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介護事業の経営!融資と借入の違いとメリットデメリット

2023-10-12

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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訪問介護事業所を運営していると、資金繰りに困ることもあるでしょう。資金繰りに困った際には、銀行などの金融機関からお金を借りて経営しなければいけません。しかし、借入と融資のどちらでお金を借りればよいのか、悩んでいる経営者も多いでしょう。

この記事では、融資と借入の違いとメリットデメリットについて解説します。この記事を読むことで、訪問介護事業所が融資を受けるための重要なポイントが理解できます。

 

訪問介護事業所の実態

厚生労働省の「令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、訪問介護の事業所数は35,612事業所で、前年度より1.5%増加しています。

厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が公表している資料「(第220回)資料1訪問介護」によると、訪問介護の利用者数は右肩上がりに増加しており、2025年には利用者数405万人を突破すると予測されています。

また、同資料では、平成19年以降利用者1人あたりの費用も増加傾向にあり、令和3年度決算時点で平均収支差が6.1%となっています。この数値は、他の介護事業所と比較しても高い利益率が見込める事業であることを示しています。

参考:厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会「(第220回)資料1 訪問介護」
参考:厚生労働省「令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況

訪問介護の運営に必要な資金

訪問介護事業所を運営するためには、人件費や車両費などが必要になります。訪問介護事業所を安定して運営するためには、運営に必要なお金を把握していなければいけません。ここでは、訪問介護の運営に必要な資金について解説します。

人件費

訪問介護を運営する場合、管轄する自治体から事業所指定を受ける必要があります。訪問介護事業所として指定を受けるためには、法律で決められている人員基準を満たさなければいけません。

そのため、訪問介護の運営には人件費が必須です。利用定員に応じた職員を配置できるだけの人件費を用意しておきましょう。さらに、職員の給料だけでなく、職員の求人にかかる費用も考えておかなければいけません。

厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が公表している資料「(第220回)資料1訪問介護」によると、2022年時点における訪問介護員の有効求人倍率は15.53%です。普通に求人を出しても、職員が集まらない可能性が高いでしょう。

介護職員が少ない現状から、訪問介護員を集めるために人材紹介サービスや派遣サービスを利用する事業所も少なくありません。介護業界は、人材採用に苦労する業界なので、事前に採用にかかるコストも計算に入れておきましょう。

参考:厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会「(第220回)資料1 訪問介護」

車両費

訪問介護サービスにおいて車両費は重要な費用のひとつです。訪問介護サービスは、利用者の自宅に訪問しなければいけないため、訪問介護員が運転して移動する機会が多くなります。

特に、地方の事業所であればあるほど、利用者宅への距離も遠くなり、車の必要性が高くなるでしょう。また、車両費に含まれる費用も複数あるため、トータルで考えると人件費の次に大きな支出となり得るため注意して管理する必要があります。

車両費に含まれるもの

  • 車検費用
  • 車の修繕費
  • ガソリン代
  • 洗車代
  • 自動車税

家賃

訪問介護事業所として運営するためには、設備基準を満たす必要があります。厚生省老人保健福祉局の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」によると、訪問介護の設備基準は以下のように記載されています。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について

2 設備に関する基準(基準第七条)

(1) 指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の事務室を設けることが望ましいが、間仕切りする等他の事業の用に供するものと明確に区分される場合は、他の事業と同一の事務室であっても差し支えない。なお、この場合に、区分がされていなくても業務に支障がないときは、指定訪問介護の事業を行うための区画が明確に特定されていれば足りるものとする。

(2) 事務室又は区画については、利用申込の受付、相談等に対応するのに適切なスペースを確保するものとする。

(3) 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護に必要な設備及び備品等を確保するものとする。特に、手指を洗浄するための設備等感染症予防に必要な設備等に配慮すること。ただし、他の事業所、施設等と同一敷地内にある場合であって、指定訪問介護の事業又は当該他の事業所、施設等の運営に支障がない場合は、当該他の事業所、施設等に備え付けられた設備及び備品等を使用することができるものとする。

なお、事務室・区画、又は設備及び備品等については、必ずしも事業者が所有している必要はなく、貸与を受けているものであっても差し支えない。

引用:厚生省老人保健福祉局の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」

上記の設備基準から、事務室や訪問者の相談対応スペースなどが必要です。また、訪問介護サービスに必要な備品を管理するスペースもなければいけません。仮に、このような設備基準を満たす物件を借りて運営している場合、賃料が必要になります。訪問介護事業所を運営する際には、賃貸料も毎月必要なコストとして計算しておきましょう。

備品費

訪問介護サービスを提供するためには、複数の備品が必要になります。それらの備品を購入・維持するための費用が発生します。訪問介護サービスに必要とされる備品として、以下の物品が挙げられます。

 

訪問介護サービスに必要な物品

  • 電話
  • PC
  • プリンター
  • デスクとイス
  • 消毒用品
  • 血圧計
  • 体温計
  • 制服
  • その他事務用品

 

上記の備品は全て消耗品です。定期的に購入して補充する必要があります。これらの物品がなければ事業所の運営が不便になるため、備品費用を確保しておくことも重要です。

訪問介護の運営資金を集める方法

 

自己資金

訪問介護の運営資金を集める方法として、まずは自己資金で足りないか計算してみましょう。借入や融資を利用すると、利息まで支払わなければいけません。自己資金で対処できる問題は自己資金で対処することをおすすめします。

 

借入や融資

基本的に事業で使うお金が用意できない場合、借入や融資を活用して資金を集めます。お金を貸してくれる相手は、銀行や行政機関が主な相手となるでしょう。借入をする場合も融資としてお金を借りる場合も、最終的には返済しなければいけまいことも理解しておきましょう。

 

訪問介護における借入と融資の違い

借入と融資は、どちらもお金の貸し借りに関する言葉です。しかし、2つの方法には明確な違いがあります。

借入とは、お金を借りること全般を指した言葉です。例えば、会社の事業に必要なお金を借りる場合だけでなく、個人間の貸し借りを行う場合も「借入」といいます。一方、事業用に借りるお金を融資といいます。

借入と融資の違いについてまとめると、借入とは消費目的で借りるお金のことで、融資とは事業目的で借りるお金のことです。

借入の場合は、借りたお金をどのように使うかは自由ですが、融資よりも高い金利になる可能性が高いでしょう。

一方、融資の場合は、お金の使い道が決まっており、大きな金額を借りられます。しかし、審査が厳しいので、融資を断られるケースも珍しくありません。

 

借入のメリット

借入のメリットとしては、借りたお金を自由に使えて、迅速に資金を調達できる点が挙げられます。借入の場合は、融資のように資金用途を厳しく審査されることはなく、返済能力の有無が重要です。

借入のデメリット

一般的な借入の場合、比較的簡単に借りられてしまうため、お金を借りすぎてしまう可能性もあります。事前に返済計画を作成しなくてもお金を借りられますが、計画的に返済するためにも返済計画をしっかりと立ててから利用するとよいでしょう。

 

融資のメリット

融資のメリットとして、比較的低い金利で多額の資金を集められる点が挙げられます。融資とは「事業に必要なお金を融通して貸し付ける」ことを指しています。事業を継続するために必要だと、判断されれば比較的大きな金額でも借りることは可能です。

融資のデメリット

融資のデメリットとしては、審査が厳しくお金を借りるまでに時間がかかる点が挙げられます。事業用に使うお金を借りるためには、なぜ事業を継続するためにお金が必要なのか、事業によって利益が見込めるのか、といった点が審査されます。審査結果が出るまでに時間を要する場合も多く、審査の結果お金を借りられない可能性もあるため、緊急でお金が必要な方には向いていません。

 

訪問介護が借入する手順

訪問介護事業者が金融機関から借入する際の流れは以下のとおりです。

  1. 相談・申し込み
  2. 面談・審査
  3. 融資の実行

各手順について解説します。

相談と申し込み

訪問介護事業所を運営するために資金を借入する場合、まずは金融機関へ相談に行きましょう。融資を実施している機関として以下の3つが挙げられます。

  • 銀行
  • 日本政策金融公庫
  • 福祉医療機構

融資を受けたい場合は、上記のような機関へ相談に行くことをおすすめします。上記以外にも融資をしてくれる民間企業などがありますが、悪質な会社から融資を受けてしまうと思わぬトラブルに発展するかもしれません。詐欺などの被害に合わないためにも、まずは公的な機関で相談することをおすすめします。

面談と審査

申し込みが終了したら、必要書類を用意して提出します。書類を確認した後、融資担当者と面談が行われます。

面談において重要なポイントは事業計画書です。丁寧に事業計画書を作成し、返済までの計画が立てられていれば、審査に通りやすくなるでしょう。

書類と面談の内容をもとに、金融機関内で稟議にかけられます。

融資の実行

審査を通過すれば、融資が実行されます。融資が実行されるまでの期間は、審査のタイミングなど様々な要因によって変動します。融資を受けたい場合は、余裕をもって申し込むようにしましょう。

訪問介護が借入するために必要なこと

訪問介護事業所が融資を受けるためには、3つのポイントを押さえてとよいでしょう。3つのポイントを押さえたうえで準備しておくことで、申し込みから審査までスムーズに進められます。各ポイントについて解説します。

事業計画書を丁寧に作る

融資を受ける際に最も重要なポイントは事業計画書です。特に、銀行などの金融機関の場合、銀行内での稟議資料として事業計画書を確認します。

仮に、事業計画書が雑に作られていると、融資すべき会社なのか判断できない状態になりかねません。最終的に、融資を受ける意義を理解してもらえず審査が通らない可能性もあるでしょう。

事業計画書を作成するには大変な労力が必要ですが、融資を受ける際に重要な資料なので、丁寧に作り込むことを意識しましょう。

借入金の使い道を明確にする

融資を受ける場合、借入金を何に使うのかが重要になります。融資は事業に必要なお金を融通して貸し付ける方法です。最終的に利益が発生するように事業用資金として活用されなければ意味がありません。

例えば、「毎月の家賃が支払えないのでお金を貸してください」と融資を申し込んでも、ほぼ確実に審査を通過することはありません。一方で、「事業規模を拡大するために車両購入費が必要です」という理由であれば、審査を通過する可能性はあるでしょう。

融資によって得られた借入金をどのように事業に活用するのか明確にしておきましょう。

返済方法や期間を明確にする

融資は、お金を借りる方法のひとつです。融資を行っている金融機関は、最終的に返済してもらわなければいけません。そのため、融資を申し込む際には、必ず具体的な返済計画を尋ねられるでしょう。

融資を受ける場合は、事前に返済方法や返済期間など具体的な返済計画を明確にしておくと融資を受けやすくなります。

まとめ

今回は、訪問介護事業所が資金調達する際に利用する借入と融資の違いについて解説しました。

訪問介護事業所を運営するためには、人件費や車両費など費用が発生します。これらの費用を自力で支払えない場合、借入や融資を活用するとよいでしょう。

借入とは、お金を借りること全般を指した言葉です。一方、借入の中でも事業用に借りるお金のことを融資と呼びます。

借入は、自由に使える資金を迅速に借りられるメリットがある一方で、返済計画がないまま借りすぎてしまうリスクもあります。

融資の場合、比較的低金利で多額の資金を借りられるメリットがありますが、借入金は事業用にしか使えず審査が厳しい点には注意しましょう。

訪問介護事業を運営していると、資金繰りに困る場面も発生します。自己資金だけでは対処できない場合には、融資を活用しましょう。融資を受けたい場合には、銀行や日本金融公庫などの相談窓口へ行くことをおすすめします。

 

参考資料:

厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会「(第220回)資料1 訪問介護」
厚生労働省「令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況
厚生省老人保健福祉局の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」

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