行動援護とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つとなっており、援護そのものが目的ではなく、自立支援が目的となっているサービスです。
ここでは、概要だけでなく、取得するために必要な費用・研修の実施場所まで詳しく解説します。
目次
行動援護とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つです。
知的障がい・精神障がい者などが原因により、自分一人で行動することが著しく困難な利用者さんに対して、日常生活を過ごすにあたって必要なさまざまな「行動面」の支援を実施します。
なお、具体的な対象者は、障害支援区分3以上であって、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である者となっています。
また、行動援護の例は、外出する際における外出時の危険回避、外出の前後の着替え、移動中の介護、排せつ・食事などの介護になります。
参考:厚生労働省
制度見直しにより、平成30年4月1日以降より行動援護従業者養成研修を修了し、知的障害児者もしくは精神障害者の直接業務1年以上かつ実際の業務が180日以上の実務経験がなければ、行動援護を行うことができないようになりました。
なお、令和6年3月31日までの経過措置として下記の資格取得者も行動援護を行うことができます。
1.介護福祉士
2.実務者研修修了者
3.介護職員基礎研修修了者
4.居宅介護従業者養成研修1級課程修了者
5.居宅介護従業者養成研修2級課程修了者 (平成25年4月以降においては居宅介護職員初任者研修修了者)
上記のいずれかに該当するもので、知的障がい者・精神障がい者、または障がい児の直接支援業務に2年以上従事した者
行動援護従業者養成研修の資格を取得することによるメリットは多くあります。
主要なメリットは下記の2つです。
①行動援護の業務ができるようになる
②スキルアップにつながる
この2点について解説していきます。
行動援護自体は誰でも行えるサービスではありません。
そのため、行動援護の資格を取得し、実際に行動援護の業務ができることは大きなメリットになります。
今後は精神障害者などを対象とした地域生活支援拠点の整備促進によって、居宅介護への需要はより増加する事が想定されます。
そのため、行動援護業務の需要も高くなり、今まで以上に活躍の場を増やすことができます。
行動援護についての知識を増やすことは、知的障がい・精神障がいの内容だけでなく、認知症の利用者さんに対するサービスにも役立ちます。
実際、内閣府が発表した「平成29年度版高齢社会白書」によると、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。
参考:厚生労働省
このことからも、行動援護従業者養成研修の資格を取得することで、今後のサービスの内容が大きく向上します。
また、資格を取得することで、自分自身のスキルを職場に証明できるため、経験を重ねることで今後、管理職などを目指すこともできるようになります。
行動援護従業者養成研修の資格を取得することによるメリットが理解できたところで、実際の研修内容がどのように行われているのか気になるはずです。
ここでは、下記の行動援護従業者養成研修内容を解説します。
①行動援護従業者養成研修のカリキュラム
②行動援護従業者養成研修の費用
③行動援護従業者養成研修の実施場所
この3点について解説していきます。
行動援護従事者養成研修は、行動障害に関する知識を学習します。
また、研修期間は3〜4日程度で、介護資格や実務経験のない人でも受講することが可能です。
以下は行動援護従業者養成研修の研修内容とその時間です。
研修内容 | 時間 |
強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義 | 1.5時間 |
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識に関する講義 | 5時間 |
強度行動障害がある者へのチーム支援に関する講義 | 3時間 |
強度行動障害と生活の組み立てに関する講義 | 0.5時間 |
基本的な情報収集と記録等の共有に関する演習 | 1時間 |
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解に関する演習 | 3時間 |
行動障害の背景にある特性の理解に関する演習 | 1.5時間 |
障害特性の理解とアセスメントに関する演習 | 3時間 |
環境調整による強度行動障害の支援に関する演習 | 3時間 |
記録に基づく支援の評価に関する演習 | 1.5時間 |
危機対応と虐待防止に関する演習 | 1時間 |
参考:埼玉県
参考:埼玉県
なお、研修内容・カリキュラムは、実施する自治体やスクールによって異なることがあります。
また研修内容は年によって変更になる場合があります。
研修を受けたい場合は管轄の自治体に確認しましょう。
行動援護従業者養成研修の費用は、特に定められていません。
そのため、受講する場所によって費用は異なりますが、30,000円〜45,000円程度が相場となっています。
勤務先によっては、研修費用を補助してもらえる場合もあるので、そのような制度があるかどうか一度勤務先に聞いてみましょう。
行動援護従業者研修は、都道府県もしくは都道府県の指定事業所のスクールで受講することができます。
詳しい受講先は各都道府県に確認することで分かります。
また最近では、対面ではなく、オンライン受講を実施している場合もあります。
行動援護従業者養成研修修了後に働ける場所は主に下記の2つになります。
①移動支援事業を行っている事業所
②行動援護従業者が必要な事業所
この2点について解説していきます。
移動支援事業を行っている事業所は、大きく居宅介護事業所・訪問介護事業所に分かれます。
居宅介護事業所は、利用者の自宅を訪問し、身体介護サービスや生活支援サービスなどを提供します。
移動支援事業を行っている事業所の場合、外出支援も重要なサービスの1つとなります。
訪問介護事業所のサービス内容は居宅介護事業所と似ていますが、利用者が障がい者ではなく高齢者も対象になります。
なお、近年では、訪問介護事業と居宅介護事業の両方を行う事業所も増えています。
移動支援事業を行っている事業所以外でも、下記の事業所でも行動援護従業者が必要なため、活躍のチャンスがあります。
・重度訪問介護事業所
・障害者支援施設
・障害者グループホーム(共同生活援助)
・障害者デイサービス(生活介護)
・児童発達支援・放課後等デイサービス
・障害者就労移行支援事業所 他
上記の事業所の中で、重度訪問介護事業所は、重度の肢体不自由・重度の知的・精神障がいなどを持っている利用者が対象となります。
業務に従事するためには、行動援護従業者養成研修だけでなく、重度訪問介護従業者養成研修の修了も必須の点に注意が必要です。
行動援護を行うためには、行動援護従業者養成研修の資格を取得している必要があります。しかし、今後は、今まで以上に居宅介護への需要はより増加すると予測されるため、行動援護業務の需要はより高くなります。
実際に、資格を取得することで活躍できる場所も広がるため、事業所全体として積極的に資格の取得を促すことが重要です。