介護職員実務者研修は、サービス提供責任者になるための資格要件でも有り、かつてのホームヘルパー1級資格に相当します。
介護職員実務者研修は、2年以上の養成課程を持つ「介護福祉士」養成校の到達目標と同等の水準であるとされており、直接的な介護技術だけでなく、介護計画等の書類作成についても知識を深め、今後の介護保険制度の改正内容や新たな課題・技術・知見を自ら把握できる能力も期待されており、介護業界でのスキルアップのためには重要な資格であると言えます。
また、介護職員実務者研修の研修内容には、喀痰吸引や経管栄養に関する事項も含まれており、介護職員実務者研修を受講修了していれば、喀痰吸引等研修(第二号研修)の基本研修が履修免除となります(実地研修は必要)。
本日は介護職員実務者研修の内容や費用、活かし方についてご紹介していきます。
目次
【社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律(平成19年法律第125号)】により、 資質向上を図る観点から国家資格である「介護福祉士」の受験資格・資格取得ルートが大きく変更され、 新しい資格である「介護福祉士実務者研修」が誕生しました。
この変更前は「ホームヘルパー2級」、「ホームヘルパー1級」、「介護職員基礎研修」など、様々な研修や資格が混在し、 国家資格であり、直接介護職員のキャリアパスの終点となる「介護福祉士」になるためのルートが複雑で、進むべきルートが分かりにくいといった課題が有りました。
介護業界で生涯働き続けることができるという展望を持てるようなキャリアパスのルートを整備していく事が重要であるとの考えから、新しく「介護職員実務者研修」が設けられることになりました。
また、実際の介護の現場でも「介護福祉士」の人員配置を評価する傾向が強まっています。この評価は介護報酬(介護事業所にて介護を提供した際に得られる報酬の事)にも表れており、介護事業を営む法人は『上位資格保持者』に対する待遇も用意するようになっています。
介護職員初任者研修と介護職員実務者研修は、どちらも介護に携わる方が受講するものです。
初任者研修は介護の基礎について学ぶ研修で、介護職員実務者研修は介護の専門的な事について学ぶ研修です。
介護職員初任者研修は最短1カ月、介護職員実務者研修は3ヶ月半から半年程度の期間で取得が可能です。
介護職員初任者研修は、実務者研修よりも科目数が11科目少なく、学習時間は320時間短くなっています。
費用も介護職員初任者研修の方が安くなっていますので、未経験者は介護職員初任者研修から始めるケースも多く、介護職員初任者研修取得後に現場での経験を積んでから介護職員実務者研修を受講するかたも多くいらっしゃいます。
介護職員実務者研修は、介護職員初任者研修保持者よりも『知識と理解が深い』ことを示す明確な資格です。訪問介護事業においてはサービス提供の責任を担う『サービス提供責任者』の職に就くことが可能です。
このような専門知識の有る人材には給与をはじめとする待遇面を優遇する制度を設けている法人も多く、月5千円以上も異なるという法人も有ります。
平成28年度以降の試験では、介護福祉士の受験資格が厳しくなっています。
介護福祉士を受験するには、「実務経験3年以上」に加え、「6カ月以上の実務者研修の受講と修了」が義務付けられました。(専門学校などで一定の教育課程を経て介護福祉士資格を得る場合を除く)
専門学校等の2年の教育課程を経ずに実務経験3年以上の要件を満たしていても、実務者研修の受講が終了していなければ、介護福祉士の受験資格がありません。実務者研修を修了していると、介護福祉士の実技試験が免除されます。
訪問介護事業のみならず、障害者総合支援法の居宅介護(ホームヘルプサービス)においてサービス提供責任者の役職に就くことが可能です。人手不足が深刻な中で、有資格者しか就くことが出来ない職種ですので、どの法人でも重宝されているのが現状です。
平成24年4月より「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正により、喀痰吸引等研修を修了することで、介護職員についても一定の条件の下で、たんの吸引や経管栄養などの特定行為を実施できるようになりました。
また、平成29年より介護福祉士国家試験の受験要件として、3年の実務経験に加え、介護職員実務者研修の修了が義務付けられました。
介護職員実務者研修のカリキュラムの中には、医療的ケアという科目が含まれており、たんの吸引や経管栄養について学習します。また、通学講習時には、人体シュミレーターを使った演習も実施します。さらに、介護福祉士国家試験の受験科目の中にも、「医療的ケア」が新たに加わり、国家試験の際にも知識を問われることになりました。
無資格者(未経験者):8万円前後~20万円台程度
介護職員初任者研修・ホームヘルパー2級保持者:6万円台~17万円台程度
介護職員実務者研修の期間は、すでに持っている資格によって研修期間が異なります。資格の有無や実務経験に関わらず誰でも受講すること可能である資格ですが、既に何らかの資格が有る場合は1部カリキュラムの内容が免除になります。
●無資格:450時間 受講期間6カ月
●ホームヘルパー3級:420時間 受講期間5カ月
●ホームヘルパー2級:320時間 受講期間4カ月
●介護職員初任者研修:320時間 受講期間4カ月
●ホームヘルパー1級:95時間 受講期間2カ月
●介護職員基礎研修:50時間 受講期間1カ月
介護職員実務者研修には、通信と通学の2種類が選べるようになっています。
必ず対面で受講する科目以外は通信で受講が出来ることとなっており、既に介護職員として働きながら資格の取得を目指す方も多い資格ですので、通学する時間が取れず難しくても、通信にて受講することが可能です。最近では質問対応や就職サポートまで提供してくれる優れた講座が多いので、通信でも安心して受講することができます。
また、通信でも通学でも、カリキュラムの内容や終了までの期間に違いは有りません。
全ての学校で実務者研修では修了試験が必ず行われなければいけないと言うルールはなく、試験を行う、行わないは各講座先の学校にゆだねられています。合格率等を公表している学校はほとんどないため、しっかりとカリキュラム通りに学べば問題なく資格を取得できます。
研修内容も決して難しい
無資格者や未経験者から訪問介護員1級、介護職員初任者研修まで幅広い方達が受講可能です。ただし、介護福祉士国家資格の試験を受けるには3年間の現場での実務経験が必要となります。
介護福祉士養成施設等における「医療的ケアの教育及び実務者研修関係」の5に記載のある学校が行っています。受講料も通学・通信の用意があるかも学校により異なりますので、近くの学校に確認しましょう。
既に介護職員実務者研修を終えている方や、介護福祉士を喀痰吸引制度前に取得されている場合は、喀痰吸引等研修を受講することが可能です。
求職者支援制度は、職業訓練によるスキルアップを通じて早期の就職・再就職を実現するため国が支援する制度です。求職者支援制度の対象者になるためには、特定求職者であること、職業訓練受講給付金の支給要件を満たすことが必要です。
特定求職者としての認められる条件とは
1.ハローワークに求職の申込みをしていること
2.雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
3.労働の意思と能力があること
4.職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
職業訓練受講給付金の支給要件は
1.本人収入が月8万円以下
2.世帯全体の収入が月25万円以下
3.世帯全体の金融資産が300万円以下
4.現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
5.全ての訓練実施日に出席している
6.世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
7.過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
求職者支援制度の手続きの流れ
1.ハローワークで求職の申込みを行う
2.(職業相談後)訓練コースの選択をする
3.訓練の受講申込みを行う
4.訓練実施機関による選考が行われる
5.(4に合格後)就職支援計画書の受領する
6.訓練(研修)の受講を開始する
※また、手続きには以下4点を提出することになりますので、あらかじめ準備しましょう。
1.ハローワークが交付する書類(受講申込書など)
2.身元確認書類(運転免許証など)
3.マイナンバー確認書類
4.その他ハローワークが求める書類(預金通帳や住民票の写しなど)
医師及び看護師などの免許を有さない者による医⾏為は、法律で禁⽌されています。
「医⾏為」とは、「医師の医学的判断及び技術をもって⾏わなければ、⼈体に危害を及ぼし、⼜は危害を及ぼすおそれのある⾏為を反復継続する意思をもって⾏うこと」「医療的ケア」とは、一般的に、「病院などの医療機関以外の場所(学校や⾃宅など)で⽇常的に継続して⾏われる、喀痰吸引や経管栄養、気管切開部の衛⽣管理、導尿、インスリン注射などの医⾏為」と、されています。
介護の現場では、医療的ケアは医師が行う治療行為ではなく、介護職等が行う医療的な日常生活援助行為のことで、主に介護や教育の現場で定着してきた言葉です。
法改正により平成24年4月からは、一定の研修を修了した介護職員が「たんの吸引」や「経管栄養」を行うことができるようになりました。現在たん吸引等を必要とする利用者や、今後必要とされる利用者が安全かつ安心して過ごせる環境が広まるように、適切に喀痰吸引等を行う介護職員を養成する研修です。
研修の種類
対応できる医療行為
介護職員実務者研修は、介護従事者にとってのスキルアップに欠かせない資格です。
特に医療的ケア、喀痰吸引研修では医療分野の知識を充分に深めていくことが大切で、主に「喀痰吸引」と「経管栄養」について学んでいきます。ただ単に手技を習得するだけではなく、対象者に対して、安全かつ確実に実施出来るように専門的知識の習得を目指しましょう。