「アセスメントって何に気をつけたらいいの?」と悩みを抱える訪問介護員の方は多いのではないでしょうか。
そんな方のために、今回の記事では訪問介護のアセスメントとは何か、アセスメントの目的と5つのポイント、そしてアセスメントシートの書き方などについて徹底解説します。
この記事を読めば、よりよい介護サービスにつながるようなアセスメントとは何か完全に理解することが出来ます。
ぜひご覧ください。
目次
訪問介護におけるアセスメントでは、利用者のADL(日常生活動作)・家族構成・生活環境などさまざまな要素を把握して分析を行います。
一般的にサービス提供責任者によって行われ、ご本人やご家族にヒアリングをします。
事業所によっては、実際に介護を担当する職員が同席する場合もあります。
介護サービスに携わる人は誰でもアセスメントを行う可能性があるため、目的やポイントをしっかりと理解しておく必要があります。
アセスメントの目的は、利用者の身体の状態や家族の実情などを把握して、訪問介護に求める内容を明確にすることです。
アセスメントを行うことで課題や需要が明確となり、利用者の方にとって最適な介護サービスを提供できます。
同じ介護度の利用者でも、自立の程度や交友関係・自宅周辺の環境などは異なります。
利用者や家族の話を細かく聞き、実情に合った適切な訪問介護計画を作成するためにも、アセスメントは重要な役割を担っています。
正確なアセスメントを行うには、次の5つのポイントがあります。
1.事前準備を徹底する
2.相手が答えやすい質問を心がける
3.細かいところまで情報収集を徹底する
4.利用者のご家族の要望も質問する
5.アセスメントシートにしっかりと記入する
順番に解説していきます。
アセスメントを行うには、事前に情報収集が必要です。
訪問介護計画を作成するには多くの情報が必要となるため、利用者本人やご家族以外に、必要に応じて以下のような多方面の職種の方と連携をとりましょう。
・ケアマネージャー
・医師
・看護師
・地域包括センター
・理学療法士
・作業療法士 等
事前に関係者から情報を得ておくと、利用者の困っていることや求めていることを理解しやすくなり、アセスメントをスムーズに進められます。
アセスメントの際の質問は、相手が答えやすい具体的な内容や、答えたいと思わせるような内容になるよう考慮しましょう。
利用者やご家族から多くの需要や悩みを探るには、一方的に会話を続けていても本心を引き出せません。
質問は「はい」「いいえ」で答えられるような内容にしたり、食事に関する質問なら時間帯や茶碗の大きさなど細部まで行いましょう。
アセスメントでは、利用者やご家族の潜在的なニーズに気づかなければならないので、ヒアリングのスキルが大切です。
利用者の中には、自立を目指す人もいれば、現状維持を望む人もいるでしょう。
特定の介護サービスを苦手とする人もいます。
一人ひとり異なる考え方を持っているので、じっくり話を聞いて介護のプロとしての意見を交えながら、利用者とご家族の気持ちに寄り添ったサポートをできるようにしましょう。
利用者のご家族へ要望を質問すると、新たな課題が見えます。
たとえば、利用者は日常生活に困っておらず、身の回りのことはすべて自分で行えると考えているとしましょう。
ですが実際は、ご家族が利用者の転倒やケガに不安を抱えているといったケースが多々あります。
利用者の様子を間近で見ているご家族の要望は、利用者本人が気づかない注意すべき点や、よりQOLの高い生活を行うために必要な意見であるためとても貴重です。
ご家族が訪問介護サービスの利用に向けて抱える不安や需要を質問して、利用者をより深く理解して訪問介護計画書を作成しましょう。
聞き取った内容はアセスメントシートに記入して、今後の介護方針や目標設定などの訪問介護計画に役立てましょう。
アセスメントシートのフォーマットは事業所によって異なり、利用者の身体状態やご家族の状況・生活環境・要望などを記入します。
利用者に関わるさまざまな専門職の方との情報共有に活用するので、誰が見てもわかるように作成する必要があります。
訪問介護計画書を作成する際に、アセスメントシートが必要となります。
利用者の基本情報のほかに、必要な生活支援やどのような背景を持っているかなどが細かくまとめられています。
通常は利用者との面談の際に作成されますが、状態の変化や訪問介護計画書を見直す際にも作成します。
介護に携わるすべての職種がアセスメントシートを共有するため、誰が見てもわかりやすく、客観的な内容である必要があります。
※訪問介護においては、アセスメントシートの様式に決まりはなく、任意の書式となっています。
アセスメントシートを作成する際は、以下の4つのポイントに気をつけるとわかりやすく、訪問介護計画書に役立てられる内容になります。
1.5W1Hを意識する
2.主観的ではなく客観的事実を書く
3.利用者のできることとできないことを明確にする
4.専門用語はなるべく使わない
順番に解説します。
アセスメントシートは、「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」の6つを表す、5W1Hを意識して書くと明確な内容になります。
要望した人が利用者なのかご家族なのかによってケアの方針が変わるケースがあるため、5W1Hを明確にして、すべての人に伝わりやすい内容にしましょう。
アセスメントシートに担当者が感じる主観を交えた内容を記載してしまうと、正しい情報が伝わらないケースがあります。
客観的な視点から見た事実を記載しましょう。
利用者が身の回りのことをどの程度できるのかを把握して、サービスのなかで必要な介助を行う必要があります。
たとえば、「食事を作れないけれど、一人で食べられる」など何をできて、何ができないのかを明確にしましょう。
アセスメントの際に専門用語の多用は控えましょう。
利用者やご家族の多くは専門用語を知りません。
アセスメントの最中に利用者やご家族が会話の内容を理解できなければ、正しい情報が得られません。
ヒヤリングの際には、専門用語は誰が聞いても理解しやすい用語に変えて話しましょう。
ここから、アセスメントシートを書く際の記入例を「生活状況」と「主訴」について紹介します。
先ほど解説したポイントを踏まえて、見てみましょう。
生活状況における、アセスメントシートの記入例を紹介します。
・飲食店の店主として働いていた。現在妻と2人で暮らしている
・趣味は散歩。何もつかまらずに歩行可能
・認知機能がやや落ちており、70歳から服薬中
・入浴は体の前面は自分で洗えるが、背面は介助が必要
このように、生活状況には、利用者の現在までの職業や生活習慣・家族構成などについて記載します。
主観を入れずに、客観的事実を簡潔にまとめましょう。
利用者のできること・できないことについては、どの段階からどのような介助が必要なのか詳細に記載します。
次に、主訴(利用者の方の訴え)についてアセスメントシートへの記入例を紹介します。
・入浴はできる限り自分で行いたい
・料理は好きなので、食事は自分で作りたい
・薬の飲み忘れについて懸念がある(妻)
・好きな散歩は体のために続けてほしい(妻)
主訴は、利用者や家族がどのような生活を望んでいるのかを記載します。
5W1Hを考慮して記載すると、「誰が」望んでいるのか、「どのように」困っているのかをアセスメントシートを見て瞬時に判断できます。
アセスメントシートは運営指導の際に提出する必要があります。
事業所が利用者へ適切なケアを行っているのか確認し、必要に応じてさまざまな指導や指摘が行われます。
運営指導の際は、以下の内容がきちんと記載されているか、アセスメントシートを確認しましょう。
意思疎通が困難な利用者から聞き取る際など、ヒアリング時はアセスメント担当者の主観で判断せず、目の動きで判断したり「はい」「いいえ」で答えられる質問にしたり工夫しましょう。
定期的な実施だけでなく、利用者に体調の変化が見られるときにもアセスメントは必要です。
適切なタイミングでアセスメントが行われているかは、利用者の需要に寄り添ったサービスの実施へつながります。
利用者の体調が悪いときや転倒・ケガをした際は、記録が必要です。サービスのなかで気づいた点があれば必ず記載しなければなりません。
訪問介護におけるアセスメントに関して、よくあるQ&Aを紹介します。
アセスメントは、初回の面談時に必ず行います。
その後は利用者の体調や状態に変化があった際や、要介護・要支援認定の更新時、訪問介護計画を見直す際などに適宜行います。
アセスメントとモニタリングの異なる点は目的です。
アセスメントは、利用者の身体の状態や生活環境・介護サービスを通して求める要望などを把握して、今後の訪問介護計画に役立てるために行われます。
モニタリングは、訪問介護計画に従ってサービスを実施しているかを確認するために行われます。
この記事では、アセスメントについて詳しく解説するとともに、シートへの具体的な記入例を紹介しました。
個々に寄り添った高品質なケアを行うために、細かな点まで丁寧なヒアリングを行いましょう。
シートへ記入する際は、5W1Hを意識して客観的な事実を記載すると、誰が見てもわかりやすい内容になります。
紹介したポイントを参考に、利用者の自立生活を支援できるようアセスメントを行いましょう。