訪問介護において、訪問すると利用者が不在だったり、移動中にキャンセルの連絡があったりと急なキャンセルに頭を抱える事業所も少なくありません。
そのような時、キャンセル料の請求はできるのでしょうか。
また、トラブルを回避する方法なども合わせてみていきましょう。
目次
訪問介護でキャンセル料の請求をすることは可能です。
訪問介護の事業は、訪問介護員が自宅に伺ってサービスを提供し、介護を行ったことによる報酬を介護保険制度内で受け取る仕組みになっています。
サービス料で事業運営を行っているため、サービスを行わないと報酬を得ることができません。
特段の事情がある場合は仕方がないですが、自己都合による急なキャンセルは事業所にとって損失になるため、請求することが可能です。
しかし悪質な内容の料金や事情を考慮せずに請求してしまうとトラブルの原因となるため注意が必要になります。
常識的な範疇でキャンセル料を設定し、事前にキャンセル時の対応方法を利用者側へ伝えておく必要があります。
訪問介護事業は訪問介護員へ給料を支払い、働いてもらうことで運営を行っています。
そのためサービスするかどうかではなく、訪問介護員がその訪問に時間を割いたかどうかが問題になってきます。
訪問介護員はあらかじめ利用者の自宅に伺う予定でスケジュールを組んでいます。
そのための準備や他の訪問の調整などサービス以外にもさまざまな業務があります。
そのため、キャンセルになっても賃金が発生してしまうケースもあります。
キャンセル料を請求できる条件として、下記のような条件が考えられます。
このような場合にはキャンセル料を請求できるケースが多いです。
しかしキャンセル料を徴収することでトラブルになる可能性もあるため、1つずつ条件をしっかりと確認していきましょう。
キャンセルの理由が利用者の都合によるものである場合には、キャンセル料を請求できます。
下記のような理由が利用者都合によるものに該当します。
このような場合は未然に訪問介護員が訪問することを中止することができます。
空いた時間は訪問介護員に他の業務や代替で他利用者の訪問に行けるはずが、機会損失になってしまいます。
事前にわかっていることであれば、早めに伝えるように促したり定期的にカレンダーを訪問介護員が確認するようにして未然に防ぎましょう。
キャンセルをするタイミングが直前の場合もキャンセル料が発生するケースです。
訪問介護員は訪問するために前もって情報を確認したり、必要な物品を準備したりします。
キャンセルが直前にあると、訪問介護員は稼動してしまっているため、事業所は賃金を支払う必要が出てきます。
報酬は入らないのに賃金が発生すると事業所運営にも影響が出てきてしまいます。
しかし例外もあり、急な体調不良や救急搬送による不在の場合など、致し方無い事情の場合はキャンセル料の徴収は難しい可能性もあります。
キャンセル料の取り扱いについては、契約の際に説明を受ける重要事項説明書を必ず確認しましょう。
重要事項説明書で記載がないまま徴収しているのはトラブルの元になってしまいます。
反対に重要事項説明書に記載してあり、始めにきちんと説明しているのであれば問題はありません。
またキャンセルの連絡を受けたときに、キャンセル料の支払いを請求する旨を説明しておきましょう。
その都度、キャンセル料がかかることを伝えることにより、利用者本人にも自覚が生まれ、前もって連絡をくれるようになることがあります。
急なキャンセル、事前に通達がないキャンセルはキャンセル料を徴収できることがわかりました。
では、どの程度の額を徴収するのが適当なのでしょうか。
あまりにも高額であるとクレームの対象となり、少なすぎると損失になってしまいます。
適切なキャンセル料の請求額の上限と下限をみていきましょう。
きちんと理解していることで適切な運営につなげることができます。
キャンセル料の上限で適切なのは、訪問時に実施したサービスの最高金額と考えられます。例えば、身体介護20分以上30分未満であれば、2490円(1割負担だと249円/回)のため、この金額が本来事業所に入ってくる報酬額になります。
しかしキャンセルとなると、約2500円の報酬がなくなるうえに訪問介護員の賃金を支払う必要があるため、事業所としてはさらに大きな損失になります。
未然に防ぐことができるならしっかりと防いだ方が利用者も事業所も良いことがわかります。
参考:厚生労働省
実際には利用者に請求できる金額は法律で定められていません。
そのため、高額なキャンセル料を請求しても支払い能力があれば問題はありません。
しかし福祉の事業であり、高齢者や障害者を相手としているため、悪質なものは行政の指導対象となるでしょう。
サービスを行っていないのに全額を請求するのは、利用者の負担が大きくなってしまう場合もあります。
しかし、訪問介護員の賃金が発生しないのは大きな問題ですので、訪問介護員の時給が支払える程度の金額が下限となるでしょう。
訪問介護員の時給設定は事業所によって違いますが、例として時給1000円としましょう。
そうすると身体介護20分以上30分未満の場合には時給換算すると500円です。
この500円をキャンセル料として支払って受け取るように設定するとよいでしょう。
しかし、時給は訪問介護員の経験や資格などで変わってくることも大いにあります。
訪問介護員によってキャンセル料が変わると利用者も混乱してしまったり、訪問介護員を選別してしまう可能性があるため、注意が必要です。
キャンセル料の請求時はトラブルが発生しやすいタイミングです。
サービスを受けていないのに支払いを請求されるのは理不尽だと思われる方も少なくありません。
では、どのようにするとトラブルが回避できるのでしょうか。
方法は下記のようなものが一例としてあります。
前項でも説明した通り、訪問介護員によってキャンセル料が変動したりサービス内容によって変わってしまうとトラブルが発生しやすくなるため、キャンセル料は一律で決めておくことをおすすめします。
キャンセル料を一律で設定しておき、重要事項説明書にキャンセル料の取り扱いとして記載しておきましょう。
そうすることで、何かトラブルがあったときにも重要事項説明書を確認しながら、利用者に説明することができます。
訪問介護では重要事項説明書を用いて契約を行います。
重要事項説明書の中にキャンセル料の項目を設けておき、しっかりと説明しましょう。
また重要事項説明書に目印や付箋をつけて利用者に渡すことも効果的です。
もしも理解力が低下している方等の場合には、契約時に家族や後見人、ケアマネジャーなどに立ち合いを求めて同席してもらうようにしましょう。
そうすることにより、トラブルが発生した場合に確認を取ることができたり、急なキャンセルを未然に防ぐことができるでしょう。
もしもキャンセル料について理解が乏しかったり、利用者のキャンセル回数が多く、どれくらい請求を行っていいのか分からない場合には、担当ケアマネジャーに相談するようにしましょう。
ケアマネージャーを頼ることで、利用者とのトラブルを避けることもできる可能性があるため、分からないこと、理解しているつもりでも少し不安なところがある場合にはケアマネージャーに相談するようにしましょう。
今回は、訪問介護でキャンセル料を請求できるかについて解説しました。
訪問時の不在や急なキャンセルは訪問介護員の賃金が発生してしまうため、事業所としても頭を悩ますところでしょう。
キャンセル料についてはきちんと重要事項説明書に記載しておくことでトラブルを回避ができます。