介護保険サービスを利用するためには、要介護度の認定を受ける必要があり、その結果で利用できる介護サービスや回数も変わります。
この記事では、要支援の認定を受けた人がどのような介護サービスをどのくらいの頻度で利用できるか解説していきます。
目次
介護認定における「要支援」や「要介護」は、介護保険サービスを利用する上で基準となるものです。
介護が必要な状態に応じて、要支援1・要支援2・要介護1〜5の7段階に分かれています。
「要支援1」は一番自立に近く、「要介護5」が最も介護が必要な状態です。
要支援1とは、介護保険の認定の中で最も自立に近い状態です。
基本的に身の回りのことは自分でできますが、日常生活の中で部分的に介助が必要になっている状態をいいます。
例えば、お風呂にはひとりで入れますが、浴槽は洗うことができないといった状態です。
要支援1と同様、日常生活の基本的な動作は行えますが、運動機能に少し衰えが見られるため、部分的な介助は要支援1より多くなります。
例えば、お風呂にはひとりで入れますが、背中が洗えない、浴槽をまたぐのが難しいといった状態です。
要支援1と要支援2では、ひとりでできる動作に違いが出てきます。
要支援別の状態像に定義はありませんが、おおむね以下のような状態です。
できる動作の例 | |
要支援1 | 食事・排泄・片足での立位・歩行 |
要支援2 | 食事・排泄・両足での立位・杖歩行 |
要支援も要介護も区分ごとに区分支給限度額が異なり、介護度が重くなるほど利用できる介護サービスも増えていきます。
要支援の区分支給限度額は以下の通りです。
区分支給限度額 | |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要支援1・2の人が訪問介護(ホームヘルパー)や通所介護(デイサービス)を利用するときには、「介護予防・日常生活支援総合事業」の介護サービスを利用することになります。
これは市区町村が実施している事業のため、それぞれ独自に回数が決められています。
以下の図は三重県津市の例ですが、全国的にみても同じような回数を設定している市区町村が多いです。
週当たりの利用できるサービス回数 | |
要支援1 | 訪問型サービス:週2回程度 通所型サービス:週1回程度 |
要支援2 | 訪問型サービス:週2回以上 通所型サービス:週2回程度 |
参考:三重県
同じ要支援でも、要支援1と要支援2では、介護にかかる時間が違います。
「要介護認定等基準時間」とは介護にかかる手間を時間として出したもので、コンピューターによって算出されるものです。
実際に自宅で行われている介護の時間とは異なりますが、要支援2の方が要支援1より介護にかかる時間は多くなります。
要介護認定等基準時間 | |
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要支援2 | 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
参考:厚生労働省
要支援の認定を受けた場合、「介護予防サービス」を利用することができます。
利用者に合った介護予防サービスを利用していくことで、身体機能が維持できることや、認知症の進行を抑えられるでしょう。
ここからは、要支援区分の人が使える介護予防サービスや費用について説明していきます。
要支援の認定を受けた人は、以下のような介護予防サービスが利用できます。
・訪問型サービス
・通所型サービス
・介護予防訪問入浴介護
・介護予防訪問看護
・介護予防訪問リハビリテーション
・介護予防居宅療養管理指導
・介護予防通所リハビリテーション
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護(要支援2から利用可能)
・介護予防短期入所生活介護
・介護予防短期入所療養介護
・介護予防福祉用具貸与(一部条件あり)
・特定介護予防福祉用具販売
・介護予防特定施設入居者生活介護
参考:厚生労働省
このように多くの介護予防サービスがあるため、利用者に合ったサービスが利用できるように、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。
要支援の人は、さまざまな介護予防サービスが利用できます。
ここでは、一部ですが「サービス費用の目安」をご紹介します。
訪問型サービス・通所型サービス | 市区町村ごとに異なる |
介護予防訪問リハビリテーション | 要支援1:20,530円 要支援2:39.990円 ※1カ月あたり |
介護予防訪問看護 | 4,500円 |
このようにサービス費用は決まっていますが、提供する事業所により若干費用は異なるため、目安としてお考えください。
利用者負担は、介護サービスにかかった費用の1〜3割です。
ここでは要支援に関するよくある質問を解説していきます。
要支援と要介護では、利用者の心身の状況に違いがあります。
要支援では、おおよそ身の回りのことは自分ででき、認知症があったとしてもそれほど症状は重くなく介護負担も少ない状態です。
そのため、区分支給限度額が少ないことや、訪問型サービスや通所型サービスの回数制限もあり、あまり多くの介護サービスが利用できません。
しかし、要介護になると日常生活において常時介護が必要になり、家族の介護負担も大きくなっていきます。
要介護度が高くなるにつれ区分支給限度額も増えていくため、多くの介護サービスが利用できるようになります。
認知症と診断がついていても、症状が軽く日常生活にあまり支障がない場合は、要支援の認定が出ることがあります。
しかし、徘徊やせん妄などの周辺症状がみられると日常生活に支障が出てくるため、要介護認定がおりることが多いようです。
要介護認定が出る可能性があるのは、以下のような状態です。
・「認知症高齢者の日常生活自立度」がおおむねⅡ以上
・一定の介護が必要であったり、症状の程度により、予防給付が適切に利用できないと判断された場合
参考:厚生労働省
要支援1と2では、受けられるサービスに多少の違いがあります。
まず、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、要支援2から利用が可能になるため、要支援1の人は利用ができません。
また、訪問型サービス・通所型サービスは利用できる上限回数が異なります。
要支援1の場合
・訪問型サービス:週2回程度
・通所型サービス:週1回程度
要支援2の場合
・訪問型サービス:週2回を超える程度
・通所型サービス:週2回程度
これらはあくまでも目安のため、実際に利用される際にはケアマネジャーや地域包括支援センターにお尋ねください。
今回は要介護度区分の内、「要支援1」と「要支援2」について解説しました。
同じ要支援の区分であっても、サービスの内容、頻度、介護保険の支給額など細かな違いが存在します。
実際に要支援の認定を受けたら、どの様なサービスを受けることができるのかなどを調べるようにしましょう。