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介護福祉士を最短で取得するには?積んでおいた方が良い実務経験とは?

2023-10-19

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護福祉士は、介護に関する唯一の国家資格です。しかし、実際に資格を取得するには多くのルートがあります。

ここでは、そのルートについての説明だけでなく、介護福祉士を最短で取得するためにはどのルートを選ぶべきか、また資格を取得する前に積んでおいた方が良い実務経験まで詳しく解説します。

ぜひ、最後までお読みください。

 

介護福祉士とは

1987年に成立・公布された「社会福祉士及び介護福祉士法」を根拠とする国内で介護に関する唯一の資格で、福祉系においても、社会福祉士・精神保健福祉士と並ぶ、名称独占資格の国家資格です。

 

参考:厚生労働省

 

以前までは、「ホームヘルパー2級」「ホームヘルパー1級」「介護職員基礎研修」など多くの研修・資格があったため、「介護福祉士」になるためのルートが複雑でした。

そのような問題があったため、「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律(平成19年法律第125号)」によって介護福祉士実務者研修が設立され、ヘルパー3級は廃止、ヘルパー2級は介護職員初任者研修へ、ヘルパー1級は介護福祉士実務者研修として転換されました。

この結果、介護現場において介護福祉士国家資格を上位と位置づけられたこともあり、介護福祉士の注目は益々高まっています。

 

参考:厚生労働省

 

仕事内容

主な仕事内容は下記です。

 

  • 身体介護
  • 生活援助
  • 介護相談・アドバイス
  • 社会活動支援
  • チームマネジメント

 

身体介護

身体に直接触れて行う介護のことで、訪問介護・施設・病院など多くの場面で行われます。なお、身体介護は下記の3つのように厚生労働省が定義しています。

 

  1. 利用者の身体に直接接触して行う介助サービス

(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)

  1. 利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス
  2. その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス

 

参考:厚生労働省:「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について

 

主な「身体介護」は下記などがあります。

 

食事介助

身体機能・認知機能などの低下が原因で、1人で上手く食事ができない場合に介助をします。

なお、食事介助は食べる動作を介助するだけでなく、調理・配膳・後片付け・食後の口腔ケアなど、食前後の支援も含まれます。

 

排せつ介助

排せつが難しい方に介助を行います。具体的な内容は、トイレへの誘導・衣服の着脱・おむつ交換・排泄物の処理などがあります。

 

入浴介助

入浴が難しい方に介助を行います。具体的には、入浴の準備・衣類の着脱・身体や髪の洗浄・身体の清拭などです。

 

移動・移乗介助

起き上がる」「座る」「歩く」といった行為が困難な場合、移動や、車椅子・車両などへの乗り移りを介助します。

 

更衣介助

衣類の着脱など着替えの介助を行います。特に長時間ベッド上にいる方や寝たきりの場合などは無意識に汗をかいてしまうため、衣類を適宜着替えることは重要です。

 

見守り的援助

介護福祉士を含めた介護士は利用者さんを介助するだけでなく、自立した生活を促すために、できる限りのことをご自身で行ってもらう必要があるため、利用者さんのサポートをしつつ横で見守ります。

例えば、移動時に転倒しないように側を歩く、ご自身で服薬できるよう手助けするなどが当てはまります。

 

その他

その他にも必要に応じて下記のような援助を行います。

 

  • 医師の指示によって特別な配慮が必要な食事の準備
  • 服薬介助
  • 痰(たん)の吸引
  • 経管栄養
  • 通院介助
  • 外出介助

 

上記の中でも「痰の吸引」「経管栄養」は専門的な医療行為です。そのため、これら2つに関しては介護福祉士の資格だけでなく「喀痰(かくたん)吸引等研修」を修了している必要があります。

 

生活援助

生活に必要な家事が困難な場合に行う日常生活支援のことで、主に訪問介護の際に行います。

具体的な内容は下記のような内容です。

 

  • 掃除:居間の掃除、ゴミ出しなど
  • 洗濯:衣類を洗う、干す、たたむ、整理まで
  • 買い物代行:利用者に代わって、生活に必要な日用品の買い物を行う
  • 薬の受け取り:定期的な薬局や病院での薬の受け取り

 

参考:厚生労働省:訪問介護サービスの生活援助の取扱いについて

 

介護相談・アドバイス

利用者さんやその家族から介護や日常生活を過ごすにあたって直面する問題や相談に応じて、アドバイスを行います。

具体的には、介護食の作り方・ベッドから車椅子への移乗介助方法、ポータブルトイレの使い方など、介助の基本的な内容だけでなく、介護を行うにあたって必要な身体・精神的状況や、介護用品の選び方などがあります。

利用者さん・家族さんともに多くの悩みや不安を抱えているため、相談を受けてアドバイスをすることでその悩みや不安を軽減できます。

 

社会活動支援

介護が必要な状態になることで孤立してしまわないように、就労支援・地域活動の情報提供・社会参加支援などがあります。

社会活動支援を積極的に行うことにより、行動範囲が限られ孤立することがなく、社会の一員として安定した生活が営めることができます。

 

チームマネジメント

介護福祉士は介護業界で唯一の国家資格になるため、介護職のチームリーダーとして活躍することが期待されています。

そのため、経験が豊富な介護福祉士の場合であれば、施設内のマネジメントやチームケアの役割を任されることも多々あり、介護スタッフの指導や育成、業務管理を行い、施設全体におけるサービスの質を向上して、より良い介護サービスを提供することが目的です。

 

今後の国内における高齢化

介護福祉士の国家試験が始まる前の高齢化率は、1950年に4.9%、以降一貫して上昇が続いており1970年で7%を超えて高齢化社会となり、その後も、1985年に10.3%、社会福祉士及び介護福祉士法が制定された1987年でも10.9%と高齢化率が上昇しています。

参考:統計局

 

なお、2019年には65歳以上の割合は28.4%で3,589万人にもなっています。この状況は今度も継続し、2036年には33.3%と3人に1人、2065年には38.4%と国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されています。

 

参考:内閣府

 

高齢化率が上昇するにつれて、要介護者も介護保険制度が開始された2000年以降増加しています。

厚生労働省の「介護保険事業状況報告」の2018年分によると、要介護(要支援)認定者数は、655.8万人となっており、2015年より3年間で36万人増加しています。また、「令和2年度 介護保険事業状況報告」では、2020年度の要介護(要支援)認定者数は約682万人と発表しており、2019年度と比較すると約2.0%増加しています。

将来的には、要介護(要支援)認定者数は、2035年までは大きく増加していき、2040年にピークを迎え、988万人となると推計されています。

 

参考:厚生労働省

参考:厚生労働省

参考:経済産業省

 

介護業界の人員不足は深刻

国内は高齢化率が今後も高くなるにも関わらず介護業界の人員不足が深刻です。その深刻さは、厚生労働省が令和3年に発表した、「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」では、将来的に必要な介護人数とそれに対して不足している人数を発表しています。

 

介護職員の必要数

人手不足人数

2023年度

約233万人

約22万人

2025年度

約243万人

約32万人

2040年度

約280万人

約69万人

 

参考:厚生労働省

 

現時点でも、公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和元年度介護労働実態調査」では、事業所単位で65.3%が人手不足を感じています。その中でも特に訪問介護職員だけでは81.2%が人手不足を感じていることから、人員不足の深刻さが分かります。

 

参考:公益財団法人介護労働安定センター

 

介護福祉士になるためのルート

介護福祉士を取得するためには下記の3つのルートがあります。

 

  1. 実務経験ルート
  2. 養成施設ルート
  3. 福祉系高等学校ルート

 

実務経験ルート

介護現場で働きながら国家試験を受験するルートとなり、他のルートよりも費用負担が少ないのが特徴です。

しかし、実務経験ルートから介護福祉士になるためには、下記の条件を満たしておく必要があります。

 

  • 従業期間3年(1095日)以上
  • 従事日数540日以上
  • 実務者研修の取得

 

実務者研修とは

介護福祉士実務者研修とも呼ばれており、介護職員初任者研修の上位に位置づけられている研修で、「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律(平成19年法律第125号)」によって設立されました。

 

参考:厚生労働省

 

資格を取得するためにはあらかじめ定められた20科目・合計450時間のカリキュラムを履修する必要があります。

ただ、実務者研修を受講する前に介護職員初任者研修を取得している場合は、450時間のうち合計9科目・130時間の受講が免除されるため、11科目・320時間の受講内容です。

なお、受講費用の目安は下記です。

 

取得している資格

受講費用

免許資格がない方

11~13万円程度

介護職員初任者研修 修了者の方

9~10万円程度

ホームヘルパー2級 修了者の方

9~10万円程度

ホームヘルパー1級 修了者の方

7~8万円程度

基礎研修 修了者の方

3~4万円程度

 

また、具体的なカリキュラムは下記です。

 

介護職員実務者研修のカリキュラム

科目

受講時間

介護職員初任者研修修了者が免除される科目

人間の尊厳と自立

5時間

社会の理解Ⅰ

5時間

社会の理解Ⅱ

30時間

免除されない

介護の基本Ⅰ

10時間

介護の基本Ⅱ

20時間

免除されない

コミュニケーション技術

20時間

免除されない

生活支援技術Ⅰ

20時間

生活支援技術Ⅱ

30時間

介護過程Ⅰ

20時間

介護過程Ⅱ

25時間

免除されない

介護過程Ⅲ(スクーリング)

45時間

免除されない

発達と老化の理解Ⅰ

10時間

免除されない

発達と老化の理解Ⅱ

20時間

免除されない

認知症の理解Ⅰ

10時間

認知症の理解Ⅱ

20時間

免除されない

障害の理解Ⅰ

10時間

障害の理解Ⅱ

20時間

免除されない

こころとからだのしくみⅠ

20時間

こころとからだのしくみⅡ

60時間

免除されない

医療的ケア

50時間

免除されない

受講時間合計

450時間

320時間

 

*医療的ケアに関しては、講義50時間のほかに演習を受ける必要があります。

 

参考:厚生労働省

 

養成施設ルート

3つのルートで最も早く取得をできるメリットがあります。

ただ、短期大学・専門学校に通うため費用面の負担が高くなる傾向です。

 

福祉系高校ルート

福祉系高校、又は福祉系特例高等学校を卒業し、国家試験を受けることで介護福祉士の資格取得を目指すルートです。

 

参考:厚生労働省

最短で取得するためのルート

介護福祉士を最短で取得するためのルートは「養成施設ルート」です。このルートの場合、養成施設卒業後に国家試験を受験し、合格すれば介護福祉士を取得できます。

なお、通う期間は下記のように異なります。

 

  • 普通科の高校を卒業した場合:2年
  • 福祉系大学・社会福祉士養成施設・保育士養成施設を卒業した場合:1年

 

上記から分かるように福祉系大学・社会福祉士養成施設・保育士養成施設を卒業した場合であれば、最短1年で資格を取得できます。

なお、「実務経験ルート」「福祉系高校ルート」は最短でも3年間必要です。

 

「養成施設ルート」は卒業年度によって取得条件が異なる

法改正によって、同じ「養成施設ルート」でも卒業年度によって下記のように異なります。

 

2016年度卒業生

2016年度(2017年3月31日まで)の卒業生は、養成施設を卒業すれば、国家試験を受験しなくても資格を取得できます。

 

2017年~2026年度卒業生

2017年~26年度(2017年4月1日~2027年3月31日まで)に養成施設を卒業する場合は、試験を受けて不合格の場合でも登録申請すれば「卒業後5年間は介護福祉士資格取得者と見なされる」経過措置が設けられています。

しかし、卒業後5年以降も資格を有効にするには下記の条件を満たしておく必要があります。

 

  • 卒業後5年間以内に介護福祉士国家試験に合格すること
  • 卒業後5年間続けて介護などの実務に携わること

 

2027年度以降の卒業生

2027年度(2027年4月1日以降)の卒業生は、介護福祉士試験の受験が必須となる予定です。特に試験問題の免除なども設けられていないため、養成施設の勉強とともに国家試験の勉強も必要です。

 

資格取得に必要な費用

最短で資格を取得するのは「養成施設ルート」ですが、下記のようにそれぞれによって資格取得に必要な費用は異なります。 

 

受験ルート・保有資格

費用

実務経験ルート

無資格者

10万円程度

介護職員初任者研修・ホームヘルパー2級

8万円程度

介護職員基礎研修

3万円程度

養成施設ルート

100~200万円

福祉系高校ルート

公立:年間50万円程度

私立:年間100万円程度

 

上記から分かるように、「養成施設ルート」は最短で資格を取得可能ですが、必要費用は最も高くなります。

 

資格取得前に積んでおいた方が良い実務経験

介護福祉士を取得する前に少しでも介護現場で実務経験があると、資格取得に向けての知識の繋がりや、取得後のモチベーションも高まります。

介護業務であれば、どのような内容でも貴重な経験ですが、せっかく実務経験を得るのであれば、実務経験ルートで実務経験の対象となる施設・職種で経験を積むのがおすすめです。

なお、実務経験として認められるには、下記のような指定の施設・職種で働き、「主な業務が介護などである」ことが必要です。

 

  • 高齢者分野の施設・職種
  • 障害者分野の施設・職種
  • 児童分野の施設・職種
  • その他分野の施設・職種
  • 介護などの便宜を供与する事業の施設・職種

 

これらの中でも、特に実務経験者が多い、「高齢者分野の施設・職種」の詳細は下記です。

 

施設・事業

職種

・老人デイサービスセンター

・指定通所介護(指定療養通所介護を含む)

・指定地域密着型通所介護

・指定介護予防通所介護

・第1号通所事業

・指定認知症対応型通所介護

・指定介護予防認知症対応型通所介護

・老人短期入所施設

・指定短期入所生活介護

・指定介護予防短期入所生活介護

・養護老人ホーム

・特別養護老人ホーム

・指定介護老人福祉施設

・指定地域密着型介護老人福祉施設

・軽費老人ホーム

・ケアハウス

・有料老人ホーム

・指定小規模多機能型居宅介護

・指定介護予防小規模多機能型居宅介護

・指定看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

・指定訪問入浴介護

・指定介護予防訪問入浴介護

・指定認知症対応型共同生活介護

・指定介護予防認知症対応型共同生活介護

・介護老人保健施設

・介護医療院

・指定通所リハビリテーション

・指定介護予防通所リハビリテーション

・指定短期入所療養介護

・指定介護予防短期入所療養介護

・指定特定施設入居者生活介護

・指定介護予防特定施設入居者生活介護

・指定地域密着型特定施設入居者生活介護

・サービス付き高齢者向け住宅

・介護職員

・介護従事者

・介護従業者

・介助員

・支援員(養護老人ホームのみ)


など主な業務が介護などである者

・指定訪問介護

・指定介護予防訪問介護

・第1号訪問事業

・指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護

・指定夜間対応型訪問介護

・訪問介護員

・ホームヘルパー


サービス提供責任者としての業務は対象外

・指定訪問看護

・指定介護予防訪問看護

・看護補助者


など主な業務が介護などである者

 

また、人員配置基準や運営要綱などに示された「主たる業務」が、介護などの業務と認められない下記の職種は、実務経験の対象にならないため注意が必要です。

 

  • 生活相談員、支援相談員などの相談援助業務を行う職種
  • 医師、看護師、准看護師
  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの機能訓練担当職員(業務を補助する職員を含む)
  • 心理指導担当職員、作業指導員、職業指導員
  • 事務員、介護支援専門員、調理員、栄養士、計画作成担当者、福祉用具専門相談員

 

その他にも、介護現場で働いていても、下記のように主たる業務が介護などの業務ではないことが明らかな職種も対象ではありません。

 

  • 相談員
  • 警備員
  • 運転手
  • 用務員
  • 清掃員
  • あん摩マッサージ指圧師 など

 

まとめ

今回は、介護福祉士を最短で取得するためのルートと、積んでおいた方が良い実務経験について紹介しました。

介護福祉士は「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高等学校ルート」の3ルートありますが、その中でも「養成施設ルート」で福祉系大学・社会福祉士養成施設・保育士養成施設を卒業した場合であれば、最短1年で資格の取得が可能です。

しかし、卒業した年度によって取得条件が異なる点には注意が必要です。

また、積んでおいた方が良い実務経験に関しては、「実務ルート」で実務経験として認められる業務内容がおすすめです。

実務経験として認められる事業・施設は多くありますが、実務経験として認められるには、「主な業務が介護などである」ことが必要です。

今後、国内の高齢化率はより高くなるため、今まで以上に介護福祉士の重要性は高まると予測されます。

 

 

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