就労アセスメントは、障がい者就労支援において重要な役割を果たしています。現在、主に就労継続支援B型事業所で活用されていますが、今後は多くの場面で活用される評価ツールとなるでしょう。
この記事では、今注目されている就労アセスメントについてわかりやすく解説します。また、この記事を読むことで、就労支援事業所の違いや就労先の選び方などもわかります。
目次
障がい者の就労支援は、雇用施策と福祉施策の連携によって推し進められています。さまざまな施策により、一般雇用される障がい者数は年々増加傾向です。
令和2年には約1.9万人の障がい者が民間企業への就職を果たし、令和3年6月には民間企業での障害者雇用者数が約59.8万人に達しています。
しかし、就労系障害福祉サービスの利用者の能力評価や適切なサービス提供が不十分なケースも数多くあります。また、一般就労中の障害者への支援と就労系サービスとの連携強化などが課題となっており、今後の制度内容については検討中です。
厚生労働省のデータを確認する限り、これまで実施してきた障がい者就労支援においては、ある程度の効果が出ているようです。一方で、障がい者の能力評価や一般就労中の連携強化などの新たな課題が浮き彫りになっています。
参考:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課「障害者の就労支援について③」
障がい者就労支援を行う場合、就労継続支援事業所や就労移行支援など、複数の支援方法があります。ここでは、各就労形態の違いについてわかりやすく解説します。
就労継続支援B型は、障がい者が雇用契約を結ばずに生産活動や軽作業などの就労訓練を行う福祉サービスです。
就労継続支援B型事業所で働く障がい者は、障がいや体調に合わせて自分のペースで働き、作業の成果に応じた工賃を得られます。また、障がいの程度や年齢に関係なく、条件を満たした対象者であれば誰でも利用可能です。就労継続支援B型の対象者は以下に記載されている条件のいずれかに該当する方です。
就労継続支援B型事業所の対象者 |
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就労継続支援B型事業所では、一般就職や就労継続支援A型事業所への移行を目指し、働くために必要な知識や能力を習得できます。ただし、雇用契約を結ばないため、一般就労に近い形での就労を行うことはできません。
就労継続支援A型は、障がいや難病を持つ人々が一定の支援を受けながら働ける福祉サービスです。事業所と利用者は雇用契約を結び、利用者はサポートを受けながら最低賃金が保証された給与を受け取れます。就労継続支援A型の対象者は以下に記載されている条件のいずれかに該当する方です。
就労継続支援A型事業所の対象者 |
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就労継続支援A型事業所は、一般就労できない障がい者が社会的スキルを向上させ、安定した就労の機会を得ることを目的としています。また、雇用契約を結ぶことで、労働基準法など労働関係法規の適用を受ける労働者として扱われる点も覚えておきましょう。
障がい者の一般就労は、障がいがある個人が一般的な企業や公的機関などと労働契約を結んで働く形態です。労働者として定められた時間に出社し、経営者から与えられた仕事をこなすことが求められます。
日本では、障害者雇用促進法によって、従業員を43.5人以上雇用している企業は、1人以上の障がい者を雇用する義務があります(法定雇用率2.3%)。
障がい者雇用促進法において、一般企業も障がい者の就労を支援し、それぞれの障害特性に応じたきめ細かなサポートの提供が求められているのです。また、ハローワークなどの機関は、障がい者向けの就職支援サービスを提供しており、職業紹介や面接対策などを実施しています。
一般就労は、障害者総合支援法に基づく「就労系福祉サービス」とは異なるため、業務中のサポートを受けづらい点も理解しておきましょう。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく通所型の就労支援サービスです。就労継続支援とは異なり、働いて賃金を受け取る事業所ではありません。
障がいや難病を持つ方が一般企業での就職に向けて訓練や就職活動のサポート、職場定着の支援を受けるための事業所です。
18歳以上65歳未満の障がいや難病のある方が対象で、原則として2年間の利用が可能です。就職に必要な知識やスキルを向上させるためのサポートを提供し、働きづらさを感じる一般企業への就職を目指している方が利用できます。
一般就労や就労継続支援事業所へ移行するための準備をする場所と理解しておいてもよいでしょう。
就労アセスメントとは、就労能力を評価するアセスメントのひとつで、主に就労継続支援B型事業の利用希望者に対して実施されます。
就労アセスメントでは、さまざまな側面から包括して評価を行い、具体的な作業や模擬的作業を通じて系統的に評価します。
事業所利用開始前、利用中、求職段階、企業就労への移行段階など、アセスメント実施の時期と目的に応じて適宜行わなければいけません。
就労アセスメントは、職業的な探求活動や支援内容の決定に役立てるために実施されます。そのため、関係機関からの情報収集も、アセスメントを実施するために重要な判断材料となります。
就労アセスメントを実施する目的は、単に就労継続支援B型の利用可否や一般就労の可能性を判定するためだけでなく、障がいのある人が自立した生活を送るための基盤作りにあります。
そのため、アセスメントの結果は、個人の働く意欲や能力を最大限に活かし、障害福祉サービスの利用や支援体制構築のための基盤として活用されなければいけません。
就労アセスメントは単なる手続きではなく、利用者のニーズ実現と持続可能な支援を実施するうえで重要な役割を果たします。
就労アセスメントの対象者は、主に障害福祉サービスを利用する方です。
特に、就労継続支援B型事業の利用を検討している方、就労継続支援B型からA型または一般就労への移行を検討している方、一般就労から再び就労継続支援B型への移行を検討している方が含まれます。
現在は、主に就労継続支援B型事業所で就労アセスメントが実施されています。しかし、令和6年障害福祉サービス等報酬改定以降に新設される予定の「就労選択支援」で、就労アセスメントの活用について検討中です。そのため、次回の改定以降、就労アセスメントの対象となる方も多くなるでしょう。
2024年の障害福祉サービス等報酬改定において、新たに「就労選択支援」が創設される予定です。
就労選択支援では、障がい者本人と支援側が協力して、障がい者の強みや課題、就労に必要な配慮を評価します。障がい者の強みや課題などの評価によって、適切な一般就労や就労系障害福祉サービスへの移行を支援することが就労選択支援の役割です。
現在、就労継続支援事業所で行っていた就労アセスメントを、就労選択支援でも実施することが検討されています。そのため、これまで以上に就労アセスメントを受けられる障がい者が増加する可能性が高いでしょう。
就労選択支援によって就労アセスメントを受ける障がい者が増加することで、一般就労に移行する障がい者の増加が期待されています。
障がい者の就労支援において、一般就労や就労継続支援事業所など、複数の選択肢の中から最適なサービスを選ばなければいけません。ここでは、適切な就労先を見つけるポイントについて解説します。
障がい者が就労先を探す際には、自分に合った働き方、仕事内容、給料などを考慮することが重要です。
障がい者が一般雇用で働く場合、職種や待遇の選択肢が多く、正社員や総合職の求人もあります。しかし、障害によって行えない業務の免除を受けられない場合もあるため注意しましょう。
一方、障害者雇用枠で働く場合は配慮が得られやすく、特例子会社や就労継続支援事業所などであればサポートを受けやすくなりますが、職種や待遇の選択肢が限られる可能性があります。
また、在宅ワークが可能であれば、通勤の負担がなく、自分のライフスタイルを優先した働き方が実現可能です。しかし、収入源として在宅ワークだけで生活するためには実力や経験が求められる点には注意しなければいけません。
障害のある個人は、自身に合った業務量や勤務形態を見極め、体調維持と仕事の両立が可能となる就労形態を選ぶことが大切です。
障がい者の就労先を探す際、職場の雰囲気は重要なポイントです。
一般雇用では職種や求人が豊富ですが、障がいに対する配慮が不十分な場合もあり、十分なサポートを受けられない可能性もあります。
一方、特例子会社では障害に配慮した職場環境が提供され、就労継続支援では自分のペースで訓練や仕事をすることも可能です。
例えば、業務のストレスに弱い方が働く場合、ある程度の失敗も許容してサポートしてくれる環境のほうが良いでしょう。逆に、ある程度のトラブルにも対処できる方の場合は、サポートの手厚い就労形態よりも、一般雇用に近い就労形態で働いたほうが高収入を得られる可能性もあります。
障がい者が就労する場合、必ず事前に職場見学をして、職場環境との相性を確認してから次のステップへ進めることをおすすめします。
障がい者が就労先を探す際、勤務時間とアクセスについても確認しましょう。
障がい者の場合、体力や精神面の問題で勤務時間を制限しなければいけない可能性もあります。これから就労する方が、何時間まで集中して作業できるのか、どれくらいの給与が欲しいのかなど考慮して選びましょう。
また、通勤可能な範囲や通勤経路上のバリアフリー状況を確認することも大切です。障がいの程度によっては、杖歩行や車椅子での通勤が必要になる可能性もあります。実際に通勤経路を移動して、安全に通勤できる環境なのか判断することが大切です。どうしても通勤が困難な場合は、テレワークの可能性を検討してもよいでしょう。
就労支援において、業務内容や給料等の情報も大切ですが、通勤できなければ働けない場合もあります。勤務時間と通勤経路についても事前に確認すると、理想的な就労先を見つけられるでしょう。
この記事では、障がい者就労支援の実態と就労アセスメントの目的や役割について解説しました。
障がい者の就労支援を実施している企業や事業所は数多くあり、年々就労できる障がい者は増加しています。
障がい者の就労支援には、一般企業と障害者就労継続支援事業所などがあり、それぞれ特徴が異なります。
就労継続支援B型は、障がい者が雇用契約を結ばずに生産活動や軽作業などの就労訓練を行う福祉サービスです。一方、就労継続支援A型は、障がい者と雇用契約を結び、最低賃金が保証された状態で働く事業所です。
また一般企業で働く場合、職種や待遇の選択肢が多く、正社員として働くこともできます。しかし、障がいに対して十分に配慮できない場合もあるため注意しなければいけません。
2024年の障害福祉サービス等報酬改定では、就労選択支援という新たなサービスが創設される予定です。就労先を決める前段階で利用する就労選択支援において、就労アセスメントを実施することが検討されています。
より多くの障がい者が就労アセスメントを受けることにより、理想的な働き方を実現できる障がい者が増加する効果が期待できます。
障がい者がより理想的な環境で就労するためにも、就労アセスメントの重要性が高くなる可能性が高いでしょう。
参考資料:
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課「障害者の就労支援について③」