訪問介護の管理者は、訪問介護事業を行う上で、「サービス提供責任者」「訪問介護員」を含む法令により設置が義務付けられている必須職種のうちの1つです。
今回の記事では、訪問介護の管理者について、仕事内容や求められること、役立つ資格などについて解説します。
目次
訪問介護の管理者とは「訪問介護事業を管理・運営する責任者」のことです。
訪問介護事業所には必ず、常勤専従で訪問介護の管理者を1名設置しなければならず、事業所が提供するサービスの品質管理、従業員の確保や育成、事務所収支の管理などの役割を担います。
他の職種と違い資格要件がある訳ではなく、管理上支障がなければ他の職務との兼任も可能です。
統括管理者として事務所内の仕事はもちろん、行政や外部業者との窓口にもなるため、その仕事内容は多岐に渡ります。
訪問介護の管理者の仕事内容は「事務所全体のマネジメント」で、主に下記のような仕事を行います。
1.介護サービスの質を向上させる
2.介護職員の管理
3.利用者の管理
4.事業所経営
5.行政とのやり取り
それぞれ解説します。
事務所が提供している介護サービスがケアプラン通りに行われているか、質に問題はないかなどをチェック・管理し、提供サービスの質の向上に務めます。
問題がある場合は、原因の把握と対策を実施し、常に一定レベル以上の介護サービスを提供し続けることで、利用者が快適に生活を送れるようにサポートします。
業務をスムーズに行うために、ケアマネージャーや訪問介護員との密な連携や、コミュニケーションが非常に重要な仕事です。
事業所で働く従業員の管理も大事な仕事の1つです。
人員基準をクリアしたシフトが組めているか、急病などで欠員が出た際はどういうオペレーションで補充を行うのか、スタッフ同士で問題が起きていないかなど、多角的に労務環境をチェックする必要があります。
スタッフから見た事業所の働きやすさは、提供する介護サービスの質へ直結する大事な要素なので訪問介護の管理者として最も重要な業務と言えるでしょう。
利用者のお体の状態や生活環境を把握し、それに対するケアプランが適切なのかどうかを管理します。
もし現状に即していない、または質の高いサービスを提供できない状態であれば、サービス提供責任者や訪問介護員と連携して修正・改善を行います。
福祉の仕事といえど、民間の場合は利益が出なければ存続できない為、収支管理や営業活動をしっかりと行わなければなりません。
従業員の給与計算や保険請求業務などの事務手続きはもちろん、運営方針の策定や外部への広報・営業活動などを行い、利益の確保に努めます。
訪問介護の事業所を運営するにあたって必要となる、行政への報告や書類の提出などのやり取りを行います。
これには介護保険に関するものだけでなく、消防計画など施設を運営する為に必要な書類も含まれます。
事業所全体のマネージメントを行う訪問介護の管理者に求められる3つのポイントをまとめました。
人員や設備基準が守れていないと、そもそも開業の許可が降りなかったり、法令違反となることで事業の存続が危ぶまれる事態になりかねません。
基準をしっかりと理解し遵守する必要があります。
また、運営基準は介護サービスを提供するために重要となる物が多く、サービス提供責任者や介護職員との認識を揃えておくことが大切です。
事務所の労働環境を改善し、質の高い介護サービスを提供するために、介護職員と積極的なコミュニケーションを行います。
介護職員と良い関係性を築くことで、潜在的な問題の早期発見に繋がり、円滑な運営を行う事ができます。
各種基準をクリアし、加算を取得できる体制を整える事で、質の高い介護サービスの提供を目指します。
加算取得は質の高い介護サービスを提供できている証となるだけでなく、経営的にも非常に大きなメリットとなります。
訪問介護の管理者の人員基準は、1事業所につき1人です。
ただし、訪問介護事業所には管理者の他にサービス提供責任者と訪問介護員の在籍が必要となります。
訪問介護の管理者になるための資格要件は特になく、常勤専従であれば管理者となれます。ですが事務所全体のマネージメントを行う役割なので、介護業界や介護業務の知識がある方が円滑に仕事が進むでしょう。
訪問介護の管理者に役立つ資格としては以下の4つがあります。
1.介護福祉実務者研修
2.介護福祉士
3.介護支援専門員(ケアマネージャー)
4.ケアクラーク
それぞれ解説します。
介護職員初任者研修よりも介護士として高いレベルの知識とスキルを有している証であり、現場からの声に的確に答えるために役立つ資格と言えるでしょう。
介護福祉国家試験に合格することで取得できる資格で、介護分野で唯一の国家資格のため、従業員の育成を行う管理者としてぜひ取得しておきたい資格と言えます。
利用者のケアプランを作成する介護業務の根幹を担う事ができる資格であり、自治体や介護サービス事業者との専門的な連絡調整も可能なため、実施可能な業務の幅が非常に広がる資格です。
ケアクラークは介護事務に精通していないと取得できない資格であり、事務所で発生する事務作業を正確に素早くこなすために役立つ資格です。
訪問介護の管理者の全国平均給与は370,087円で、全国平均年収は520,9242円です。
地域や事業規模などによってかなり変わってきますので、あくまで参考程度に考えましょう。
参考:厚生労働省
訪問介護の管理者に関するQ&Aをまとめました。
訪問介護の管理者は、人事や経理、運営方針策定など多岐に渡る業務で事業所を運営します。
一方、サービス提供責任者は介護現場の責任者として、利用者の介護計画を立案し、訪問介護員の育成・指導を行います。
どちらも必要不可欠な存在ですが、訪問介護の管理者は介護のゼネラリスト、サービス提供責任者は介護のスペシャリストといった点が大きな違いといえるでしょう。
参考:厚生労働省
訪問介護の管理者とサービス提供責任者は兼務可能です。
ただし、各自治体によって兼務の解釈や要件が微妙に異なってくるため、所属している自治体に問い合わせを行い確認するのが確実です。
訪問介護の管理者は常勤専従であり、管理業務に支障が出る訪問介護員との兼務は認められません。
事業所外で業務を行う事が多い訪問介護員との兼務は、不可能と考える自治体が多いのが現状です。
また、「管理業務に支障が出る場合」の判断は各自治体で異なるため、問い合わせて判断するのが良いでしょう。
訪問介護の管理者とケアマネージャーは兼務はできません。
居宅介護の事業所であれば可能ですが、訪問介護の事業所では認められていません。
常勤換算とは、常時何人の従業員が働いているのか?を知る為のものです。
管理者は常勤換算が人員基準を下回らないようにシフトを組む必要があります。
1ヶ月で4週を基本で考え、「常勤職員の人数」+「非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間」で求める事ができます。
訪問介護の管理者は全体を管理・運営していく責任者です。
その業務は多岐に渡り、介護のスキルや知識はもちろん、マネージャーとしての手腕や経理・経営のスキルも必要となってきます。
その分、責任者としてのやりがいは大きく、利用者の快適な生活を多角的にサポートできる職種と言えるでしょう。