も多いでしょう。この記事では、暴力行為のある認知症高齢者が介護施設を利用する際の注意点や断られた場合の対処法について詳しく解説します。

暴力行為のある認知症高齢者でも施設は受け入れる

介護保険サービスは、法律上「正当な理由なくサービスの提供を拒否してはならない」とされており、事業者からのサービス提供拒否は制限されています。そのため、仮に暴力行為があったとしても、それだけを理由に受け入れを拒否されることはありません。暴力行為のある認知症高齢者を介護している場合でも、遠慮することなく相談してみましょう。

施設の体制によっては断られる場合も

介護保険サービスは、原則として利用拒否ができません。しかし、利用を拒否せざるを得ない正当な理由がある場合には、利用を拒否されてしまう可能性もあるため注意しましょう。

例えば、以下のような場合には、施設が利用を拒否する正当な理由として判断されます。

  • 事業所の運営に著しく支障が生じる
  • 利用者本人の身の安全が保障できない
  • 他の利用者や職員に対して法律に抵触する行為をおこなった

法律に抵触する行為とは、相手に対して「殺す」といった脅迫をおこなったり、実際に拳で殴りつけたりなどの行為が該当します。この場合は、脅迫罪や暴行罪に該当するので、施設側が利用を拒否するのに正当な理由と判断される可能性が高いでしょう。

介護施設の利用を受け入れてもらえなかった場合の対策

認知症高齢者を介護する方は、暴力行為によって介護施設の受け入れを断られてしまった場合の対処法を知っておくと安心です。介護施設の利用を断られた場合、認知症対応型の施設や医師へ相談することをおすすめします。ここでは、介護施設の利用を拒否された場合の対策について詳しく解説します。

他の施設を探す

同じ介護施設の中でも、施設ごとに備えられている設備やスタッフの配置状況などが異なります。そのため、ひとつの介護施設で断られたとしても、別の施設では受け入れてもらえる可能性があります。ひとつの施設に絞って相談しにいくのではなく、複数の施設を選択肢に入れて相談にいくとよいでしょう。

認知症対応型施設を紹介してもらう

介護施設の中には、認知症対応に特化した施設もあります。認知症ケアに特化した介護施設では、暴力行為のある認知症高齢者への対応も想定して環境を整えているため、受け入れてもらえる可能性が高いでしょう。

認知症ケアに特化した介護施設とは、認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)と認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の2種類です。暴力行為によって利用を断られた場合は、認知症対応型デイサービスやグループホームを探して相談しにいくことをおすすめします。

医師に相談する

暴力行為のある認知症高齢者を受け入れる施設が見つからない場合、認知症治療を担当している医師に相談することも大切です。認知症の症状によって家族の生活が脅かされるような状態であれば、緊急入院を検討してくれる場合もあります。また、服薬コントロールで暴力行為が落ち着く可能性もあります。

施設への入所にかかわらず、暴力行為がある際には、常に状況を医師に相談しながら支援してもらうことが大切です。

暴力行為がある認知症高齢者の介護施設探しで注意すべきこと

介護施設へ相談にいく際には、普段の生活の状況を細かく伝えることが大切です。また、介護者が1人で施設探しをするのではなく、利用できるサポートは全て利用して多くの人を巻き込みながら相談するとよいでしょう。

ここでは、暴力行為がある認知症高齢者の介護施設探しで、注意すべきポイントについて詳しく解説します。

普段の生活を詳細に話す

介護施設の職員やケアマネージャーは、介護に関する知識と経験が豊富です。介護者が感じた「ちょっとした気付き」から、より良いケアに繋げるヒントや対策案などを発見できます。

そのため、介護者が主観で「この情報を伝えても意味がない」と判断するのではなく、少しでも気付いたことがあればできる限り詳細に情報を伝えることが大切です。また、介護者の中には「暴力行為があることを話すと断られるのではないか」と考えて、実際の状況よりも症状が軽いように伝えてしまう場合もあります。家族からの情報がなかったことで大きなトラブルに発展する可能性もあるため注意しましょう。

多くの人を巻き込む

地域の中には、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなど、介護に関するサポートをおこなう施設が数多くあります。地域にある介護施設などを積極的に活用して、施設探しに協力してもらうことが大切です。

介護者が「暴力行為があるから、誰にも受け入れてもらえないだろう」と1人で抱え込んでいても解決策は出てきません。役場の窓口や近所の介護施設など、さまざまな場所へ足を運び「困っています」と相談することで解決策が見えてきます。

認知症高齢者からの暴力に悩んでいたら

認知症高齢者の暴力行為が激しくなると、家族による介護を続けられなくなる場合もあります。特に、暴力行為がエスカレートすればするほど「外部の方へ迷惑をかけないように」と家族の中だけで抱え込んでしまう場合もあります。

しかし、その状況では何も解決できません。もし、暴力行為に悩んでいるのであれば、遠慮なく助けを求めることが大切です。ここでは、認知症高齢者の暴力行為に悩んでいる場合の解決策について詳しく解説します。

精神科へ相談する

認知症高齢者の暴力行為に悩んでいる場合、まずは医療機関へ相談しましょう。暴力行為が見られるということは、BPSD(周辺症状)という認知症特有の症状が出現している可能性があります。

精神科の治療で暴力行為が落ち着く可能性もあるため、医師に相談して治療方針を検討しましょう。

心理的・物理的な距離を置く

閉鎖的な空間になればなるほど暴力行為がエスカレートする場合もあります。特に、同居している家族の場合、物理的に距離をおく時間を取ることで、心に余裕が生まれ、お互いに落ち着いて生活できることもあります。

家族と同居生活を続けている方の場合は、デイサービスやショートステイなどを利用して、一時的に距離を置く時間を取るとよいでしょう。

緊急事態は警察へ

暴力がエスカレートしていった結果、大けがや命にかかわる事態になる可能性もあります。実際に、過去には認知症高齢者の介護疲れによって命が脅かされた事例も発生しています。暴力行為がエスカレートして、どちらかが身の危険を感じる事態になった場合は、警察を呼ぶことも考えておきましょう。

まとめ:暴力行為のある認知症の方も受け入れる施設を探そう

介護保険サービスは、暴力行為の有無にかかわらず、正当な理由なく利用を断ることはできません。そのため、暴力行為がある認知症高齢者でも受け入れてくれる施設はあります。

しかし、施設側の受け入れ態勢が整っていないことで身の安全を確保できない、法律に抵触する行為をおこなうなどの場合には、利用を断られる可能性もあるため注意しましょう。仮に、介護施設から利用を断られた場合、認知症対応型デイサービスやグループホームなどを検討してもよいでしょう。

暴力行為があるからといって、家族だけで解決しようと考えてはいけません。暴力行為のある認知症高齢者への介護で悩んでいる場合は、医師やケアマネージャーなどへ積極的に相談して、本人と介護者の両方にとってベストな解決策を一緒に考えていくことが大切です。

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