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喀痰吸引とは?必要な資格や研修について徹底解説!

2023-03-25

 

 

医療ケアのひとつであり、介護現場でも必要となる場面が多い処置である喀痰吸引。

本来であれば医療業務であり介護職員は実施できませんが、資格を取得することによって可能になります。

こちらの記事では、喀痰吸引を行うために必要な資格や、取得するために必要な研修の内容、手続きについても詳しくご紹介します。

喀痰吸引とは

喀痰(かくたん)とは、鼻の奥やのどの違和感の原因となる「痰」のことです。

自分で痰を吐き出すことが困難な人に対して、器具を使用して痰を吸い出すことを「喀痰吸引」と言います。

空気と一緒に吸い込んだホコリなどは肺に送られますが、通り道である気管の表面は短い毛で覆われていて、奥まで入りこまないよう付着し、それらが粘液と混ざったのがいわゆる痰です。

通常はくしゃみや咳などで排出されますが、嚥下機能の低下などが原因となり、自力での排出が難しい方もいます。

そのまま放置しておくと、呼吸困難や軌道閉塞、誤嚥などの原因にもなり危険なので、吸引装置や吸引カテーテルを使用して喀痰吸引をする必要があります。

喀痰吸引を行うために必要な資格は?

喀痰吸引は医療行為のひとつで、医師や看護師のみが行っていました。

しかし、2012年の法改正によって介護職員も行えるようになり、新たに「喀痰吸引等研修」という資格が定められました。

具体的には、痰を吸い出す「喀痰吸引」と、カテーテルやチューブなどを通す「経管栄養」を実施できるようにする研修内容。

カテーテルやチューブを使用する医療行為であるため、必要な専門知識を身につけるための資格です。

最近は喀痰吸引が必要な要介護者も増えており、喀痰吸引等研修の資格保有者の需要も高まりつつあります。

喀痰吸引を行うために必要な研修について

喀痰吸引資格を取得するための研修には「第1号研修」「第2号研修」「第3号研修」の3種類があります。

それぞれの研修は「基本研修(講義・演習)」と「実施研修」に分かれていて、両方を修了する必要があります。

 

施術可能な対象

基本研修

実地研修

第1号研修

不特定多数

50時間

回数制/すべての治療ができるようになる

第2号研修

不特定多数

50時間

回数制/できる治療が限られる

第3号研修

特定の利用者

8時間

医師や看護師の許可が降りるまで研修

①第1号研修

第1号研修では、50時間の講義を受講してから筆記試験に合格する必要があります。

さらに、シュミレーターを使用した演習を受講し、十分なスキルを習得したと評価されたら実施研修を受講できます。

施術対象となるのは不特定多数の利用者なので、喀痰吸引が必要となる利用者が不特定多数いる施設や事業所に勤務する介護職員が受講対象者となります。

第1号研修修了によって可能となる行為は、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)です。

第1号研修で実施される科目と回数

科目・行為

時間・回数

基本研修

講義

・人間と社会

・保健医療制度とチーム医療

・安全な療養生活

・清潔保持と感染予防

・健康状態の把握

・高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論

・高齢者及び障害児・者の喀痰吸引実施手順解説

・高齢者及び障害児・者の経管栄養概論

・高齢者及び障害児・者の経管栄養実施手順解説

1.5時間

2時間

4時間

2.5時間

3時間

11時間

8時間

10時間

8時間

演習

・口腔内の喀痰吸引

・鼻腔内の喀痰吸引

・気管カニューレ内部の喀痰吸引

・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養

・経鼻経管栄養

・救急蘇生法

5回以上

5回以上

5回以上

5回以上

5回以上

1回以上

実施研修

・口腔内の喀痰吸引

・鼻腔内の喀痰吸引

・気管カニューレ内部の喀痰吸引

・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養

・経鼻経管栄養

10回以上

20回以上

20回以上

20回以上

20回以上

 

引用:厚生労働省

②第2号研修

第2号研修の受講時間・内容・対象者は第1号研修と同様です。

ただし、実施研修では「気管カニューレ内部の喀痰吸引」「経鼻経管栄養」の2科目が省略されています。

そのため、第2号研修修了後は「口腔内・鼻腔内の喀痰吸引」「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」は実施可能ですが「気管カニューレ内部の喀痰吸引」「経鼻経管栄養」は実施することができません。

こちらも施術対象は不特定多数、受講対象者は施設や事業所に勤務する介護職員です。

③第3号研修

第3号研修は、対象者・受講時間・内容が第1号・第2号研修と異なります。

第1号・第2号と比べて対象者が減り、受講時間も短めですが、これは必要な科目や行為だけを重点的に学習するためです。

例えば、訪問介護の現場で喀痰吸引等を実施する必要がある方や、重度心身障碍者がいる施設で働いている方は、短時間で資格を取得できる第3号を選択するケースもあります。

第3号研修は実施研修も必要とされる行為のみの履修ですが、回数で判断されるのではなく、十分なスキルが身についたことを医師から評価されるまでは修了となりません。

第3号研修の施術対象者と受講対象者

施術対象者は特定の人(下記参照)に限られていて、受講対象者も障害者サービス事業所や障害者施設、訪問介護事業所などで特定の利用者のみに実施する介護職員や保育士となっています。

・特定の人

筋萎縮性側索硬化症(ALS)またはこれに類似する神経・筋疾患

筋ジストロフィー

高位頸椎損傷

遷延性意識障害

重症心身障害 等

参考:厚生労働省

第3号研修で実施される科目と回数

科目・行為

時間・回数

基本研修

講義

・重度障害児・者の地域生活等に関する 講義

・喀痰吸引等を必要とする重度障害児・ 者等の障 害及び支援に関する講義

・緊急時の対応及び危険防止に関する 講義

2時間


合計6時間

演習

喀痰吸引等に関する演習

1時間

実施研修

・ 口腔内の喀痰吸引

・ 鼻腔内の喀痰吸引 

・気管カニューレ内部の喀痰吸引

・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養

・経鼻経管栄養

医師等の評価 において、受 講者が習得す べき知識及び 技能を修得し たと認められ るまで実施

引用:厚生労働省

第3号研修のみ受講しても良い?

第3号研修修了によって可能となる行為は、実施研修で行った行為のみです。

しかし、第1号・第2号研修を修了していると、転職先がみつかりやすく資格手当が支給される可能性があるといったメリットもあります。

とりあえず第3号研修のみを修了し、時間に余裕がある時に第1号・第2号研修を受講する方法もあるので、スケジュールとの兼ね合いで検討するのも良いでしょう。

喀痰吸引のカリキュラムについて

喀痰吸引等研修は第1号〜第3号までありますが、それぞれのカリキュラムには「基本研修」と「実施研修」の2つがあります。

基本研修

・第1号研修・第2号研修

基本研修には「講義」と「演習」があります。

講義は全部で50時間あり、喀痰吸引の手順はもちろん、療養生活や健康状態の把握についての講義も。

すべて受講した後に筆記試験があり、合格ラインは正答率9割以上で、不合格の場合は後日再試験を受けます。

演習は「口腔内の喀痰吸引」「鼻腔内の喀痰吸引」「気管カニューレ内部の喀痰吸引」「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」「経鼻経管栄養」の医療行為をそれぞれ5回以上「救急蘇生法」の演習を1回受講する必要があります。

さらに、人工呼吸器を装着している利用者が対象となる場合は、別の講習を受ける必要があります。

講義の筆記試験と演習の評価が問題なければ、実施研修にうつります。

・第3号研修

基本研修には「講義」と「演習」があります。

ただし、講義の内容は「対象者が特定の人である場合」となり、全部で8時間です。

すべて受講した後に筆記試験を受けますが、こちらも合格ラインは9割以上で、不合格の場合は後日再試験を受けます。

演習は1時間ほどのシュミレーションを行い、現場でも問題なく行えるかどうか評価されます。

実地研修

・第1号研修・第2号研修

実施研修は、その名の通り実践形式の研修です。

基礎研修の演習で習得した「口腔内の喀痰吸引」「鼻腔内の喀痰吸引」「気管カニューレ内部の喀痰吸引」「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」「経鼻経管栄養」の医療行為を、施設や在宅看護の現場で対象者に実施。

口腔内の喀痰吸引のみ10回以上で、それ以外は20回以上の実施が必要です。

気管内カニューレ内部の吸引・経鼻経管栄養に関しては、第1号研修のみで実施されます。

・第3号研修

第3号研修の実施研修では、「口腔内の喀痰吸引」「鼻腔内の喀痰吸引」「気管カニューレ内部の喀痰吸引」「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」「経鼻経管栄養」の医療行為を特定の人に対して行います。

実際の現場で看護師の指導のもとで行い、対象者とその家族の意見を反映しながら看護師が評価しますが、2回連続でクリアする必要があります。

なお、看護師からの指導はその後も定期的に行われます。

喀痰吸引の研修費用は?

喀痰吸引等研修はさまざまな団体によって実施されています。

それぞれ受講費用に違いがあるので、受講可能な複数の団体の費用を比較して選ぶのがおすすめです。

また、国や自治体から補助金が出たり、早期申込み割引を利用できるケースもあるので事前にチェックしておくと良いでしょう。

各研修のおおよその費用は、第1号・2号の基礎研修が8〜20万円、第3号が2万5千〜6万円、実施研修は1万5千円〜2万円となります。

喀痰吸引の試験は?

喀痰吸引等研修の試験に関して、受講に必要な要件は特にありません。

都道府県庁や介護福祉士の養成施設、登録研修機関などで研修を行っているので、受講したい研修に申込みします。

なお、医療的ケア(実務者研修など)を修了していると一部が免除になります。

合格率の詳細は公表されていませんが、正答率は9割以上と基準が厳しめです。

しかし、基礎研修と実施研修でかなりの時間学習できるので、そこでしっかりと身につけておけば難易度はさほど高くないと言えます。

もし自信がない場合は、再試験を実施しているスクールを選ぶのがおすすめです。

喀痰吸引を行うのに必要な手続きについて

研修を修了して無事筆記試験に合格したら「研修修了証明書」が発行されます。

しかし、発行されたからといって、どこでも喀痰吸引や経管栄養を行えるわけではなく、実施が可能な条件を満たしている場合に限られます。

①特定行為業務従事者の認定

研修修了証明書が発行されたら、各都道府県に申請をして「特定行為業務従事者」として認定を受ける必要があります。

認定証交付後に、実際の介護現場で喀痰吸引や経管栄養の実施が可能です。

②特定行為事業者の登録

介護職員(特定行為業務従事者)が喀痰吸引を実施するには、勤務する事業所が特定行為事業者(登録喀痰吸引等事業者)として各都道府県に登録されていることが条件です。

主に以下のような施設や事業所があります。

・障害者福祉施設

常に介護が必要で自宅で日常生活を送るのが困難な身体障害者・知的障碍者・発達障碍者を対象とした施設。

自立支援や社会復帰を目標とする介護で、提供するサービスの幅が広く豊富な知識が求められるのが特徴です。

・介護老人保健施設

要介護1〜5の高齢者を対象とした施設。

一定期間の入所後に在宅で生活できるように、医療関係者と連携を図りながら身体介護や生活援助のサポートをします。

・訪問介護事業所

要介護1〜5、要支援1・2の利用者宅を、介護職員が訪問して、身体介護や生活援助のサービスを提供する事業所。

あくまでも利用者が可能な限り自立した生活を送れるよう、住み慣れた自宅でサポートするのが介護の目的です。

③研修機関の登録

特定行為事業者や養成施設などが、喀痰吸引等研修の登録研修機関として登録することも可能です。

申請先は各都道府県ですが、登録には以下の基準を満たす必要があります。

・喀痰吸引等の実施に関する科目は、医師・看護師・保健師・助産婦が講師になること

・研修に必要な器具等の確保

・業務規程の保守(研修の実施場所・実施方法・安全管理体制・料金・受取方法・秘密保持・書類の保存)

・研修にて各段階ごとに習得度を審査する(筆記試験・プロセス評価)

・他研修により知識や技術を習得している場合は一部研修を免除可能

・各都道府県に対する研修の実施と定期的な報告

・研修修了者に関する帳簿の作成・保存

参考:厚生労働省

喀痰吸引に関するQ&A

では最後に、喀痰吸引に関して多く寄せられる疑問についてお答えします。

介護福祉士は喀痰吸引できないの?

結論から言うと、介護福祉士養成学校を2016年度以降に卒業した場合、もしくは、介護福祉士の資格を2017年1月以降に取得した場合は、実施研修を修了すれば介護現場で喀痰吸引を行うことができます。

確かに以前は介護福祉士が喀痰吸引できないとされていましたが、2012年度に「社会福祉及び介護福祉法」が一部改正されました。

それにより、介護職員であっても一定要件を満たせば喀痰吸引や経管栄養行為が実施できるように。

その一方で、2017年度より介護福祉士の国家試験に「実務者研修」の修了が受験要件として義務付けられました。

実務者研修のカリキュラム内には喀痰吸引や経管栄養の科目が含まれていて、シュミレーターを使用した演習も行います。

介護福祉士の国家試験に合格すれば喀痰吸引を行える?

介護福祉士の国家試験に合格しても、喀痰吸引等の資格保持者と同様に喀痰吸引を行えるかというと、そうではありません。

喀痰吸引は特定行為と言われているだけあり、実施研修がマストですが、実務者研修では喀痰吸引の演習のみで実施研修は行われません。

介護福祉士で喀痰吸引を行いたい方は、登録研修機関にて実施研修を受講して、その後介護福祉士登録証の変更を行ってください。

変更が完了したら、対象者に喀痰吸引や経管栄養の行為を行うことができます。

参考:厚生労働省

 

まとめ

喀痰吸引は、まさに今介護の現場に必要とされているスキルです。

資格があればさまざまな介護施設や事業所で活躍でき、仕事の幅が広がり収入アップにもつながります。

本記事でお伝えしたように、資格を取得するには研修や登録など正しいステップを経る必要があるので、ぜひ参考にしてみてください。

 

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