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特定福祉用具販売とは?対象品目や購入の流れ・ポイントを紹介!

2024-05-28

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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特定福祉用具販売は、介護が必要な利用者が在宅で自立した生活を送るために必要な福祉用具について、介護保険を利用して購入できるサービスです。

対象品目には複数の福祉用具があり、適切に利用することで利用者の生活の質を向上させ、介護者の負担を軽減できます。

この記事では、特定福祉用具販売の対象品目や購入の流れ、選び方のポイントについて詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。

特定福祉用具販売とは

特定福祉用具販売の言葉の一部である福祉用具は、福祉用具法で下記のように定義されています。

【福祉用具の定義】

心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう。

参考:厚生労働省「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」

この定義より、特定福祉用具販売は、自宅で介護を受けている利用者が、できる限り自立した生活を送ることができることを目的に介護保険を利用して福祉用具の購入できるサービスであることがわかります。

特定福祉用具販売の対象者と対象種目

特定福祉用具販売は、利用できる対象者と対象種目が決まっています。特定福祉用具販売の対象者・対象種目は下記をご覧ください。

特定福祉用具販売の対象者

  1. 要介護認定で要介護1〜5を受けているかた
  2. 在宅で生活されているかた

要介護認定の申請中(新規・区分変更)のかたは、申請日以降であれば購入できますが、要介護の認定区分が確定するまでは支給申請できません。

また、要支援の場合は特定介護予防福祉用具購入になります。

特定福祉用具販売の対象種目

1.腰掛便座

トイレや寝室で使用する便座のことを腰掛便座といい、住宅改修が難しい場合や、トイレまでの移動が難しい場合に使用します。

なお、腰掛便座は下記の4つに分類されます。

  • ポータブルトイレ:便座・バケツ・フレームからなり、移動可能で居室でも使用できる便器
  • 据置式便座:和式便器の上にのせて腰掛式便器として使えるようにする便座
  • 補高便座:洋式便器の上に取り付けることにより便器の座面を高くし、立ち上がりの動作を楽にし、膝などへの負担を軽減するもの
  • 立ち上がり補助便座:便座が電動またはスプリングなどにより昇降し、立ち座りの動作を補助する機能をもつ便座

上記の4つの中でよく購入されるのはポータブルトイレで、下記のようにさまざまな種類があります。

  • 椅子のように4つ足で手すりと背もたれがついたタイプ
  • 便座のふたの上に座面をかぶせて通常は椅子としても使えるタイプ
  • プラスチック製のスツールタイプ
  • 部屋になじむ木製のタイプ など

このようにポータブルトイレは非常に多くの種類があるため、利用者の身体機能や本人の意向にあわせて選択ができます。

また、腰掛便座を導入する際には、既存の便器や便座に対応できるか、腰掛便座へ変更することにより、立ち上がる時に頭などがドアや壁にぶつからないかなどを事前に確認しましょう。

2.自動排泄処理装置の交換可能部品

自動排泄処理装置は、レシーバーと呼ばれる尿を受ける部分・チューブ・タンクなどのうち尿や便の経路となるものは、交換可能部品のため特定福祉用具販売の対象です。

しかし、専用パッド・洗浄液・専用パンツ・専用シーツなどの関連製品は特定福祉用具販売の対象外のため自費にて購入する必要があります。また、自動排泄処理装置本体は、特定福祉用具販売ではなく、福祉用具貸与(レンタル)の対象になるため注意が必要です。

3.排泄予測支援機器

排泄予測支援機器は、2022年4月より新たに特定福祉用具販売の対象となりました。

この排泄予測支援機器は、自立排泄に悩みを抱える要介護者を対象としており、膀胱内の尿の溜まり具合を超音波で測定し、膀胱内に一定量の尿が溜まると自動で通知される仕組みとなっており自立排泄をサポートできる機器です。

なお、専用ジェルなどの消費品や関連製品は特定福祉用具販売の対象外になるため注意が必要です。

4.入浴補助用具

入浴補助用具は、身体機能の低下した利用者が入浴時のおいて、座位の保持・浴槽への出入りなどの補助を目的とする用具で下記のようなものがあります。

  • ​座面の高さが約35センチ以上もしくはリクライニング機能がある入浴用いす
  • 浴槽のふちを挟み込んで固定するタイプの浴槽用手すり
  • 浴槽内において利用できる浴槽内いす
  • ふちにかけたり浴槽に渡して装着することで、浴槽への出入りがしやすくなる入浴台
  • 浴室に置いて床の段差を解消できる浴室内すのこ
  • 浴槽の中に置いて底面を高くする浴槽内すのこ
  • 腰などに巻いて入浴時の移乗動作を楽に介助する入浴介助用ベルト

上記の7つが該当しますが、それぞれの用途を理解して、現状ではどの部分に補助が必要か、転倒などを未然に防ぐための用具の活用や介助者が動きやすいものを選ぶようにしましょう。

5.簡易浴槽

簡易浴槽はポータブル浴槽ともいわれており、居室などでの入浴ができるようにする移動が可能な浴槽のことで、取水や排水のための工事を行わないものが対象です。

タイプは空気式、折りたたみ式、立て掛け式などがあり、材質もソフトなものから硬質のものまでさまざまです。

簡易浴槽を選ぶ際は使い勝手だけでなく、ホースの距離・保管場所・使用中の水蒸気や換気などもよく考えて購入することが重要です。

6.移動用リフトのつり具の部分

移動用リフトとは、利用者自身で移動が難しい場合に、移乗をサポートしてくれる福祉用具です。この移動用リフト自体は介護保険でレンタルの対象となっていますが、移動用リフトのつり具の部分は特定福祉用具販売の対象種目です。

しかし、すべてのつり具が対象ではなく下記の5種類が対象となっています。

  • 脚分離型:両足の脚部分を別々に包む
  • シート型:身体全体を包むため安定はしているが、寝た状態でないと装着しにくく、トイレなどでは使用できない。
  • セパレート型(ベルト型):脇の下と脚の下にかかるタイプで、トイレや入浴に適していますが、比較的軽い症状の場合に使用が限定される
  • トイレ用
  • 入浴用

このようにつり具でも場合によって向き不向きがあるため、1つのものを使うのではなく、使用状況によって使い分けるようにしましょう。

2024年度介護報酬改定で一部福祉用具に貸与と販売の選択制導入へ

2024年度の介護報酬改定において、貸与する期間が長い一部福祉用具に関しては、福祉用具の適時・適切な利用、安全を確保する観点から貸与と販売の選択制が導入されました。

貸与・販売選択制の対象となる福祉用具の種目・種類

  • 固定用スロープ
  • 歩行器(歩行車を除く)
  • 単点杖(松葉づえを除く)
  • 多点杖

上記が対象ですが、貸与か販売の選択制は利用者への十分な説明と多職種の意見や、利用者の身体状況などを踏まえた提案などをおこなう必要があります。

特定福祉用具の購入の流れ

特定福祉用具を実際に購入する場合は、基本的に下記の流れでおこないます。

1.ケアマネジャーに相談する

担当のケアマネジャーに購入したい特定福祉用具について相談をおこないます。もし、担当のケアマネジャーがいない場合は、最寄りの地域包括支援センターもしくは居宅支援事業者のケアマネジャーに福祉用具の購入について相談しましょう。

2.ケアプランを作成してもらう

相談を受けたケアマネジャーは、利用者の身体状況・要望などを把握した結果、どの介護用具を利用したらいいのか、どこのサービス提供事業者を利用するかなどの内容を利用者・家族に伝えます。

その後、それらの内容が決まったら、ケアマネジャーは特定福祉用具販売を位置付けたケアプランを作成します。

3.ケアマネジャーが福祉用具サービス計画書を作成する

ケアマネジャーが特定福祉用具を購入するために必要な福祉用具サービス計画書を作成します。

福祉用具サービス計画書とは、利用者の希望・心身の状況・置かれている環境などを考慮してケアマネジャーが作成する、利用者一人ひとりの福祉用具の利用計画のことです。

この福祉用具サービス計画書には下記の内容を記載する必要があります。

  • 利用者の基本情報(氏名、年齢、性別、要介護度など)
  • 特定福祉用具販売を利用する際の目標
  • 目標を達成するために必要な用具の機種などの具体的サービス内容
  • 該当する福祉用具を選んだ理由
  • 使用時の安全や衛生上の注意事項など、関係者間で共有すべき内容

4.サービス提供事業者に申し込む

利用者・家族に改めて説明と同意を得たら、指定を受けた福祉用具事業者に申し込みをします。この事業者には、福祉用具専門相談員が所属しているため、福祉用具のレンタルや購入に関するアドバイスを最終確認しましょう。

5.商品到着と支払い

特定福祉用具の購入後、商品が到着します。購入した特定福祉用具の支払いは、全額自己負担にて一旦購入となります。

6.介護保険の利用を申請する

特定福祉用具は、償還払い制度にて払い戻しがあるため、購入する際は一旦全額を支払いますが、その後、下記の書類を揃えて市区町村に申請することで、支払額の7〜9割が返還されます。

  • 介護保険居宅介護(介護予防)福祉用具購入費支給申請書(償還)
  • 領収書(被保険者本人宛てのもの)
  • 購入した福祉用具のパンフレット(すのこ購入の場合は形状やサイズを記載した図面も添付)
  • 支払金口座振替依頼書(被保険者本人名義の口座)

参考:江東区「介護保険特定福祉用具購入費の支給」

7.介護保険分が返金される

償還払いの手続きを完了すれば、1〜2ヵ月後に指定の口座に振り込まれます。この福祉用具購入費支給申請の期限は、領収の日から2年間と期間が決まっているため注意が必要です。

特定福祉用具販売の購入におけるポイント

ここでは、主要な特定福祉用具販売の購入におけるポイントや注意点について紹介します。

入院中は購入した福祉用具でのサービス利用はできない

特定福祉用具販売は在宅介護サービスの1種類になるため、入院中は特定福祉用具を購入できません。

しかし、病院などに入院しており、退院準備のために特定福祉用具を購入して退院後に申請書を提出する場合には、入院中でも福祉用具の購入が可能です。しかし、その場合は、入院先でおこなわれる面談などで、在宅で使用するための福祉用具を選定したという記録を残す必要があります。

同一品目の福祉用具の再購入は基本的にはできない

原則として、同一品目の福祉用具の再購入はできません。しかし、下記の場合は例外的に再購入が認められる場合があります。

  1. 特定(介護予防)福祉用具が破損した場合
    通常の使用方法に則り、使用していた福祉用具が経年劣化で破損した場合等が考えられます。このとき、故意による破損は対象とはなりませんのでご注意ください。また、破損による再購入を希望する場合は、破損した福祉用具の破損個所が確認できる写真が必要となります。(部品交換で修復が可能な場合は、部品代が対象となります。)

  2. 被保険者の介護の必要の程度が著しく高くなった場合
    前回の購入時の要介護度よりも介護度が高くなることに加え、購入当初のケアプランから大きく内容を変更する必要があるほど、身体状況が著しく悪化した場合が考えられます。この場合、既に購入した福祉用具の使用が困難であり、機能面を著しく見直す必要性について、介護状況や身体状況の変化にかかる経緯や再購入の合理性を考慮した、説明資料が必要となります。

  3. 特別の事情がある場合
    災害を原因とする床上浸水等による流出や家屋倒壊による破損等が考えられます。

参考:京丹波市「介護保険の福祉用具購入に該当する用具について」

条件によっては福祉用具のオーダーメイドも可能

利用者の心身状況や自宅の状態によって既製品では対応が難しいといった判断がされた場合は福祉用具のオーダーメイドも可能です。

ただ、オーダーメイドの福祉用具を購入する場合は、既存の福祉用具を購入する際とは必要となる書類が変わるため、希望する場合は、必ずケアマネジャーやお住いの市区町村の窓口にて相談しましょう。

レンタル対象の福祉用具を購入する場合は全額自己負担となる

福祉用具は購入以外にレンタルもあり、車いす・特殊寝台(ベッド)・歩行器などが該当します。これらの福祉用具貸与の対象商品は、特定福祉用具販売に含まれていないため、福祉用具を購入する場合は全額自己負担になるので注意が必要です。

福祉用具を上手く購入して、利用者・介護者の負担を軽減させよう

特定福祉用具販売は、介護保険を利用して福祉用具を購入し、自立した生活を支援するサービスで、要介護1〜5かつ在宅で生活している利用者が対象です。

対象の福祉用具は、腰掛便座や入浴補助用具などがあり、ケアマネジャーへ相談し、ケアプランを作成してもらうことで購入が可能です。

購入にかかる費用も介護保険の対象になるため、一度は全額を支払いますが、市区町村に申請することで支払額の7〜9割が返還されます。

日常生活において困っている動作に対して、福祉用具を購入してうまく使用することで、利用者・介護者の負担を軽減できるので、今回の記事をきっかけに特定福祉用具の購入を検討してみるのもよいでしょう。

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