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障害福祉サービスの向かう先!2024年障害者総合支援法における報酬改定の議論内容

2023-12-12

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年には、障害福祉サービス等報酬改定が実施される予定です。現在、障害者総合支援法において、障害福祉サービスの質や持続可能性の確保が重要な課題となっています。

この記事では、2024年障害福祉サービス等報酬改定に向けて実施されている議論内容から、障害福祉サービスの今後の方向性についてわかりやすく解説します。この記事を読むことで、障害福祉サービスの向かう先が見え、事業所の方向性を決めやすくなるでしょう。

障害福祉サービス等報酬改定とは

障害福祉サービス等報酬改定とは、障害福祉サービスにおける事業者の報酬体系を見直すことを目的に実施される制度改正のことです。障害福祉サービス等報酬改定の主な目的は、以下のとおりです。

  • サービスの質を向上させる
  • 地域ごとのニーズに応えるサービス体制を確立する
  • 予算の増加に対応し持続可能な制度を作る
  • 業務の効率化を図る

次回の障害福祉サービス等報酬改定は、2024年4月の予定です。次回改定に向けた議論が2023年5月から始まっており、関係団体の意見を聞きながら、2024年2月に改定案がまとめられる予定となっています。

2024年障害福祉サービス等報酬改定の背景

障害者自立支援法施行から17年が経過し、障害福祉サービス等の利用者は約150万人、国の予算額は2兆円まで増大しています。利用者数と予算がそれぞれ約3倍以上にまで拡大してる背景から、制度の内容と報酬の適正化が必要です。

また、障がい者・児に対する医療的ケアのニーズも高まっており、医療や介護と連携したサービス提供の必要性も指摘されています。2024年障害福祉サービス等報酬改定は、医療・介護の報酬改定と重なるタイミングでもあるため、医療機関等と連携したサービス提供についても検討中です。

さらに、昨今の物価高騰や人材不足の問題も深刻です。制度の持続可能性を確保するためにも、物価の変動に対処しつつ、メリハリのある報酬体系を目指すことが望まれています。

2024年障害福祉サービス等報酬改定の検討内容

厚生労働省の資料「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた主な論点(案)」によると、2024年障害福祉サービス等報酬改定へ向けた主な論点として、以下の3つが挙げられています。

  • 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
  • 社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
  • 持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

特に障がい者の社会復帰や就労などが議題として挙げられており、その点を中心に具体的な内容を検討中です。ここから、各議題について詳しく解説していきます。

参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定 に向けた主な論点(案)

障がい者が希望する地域生活を実現する地域づくり

現在、障がい者の希望に沿った生活ができるように、障害福祉サービスによる支援を行っています。しかし、地域資源や障害福祉サービスからのサポートが足りないことが原因で、自立した生活を実現できない方も少なくありません。

障がい者が希望する地域生活を実現するためには、医療・福祉との連携や地域社会の包括的な支援が必要です。ここでは、地域生活を支援する方法について解説します。

地域生活を実現・継続するための支援

グループホームに入所している方や、障害福祉サービスの支援を必要とする方が、地域で自立した生活を送るための支援体制作りが必要です。

具体的には、地域生活支援拠点等の整備や推進、地域移行を促進するための方策が検討されています。また、グループホームにおける1人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価なども検討中です。さらに、障がい者ピアサポートは、障がい者の自立支援において重要な役割を持っており、今後も取り組みを推進していく予定です。

2024年の改定では、障害者支援施設内で完結する支援だけではなく、地域生活を実現するために社会全体で支援する仕組み作りについて検討されていくでしょう。

医療と福祉の連携の推進

2024年障害福祉サービス等報酬改定は、医療と介護の同時改定になるため、医療・介護との連携を強化する内容も検討されています。

障害福祉サービス利用者で医療ケアニーズのある方は多いため、そのような利用者に対するサービス提供体制を整えておくことも重要です。

具体的には、医療的ケア児から成人期へ移行する際の医療的ケアを充実させる方策も検討されています。また、重度障がい者が入院した際のコミュニケーション支援を充実させることや、障害者支援施設等と医療機関との連携強化も検討中です。

医療機関と障害福祉サービスとの連携が強化されることで、より多くのサービス利用者を受け入れられるようになります。

 

精神障がい者の地域生活における包括的な支援

現在、入院中や施設入所中の精神障がい者が地域生活に復帰するためには、さまざまなハードルがあります。

そのため、医療や就労等の社会参加、地域の助け合いなどが包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築をさらに推進することが重要です。具体的には、以下の内容が検討されています。

  • 精神障がい者の医療と相談支援との連携のさらなる促進
  • 精神障害者の退院支援に資する地域生活支援拠点等の整備を推進
  • 精神障害者の虐待防止を図るための方策

精神障がい者が地域生活に復帰するためには、地域全体で支援する取り組みが必要となるでしょう。2024年でさらに推進される地域包括ケアシステムにおいても、精神障がい者への支援は重要なポイントのひとつです。

社会変化に伴う障がい児・障がい者のニーズへの対応

社会の変化に伴って、障がい児・障がい者のニーズも多様化しています。これらの変化に対して、障害福祉サービスのあり方も変化させていかなければいけません。ここでは、多様化する障がい児・障がい者のニーズへの対応について詳しく解説します。

障がい児に対する専門的で質の高い支援体制の構築

近年、発達障害に対する認知度拡大や女性の就業率が上昇していることにより、児童発達支援や放課後等デイサービスのサービス量が大きく拡充しています。一方で、支援の質を確保することやインクルージョンの推進が大きな課題です。

それらの課題に対して、障がい児だけでなく家族全体を支援していく視点や、障がい児支援施設間の連携が重要とされています。具体的には、児童発達支援センターを中心とした支援体制や障害児通所支援における適切な評価体制などが検討中です。

2024年障害福祉サービス等報酬改定では、障がい児を支援する施設における他施設連携や、質の担保に関する改善策が打ち出されるでしょう。

障がい者の多様なニーズに応じた就労の促進

障がい者の一般就労への移行や就労支援施策は着実に進展しています。一方で、時代の変化とともに、障がい者の就労を取り巻く環境が変化している実態もあります。そのため、障がい者の就労支援においてもルール変更が必要です。

具体的には、一般就労中の就労系障害福祉サービス併用を認めることや、就労選択支援を新たに創設することなどが議論されています。

就労選択支援とは、障がい者が適切な就労形態を実現するために利用するサービスです。就労選択支援を利用することで、事業所選択の前に就労アセスメントを実施できるようになります。これにより、一般就労へ移行できる障がい者の増加が期待されています。

また、現在のルールでは、原則として一般就労へ移行した方が就労系障害福祉サービスを併用することはできません。しかし、2024年障害福祉サービス等報酬改定では一定期間中の併用を認める方向性で検討されています。

就労選択支援や一般就労と就労系障害福祉サービスの併用により、障がい者が一般就労へチャレンジしやすい環境が整い、より多くの方が一般就労できる可能性が高いでしょう。

持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現

障害福祉サービス事業所数や利用者数が増加する一方で、サービスを支える人材の不足や物価高騰の影響も受けています。そのため、制度の持続可能性を確保することも重要な課題とされています。

具体的には、物価高騰や賃金上昇等を踏まえた報酬の見直しや、サービス提供の実態や質に応じた評価の設定などが挙げられています。また、業務効率化へ向けたICTの導入なども推進していく予定です。

少子高齢化によって働き手が減少することで、障害福祉サービスの働き手も減少する可能性は高いでしょう。制度の持続可能性を確保するためにも、報酬体系の見直しは必要です。

2024年障害福祉サービス等報酬改定による変化予測

厚生労働省で行われている議論の中身から、2024年障害福祉サービス等報酬改定後の変化について予測することも可能です。ここでは、2024年障害福祉サービス等報酬改定後の変化について詳しく解説します。

地域生活への移行支援が強化される

グループホームなどの障害福祉サービスを利用している方が、地域生活へ移行するための支援体制が強化されます。

具体的には、地域生活支援拠点の整備や推進、障がい者ピアサポートの推進などを行っていく予定です。

これにより、これまで地域生活を実現できなかった障がい者の方が地域生活を実現できるようになるでしょう。地域で生活する障がい者が増加することで、通所系施設や就労系施設の利用者が増加することも想定されます。

障害福祉サービスと医療・介護サービスとの連携強化

2024年には医療・介護の報酬改定も同時に実施される予定です。これを機に、医療機関や介護サービスとの連携強化も推進されていくでしょう。

特に、障害福祉サービスでの医療ケアニーズは増大しており、医療機関と連携して施設利用者のケアを実施しやすくなる可能性もあります。

医療機関との連携が強化されることで、障害福祉サービス利用者のニーズに対して、医学的な目線で対処しやすくなるでしょう。

就労支援のルールが変化

就労支援のルール変更に伴って、就労選択支援の増設や一般就労と就労系障害福祉サービスの併用が可能となる予定です。これらの変化によって、障がい者の働き方が多様化していきます。

就労選択支援を利用することで、障がい者の能力を適切に評価し、一般就労へ繋げやすくなるでしょう。また、期間限定で障害福祉サービスと併用できることで、働き始めの時期にさまざまな支援を受けやすくなります。

これらの変化により、これまで以上に一般就労をする障がい者増加が期待されています。

障害福祉サービス等報酬改定に向けた準備

障害福祉サービス等報酬改定の変化に対して、どのような対策を立てておけばよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。ここでは、2024年障害福祉サービス等報酬改定に向けた準備について詳しく解説します。

医療機関等との連携を強化

2024年障害福祉サービス等報酬改定では、医療機関との連携強化が推し進められるでしょう。そのため、近隣の医療機関との関係性を大切にしておく必要があります。

医療機関との具体的な連携方法などは明確になっていませんが、場合によっては医療機関と密に連絡を取り合う必要があるかもしれません。

事前に良好な関係性を構築して、近隣の医療機関と連携しやすくしておくことをおすすめします。

就労系事業所はルール変更の準備

就労系障害福祉サービスに関しては、大幅なルール変更が検討されています。

特に、新設される予定の就労選択支援に関する情報は、継続的に追っていきましょう。事業所選択に大きく関わるポイントなので、どのような形態になるのか見極めて、必要であれば就労選択支援を提供することになるかもしれません。

また、一般就労中にも障害福祉サービスを利用できるようになることで、障がい者の働き方も変化します。それらのルール変更へ向けて、就労系事業所の経営者は、事業所内の人員配置やサービス提供体制などをもう一度考え直すとよいでしょう。

人材確保に向けた加算取得の準備

次回の障害福祉サービス等報酬改定では、人材確保に向けた事業所評価基準や加算の見直しが実施される予定です。人材確保のためにも、加算の取得等の準備をすすめるとよいでしょう。

加算を取得するだけで、事業所の収益が改善し、職員の賃金を改善できます。取得できる加算は積極的に算定し、新たに創設される加算についても最新情報を確認しておきましょう。

まとめ:障害福祉サービスが大きく変化する

この記事では、2024年障害福祉サービス等報酬改定に関する議論の内容をもとに、障害福祉サービスの方向性について解説しました。

障がい者総合支援法が施行されてから、障害福祉サービスの利用者数は増加しつつあります。一方で、時代の変化とともに、さまざまな課題も生まれていることも理解しておかなければいけません。

現在、議論されている内容として、障害者の地域生活支援、障がい児・障がい者が抱えるニーズへのきめ細かな対応、制度の質や持続可能性の確保が挙げられます。

具体的には、地域生活への移行支援、医療機関との連携、就労支援のルール変更などについて検討中です。厚生労働省が公開する情報を確認しつつ、将来的な事業所の方向性を検討しましょう。

 

参考資料:

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定 に向けた主な論点(案)

 

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