介護職員基礎研修は、介護の品質を向上し、介護職員の総数を増やすために作られた研修制度です。
今記事では、介護職員基礎研修とは何か、廃止になったきっかけ、介護福祉士実務者研修との違いについてご紹介していきたいと思います。
介護の仕事に活きる資格について知りたい方は是非最後までご覧ください。
目次
介護職員基礎研修は、現在の介護職員実務者研修の基礎となった資格です。
社会福祉援助技術の習得や、介護や認知症における医療・看護についての基礎知識を学ぶことを目的に2006年に創設されましたが、2012年に廃止され「介護福祉士実務者研修」に移行されました。
少子高齢化が進み、認知症や一人暮らしの高齢者の増加が予想される中、介護保険制度が老後の安心を支える仕組みとして安定的に運営されるためには、介護の仕事に従事する人材を確保し、介護サービスの質の確保・向上を図り、介護職員の専門性を高めることが必要と考えられました。
そのようなことから、施設・在宅を問わず、介護職員として介護サービスに従事する職員の共通の研修として、介護職員基礎研修が創設されました。
高齢化が進むとともに、介護を必要とする利用者側や医療従事者から、より高い質の介護サービスが求められるようになり、介護福祉士としての専門性や資質の向上が介護業界の必須課題となりました。
介護や認知症における医療・看護についての基礎知識を学び、介護現場で実践し、資質と専門性が高いサービスを提供する人材を育てるために介護職員基礎研修が位置づけられていました。
介護職員基礎研修は講義と施設実習があり、以下の講義・演習を360時間、施設等での実習を140時間の合計500時間履修すると修了となります。
職員基礎研修が廃止された背景には、介護福祉士の受験要件の簡素化と、介護福祉士のさらなる資質の向上が挙げられます。
以前は介護職員初任者研修修了者でも実務経験が3年以上あれば介護福祉士の受験要件をクリアしていましたが、知識と技術のばらつきがみられました。
一定水準以上の知識と技術を習得した上で介護福祉士となり、介護福祉士の資質向上を目指すため、この受験要件はなくなりました。
さらに、訪問介護員養成研修1級過程と介護職員基礎研修を介護福祉士実務者研修に一本化することで、介護福祉士の受験要件ルートが簡素化されました。
また、医療の進化にともない喀痰吸引や経管栄養といった医療的ケアを必要とする高齢者が増加したことで、医療現場からは喀痰吸引や経管栄養の治療行為ではない医療的な日常生活援助行為を介護職員に許可してほしいと願う声が多くありました。
高齢者の医療と介護は関係性が高く、連携する必要性があります。
多様化する介護ニーズに対応するため、医療側からも介護職員の資質と専門性の向上が強く求められていたことも介護職員基礎研修が廃止された理由の一つです。
介護福祉士実務者研修が創設された理由は、介護福祉士の受験要件の複雑なルートを簡素化し、キャリアパスを整備する必要があったからです。
それまでは介護の資格が多くあり、国家資格である介護福祉士を受験するためのルートが複雑でわかりにくいだけでなく、自分が進むキャリアが想像しにくい状況でした。
また介護職員基礎研修と訪問介護員養成研修の目的が異なっており、介護業界全体の資質の統一化を図ることが難しい仕組みになっていました。
国としては介護に携わる人財の安定的確保のため、介護現場を魅力あるものにし、介護業界で長く働き続けることができるキャリアパスを整備することが重要だと、介護福祉士実務者研修を創設し、介護の資格を集約し、介護福祉士受験の要件をわかりやすくしました。
また、介護業界で長く働き続けるためのキャリアパスとして、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)→介護福祉士実務者研修(ホームヘルパー1級・介護職員基礎研修)→介護福祉士→介護支援専門員(ケアマネジャー)→認定介護福祉士と、自分のキャリア展望を描きやすくしました。
それまで筒形だった介護のキャリアパスが逆ピラミッド型になることで、上位の資格がより魅力あるものとなり、介護現場で働きながら高みを目指すことができる仕組みに変わりました。
また、上位の資格の専門性を高めることで、活躍の場が広がり、介護業界の社会的地位が向上していけば、自身のキャリアパスが構築しやすくなり、介護職員の離職も回避でき、安定的な人材確保が可能になります。
介護福祉士実務者研修の取得方法などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護福祉士実務者研修とは?取得方法や難易度、期間について徹底解説!
介護福祉士実務者研修の一部が免除になりますが、介護福祉士実務者研修で新たなカリキュラムとして追加された「医療的ケア」「医療的ケアの演習」の講習を受講しなくては、介護福祉士の受験要件を満たすことができません。詳しくみていきましょう。
次の2つの条件を満たすと介護福祉士実務者研修が免除されます。
介護職員基礎研修では施設実習がありましたが、介護福祉士実務者研修では施設実習がなくなり、介護福祉士としてより専門性の高い知識と技術を習得するため「医療的ケア」と「医療的ケアの演習」がカリキュラムに新設されました。
介護職員基礎研修を修了している人は、「医療的ケア」と「医療的ケアの演習」を受講すれば実務者研修を修了できます。
介護職員基礎研修修了科目は介護福祉士実務者研修の受講が免除されるため、受講時間が短く受講費用の負担も少ないので、介護職員基礎研修を修了していて介護福祉士の受験を考えている人は受講を検討してみてはいかがでしょうか。
ここでは介護福祉士実務者研修を修了するとできることについて解説していきます。
介護業務での特定の医療行為とは、喀痰吸引と経管栄養のことです。
実務者研修を修了しても喀痰吸引と経管栄養の医療行為はできません。
登録研修機関で喀痰吸引等研修(実務研修)を受講することで行うことができるようになります。
研修は講義と演習を合わせて9時間、実地研修は最短で1日、長くて3日ほどで終わります。
費用も安く抑えられており、介護技術の向上やキャリアアップのために受講する人が増えています。
近年は高齢者だけでなく、医療的ケアを必要とする子どもも増加しており、喀痰吸引と経管栄養ができる介護職員は活躍の場が広がっています。
また転職の際の自己アピールとしても有利になります。
サービス提供責任者は「サ責」と略して呼ばれています。
訪問介護事業所には、利用者40名に対し1名のサービス提供責任者を配置しなくてはいけません。
サービス提供責任者になれる条件は次の3つです。
介護福祉士実務者研修を修了するとその要件がクリアになり、サービス提供責任者に就くことができます。
サービス提供責任者は訪問介護業務はもちろんのこと、利用時の窓口、利用者・ご家族からの相談対応、訪問介護計画書の作成、モニタリング、スタッフ指導、ケアマネジャーやご家族との調整、サービス担当者会議への出席、シフト管理など事業所にかかる多くの業務をこなすプレイングマネジャーで、大変やりがいのある仕事です。
キャリアアップのためにサービス提供責任者を目指す人も少なくありません。
また、サービス提供責任者にとって介護福祉士実務者研修での「介護過程の展開」の学びの重要性は高く、自立支援を念頭においた訪問介護計画書作成から評価まで一連のサイクルに生かされてきます。
介護福祉士実務者研修での学びが最大限に生かせるのが、サービス提供責任者だと言っても過言ではないでしょう。
ここでは介護職員基礎研修についてよくある質問について答えていきます。
介護職員基礎研修は未経験でも受講できました。
現在、介護職員基礎研修は廃止されたので受講はできません。
未経験の人は介護職員初任者研修もしくは認知症介護初任者研修の受講が必須となります。
2021年より介護業界未経験者は、認知症介護初任者研修の受講が必須となりましたが、訪問介護(ホームヘルパー)業務を希望する人はホームヘルパー2級過程修了もしくは介護職員初任者研修修了以上の資格がないと業務に就くことができないので注意が必要です。
介護職員基礎研修が廃止されたことでキャリアパスが明確となり、下位の資格から上位資格を目指すルートになりました。
介護の資格の順位として、介護職員初任者研修→(介護職員基礎研修)→介護福祉士実務者研修→介護福祉士→介護支援専門員→認定介護福祉士となります。
介護職員基礎研修は介護福祉士実務者研修に移行しましたが、介護福祉士を受験する場合は「医療的ケア」「医療的ケア演習」の受講が必須となります。
現在、介護職員基礎研修は廃止されているので、介護福祉士実務者研修にかかる費用をみていきましょう。
費用は保有資格によって異なってきます。
保有している資格の単位を介護福祉士実務者研修に組み込むことが可能だからです。
大まかな費用は下のとおりです。
介護福祉士実務者研修は以下の要件を満たしていれば雇用保険の教育訓練給付金制度を利用することもできます。詳しくはハローワークにお問い合わせください。
母子家庭や父子家庭の人は「母子家庭自立支援制度」を利用することも可能です。
これは、地方自治体が母子家庭の母親・父子家庭の父親に対して、就労のために資格取得や技能の習得を支援する制度のことです。
受講生本人が支払った受講料金の20%程度(10万円が上限)が支給されます。
受講前に都道府県に申請する必要がありますので、お住いの都道府県にお問い合わせください。
市町村によっては介護職員の確保のためや、キャリアアップのために助成制度を設けていたり、社会福祉協議会の貸付制度などがある場合もありますので、調べてみるとよいでしょう。
スクールによって費用の差があるのは、つぎの5つが考えられます。
駅近など立地がよいところは、講座の開催で借りるスペースの賃料が高いため、費用が高くなる傾向があります。
最近は費用を抑えるためレンタルスペースで開催される講座も増えています。
ヘルパー2級の正式名称は「訪問介護員養成研修2級過程」です。
介護職員基礎研修と訪問介護員養成研修2級過程の資格は目的が異なります。
介護職員基礎研修は、介護業務の基本的な知識や技術の学びとなりますが、訪問介護員養成研修2級過程は訪問介護員を育成するための資格です。
訪問介護員養成研修には3級から1級まであり、1級取得者は訪問介護事業所のサービス提供責任者に就くことができます。
現在は訪問介護員養成研修は廃止され、介護職員初任者研修に一元化されています。
介護職員基礎研修は廃止されましたが、介護福祉士実務者研修との関連性などにも触れて解説しました。
介護サービスは対人サービスですので、介護技術はもちろんのこと、人と共感できる豊かな人間性を持ち合わせていなくてはなりません。
介護職員基礎研修が廃止されたことを機に、介護の資格が簡素化され、キャリアパスが描きやすくなりました。
これからの自分のキャリアを考えながら、上級の介護資格を取得していきましょう。