介護実習は、介護職を目指す学生が現場での実践を通じて、知識や技術を深めるための大切な機会です。
実習を経験することで、教室で学んだ理論を実際の介護現場に当てはめることができ、利用者との接し方や、多職種との連携を体験することで実践力を養うことができます。
介護実習をより良い機会にするためには、事前に介護実習の目標を明確にすることが重要です。今回は介護実習の目標の立て方や、実際に介護実習ではどのようなことがおこなわれるかまで解説します。
目次
介護実習での目標設定は、充実した実習を過ごし、自己成長するための重要な内容です。
まず、具体的な目標設定の仕方として、自分の得意な点と苦手な点を考えて、実習を通して、どのように成長したいのかを明確にすることで、目標が立てやすくなります。
次に、設定した目標を達成するために、具体的な行動計画を立てましょう。目標を設定する場合、多くは苦手な点を克服しようとしますが、必ずしも苦手な点を克服するだけでなく、得意な点をさらに成長させる視点で考えることが重要です。
実際の介護実習では、主に以下のような内容がおこなわれます。
コミュニケーションは、利用者との信頼関係を築くために非常に重要です。コミュニケーションを積極的にとることで、利用者の顔と名前を覚えられるだけでなく、利用者それぞれの目標など多くの情報を得ることができます。
また、利用者にとっても、コミュニケーションをとることは多くのメリットがあります。
高齢者になると、人と会ったり色々なことを考える機会が減ることから、脳への刺激が少なくなると言われていますが、コミュニケーションをとることで、孤立感が軽減し、生活の質を向上する効果も期待できます。
介護実習では、職員の助言やサポートを受けながら、排泄介助・食事介助・入浴介助などの全体的な介助業務の補助をおこないます。
学校の授業では、机上での理論などの学習や、健常者に対して介護業務の練習をおこないますが、現場での経験や、専門的な技術は、学校の授業では学ぶことはできません。
今まで学んできた知識を、実際の現場でも活用できるように、職員の助言やサポートをもらいながら、介助業務をおこない、わからない所や疑問点があれば積極的に質問しましょう。
レクリエーションは、身体機能向上・脳の活性化・コミュニケーション促進・QOL向上などを目的におこなわれます。介護実習の場合は、一緒にレクリエーションに参加したり、利用者のサポートに回ったりするだけでなく、自分でレクリエーションを企画して、実際におこなう場合もあります。
レクリエーションは、目的を意識しながら、身体を動かすレクリエーションや気分転換となるレクリエーションをおこなえば、利用者さんは楽しく、充実した時間を過ごせるはずです。
実習施設先には、ケアマネジャー・看護師・介護士など、多職種の職員が関係していますが、会議・カンファレンスへ参加することで、それぞれの職種の役割や必要性や、連携の重要性について理解を深められます。
また、職員同士で利用者の情報を共有することで、今後の目標を明確にできるなど、より良いサービスの提供につながることが学習できるはずです。
介護実習では、介護現場の多くの内容を体験しますが、公益社団法人日本介護福祉士会が発表した「介護実習指導のためのガイドライン」によると、その中でも介護実習を実施する目的を以下の2つのように示しています。
実施する目的 | 具体的な内容 | |
1 | それぞれの介護現場において、対象者の生活を理解し、本人や家族とのコミュニケーションや生活支援を行う基礎的能力を習得する学習とする。 | 体の不自由な高齢者や障がい者など、1人1人の利用者に寄り添うことが重要です。 |
2 | 本人の望む生活の実現に向けて、多職種との協働の中で、介護過程を実践する能力を養う学習とする。 | 介護サービスを提供する多職種が集まって今後のサービス提供を検討する「カンファレンス」や、「サービス担当者会議」に参加することで、現場における介護福祉士の理解の深まりや、多職種との連携など、介護を実践するために必要な能力を養います。 |
介護実習の目的を実現するために、以下の3つの事項を実習中に含めるべきとしています。
教育に含むべき事項 | 留意点 | |
1 | 介護過程の実践的展開 | 介護過程の展開を通して対象者を理解し、本人主体の生活と自立を支援するための介護過程を実践的に学ぶ内容とする。 |
2 | 多職種協働の実践 | 多職種との協働の中で、介護福祉士としての役割を理解するとともに、サービス担当者会議やケースカンファレンス等を通じて、多職種連携やチームケアを体験的に学ぶ内容とする。 |
3 | 地域における生活支援の実践 | 対象者の生活と地域との関わりや、地域での生活を支える施設・機関の役割を理解し、地域における生活支援を実践的に学ぶ内容とする。 |
介護福祉士の資格を取得するには、以下のルートがあります。
これらのルートの中で、福祉系高校ルートと養成施設ルートでは、介護実習が必修科目となっています。具体的な期間は、学校によって期間などは異なりますが、2〜5週間の介護実習を3〜4回程度おこなうのが一般的です。
介護実習はそれぞれの施設によって目標は異なります。ここでは、施設ごとでの介護実習の目標例を紹介します。
介護施設 | 実習目標 |
通所介護 |
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グループホーム |
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障害者支援施設 |
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介護老人保健施設 |
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特別養護老人ホーム |
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介護実習は、介護職に必要な知識・技術を学習できる重要な機会ですが、実習先の介護施設や利用者に対して迷惑をかけることがないよう、以下の内容は最低限注意しましょう。
介護施設の業務をおこなうにあたり、ふさわしい身だしなみを意識しましょう。具体的には、スタッフや利用者から違和感を持たれないように、ポロシャツやTシャツ、スラックス、ジャージは動きやすさと清潔感を兼ね合わせた身だしなみになります。
また、髪の毛が長い場合は1つにまとめたり、アクセサリーを外すなど、利用者の安全を最優先に考えて身だしなみを整えましょう。
介護実習の期間は、長いように思えますが、非常に短いため、この短期間の中でいかに知識や技術を学ぶかが重要です。そのため、実習期間を1日も無駄にしないように、積極的に実習に介護実習へ参加しましょう。
また合わせて、実習先の介護施設は、忙しい業務時間の合間を使って指導してもらっているという意識を持つことも重要です。
実習生といっても、介護施設の中で業務をおこなっているため、1人の介護職員とみなされます。そのため、学生であるという立場に甘えず、自分の行動や発言には責任を持ちましょう。
厚生労働省は、今後求められる介護福祉像は以下のように示しています。
上記の10項目と合わせて「高い倫理性の保持」が示されています。
これらの内容から、今後の介護福祉士の仕事は、介護施設の中で介護業務だけでなく、活躍の場は多方面に広がると予測されているため、それぞれの場所で対応できる介護福祉士が求められていることがわかるはずです。
介護実習は、実際の介護現場を通じて介護職に必要な知識や技術を学ぶ貴重な機会になりますが、その効果を最大限に引き出すためには、実習前に目標を明確に設定することが重要です。
介護実習の目標を明確にすれば、自分の得意な点と苦手な点を整理でき、苦手克服だけでなく、得意分野をさらに伸ばすことができます。今回の内容をきっかけに、介護実習の目標を明確にして、介護技術を効果的に高めるきっかけにしましょう。