行動援護は、知的障がいや精神障がいにより自立した行動が難しい利用者が、安全かつ快適に生活を送るために不可欠な支援サービスです。この行動援護をおこなうためには、行動援護従業者養成研修を受講し、実践的な知識や技術を習得する必要があります。
今回は、行動援護従業員資格を取得するための詳細な方法だけでなく、費用面についてまで詳しく解説します。
目次
行動援護は、知的障がいや精神障がいによって、自分一人で行動することが難しい場合であっても、常時介護を受けることができる支援のことで、主な支援内容は以下の通りです。
行動援護をおこなう行動援護従業者と同じような介護職種として、強度行動障害従業者があります。
どちらも、知的・精神に障がいがあり、行動に問題を抱えている利用者を援助する仕事になりますが、以下のように関わる場面が異なります。
関わる場面 | 対象となるサービス | |
行動援護従業者 | 外出時において必要なサポートをおこなう | 居宅系サービス従事者が対象 |
強度行動障害従業者 | 外出時だけでなく、日常的に利用者が困らないようにサポートする | 施設系サービス従事者が対象 |
行動援護従業者とよく似た内容でガイドヘルパーもあります。
ガイドヘルパーは、障がいによって自分自身で外出できない利用者に対して、必要な支援や介助をおこなう職種で、正式名称は「移動介護従事者」と呼ばれており、対象者は以下の通りです。
- 視覚障がい
- 全身性障がい(常時車いすが必要)
- 知的・精神障がい(1人で外出や移動するのが難しい)
上記の対象者からわかるように、行動援護従業者はガイドヘルパーの1つの事業になります。
なお、ガイドヘルパーの事業は以下の3つになります。
- 行動援護従事者
- 同行援護従事者:視覚に障がいを持つ方に対して提供される移動支援サービス
- 全身性障害者移動介護従事者:常時車いすを使用する身体障がい者に対して提供される移動支援サービス
行動援護従事者として働くためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
なお、実務経験と換算される従事内容は以下の通りです。
職種 | 事業種別(障害福祉サービス) |
生活支援員、職業指導員等の介護等を行う業務 | 療養介護、生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練) |
就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援 | |
短期入所、共同生活援助、自立生活援助、施設入所支援 | |
ホームヘルパー、ガイドヘルパー等の介護等を行う業務 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障がい者等包括支援、移動支援 |
保育士、児童指導員等の介護等を行う業務 | 児童発達支援、医療型児童発達支援 |
放課後等デイサービス、保育所等訪問支援、日中一時支援 |
引用:吹田市ウェブサイト「行動援護を行うための要件について」
令和3年3月31日までに以下の要件を満たしていた場合は、令和6年3月31日までの経過措置として、以下の条件の場合は、行動援護従業者としての援助が可能でした。
ただし、経過措置期間は令和6年3月31日で終了するため、それまでに行動援護従業者養成研修課程又は強度行動障害支援者養成研修(基礎及び実践研修)を修了しなければ、引き続き、行動援護従業者としての援助はできません。
行動援護従業者養成研修は、以下のように講義と演習にわかれています。
講義内容 | 時間 | 内容 |
強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義 | 1.5 | 強度行動障害とは |
強度行動障害と医療 | ||
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識に関する講義 | 5 | 強度行動障害と制度 |
構造化 | ||
支援の基本的な枠組みと記録 | ||
虐待防止と身体拘束 | ||
実践報告 | ||
強度行動障害がある者へのチーム支援に関する講義 | 3 | 強度行動障害支援の原則 |
強度行動障害と生活の組立てに関する講義 | 0.5 | 行動障害のある人の生活と支援の実際 |
演習 | 時間 | 内容 |
基本的な情報収集と記録等の共有に関する演習 | 1 | 情報収集とチームプレイの基本 |
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解に関する演習 | 3 | 固有のコミュニケーション |
行動障害の背景にある特性の理解に関する演習 | 1.5 | 行動障害の背景にあるもの |
障害特性の理解とアセスメントに関する演習 | 3 | 障害特性とアセスメント |
環境調整による強度行動障害の支援に関する演習 | 3 | 構造化の考え方と方法 |
記録に基づく支援の評価に関する演習 | 1.5 | 記録の収集と分析 |
危機対応と虐待防止に関する演習 | 1 | 危機対応と虐待防止 |
上記の講義と演習の内容や時間は、研修会ごとにカリキュラムが設定されており、それぞれ異なるため、具体的な研修内容や時間については、受講予定の研修会の公式ウェブサイトや案内資料を確認しましょう。
以前までは、行動援護従業者養成研修は通学して受講するしか方法はありませんでしたが、最近ではオンラインでも研修の受講が可能な場合があります。
研修会によっては、オンライン+通学や、すべてオンラインで受講可能な場合もあるため、自分の生活に合わせて受講する研修を決めましょう。
行動援護従業者養成研修にかかる費用は、一律ではなく各研修会によって異なりますが、35,000〜45,000円程度が多い傾向です。
また、地域や研修会の種類によって、行動援護従業者養成研修の助成金が適用される場合もあるため、受講する際は、各市町村へ一度問い合わせてみましょう。
行動援護は、知的障がいや精神障がいにより自立した行動が難しい方を支援する福祉サービスで、実際に行動援護従業者として働くためには、行動援護従業者養成研修で専門的な知識と技術を取得する必要があります。
研修はオンラインで受講可能な場合もあり、地域によっては助成金が適用されることもあるため、今まで以上に利用者の支援の幅を広げた方は、今回の内容をきっかけに、行動援護従業者養成研修の受講を検討してみましょう。