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【専門家が回答】老人ホームに通帳を預けるべき?注意点や施設以外の預け先をご紹介

2024-09-17

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

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老人ホームに入所する際には、施設に通帳を預けるように依頼される場合があります。施設に通帳を預けることに対して、不安を感じる方も多いでしょう。

この記事では、老人ホームに通帳を預ける際の注意点や、施設以外に安心して金銭管理を依頼できる預け先について詳しく解説します。

老人ホームに通帳を預けるべき?

老人ホーム内では、金銭トラブルが発生する可能性があるため、老人ホーム内での金銭管理については慎重に考える必要があります。ここでは、老人ホームに通帳を預ける際に注意すべきポイントについて解説します。

できるだけ本人で管理することが望ましい

厚生労働省の資料「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」によると、老人ホーム内での金銭管理について以下のように記載しています。

イ、入居者の金銭、預金等の管理は入居者自身が行うことを原則とすること。ただし、入居者本人が特に設置者に依頼した場合、又は入居者本人が認知症等により十分な判断能力を有せず金銭等の適切な管理が行えないと認められる場合であって、身元引受人等の承諾を得たときには、設置者において入居者の金銭等を管理することもやむを得ないこと。
ロ、設置者が入居者の金銭等を管理する場合にあっては、依頼又は承諾を書面で確認するとともに、金銭等の具体的な管理方法、本人又は身元引受人等への定期的報告等を管理規程等で定めること。

引用:厚生労働省の資料「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」

原則として、老人ホーム内での金銭管理は、入居者本人がおこなうものとしています。しかし、認知症等の理由で本人の判断能力が低下している場合には、身元引受人の承諾を得たうえで施設側が金銭を管理することも可能です。

預ける場合は契約書を交わすなどの手続きをおこなう

過去には、介護施設の職員が、勝手に利用者の通帳から金銭を引き出していた事件も発生しています。実際に通帳を預ける際には、施設側に相談して、慎重に検討する必要があるでしょう。有料老人ホームの設置運営標準指導指針では、老人ホームに通帳を預ける際のルールについて細かく記載されています。

有料老人ホームは、金銭の具体的な管理方法を決め、定期的な報告などに関する内容を管理規定で定めることが求められています。実際に通帳を預ける際には、金銭トラブルを避けるため、施設側と話し合い、管理方法や定期報告のルールなどを確認するとよいでしょう。

老人ホームで発生しやすい金銭トラブル

老人ホームに通帳を預ける際には、有料老人ホームで発生しうるトラブルを予測し、事前に対応策を考えておくことも大切です。ここでは、老人ホームで発生しやすい金銭トラブルについて詳しく解説します。

盗まれたと思い込んでしまう

認知症の方に多く発生しやすいトラブルが、物盗られ妄想です。物盗られ妄想とは、実際には盗まれていないにもかかわらず、周囲の人に盗まれたと思い込む症状のことです。

本人の認知機能が低下している場合は、通帳をどこにしまい込んだのかわからなくなり「盗られた」と思い込む可能性があります。少しでも認知機能面が心配な場合は、通帳の管理方法を工夫しましょう。

職員の記録ミス

有料老人ホームの設置運営標準指導指針では、施設側で通帳を管理する場合、本人又は身元引受人等への定期報告が求められています。しかし、職員の記録ミスなどにより、残高と使用した金額が不一致になる問題が発生する可能性もあります。

こうした人為的なミスに巻き込まれるのを避けるためにも、通帳を預ける前に施設側に管理方法をしっかりと確認して、施設の管理方法が信頼できる場合のみ預けるようにしましょう。

入居者同士のトラブル

本人は通帳を管理できていても、別の利用者が「盗られた」と思い込み、トラブルに巻き込まれる可能性もあります。こういったトラブルを避けるために、入居の際に通帳を預けるよう依頼する施設もあるようです。居室に通帳を持ち込まないことも、施設内でのトラブルを避ける手段のひとつです。

老人ホームで金銭トラブルを避ける方法

老人ホームで金銭トラブルになると、その後の生活で大きなストレスを抱えながら生活しなければいけません。金銭トラブルを回避するため、事前に対策を立てておくことが大切です。ここでは、老人ホームでの金銭トラブルを避ける方法について詳しく解説します。

施設や家族と管理方法を共有しておく

施設内での管理方法について、できるだけ多くの方と情報を共有しておくことが大切です。仮に、本人だけが管理場所を知っている状態だと、通帳を紛失した場合に解決できなくなる可能性もあります。

また、施設の内情について理解している職員と情報を共有しておくことで、他の利用者とのトラブルを避けられるように配慮してもらえる場合もあります。さらに、トラブルに巻き込まれた場合にも、早急に対処してもらえる可能性があるでしょう。本人が通帳を管理できるとしても、施設の現場責任者などの信頼できる職員には管理場所等を共有しておくことが大切です。

常に確認しておく

施設に通帳を預けた場合、定期的に残高を確認しておきましょう。

過去には、介護施設の職員が通帳を勝手に利用していた事例も発生しています。同様なことが発生するのを防ぐためにも、通帳は預けっぱなしにするのではなく、定期的に自分で残高を確認しておきましょう。自分で確認できない場合は、家族や信頼できる知人などに残高の確認を依頼しておく方法もあります。

老人ホームに預ける以外の管理方法も検討する

金銭管理に不安がある場合、通帳を老人ホームに預ける以外の方法もあります。例えば、厚生労働省の支援制度や後見人制度などを利用すれば、施設内でのトラブルを避けつつ、安心して金銭管理を任せられます。

老人ホームに預ける以外に通帳を保管する方法

金銭管理に不安がある場合、老人ホームに預けることも可能です。しかし、安心して預けられない方もいらっしゃるでしょう。ここでは、老人ホームに預けるのではなく、様々な法制度を活用して通帳と印鑑を管理する方法について詳しく解説します。

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業とは、社会福祉協議会が実施主体となって取り組んでいる厚生労働省の事業のひとつです。判断能力が低下してきている人に対して、福祉サービスの利用援助などをおこなっています。この援助内容の一環として、日常的な金銭管理の依頼も含まれています。

財産管理委託契約

財産管理委託契約とは、財産の管理や療養介護に関する手続きを委任する契約です。

この契約を結ぶことで、財産管理だけでなく、将来的な介護を見越して療養介護に関する手続きまで一任できます。しかし、すでに判断能力が低下している場合は、契約できないため注意しましょう。

財産管理委任契約では、司法書士や行政書士などの専門職に委任することもできます。司法書士や弁護士を利用することで、より安心して通帳を預けられるでしょう。

成年後見制度

成年後見制度とは、認知症や精神障がいなどの理由で、認知能力が低下した方に代わって様々な契約や財産管理を委任できる制度です。成年後見制度には、後見人が実行できる権限によって、後見、保佐、補助の3種類に分類されます。

類型権限特徴
後見代理権、取消権判断能力がほぼない場合に適用。成年後見人が、本人に代わって全ての法律行為をおこなう。
保佐代理権、同意権、取消権判断能力が部分的に低下している場合に適用する。成年後見人が、重要な法律行為について本人に代わっておこなうか、本人の同意を得ておこなう。
補助同意権、取消権判断能力が比較的保たれている場合に適用。成年後見人が、重要な法律行為について本人の同意を得ておこなう。

成年後見制度を活用する際には、利用者の状態と後見人に委任する権利の範囲を考えて、どの類型を利用するか考えましょう。

まとめ:老人ホームに通帳を預けるべきか慎重に判断する

老人ホームでは、原則として自分で通帳を管理する必要があります。しかし、将来的な認知機能の衰えなどを考慮して、老人ホームに預ける方法を検討してもよいでしょう。

また、施設内での金銭トラブルを避けるため、老人ホームから通帳預かりをすすめられる場合もあります。預ける場合には、必ず管理方法を確認して、定期的な報告を依頼しましょう。

老人ホームに通帳を預けることが不安な場合は、厚生労働省の事業や成年後見制度などを利用する方法もあります。幅広い視点から選択肢を考えて、1番安心して預けられる先を選びましょう。

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