2023年は、介護報酬改定直前の年です。現時点での人員配置基準や取得できる加算の状況について、再確認しておきたい通所介護経営者も多いのではないでしょうか。
現在の最新情報を知りたくても、「インターネットは古い情報と新しい情報が混同していて困る、最新の情報だけ簡潔にまとめてほしい」という悩みを抱えている方も多いでしょう。
この記事では、2023年現在の通所介護における人員基準と、取得できる加算についてわかりやすく解説します。この記事を読むことで、現在の状況を的確に把握し、次回の介護報酬改定に向けた準備を進めやすくなるでしょう。
目次
通所介護を運営するためには、利用定員に応じた人員を配置しなければいけません。通所介護の運営に必要な職種は、管理者、生活相談員、介護職員、看護師、機能訓練指導員の5職種です。通所介護を運営するために必要な人員配置基準は以下の通りです。
通所介護の人員配置基準 | |
管理者 | 兼業可、1施設1人配置 |
生活相談員 | サービス提供時間中は専従1名以上 |
介護職員 | 利用者15名以下は1名以上。16名以上なら「(利用者数-15)÷5+1」名以上配置 |
看護師 | 基本は専従1名以上。ただし、常に連携できる状態なら配置されているものとする。 |
機能訓練指導員 | 個別機能訓練加算算定の有無に関わらず1名以上配置。 |
通所介護では、利用定員によって人員配置基準が異なるため注意しましょう。通所介護施設の利用定員が10名を超える場合、管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員を各1名以上配置する必要があります。
看護職員は専従で1名以上配置しなければいけませんが、常に連携できる状態であれば配置されているものと判断されます。例えば、通所介護事業所の近隣にある別事業所の看護職員を、いつでも連携が取れる形で配置することも可能です。必ずしも、事業所内で配置する必要はないことを覚えておきましょう。
一方、定員10名以下の場合、看護職員または介護職員のいずれか1名以上の配置が求められます。定員10名を超える場合と10名以下の場合で、看護師の配置基準が異なる点には注意しましょう。
通所介護で人員配置基準を満たせなかった場合、基本報酬が減算されます。また、状況によって、指定取り消しとなる可能性もあるため注意しなければいけません。人員配置基準をクリアするための対策として、職員と採用と定着に対する取り組みが重要です。人員基準を満たせなかった場合のリスクと対策について解説します。
看護職員や介護職員の人員配置基準が満たされない場合、通所介護事業所は「人員基準欠如減算」を受け、基本報酬の70%で算定しなければいけません。これは、人員基準欠如が生じた月から解消される月まで適用されます。さらに、一部の加算が算定できなくなるリスクもあるため注意しましょう。
一方で、管理者や生活相談員、機能訓練指導員が規定の配置基準を満たしていなかった場合、人員基準違反と判断される可能性もあります。人員基準違反となった場合、事業所の指定取り消しとなる可能性もあるため注意しましょう。
人員配置基準を確実に満たすためには、常に職員を配置できる体制を整えることが重要です。そのためには、職員の採用と定着の仕組み作りを考えるとよいでしょう。
介護労働安定センターが発表した「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護職員が前職をやめた理由として、最も多かった回答は「職場の人間関係に問題があったため」で20.4%でした。次いで「収入が少なかったため」と回答した人が17%、「自分の将来の見込みが立たなかったため」と回答した人が16.9%です。
以上のデータから、安定して人員配置基準を満たすためには、職員の人間関係を円滑にする取り組みや職員の給与体系の見直しが重要といえるでしょう。具体的には、定期的にミーティングを開催する、職員の給与体系を明確に説明する、などの対策が挙げられます。
2023年時点で通所介護が算定できる加算は以下のとおりです。各加算の単位数については一覧表をご参照ください。各加算の概要について解説します。
通所介護で算定できる加算 | ||
加算名 | 区分 | 単位数 |
ADL維持等加算 | (Ⅰ) | 1月につき30単位を加算 |
(Ⅱ) | 1月につき60単位を加算 | |
(Ⅲ) | 1月につき3単位を加算 | |
栄養アセスメント加算 | – | 1月につき50単位を加算 |
栄養改善加算 | – | 1回につき150単位を加算(3月以内・月2回を限度) |
延長加算 | – | 9時間以上10時間未満:50単位を加算 |
– | 10時間以上11時間未満:100単位を加算 | |
– | 11時間以上12時間未満:150単位を加算 | |
– | 12時間以上13時間未満:200単位を加算 | |
– | 13時間以上14時間未満:250単位を加算 | |
介護職員処遇改善加算 | (Ⅰ) | 所定単位数の5.9%を加算 |
(Ⅱ) | 所定単位数の4.3%を加算 | |
(Ⅲ) | 所定単位数の2.3%を加算 | |
介護職員等特定処遇改善加算 | (Ⅰ) | 所定単位数の1.2% |
(Ⅱ) | 所定単位数の1.0% | |
科学的介護推進体制加算 | – | 1月につき40単位を加算 |
個別機能訓練加算 | (Ⅰ)イ | 1日につき56単位を加算 |
(Ⅰ)ロ | 1日につき85単位を加算 | |
(Ⅱ) | 1月につき20単位を加算 | |
口腔・栄養スクリーニング加算(栄養スクリーニング加算) | (Ⅰ) | 1回につき20単位を加算(6月に1回まで) |
(Ⅱ) | 1回につき5単位を加算(6月に1回を限度) | |
口腔機能向上加算 | (Ⅰ) | 1回につき150単位を加算(3月以内・月2回を限度) |
(Ⅱ) | 1回につき160単位を加算(3月以内2回まで) | |
サービス提供体制強化加算 | (Ⅰ) | 1回につき22単位を加算 |
(Ⅱ) | 1回につき18単位を加算 | |
(Ⅲ) | 1回につき12単位を加算 | |
若年性認知症利用者受入加算 | – | 1日につき60単位を加算 |
生活機能向上連携加算 | (Ⅰ) | 1月につき100単位(3月に1回まで) |
(Ⅱ) | 1月につき200単位 | |
中重度者ケア体制加算 | – | 1日につき45単位を加算 |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | – | 所定単位数の5% |
入浴介助加算 | (Ⅰ) | 1日につき40単位を加算 |
(Ⅱ) | 1日につき55単位を加算 | |
認知症加算 | – | 1日につき60単位を加算 |
ADL維持等加算は、利用者の自立支援や重度化の防止を目的として、平成30年度に創設された加算です。ADL維持等加算は、一定期間内におけるADLの状態をバーセルインデックスによって評価し、その結果を基に算定できます。
栄養アセスメント加算は、令和3年度介護報酬改定により新たに創設された加算です。栄養アセスメント加算を算定するためには、利用者の体重を月に1回測定し、3ヵ月に1回以上、多職種での栄養アセスメントを実施する必要があります。
栄養改善加算とは、介護事業所で低栄養状態またはその恐れのある利用者に対し、栄養状態の改善を目的としたサービスを提供する際に算定できる加算です。加算を算定するためには、管理栄養士1名以上を配置して、利用者ごとの栄養ケア計画に基づきサービスを実施する必要があります。
延長加算とは、通所介護において7時間以上9時間未満の通所介護の前後に連続して日常生活上の世話を行った場合に算定できる加算です。単位数は、サービス提供時間に応じて異なるため注意しましょう。
介護職員処遇改善加算は、介護サービスを提供する職員の賃金や労働環境の向上を目的とした加算です。令和4年度から、(Ⅳ)と(Ⅴ)の区分が廃止されたため、現在は条件に応じて処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)の3つの中から算定できます。
介護職員等特定処遇改善加算は、経験や技能を持つ介護職員に対する処遇の改善を目的とした加算です。
令和元年10月の介護報酬改定時に創設され、リーダー級の介護職員の賃金を全産業の平均年収440万円まで引き上げることを目的としています。令和3年度の介護報酬改定では、事業者が利用しやすい形に配分ルールが見直されました。
科学的介護推進体制加算は、令和3年度介護報酬改定に伴い、科学的介護情報システム「LIFE」の導入とともに創設された加算です。
科学的推進体制加算を算定するためには、利用者のデータを「LIFE」に提出し、そのフィードバックを事業所のサービスに反映させる必要があります。
個別機能訓練加算(Ⅰ)とは、5人程度以下の小集団または個別の利用者に対して、機能訓練指導員が直接機能訓練を実施することで算定できる加算です。また、利用者のデータを「LIFE」に提出することで個別機能訓練加算(Ⅱ)を同時に算定することも可能です。
口腔・栄養スクリーニング加算は、令和3年度介護報酬改定に伴い新設された加算で、デイサービス利用者の口腔機能を定期的に評価することを目的としています。
口腔・栄養スリーニング加算を算定するためには、定期的に利用者の口腔状態や栄養状態について評価し、スクリーニング結果に基づく栄養改善サービスや口腔機能向上サービスを提供する必要があります。
口腔機能向上加算は、高齢者の口腔機能の維持・向上を目的とした加算です。口腔機能が低下している、もしくはその恐れがある利用者に対して、摂食・嚥下機能の向上支援等を実施することで算定できます。
令和3年度の介護報酬改定に伴い、科学的介護情報システム「LIFE」の運用が開始され、「LIFE」への情報提出によって算定できる口腔機能向上加算(Ⅱ)が新設されました。
サービス提供体制強化加算は、介護福祉士の配置を強化し、基準を満たす介護事業所が算定できる加算です。令和3年度の介護報酬改定により、介護福祉士の配置比率や勤続年数に応じた3つの区分が設けられています。
若年性認知症利用者受入加算は、事業所が若年性認知症患者を受け入れ、個別のニーズに応じたサービスを提供する際の評価を目的とした加算です。
40歳以上65歳未満の若年生認知症利用者に対し、担当スタッフを中心にサービスを提供することで算定できます。認知症加算を算定している場合、この加算は適用されないため注意しましょう。
生活機能向上連携加算とは、医療機関のリハビリ専門職と連携して個別機能訓練計画を作成することで算定できる加算です。リハビリ専門職の助言によって、専門的な訓練を実施できない事業所においても効果的な機能訓練を実施できます。
中重度ケア体制加算は、指定通所介護事業所が中重度の要介護者を受け入れる体制を整え、その基準に適合している場合に算定可能な加算です。算定するためには、護職員や介護職員を一定数以上確保し、要介護3以上の利用者が一定割合以上を占めることが要件とされています。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算とは、中山間地域等に居住する要介護者への介護サービス提供に必要な交通費や移動時間を評価するための加算です。
算定するためには、厚生労働大臣が定める中山間地域等に居住する利用者にサービスを提供し、通常の事業の実施地域を超えてサービスを提供する必要があります。
入浴介助加算は、利用者の入浴介助を実施した際に算定できる加算です。入浴介助加算を算定するためには、利用者が可能な限り自力で入浴することを目標に設定して、支援を行う必要があります。身体に直接接触しない場合でも、この加算は算定対象となります。
認知症加算は、介護を必要とする認知症の利用者に対して通所介護サービス等の提供を行うことで算定できる加算です。
算定するためには、認知症利用者の割合が前年度または算定月前3か月間に利用した方の総数20%以上であること、看護職員または介護職員を常勤換算で2名以上確保することなどの要件を満たす必要があります。
この記事では、2023年時点における通所介護の人員配置基準と算定できる加算について解説しました。
通所介護では、管理者、生活相談員、介護職員、看護師、機能訓練指導員の5職種を利用定員に合わせて配置する必要があります。また、利用定員が10名以下の事業所と、10名を超える事業所でも人員配置基準が異なるため注意しましょう。
通所介護では、17種類の加算があり、それぞれ算定要件を満たすことで算定できます。加算の組み合わせによっては、同時に算定できないものもあるため注意しましょう。
来年の介護報酬改定に向けて、さまざまな情報が発信されます。新しい情報を理解するためには、現段階の情報を一旦整理しておくことが重要です。この記事を参考に、通所介護の人員配置基準と加算について理解を深めることをおすすめします。
参考資料:
介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました!
<目次>
1)2024年介護報酬改定のについて
2)2024年介護報酬改定の改定内容
3)2024年介護報酬改定のスケジュール
4)2024年介護報酬改定に備えて事業所がすべきこと