訪問介護の仕事の一つである服薬介助は、細心の注意を払いながら行わなくてはなりません。
今回は服薬介助についてポイントや注意点、介助方法などを解説していきます。
目次
訪問介護員が行う服薬介助は、身体介護のサービスに含まれています。
服薬介助は、医師から処方された薬を利用者に安全に内服してもらうための介助です。
服薬介助は場合によっては医療行為に当たることもあるため注意が必要です。
また、服薬介助にはその準備方法や、服用方法について注意すべきポイントがあります。
準備や服用方法については後ほど詳しく説明します。
参考:厚生労働省「08 参考資料1 参考資料(訪問介護、訪問入浴)」
では訪問介護員が行う服薬介助はどこまで行うことができるのでしょうか。
訪問介護員ができることとしてはいけないことを詳しく見ていきましょう。
厚生労働省から出されている通達によると、
をするように記されています。
上記の内容から、訪問介護員ができることは、
が行っても良い業務であるといえます。
上記が訪問介護員ができる範囲であることがわかりましたが、反対にできないことも頭に入れておかなければなりません。
厚生労働省より医師法・歯科医師法・保助看法の解釈について通達を出されています。
下記のような場合は医療行為に該当するため、訪問介護員による服薬介助は行うことができません。
参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
訪問介護員が服薬介助をする際に押さえておきたい7つのポイントを紹介します。それぞれ1つずつ詳しく見ていきましょう。
医師が処方する際には必ず、服薬するタイミングの指示があります。様々なタイミングがありますが、
と指示されることが多いです。
食後の指示はよくあるためわかりやすいですが、食間や食直前後なども薬によってはあるためしっかりと確認しましょう。
服薬のタイミングで、食前(後)の指示は食前(後)30分以内、食直前(後)は食事の前(後)で服薬するようにしましょう。
また食事中と間違われやすい食間ですが、食事と食事の間に内服することなので注意してください。
服薬介助で危険なのは飲み間違いをしてしまうことです。
飲み間違いを防ぐための工夫を紹介します。
薬を一包化する
前述した通り、訪問介護員は一包化した薬しか服薬介助を行うことができません。
たとえ十分に注意してPTPシートから取り出して行おうとしても、ミスをしてしまう可能性があります。
医師へ一包化を依頼し、処方薬を一包化をしてもらうようにしましょう。
薬局から薬を受け取った時には薬袋がつながった状態や一包化の袋が数種類に分かれていることもあります(同封することができない薬剤もあるため)。
そのため、お薬ボックスや配薬カレンダーなどを利用して1回ずつに分けておくことをおすすめします。
お薬ボックスやカレンダーへの配薬は医師または歯科医師の指示を受けた薬剤師または看護師しか行えません。
医療行為のため訪問介護員が行うことはできないので注意してください。
服薬するときには食事の時と同様、姿勢が大切になってきます。
服用するときにはしっかりと体を起こして誤嚥しない体制で行いましょう。
誤嚥することで肺炎になったり、薬によっては逆流した場合、食道に炎症をきたしたりするものもあります。
服薬介助で薬を口まで運んだり手に出したりすることもあります。
そのときに薬が落ちてしまい服薬できていない状態になることもあります。
1錠ずつ出して確実に口にいれることができるようにしましょう。
お茶やジュースで服薬すると、薬の種類によっては薬効が高まってしまったり、期待した効果が出なかったりすることがあります。
そのため水や白湯で服薬してもらうことが大切です。
無事に服薬できたと思ったら、急に気分が悪くなったり、ふらつきが強くなったりすることもあります。
服薬して終わりではなく、その後に体調の変化がないかを確認することも服薬介助の一環ですので、忘れず観察しておきましょう。
訪問介護員は基本的に1人で訪問することが多いため、どのように服薬したのか、いつ服薬したのかなど必要なことを記録に残しておきましょう。
この記録は法的効力があるため、もしものときに自分を守ってくれます。
忙しいでしょうが、しっかり書いておくことをおすすめします。
服薬介助を依頼されるケースで多いのが認知症の方です。
認知症の方は短期記憶障害があるため、薬があることや内服することを忘れてしまいます。そのため訪問介護員には様々な工夫が求められます。
先ほども記載しましたが、お薬カレンダーを使用すると自身で服薬することができる場合もあります。
また服薬カレンダーを見るといつ服薬していないかもわかるため、認知機能の低下を早期発見することが可能です。
認知症の方は訪問介護員の顔を覚えることが難しい場合があります。
そのため暗かったり威圧的な声でアプローチしたりすると服薬を拒否されてしまうことにも繋がります。
明るい声でアプローチして、安心感を与えてから服薬介助を行うことをおすすめします。
認知症の方の中には「薬を飲んでいない」「睡眠薬をください」など要望される方もいます。
要望されても過剰に服薬することはできないため、疑似薬を使用することもあります。
薬をもらえたという安心感やプラセボ効果により、落ち着いたり眠りにつけたりすることもあるので、上長へ相談の上、ケアマネージャーに検討を依頼しましょう。
服薬介助をするときに服薬拒否をされる場合もあります。
その場合にはどのように対応すると良いのか、対処法を紹介します。
まずは、なぜこの薬を飲まなくてはいけないのか効能を説明してみましょう。
もしも難しければ訪問看護師やかかりつけの薬局の薬剤師などへ薬の説明をしてもらえるか問い合わせてみましょう。
抗生物質や向精神薬、漢方薬などは苦味が強いものもあります。
苦味が苦手な方は苦痛に感じて服薬をやめてしまう方もいらっしゃいます。
どうしても難しい場合は錠剤や粉剤のものはカプセル状のものに変えてもらったり、吸入や貼り薬など投与方法を変えてもらったりすることも可能です。
主治医に相談して飲みやすい方法を考えましょう。
訪問介護の服薬介助に関するQ&Aをまとめました。
厚生労働省の資料によると、服薬介助は身体介護の一部とされています。
生活援助で薬を取り扱うのは、処方された薬の受け取りのみです。
服薬介助を行うことは医療行為ではありませんが、PTPシートからの取り出しや専門的な配慮が必要な方、状態が安定していない方の場合は医療行為に該当します。
服薬介助は、薬の準備をし、薬を嚥下したのを確認した後に片づけまで行う介助です。
服薬管理は、飲み忘れや間違わないように工夫して管理することをさします。
服薬介助は医療行為ではないので訪問介護員が行えますが、服薬管理は医師または歯科医師の指示を受けた薬剤師または看護師が行うことになります。
服薬介助の手順は下記の通りになります。
考えられる事故としては、服薬するタイミングの間違えや、重複して内服をしてしまった、薬を落として紛失してしまったなど様々なことが考えられます。
訪問介護員で勝手に判断せず、かかりつけ医や訪問看護師に相談し、指示を仰ぎましょう。
訪問介護での服薬介助では、利用者に適した方法で介助を行うことが求められます。
また、訪問介護員にできることとできないことを理解しておくことがとても重要です。
医師や薬剤師、看護師など医療職と連携を取りながら行うことも必要不可欠ですので、相談しながら介助を行っていきましょう。