一部の訪問介護事業所では、夜間帯の見守りサービスを提供しています。訪問介護における夜間見守りサービスの特徴やメリットについて気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では、訪問介護の夜間見守りサービスの特徴について解説します。この記事を読むことで、利用するメリットや利用をおすすめする人の特徴が理解できます。
目次
夜間の見守りを行う訪問介護サービスとは、自宅で生活している高齢者や障害者に対して、夜間帯に介護や支援を行うサービスのことです。訪問介護では、日中の時間帯に提供されることが一般的ですが、夜間も介護や支援が必要な場合に利用されます。
厚生労働省の資料「夜間対応型訪問介護」によると、夜間対応型訪問介護は以下のように定義されています。
“「夜間対応型訪問介護」とは、夜間において、定期巡回訪問、または、随時通報を受け利用者(要介護者)の居宅を訪問介護員等が訪問し、入浴・排せつ・食事等の介護等の提供を行うものをいう。”
引用:厚生労働省 社保審-介護給付費分科会 資料「夜間対応型訪問介護」
高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が問題視されている昨今、家族の介護負担を軽減するためにも、訪問介護における夜間見守りサービスが重要な役割を果たしています。
夜間見守りを行う訪問介護では、日中に支援をしている訪問介護と異なるサービスを提供しています。特に、定期巡回サービス、随時対応サービス、オペレーションサービスの3つが特徴的です。各サービスの特徴について解説します。
定期巡回サービスとは、ケアプランによって定められた時間帯を定期的に巡回し、1回約30分程度の支援を行うサービスのことです。
定期巡回なので、原則として定められた時間以外での対応はできません。定期巡回サービスで実施できる支援内容は、日中・夜間帯における身体介護と生活援助です。例えば、以下のような支援を実施できます。
定期巡回サービスで実施できる支援の例 |
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随時対応サービスは、利用者が緊急で支援を受ける必要がある場合に、利用者のケアコール端末からの通報に応じて随時訪問するサービスです。
訪問時間の目安は30分で、サービス時間内なら何度でも利用できますが、呼び出した回数分の利用料金が発生するので注意しなければいけません。
夜間対応型の訪問介護では、医療面のケアも重要です。訪問介護の随時対応サービスでは、訪問看護ステーションや主治医との連携が求められます。利用者や家族からのケアコールを受けると、ホームヘルパーが迅速に訪問して適切な対応を行い、必要に応じて医療ケアに繋げます。
在宅生活を続けながらも医療的ケアが必要な方や、転倒リスクが高い方などに必要な訪問介護サービスのひとつです。
オペレーションサービスでは、オペレーターが利用者からの要請を受けて、状況に応じて必要なサービスにつなげます。
オペレーターは利用者の身体の状況や居宅の環境を把握しているため、状況に応じた適切な判断が可能です。具体的な支援内容としては、ヘルパーの派遣や主治医との連絡、救急車の手配、対応方法の提案、利用者の相談相手など、様々な対応を行います。
一部の事業所ではオペレーションセンターを設置していない場合もありますが、オペレーションセンターがない状態でオペレーションサービスを提供しても問題ありません。ただし、オペレーションサービスを提供するためには、いつでも連絡できるケアコール端末の提供は必須です。
夜間見守りをする訪問介護には、夜間対応型訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護の2種類があります。各サービスの特徴は下表にまとめています。
夜間対応型訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護の比較 | |||
比較項目 | 夜間対応型訪問介護 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | |
サービス内容 | 夜間における身体介護 | 日中・夜間における身体介護、生活援助、訪問看護 | |
サービス提供時間 | 22時から6時までを含む夜間の時間帯 ※8時から18時を含めてはならない | 24時間 | |
人 員 基 準 | オペレーター | ・提供時間帯を通じて1以上 ・定期巡回サービス及び同一敷地内の指定訪問介護事業所並びに指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の職務への従事可能 ※オペレーションセンターを設置しない場合は配置不要 | ・提供時間帯を通じて1以上 ・定期巡回サービス、訪問看護サービス、同一敷地内の訪問介護事業所、訪問看護事業所及び夜間対応型訪問介護事業所の職務への従事可能 ・併設施設等(短期入所、特定施設、特養、老健、介護医療院、介護療養型医療施設、小規模多機能、グループホーム、看護小規模多機能)の職務に従事可 ・随時訪問サービスに従事可 |
面接相談員 | 1以上(オペレーター又は訪問介護員等との兼務可) ※オペレーションセンターを設置しない場合は配置不要 | なし | |
計画作成責任者 | なし | 1以上(オペレーター、訪問介護員等、看護職員との兼務可) | |
定期巡回サービスを行う訪問介護員等 | 必要な数以上 | 必要な数以上 | |
随時訪問サービスを行う訪問介護員等 | ・提供時間帯を通じて1以上 ・定期巡回サービス又は同一敷地内にある指定訪問介護事業所若しくは定期巡回 | ・提供時間帯を通じて1以上 ・定期巡回サービス又は同一敷地内にある訪問介護事業所若しくは夜間対応型訪問介護事業所の職務に従事することができる ・オペレーターとの兼務可能 | |
オペレーションセンター | 通常の事業の実施地域内に1か所以上設置(設置しなくても可) | 設置する必要はない ※他の定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所との間で、随時対応サービスを「集約化」可能 | |
計画の作成 | オペレーター又は面接相談員が作成 ※オペレーションセンターを設置しない場合は訪問介護員等が作成 | 計画作成責任者が作成 | |
事業の委託 | ・他の訪問介護事業所に、随時訪問サービスを委託可能 ※定期巡回・随時対応型訪問介護看護を併設している場合には、定期巡回サービスも「一部委託」が可能 | ・他の訪問介護事業所、訪問看護事業所、夜間対応型訪問介護事業所に、定期巡回 |
引用:厚生労働省 社保審-介護給付費分科会 資料「夜間対応型訪問介護」
夜間対応型訪問介護とは、22時から6時までの夜間帯に訪問介護を提供するサービスのことです。一方で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、24時間を通して定期巡回や随時対応をする訪問介護サービスをいいます。
定期的に夜間の介護支援が欲しい方は夜間対応型訪問介護、必要に応じてすぐに訪問して欲しい方は定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用するとよいでしょう。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、訪問看護サービスを利用できます。看護師による医療的ケアの必要性が高い方も、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用するとよいでしょう。
訪問介護を夜間に利用するメリットとして、同居家族の介護負担を軽減する、独居の方が夜間帯でも安心して生活できる、緊急時でもすぐに人がきてくれる、などが挙げられます。訪問介護における夜間見守りのメリットについて解説します。
要介護者を自宅で介助している方にとって、夜間帯の介護はかなり負担が大きくなります。夜間帯の介護負担が大きいと、睡眠時間が削られ、肉体的にも精神的にも疲弊してしまう可能性があるでしょう。
夜間帯における家族の介護負担を軽減するためには、訪問介護による夜間見守りサービスが便利です。訪問介護サービスを夜間帯も利用することで、夜間帯の介護負担を軽減できます。また、夜間帯の介護負担軽減によって重大な事故を防ぎ、利用者と家族が長く在宅生活を続けられるでしょう。
深刻な高齢社会の進行によって、近くに親族が住んでいない環境で1人暮らしをしている要介護者も増えています。
内閣府 の「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)」によると、65歳以上人口における1人暮らしの人の割合が増加し続け、「2040年には約2割の65歳以上高齢者が1人暮らしをしている」という予測も出されています。
1人暮らしの方にとって、1番心配な時間帯が夜間です。夜間になると、人通りも少なくなり、緊急事態が発生したとしても周囲に助けを求めにくくなります。訪問介護の夜間見守りサービスを活用すれば、独居の方も安心して夜を過ごせるでしょう。
高齢者が在宅で過ごしている際に、病状が悪化する、転倒して大ケガをする、などの緊急事態が発生することもあるでしょう。緊急事態が発生した場合、早く処置できなければ、その後の経過に悪影響を及ぼす可能性もあります。特に独居生活を送っている高齢者は要注意です。
例えば、独居高齢者が自宅で脳梗塞を発症して、家族が発見した時には倒れてから数日経過していた、というケースも少なくありません。特に脳梗塞など、発症後の処置が早ければ早いほど経過がよくなる病気の場合、緊急時にすぐ対応できる環境にしておくことが重要です。
訪問介護による夜間見守りサービスは、利用者の緊急時に命を守る役目もあります。
訪問介護における夜間見守りサービスの料金は、オペレーションセンター設置の有無によって異なります。
例えば、オペレーションセンターを設置している事業所が、定期巡回サービスを月4回、随時サービス(Ⅰ)を月4回利用した場合、以下の計算式で計算できます。
例①オペレーションセンター設置事業所における夜間対応型訪問介護費 | |
オペレーションセンターの利用 | 1,013単位/月 |
定期巡回サービス | 379単位×4回=1,516単位 |
随時サービス(Ⅰ) | 578単位×4回=2,312単位 |
合計 | 4,841単位 |
一方で、オペレーションセンターを設置していない場合は、2,751単位/月となります。
詳細な利用料金は、事業所ごとに算定している加算によっても異なるため、詳細な料金は各事業所に問い合わせるとよいでしょう。
訪問介護における夜間見守りサービスは、近くに親族がいない1人暮らしの方と夜間の介護負担が大きい方におすすめの介護サービスです。訪問介護の夜間見守りサービスをおすすめする人の特徴について解説します。
訪問介護の夜間見守りサービスは、近くに親族がいない1人暮らしの方におすすめです。
近くに親族がいない方は、夜間に緊急事態が発生したとしても、すぐに助けにいけない状況にあります。1人暮らしをしている要介護者の命を守るためにも重要なサービスです。
また、訪問介護スタッフが定期的に安否確認をするため、遠くに住む家族も安心して過ごせます。
訪問介護の夜間見守りサービスは、1人暮らしをしている利用者本人と、遠くで暮らす家族が安心して生活するために重要な役割を果たします。
夜間の介護負担が大きい方も、訪問介護の夜間見守りサービスをおすすめします。同居家族の介護負担を軽減する目的もありますが、緊急時の対応を考えることも大切です。
夜間帯の介護負担が大きい方は、ご自身で移動できない方や、寝たきりの方である可能性が高いでしょう。そういった方は、介護負担が大きいだけでなく、転倒・転落や病状の悪化などの事態が発生する可能性もあります。その場合、家族だけで対処できないことも多いでしょう。
介護負担を軽減するだけでなく、万が一の事態に備える意味でも訪問介護の夜間見守りサービスの利用をおすすめします。
この記事では、訪問介護の夜間見守りサービスについて解説しました。夜間対応型の訪問介護では、定期巡回サービス、随時対応サービス、オペレーションサービスなどが提供されています。
夜間見守りサービスは、夜間帯の介護負担を軽減、1人暮らし高齢者の安否確認、緊急時の対応などの目的で利用されます。介護負担が大きくて困っている方や、親族と離れた場所で1人暮らしをしている方におすすめのサービスです。
夜間帯でも安心して生活したい方は、訪問介護の夜間見守りサービスの利用をおすすめします。
「プロサポ!」は特定事業所加算の運用代行を行うサービスです。
申請書作成及び体制要件の充足を目的とし、申請後に円滑な運用が出来るように支援いたします。
<主な支援内容>
・研修計画の作成&研修システムの提供
・議事録、出席簿の作成
・指示報告システムの提供
・健康診断の受診規定作成
・緊急時案内マニュアルの作成
参考資料: