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訪問介護と定期巡回の違いとは?これから開設するならどちらをやるべき?

2023-09-14

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護保険サービスにおいて、訪問介護と定期巡回の違いをしっかり理解することで、適切なサービスを選択できます。

ここでは、訪問介護と定期巡回について詳しく紹介するだけでなく、実際にこれから開設するのであればどちらの方がおすすめなのかまで解説します。

ぜひ、最後までお読みください。

 

訪問介護とは

訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者さんの自宅へ直接訪問して、要介護の高齢者が自立した在宅生活を送るために生活をサポートする介護サービスのことで、「身体介護」と「生活援助」「通院時の乗車・降車介助」に分けることができます。

 

身体介護とは

身体に直接触れて行う介護のことをいい、厚生労働省は下記の3つのように定義しています。

 

  1. 利用者の身体に直接接触して行う介助サービス

(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)

  1. 利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス
  2. その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス

 

参考:厚生労働省:「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について

 

上記の定義から「身体介護」は下記の内容で表されます。

 

  • 食事介助:調理・摂食・口腔ケアなど食事を行う際の介護
  • 清拭:入浴ができない場合などに体を拭いて清潔にすること
  • 更衣介助:衣類の着脱など着替えの介助
  • 入浴介助:全身または顔、髪、腕、足、陰部など部分的な洗浄
  • 排せつ介助:トイレの介助やおむつの交換など
  • 体位変換:ベッド上など床ずれ予防のための姿勢交換
  • 移乗介助:ベッドから車いすに移す際の介助
  • 移動介助:「起き上がる」「座る」「歩く」といった行為が困難な場合や、移動の際に介助をすることが挙げられます。
  • 外出介助:通院など必要な外出に対する支援

 

生活援助

生活に必要な家事が困難な場合に行う日常生活支援のことで、下記のような内容があります。

 

  • 掃除:居間の掃除、ゴミ出しなど
  • 洗濯:衣類を洗う、干す、たたむ、整理まで
  • 食事準備:食材の買い物代行から調理、配膳、片づけまで

 

生活援助を含めた訪問介護は、利用者さんができないことを援助するサービスで、家政婦さんやお手伝いさんとは異なるため、下記のサービスは対象外です。

 

  • 本人以外の部屋の掃除など、家族のための家事
  • 庭の草むしりなど、ホームヘルパーがやらなくても普段の暮らしに差し支えがないもの
  • 大そうじなど、普段はやらないような家事

 

参考:厚生労働省:訪問介護サービスの生活援助の取扱いについて

 

あくまでも利用者さんに対する援助が中心となり、本人以外への支援に関しては対象外になるため注意が必要です。

 

通院時の乗車・降車介助

利用者さんが自宅から医療機関に通院するために必要な移動介助のことで厚生労働省では下記のように定義されています。

 

通院等乗降介助とは、介護保険における訪問介護(介護保険法(平成9年法律第 123 号) 第8条第2項)の一形態であり、居宅要介護者について、通院等のため、指定訪問介護事業者の訪問介護員等が自らの運転する車両への乗車又は降車の介助を行うとともに、併せて、乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助又は通院先若しくは外出先での受診等の手続、移動等の介助を行った場合に、介護給付費の算定をすることができるもの

 

参考:厚生労働省

 

上記の定義が示しているように、病院内の移動や介助は、医療サービスとして病院の看護師などが担当するため、通院等乗降介助の適用外です。

 

訪問介護の費用について

1日の費用は、「サービスの種類別料金 × 利用時間 + その他料金(加算)」 で計算され、2021年介護報酬改定では下記の単位数と定められています。

 

種別

時間

単位数

料金

1割負担での自己負担額

身体介護

20分未満

167単位

1,670円

167円

20分以上30分未満

250単位

2,500円

250円

30分以上60分未満

396単位

3,960円

396円

60分以上

579単位

(以降30分増すごとに84単位)

5,790円

579円

生活援助

20分以上45分未満

183単位

1,830円

183円

45分以上

225単位

2,250円

225円

通院時の乗車・降車等介助 片道

99単位

990円

99円

身体介護に引き続き

生活援助を行った場合

生活援助20分ごと

67単位

(201単位を限度とする)

670円

67円

 

参考:厚生労働省

 

訪問介護の対象者

要介護1〜5の認定を受けており自宅で生活している方が対象です。

要支援1・要支援2の場合でも、「介護予防訪問介護」という形でサービスを利用できますが、要支援1の場合は、週2回まで、週3回以上の利用は要支援2の方のみなど利用回数に制限があります。

 

定期巡回とは

定期巡回は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」といわれており、2012年4月に施行された改正・介護保険法において新設され、訪問介護員または訪問看護師が要介護者の自宅を定期訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の地域密着型サービスで、下記の3つのサービス内容に分類されます。

 

参考:厚生労働省

 

定期巡回サービス

利用者さんごとに作成された訪問介護計画書に基づいて行われる訪問介護サービスで、受けられるサービスは一般的な訪問介護サービスと同じく、入浴・食事介助などの身体介護などが中心です。

1回の訪問時間は20分程度で、1日3回〜6回程度の頻度で訪問します。また場合によって、10〜15分程度と短い時間で、安否確認・健康チェック・見守りのみなど各利用者さんごとによって異なります。

 

随時対応・随時訪問サービス

定期巡回以外の時間に緊急時の対応が必要になった場合に必要なタイミングでサービスを依頼するサービスです。

利用者さんは、自宅に設置された「ケアコール」を使用することで、24時間対応のオペレーションセンターにて連絡することができるため、オペレーターが状況を確認した上で必要に応じて訪問サービスを受けることができます。

24時間体制で連絡が取れるため、利用者さんだけでなく、家族さんにも大きな安心感を与えてくれるサービスです。

 

訪問看護サービス

看護師やリハビリの専門スタッフが自宅に訪問して医療ケアをおこなうサービスで、利用者さんの病気や障がいの状態に合わせて、健康状態の維持や回復に向けて下記のような支援を行います。

 

  • 血圧・脈拍・体温などの測定
  • 病状のチェック
  • 排泄・入浴の介助・清拭・洗髪
  • 在宅酸素・カテーテルやドレーンチューブの管理
  • 褥瘡の処理
  • リハビリテーション

 

その他にも、自宅で最期を迎えたい方が積極的な治療を希望しない場合は、痛みや症状の緩和を行うなど、利用者さんの希望に沿って支援を実施します。

 

定期巡回の費用について

定期巡回・随時対応サービスは、要介護度によって料金が決まり、2021年介護報酬改定では下記の単位数と定められています。

 

要介護度

単位数

料金

1割負担での自己負担額

訪問看護を行う場合

要介護1

8,312単位

83,120円

8,312円

要介護2

12,985単位

129,850円

12,985円

要介護3

19,821単位

198,210円

19,821円

要介護4

24,434単位

244,340円

24,434円

要介護5

29,601単位

296,010円

29,601円

訪問看護を行わない場合

要介護1

5,697単位

56,970円

5,697円

要介護2

10,168単位

101,680円

10,168円

要介護3

16,883単位

168,830円

16,883円

要介護4

21,357単位

213,570円

21,357円

要介護5

25,829単位

258,290円

25,829円

 

参考:厚生労働省

 

定期巡回の対象者

要介護度1〜5の方が対象ですが、地域密着型サービスになるため、住民票が事業所と同じ地域でないと利用できないので、自宅近くにある事業所を選ぶ必要があります。

また、訪問介護(通院等乗降介助を除く)・ 訪問看護(連携型利用時を除く) ・夜間対応型訪問介護は、定期巡回・随時対応サービスとサービス内容が重複するため、定期巡回・随時対応サービスの利用時は算定できないので注意が必要です。

 

参考:厚生労働省

 

利用者さん割合は、厚生労働省が発表した「令和3年度 介護給付費等実態統計」によると要介護の内訳は下記のようになっています。

 

要介護1:25.3%

要介護2:25.1%

要介護3:18.7%

要介護4:18.7%

要介護5:12.3%

 

要介護認定を受けている方に広く利用されていますが、要介護1〜2と、比較的症状が軽い方が多く利用しています。

 

参考:厚生労働省:「令和3年度 介護給付費等実態統計」

 

訪問介護と定期巡回の違い

ここまでの説明から訪問介護と定期巡回の違いを下記にまとめます。

 

訪問介護

定期巡回

提供方法

利用者さんの自宅を訪問してサービスを提供

定期的に利用者さんの自宅を巡回する。また、随時対応が必要な場合も対応

内容

・身体介護

・生活援助

・通院等乗降介助 など

・生活援助

・見守り

・緊急対応 など

提供時間

事前に決まった時間で対応

原則24時間対応が可能

要介護

要介護1~5

要介護1~5

形態

介護保険サービス

地域密着型サービス

 

介護保険の申請方法

訪問介護・定期巡回のどちらを利用する場合も要介護1〜5の認定を受けておく必要性があります。

介護保険を申請したい場合は下記のような手順で行います。

 

  1. 要介護認定を申請
  2. 認定調査・主治医意見書
  3. 審査判定
  4. 認定
  5. ケアプランの作成
  6. サービスの利用開始

 

参考:厚生労働省

 

1.要介護認定を申請

市区町村に要介護認定の申請をし、申請を受けた市区町村は、「要介護(支援)認定」を行います。

要介護認定を申請できるのは、第1号被保険者である65歳以上の方が原則ですが、40歳以上64歳以下で16種類の「特定疾病」と診断された場合に限り、第2号被保険者として介護保険サービスを利用できます。

なお、16種類の「特定疾病」は下記です。

 

16種類の特定疾患

がん(末期)

骨折を伴う骨粗鬆症

脊柱管狭窄症

脳血管疾患

関節リウマチ

初老期における認知症

早老症

閉塞性動脈硬化症

筋委縮性側索硬化症

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

多系統萎縮症

慢性閉塞性肺疾患

後縦靭帯骨化症

脊髄小脳変性症

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

 

参考:厚生労働省

 

2.認定調査・主治医意見書

市区町村などの調査員が自宅に訪問して、主に下記の内容を調査します。

 

  • 身体機能・起居動作
  • 生活機能
  • 認知機能
  • 精神・行動障害
  • 社会生活への適応
  • 特別な医療に関する項目

 

また、合わせて主治医に主治医意見書を依頼をします。主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要です。

 

3.審査判定

調査してきた内容と主治医意見書の一部の項目をコンピューターに入力し、一次判定として、介護にかかる時間を表す「要介護認定等基準時間」を算出するという全国一律の判定方法で要介護度の判定が行なわれます。

なお、「要介護認定等基準時間」の基準は下記になり、時間が長くなるほど要介護度は重いと判定されます。

 

要介護認定等基準時間の内訳

区分

介護にかかる時間

要支援1

25分以上32分未満

要支援2

32分以上50分未満

要介護1

32分以上50分未満

要介護2

50分以上70分未満

要介護3

70分以上90分未満

要介護4

90分以上110分未満

要介護5

110分以上

 

参考:厚生労働省

 

その後、二次判定では、一次判定の結果と主治医意見書の内容をもとに、「介護認定審査会」で要介護・要支援の認定の判定を行います。

 

4.認定

認定結果は、「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかです。

市区町村は、介護認定審査会の判定結果を元に要介護認定を行い、原則30日以内に申請者に結果を通知する必要があります。

 

5.ケアプランの作成

要介護認定されただけでは、介護保険サービスは利用できず、「ケアプラン」の作成が必要です。

「要支援1」「要支援2」の介護予防サービス計画書は地域包括支援センターに、「要介護1」以上の介護サービス計画書はケアマネージャー(介護支援専門員)のいる、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業者へ依頼してケアプランを作成してもらいます。

 

6.サービスの利用開始

ケアマネージャーに相談しながら作成したケアプランの内容に沿って、介護保険サービスの利用が開始されます。

訪問介護と定期巡回のどちらを開設すべき?

訪問介護と定期巡回のどちらを開設するかは、対象となる地域に応じて決定することが重要です。

定期巡回は地域密着型サービスであるため、地域に根ざしたサービスを提供することができます。また、定期巡回は24時間365日対応することが可能なため、緊急事態や利用者さんの急な要望などの状況に合わせたサービスを提供できます。

一方、訪問介護は自治体をまたぎサービスを受けられるため、より広範囲の利用者さんにサービスを提供できます。

今後、日本の人口は減少傾向となっており、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になると推計されています。

また、日本の人口減少を年齢階層別に見ると、2015年から2050年にかけて、高齢人口が454万人増加するのに対し、生産年齢人口は2,453万人、若年人口は518万人減少していくため、高齢化率は約27%から約38%へ上昇していくと予測しています。

このことからも、訪問介護・定期巡回ともに今まで以上に重要な介護サービスですが、それぞれの地域の特性を深く理解することが重要になります。

 

参考:内閣府:「令和5年版高齢社会白書」

 

まとめ

今回は、訪問介護と定期巡回の違いについて紹介しました。

訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)などが、事前に決まった時間に利用者さんの自宅へ直接訪問して、「身体介護」「生活援助」「通院時の乗車・降車介助」を行い、要介護の高齢者が自立した生活を送るために生活をサポートする介護保険サービスです。

一方、定期巡回は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」といわれており、「定期巡回」「随時対応・随時訪問サービス」「訪問看護サービス」として、訪問介護員または訪問看護師が利用者さんの自宅を定期訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の地域密着型サービスです。

この2つの介護保険サービスの中でどちらを開設するかは、対象となる地域に応じて決定することが重要です。

訪問介護は広範囲の利用者さんにサービスを提供することができるメリットがあり、定期巡回は地域に根ざしたサービスを提供することができるなどそれぞれの特徴があります。

しかし、国内は今まで以上に高齢化が進むため、どちらの介護保険サービスも重要性は高くなると予測されます。

 

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