介護業界に関心があり、生活援助従事者研修について気になっている方もいるのではないでしょうか。
生活援助従事者研修は、これから訪問介護事業所で働きたい方に向けて作られました。
しかし、2018年4月に新設された資格であるため、まだ広く知られていないのが現状です。
今回の記事では、生活援助従事者研修とはなにか、生活援助従事者研修の受講条件、受講内容、受講するメリットなど詳しく解説していきます。
目次
生活援助従事者研修とは、訪問介護で提供されるサービスの1つである生活援助を専門に行う人材を育成するための研修です。
訪問介護では、身体介護と生活援助の2種類のサービスを提供しています。
排泄や入浴、食事の介助など、利用者の身体に直接触れる身体介護サービスを行うには、介護職員初任者研修や介護福祉士などの資格が必要です。
そのため、生活援助従事者研修を修了した方は掃除や洗濯、買い物代行など利用者の身体に触れずに行う生活援助サービスを専門に行います。
生活援助従事者研修は、介護職員初任者研修の約半分の時間で取得可能です。
さらに、一部を通信学習で学ぶことができるため、通学の負担を減らしながら資格取得を目指せます。
生活援助従事者検収について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
生活援助従事者研修が新設された目的は、訪問介護に携わる人材の確保です。
今まで訪問介護を行うためには、身体介護と生活援助の両方が行える介護職員初任者研修以上の資格が必要でした。
しかし現在、深刻な人材不足に悩む訪問介護事業所は少なくありません。
訪問介護業界の人材不足を解消するために創設されたのが、生活援助従事者研修です。
資格取得のハードルを下げ、生活援助を専門に行うスタッフを増やすことで、訪問介護に携わる人材を確保したいと考えられています。
生活援助従事者研修に特別な受講条件はありません。
介護の知識や経験、年齢を問わず誰でも受講できます。
例えば、介護の仕事に興味があるけれど、身体介護が不安な方にはおすすめの資格です。
生活援助を行うために必要な知識を学んだ上で、介護の仕事を始められます。
主婦や主夫、子育て中の方も家事の経験を生かして働けます。
週1回や短時間の勤務も可能な場合が多いので、空いた時間で無理のない働き方が可能です。
体力が必要な身体介護は行わないため、幅広い年齢層の方が活躍できる資格です。
生活援助従事者研修では訪問介護事業所を中心に、生活援助を行うために必要とされる基礎知識を学べます。詳しい受講内容を下記にまとめました。
研修科目 | 研修時間数 |
1.職務の理解 | 2時間 |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 6時間 |
3.介護の基本 | 4時間 |
4.介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 3時間 |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
6.老化と認知症の理解 | 9時間 |
7.障害の理解 | 3時間 |
8.こころとからだのしくみと生活支援技術 | 24時間 |
9.振り返り | 2時間 |
合計 | 59時間 |
1.職務の理解と9.振り返りの受講では、施設見学などの実習が組み込まれています。
また、8.こころとからだのしくみと生活支援技術の受講では、移動や移乗に関する実習を2時間行うよう定められています。
全ての研修科目を受講した後は、30分程度の筆記試験を受けましょう。
評価ポイントに沿って受講生の知識や技術の習得度を評価し、所定の水準を超えた場合は修了証が発行されます。
習得が十分でないと判断された場合は、必要に応じて補講などのサポートを受けながら目標達成を目指すことも可能です。
参考:厚生労働省
生活援助従事者研修の受講にかかる費用は、スクールなどの養成機関や自治体によって異なります。
テキスト代や交通費のみ負担する場合は数千円程度、指導料込みの負担になると数万円程度かかることもあります。
自治体によっては無料で開講されていたり、補助金制度を設けている場合もあるため、受講を検討している方は事前に確認しておきましょう。
生活援助従事者研修の学習時間は59時間と定められていますが、受講期間は養成機関によって異なります。
およそ1か月〜3か月程度を受講期間としている場合が多いです。
受講を検討している方は自分にあったペースで学べるように、研修日程も併せてチェックしてみましょう。
生活援助従事者研修を受講することには、以下のようなメリットがあります。
・介護に関する基礎知識が身につく
・介護職員初任者研修を受講する場合はカリキュラムの免除がある
・訪問介護員として生活援助業務ができる
それぞれ詳しく解説していきます。
介護の資格や経験がない方でも、生活援助従事者研修を受講することで介護に関する基本的な知識を身につけることが可能です。
カリキュラムの中には施設見学などの実習が組み込まれているため、実際に介護の仕事がどのように行われているのかを学ぶこともできます。
事前に基本的な知識を身につけていることで早く業務に慣れたり、利用者との円滑なコミュニケーションにも繋がります。
また、自分の家族を介護することになった場合も、身につけた知識が役立つでしょう。
生活援助と身体介助の両方が行える介護職員初任者研修は、通常130時間の受講が必要です。
ただし、生活援助従事者研修を修了している場合は重複するカリキュラムが免除されます。
定められた130時間から生活援助従事者研修の59時間を除いた71時間の受講で、介護職員初任者研修の取得が可能になるのは大きなメリットの1つです。
生活援助従事者研修を取得後は、ホームヘルパーと呼ばれる訪問介護員として、利用者に生活援助サービスを提供できます。
生活援助サービスでは、利用者が日常生活で困難になってきたことに対して援助を行います。
利用者一人ひとりが日常生活を送りやすいように、配慮しながら援助することが大切です。
ただし、以下のような場合は生活援助サービスに当てはまらず、行うことができないので注意しましょう。
・食事や入浴、排泄の介助など利用者の身体に触れる必要がある場合
・利用者の家族の食事準備や部屋掃除、ペットの世話など利用者本人と直接関係がない場合
生活援助従事者研修は、各都道府県から指定されたスクールなどの養成機関で取得できます。
2018年に新設された新しい資格であるため、養成機関の数も少ないのが現状です。
受講を希望する方は、各都道府県や自治体のホームページで確認してみましょう。
生活援助従事者研修では、定められている59時間のカリキュラムを受講します。
30時間は通学、残りの29時間は自宅学習が可能です。
全てのカリキュラムを修了した後は筆記試験を受けます。
合格した場合は修了証が発行され、資格取得となります。
生活援助従事者研修を取得すると、生活援助を専門に行うことができます。
具体的な内容は以下の通りです。
・掃除
・洗濯や衣類の整理
・食事の調理や片付け
・ベッドメイク
・買い物代行
・薬の受け取り等
訪問介護で行う生活援助は、利用者本人が日常生活を送るために必要な援助を行うサービスです。
そのため、家族など利用者本人以外に対する援助や、日常生活に差し支えのない業務はサービスに含まれない場合があります。
仕事を始める際は、可能な援助について再度確認しておきましょう。
生活援助従事者研修を取得すると、生活援助を専門に行う訪問介護員として働くことができます。
しかし、給与は身体介護も行う介護職員初任者研修よりも低くなる場合がほとんどです。
介護職員の給与は、サービスを提供した際に事業所に支払われる介護報酬の金額によって変わります。
身体介護と生活援助それぞれの介護報酬について下記にまとめました。
基本報酬額(単位表記) | ||
身体介護中心型 | 20分未満 | 167単位 |
20分以上30分未満 | 250単位 | |
30分以上1時間未満 | 396単位 | |
1時間以上1時間30分未満 | 579単位 | |
生活援助中心型 | 20分以上45分未満 | 183単位 |
45分以上 | 225単位 |
参考:厚生労働省
生活援助と比べ、介護報酬が高い身体介護を行う介護職員初任者研修のほうが給与も高くなります。
給与を上げたい方は、介護職員初任者研修の取得を目指すのがおすすめです。
生活援助従事者研修を取得後は、訪問介護事業所に所属して勤務することになります。主な勤務形態は、以下の3種類です。
・常勤ヘルパー
・非常勤ヘルパー
・登録ヘルパー
常勤ヘルパーの勤務時間は、基本的に週5日、1日8時間です。
毎日事業所に出勤してから数件の訪問を行い、必要な生活援助サービスを提供します。
サービスがない時間は、事業所で事務作業を行う場合があります。
非常勤ヘルパーは出退勤時間が決まっていますが、常勤ヘルパーよりも勤務時間は短いです。
事業所に出勤してからの訪問や、サービスがない時間の事務作業などは、常勤ヘルパーと同じです。
登録ヘルパーは勤務可能な日時を登録し、事業所が調整したスケジュールに沿って訪問を行います。
週1回、短時間から勤務できるため、空いた時間を活用しながら働くことも可能です。
登録ヘルパーは生活援助のみ行うので、自宅から利用者宅へ直行直帰します。
そのため、事業所へ出勤する手間がかかりません。
生活援助従事者研修と介護職員初任者研修の大きな違いは、以下の3点です。
・取得に必要な学習時間
・提供できるサービス内容
・給与額
学ぶ科目は同じですが、介護職員初任者研修の学習時間が130時間であるのに対し、生活援助従事者研修は59時間と約半分の学習時間で取得可能です。
介護職員初任者研修修了者は、生活援助と利用者の身体に直接触れる身体介護を行います。
一方、生活援助従事者研修修了者は、家事の代行など利用者の日常生活をサポートする生活援助を専門に行います。
また、サービスを提供した際に支払われる介護報酬は生活援助よりも身体介護のほうが高くなるため、給与も身体介護を行う介護職員初任者研修のほうが高くなります。
本格的に介護の仕事を続けていきたい方や、給与面を重視する方には介護職員初任者研修の取得がおすすめです。
生活援助従事者研修はできて間もない資格ですが、在宅で生活する高齢者が増えるにつれ、需要は今後も増えていくことが予想されています。
生活援助業務を専門に行いながら介護業界に携われるため、身体介護を行うことに不安があるけれど介護業界で働いてみたい方や、家事の経験を活かして働きたい方にはおすすめです。
興味のある方は、受講を検討してみましょう。