障害福祉サービスを行っている事業所では、利用者に提供するサービスの品質向上や管理、スタッフへの指導を担当する「サービス管理責任者」の配置が必要です。
しかし、サービス管理責任者の研修制度が令和元年から新しくなり、一部の事業所では利用者数に合ったスタッフの配置が難しい状況になっています。
そこで経過措置として用意されたのが「みなし配置」です。
今回は、みなし配置の要件や配置できる期間、注意点も含めて詳しく解説します。
目次
令和元年にサービス管理責任者の研修制度の見直しが行われたのは、スタッフの質を高めることが目的です。
そのため、新体制では基礎研修と2年間のOJTを終えてから、実践研修を受けることが必要になりました。
研修等をすべて終了して正規配置が認められるまでに、2年以上の期間を要します。
参考:厚生労働省
人材育成に時間がかかることをふまえ、現在は旧体制から新体制への移行期間として「みなし配置」の制度があります。
定められた要件を満たしているスタッフは、サービス管理責任者とみなして配置が可能です。
上手く活用すれば、サービス管理責任者を欠かすことなく事業所の運営ができます。
サービス管理責任者の人材不足になっている事業所は、令和元年〜3年の間に基礎研修を受けているスタッフに限り、みなし配置ができる可能性があります。
誰でも配置できるわけではなく、これまでの勤務年数や指定の研修を受けているかどうかなど、要件が細かく定められています。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
相談支援業務もしくは直接支援業務で、それぞれに定められた実務経験年数を超えて勤務していれば、実務経験要件を満たしたことになります。
基礎研修を受ける時点で、定められた実務経験年数を満たしていなければ、みなし配置はできません。
実務経験要件は業務内容によって異なり、大きく分けて2つです。
1.相談支援業務・・・実務経験5年以上(有資格者の場合は3年以上)
職種 | サービス事業所 |
・相談員 ・相談支援専門員 ・支援相談員 ・ソーシャルワーカー | ・児童相談所 ・障害者支援施設 ・障害者職業センター、障害者就業 ・介護老人保健施設(老健)、ケアマネ事業所 ・更生相談所(身体障害者・知的障害者) ・精神障害者社会復帰施設、発達障害者支援センター ・地域包括支援センター、生活支援センター ・特別支援学校(進路相談、教育相談) |
2.直接支援業務・・・実務経験8年以上
職種 | サービス事業所 |
・介護員 ・指導員 ・生活支援員 ・看護助手 | ・障害者支援施設、障害福祉サービス事業 ・障害児通所支援事業(放課後等デイサービス、児童発達支援等) ・特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、ショートステイ ・介護老人保健施設、居宅介護支援事業所 ・病院、診療所、薬局、訪問看護事業所 ・特別支援学校 |
サービス管理責任者が欠如した時点で、基礎研修を修了している必要があります。
基礎研修とは、以下の2種類を指します。
1.相談支援従事者 初任者研修(2日間)
2.サービス管理責任者 基礎研修の講義・演習(3日間)
また、欠如する前から該当する事業所に配置され、OJTを実施中であることが必要です。
実践研修を受けるためには「障害福祉サービス事業所にて、個別支援計画作成の一連の業務を行う」といった内容のOJTを6ヶ月以上実施しなければなりません。
みなしで勤務した期間も、実践研修を受けるためのOJTに含むことができます。
参考:厚生労働省
みなし配置できる期間は、基礎研修の修了日から3年間です。
たとえば、令和3年2月20日に基礎研修を修了した場合は、サービス管理責任者として令和6年2月19日までの勤務が可能です。
年度で数えるのではなく、基礎研修の修了証明書に記載の日付から数えて3年間ですので、間違えないようにしましょう。
「みなし配置」を上手く活用するための注意点は、3つあります。
どれも大切な内容ですから、1つずつ詳しく解説していきます。
基礎研修の修了日から3年経過すると、みなし配置期間が終了します。
みなし配置期間後もそのまま続けて勤務する予定なら、3年以内に「サービス管理責任者等実践研修」を受けなければなりません。
都道府県によって実践研修の開催日程が異なるので、受けるタイミングを逃してしまったら、みなし配置が失効してしまいます。
計画的に実践研修を受けられるように、研修日程を自治体のホームページなどで事前に確認しておくと良いでしょう。
サービス管理責任者のみなし配置には、事業所がある管轄の自治体へ届けを出さなければなりません。
みなし配置である旨を伝える必要があり、届け出を受けた管轄の自治体は、審査を行ってみなし配置の可否を決めます。
変更届は、変更後10日以内の提出が必要ですから、忘れないように注意が必要です。
経過措置は、新制度への移行に関して、サービス管理責任者を十分に確保できないことに配慮した措置です。
そのため、産休や育休による経過措置の延長はできません。
3年後、みなし配置が失効するまでに実践研修を受けるためには、実務期間や産休期間、育休期間を調整する必要があります。
出産や子育ては個人的なことですが、サービス管理責任者のみなし配置として勤務している場合は、事業所の運営にも大きく影響します。
なるべく早めに、直属の上司へ相談しましょう。
今回は、サービス管理責任者の研修制度の見直しに関して、移行期間の措置として用意された「みなし配置」について詳しくまとめました。
令和元年〜3年の間に基礎研修を受けている人の中で、細かく定められたいくつかの要件をすべて満たしていないと、みなし配置はできません。
配置の要件には、職種や実務年数などが細かく定められています。
配置可能な期間や注意点についてもきちんと把握し、人材不足を避けて十分なスタッフで事業所を運営しましょう。