生活援助従事者研修という介護の資格をご存じでしょうか?
生活援助従事者研修は2018年4月に新設された制度です。
この記事では生活援助従事者研修とは何か、目的、対象者などについてご紹介したいと思います。
生活援助従事者研修は、訪問介護事業所で掃除、洗濯、調理など生活援助サービスを提供する人材を育成するための研修。生活援助従事者研修」は、2018年4月に新設された資格です。
今回、生活援助従事者研修が新設された目的には、労働力の確保が挙げられます。
訪問介護事業所では、生活援助と身体介護の両方を行うことができる介護職員初任者研修の資格が必要となります。
しかし、有資格者の人材確保が難しい状況になっていますので、生活援助サービスと身体介護サービスを切り分けて、生活援助を専門に行う人材を確保するために創設されました。
生活援助従事者研修は、生活援助サービスの担い手の確保、サービスに対する知識向上のために2018年に新設された資格です。
生活援助従事者研修はだれでも受講することが可能です。
例えば、全く介護の経験がなくても、ヘルパーに興味がある方、子育て中の方、医療サービス従事者などが対象となります。
介護サービス従事者でも資格を持っていないという方は、生活援助従事者研修を修了すれば、2021年4月から無資格の職員に義務付けられた認知症介護基礎研修が免除になります。
項目 | 時間 | 科目 |
1.職務の理解 | 2 時間 | (1)多様なサービスの理解 (2)介護職の仕事内容や働く現場の理解 |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 6 時間 | (1)人権と尊厳を与える介護 (2)自立に向けた介護 |
3.介護の基本 | 4 時間 | (1)介護職の役割 (2)介護職の職業倫理 (3)介護における安全の確保とリスクマネジメント (4)介護食の安全 |
4.介護・福祉サービスの理解と医療の連携 | 3 時間 | (1)介護保険制度 (2)医療との連携とリハビリテーション (3)障害福祉およびその他制度 |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 6 時間 | (1)介護におけるコミュニケーション (2)介護におけるチームのコミュニケーション |
6.老化と認知症の理解 | 9 時間 | (1)老化に伴うこころとからだの変化と日常 (2)高齢者と健康 (3)認知症を取り巻く状況 (4)医学的側面から見た認知症の基礎と健康管理 (5)認知症に伴うこころとからだの変化と日常生活 (6)家族への支援 |
7.障害の理解 | 3 時間 | (1)障がいの基礎的理解 (2)障がいの医学的側面、生活障害、心理・行動の特徴、 かかわり支援等の基礎的知識 (3)家族の心理、かかわり支援の理解 |
8.こころとからだのしくみと生活支援技術 | 24 時間 | (1)介護の基本的な考え方 (2)介護に関するこころのしくみの基礎的理解 (3)介護に関するからだのしくみの基礎的理解 (4)生活と家事 (5)快適な居住環境整備と介護 (6)移動・移乗に関連したこころとからだのし くみと自立に向けた介護 (7)食事に関連したこころとからだのしくみと 自立に向けた介護 (8)睡眠に関したこころとからだのしくみと自 立に向けた介護 (9)死にゆく人に関したこころとからだのしく みと終末期介護 (10)介護過程の基礎的理解 |
9.振り返り | 2 時間 |
参考:厚生労働省
生活援助従事者研修ではどのようなことを学ぶのか具体的に表にまとめました。
生活援助従事者研修のカリキュラムは下記の通り59時間となっています。
そのうち約29時間は自宅で学習を進めることができます。
修了後は30分程度の筆記試験があり、合格すると修了証を取得できます。
介護職員初任者研修と科目は同じですが、時間数は約半分となっています。
到達目標 | |
職務の理解 | 研修に先立ち、これからの介護が目指すべき、その人の生活を支える「在宅におけるケア」等の実践について、介護職がどのような環境で、どのような形で、どのような仕事を行うのか、具体的イメージを持って実感し、以降の研修に実践的に取り組めるようになる。 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | ・介護の目標や展開について、尊厳の保持、QOL、ノーマライゼーション、自立支援の考え方を取り入れて概説できる。 ・虐待の定義、身体拘束、およびサービス利用者の尊厳、プライバシーを傷つける介護についての基本的なポイントを理解している。 |
介護の基本 | ・ 介護の目指す基本的なものは何かを概説でき、家族による介護と専門職による介護の違い、介護の専門性について理解している。 ・ 介護職の職業倫理の重要性を理解し、介護職が利用者や家族等と関わる際の留意点について、ポイントを理解している。 ・ 生活支援の場で出会う典型的な事故や感染、介護における主要なリスクを理解している。 ・ 介護職におこりやすい健康障害や受けやすいストレス、またそれらに対する健康管理、ストレスマネジメントのあり方、留意点等を理解している。 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | ・ 生活全体の支援のなかで介護保険制度の位置づけを理解している。 ・ 介護保険制度や障害福祉制度の理念と保険料負担、本人負担について理解している。例:利用者負担割合等 ・ ケアマネジメントの意義について概説でき、代表的なサービスの種類と内容、利用の流れについて理解している。 ・ 高齢障害者の生活を支えるための基本的な考え方を理解し、代表的な障害者福祉サービス、権利擁護や成年後見の制度の目的、内容について理解している。 |
介護におけるコミュニケーション技術 | ・共感、受容、傾聴的態度、気づきなど、基本的なコミュニケーション上のポイントについて列挙できる。 ・家族が抱きやすい心理や葛藤の存在と介護における相談援助技術の重要性を理解し、介護職としてもつべき視点を列挙できる。 ・言語、視覚、聴覚障害者とのコミュニケーション上の留意点を列挙できる。 ・記録の機能と重要性に気づき、主要なポイントを列挙できる |
老化と認知症の理解 | ・加齢・老化に伴う生理的な変化や心身の変化・特徴、社会面、身体面、精神面、知的能力面などの変化に着目した心理的特徴について列挙できる。例:退職による社会的立場の喪失感、運動機能の低下による無力感や羞恥心、感覚機能の低下によるストレスや疎外感、知的機能の低下による意欲の低下等 ・高齢者に多い疾病の種類と、その症状や特徴及び治療・生活上の留意点、及び高齢者の疾病による症状や訴えについて列挙できる。例:脳梗塞の場合、突発的に症状が起こり、急速に意識障害、片麻痺、半側感覚障害等を生じる等 ・認知症ケアの理念や利用者中心というケアの考え方について概説できる。 ・健康な高齢者の「物忘れ」と、認知症による記憶障害の違いについて列挙できる。 ・認知症の中核症状と行動・心理症状(BPSD)等の基本的特性、およびそれに影響する要因を列挙できる。 ・認知症の利用者の健康管理と廃用症候群予防の重要性と留意点について列挙できる。 ・認知症の利用者の生活環境の意義やそのあり方について、主要なキーワードを理解している。 例:生活習慣や生活様式の継続、なじみの人間関係やなじみの空間、プライバシーの確保と団らんの場の確保等、地域を含めて生活環境とすること ・認知症の利用者とのコミュニケーション(言語、非言語)の原則、ポイントについて理解でき、具体的な関わり方(良い関わり方、悪い関わり方)を列挙できる。 ・家族の気持ちや、家族が受けやすいストレスについて理解している。 |
障害の理解 | ・障害の概念とICFについて概説でき、各障害の内容・特徴及び障害に応じた社会支援の考え方について列挙できる。 ・障害の受容のプロセスと基本的な介護の考え方について列挙できる。 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | ・主だった状態像の高齢者の生活の様子をイメージでき、要介護度等に応じた高齢者の在宅生活について列挙できる。 ・利用者の身体の状況に合わせた介護、環境整備についてポイントを理解している。 ・人体の構造や機能の基礎的知識を習得し、何故行動が起こるのかを概要を理解している。 ・家事援助の機能の概要について列挙できる。 ・移動・移乗の意味と関連する用具・機器、および移動・移乗に関するからだのしくみを理解し、立ち上がりや移動の際の声かけ、歩行等が不安定な者の移動支援・見守りを行うことができる。 ・食事の意味と食事を取り巻く環境整備の方法のポイントを理解し、食事に関するからだのしくみを理解している。 ・睡眠の意味と睡眠を取り巻く環境整備や関連した用具を列挙でき、睡眠に関するからだのしくみを理解している。 ・ターミナルケアの考え方について列挙できる |
| 生活援助従事者研修 | 介護職員初任者研修 |
研修時間 | 59時間 | 130時間 |
身体介護 | 不可 | 可能 |
研修費用 | 18,000円程度 | 30,000円~100,000円程度 |
受講対象者 | 誰でも | 誰でも |
生活援助従事者研修と介護職員初任者研修の違いは下記の表のようになります。
生活援助従事者研修の方が比較的挑戦しやすい金額になっていますが、都道府県や実施機関によって研修費用は異なるので注意が必要です。
介護職員初任者研修について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護職員初任者研修とは?無料で受ける方法や働きながら取得する方法について徹底解説!
生活援助従事者検収以外の資格について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
生活援助従事者研修とは、訪問介護で生活援助のみを行うための資格です。
ホームヘルパーとして身体介護には自信がなく、生活援助のみを行いたいという方に向いています。
誰でも挑戦でき、介護の資格の中でも費用も安く短時間で取得することができます。
その後介護職員初任者研修を受講する場合は科目の免除もあるので、キャリアップもしやすくなっています。
介護業界に興味はあるが、まずは入門的な資格から始めたいと思う方は生活援助従事者研修を目指してみてはいかがでしょうか。