この記事では、訪問介護における介護記録についてご紹介して参ります。
目次
訪問介護にとって介護記録とは、単純に『介護の提供をした記録』という意味合いのものではありません。この記録は様々な用途に使用されるものであり、このどれもが重要な意味を持つことを忘れてはいけません。
また、ご利用者様や会社にとって必要となるだけでなく、自分自身がルールを守って仕事をしている事を示す唯一の記録です。このことを念頭に、しっかりと記録を残していきましょう。
介護記録を残す意味は、大きく以下の4つです。
①介護サービスを提供したという唯一の法的な記録
②訪問介護員(ヘルパー)の給与計算の元
③ご利用者様の心身機能の記録
④運営基準を遵守しているという根拠
介護記録を確認するのは下記の方達です。
①管理者・サービス提供責任者
介護サービスを提供したこと、この提供内容について把握することが法令により定められています
②ご利用者様・ご家族様等
提供された介護サービスについて事実と相違が無いことを確認し、希望する場合は複写物の交付を受ける権利が有ります
③行政・自治体
事業所として提供している介護サービスが法令に則っているものか、介護報酬請求の適正な算定のもととなっているかを確認します
④法人内の従業員
その他、法人内の請求を担当する方や、勤怠管理の担当者、法令遵守の確認を行う方が確認をします
⑤保険会社等
損害賠償保険の際に提出を求められたり、事件や事故が起きた際に提出を求められることが有ります
介護サービス提供の記録ですので、介護を提供したごとに記録を残す必要が有ります。また、事実と相違がないかの確認を毎回ご利用者様に行う必要が有ります
介護記録に記載すべき内容は以下の通りです。
①サービス実施日時・提供時間・提供区分
②介護サービスを受けた利用者の名前
③訪問したヘルパーの氏名(同行者も含む)
④提供した介護サービスの内容すべて
⑤ご利用者様の様子
ご利用者様の様子については、詳細な記録が無い場合又は『特変無し』『変更なし』等の記録の場合は『観察していない』と判断されてしまうことが有ることに注意をしてください。
介護サービスは、介護支援専門員(ケアマネージャー)が計画を立て、これに沿ってサービス提供責任者が訪問介護計画を立てます。
この計画に書かれている介護サービス以外は行うことが出来ません。
緊急時等でこの計画に予定されていること以外の介護サービスを行う必要がある場合は、事前にサービス提供責任者に確認上実施することとなりますが、『変更したこと、その理由を介護記録に記載』しなければいけません。
勝手に変更した場合は介護サービスとして認められないことも有りますので注意しましょう。
介護記録を見ると『私はこれだけ料理を作った』『私はこれだけ掃除を行った』等、自分の頑張りを記載しているケースによく出会います。
介護記録は、『訪問介護員』の仕事の記録の記録ではなく、ご利用者様の介護サービス提供の記録であり、この記録の主役は『ご利用者様』です。
良い介護記録とは、『計画に沿った介護サービスが実施出来ている事が確認できる』『ご利用者の様子が書いてある』『計画の目標に対しての記録がある』記録です。
介護記録を書く際に困るのは『変化がないのに書けない』『変化がないのに何を残すの?』といった、変更がない際の残し方です。
この場合は、『変化がないと感じた理由』を書くようにしましょう。
【例文】
〇いつも通りの食欲があり、嚥下の常態に変化は有りません
〇いつも通りのバイタルであり、入浴後も安定していらっしゃいました
〇いつも通り明るく迎え入れてくださり、足取りもこれまでと変化は感じられません
介護を提供する目的は『計画に定められた目標を達成する』ためでもあります。
このため、介護記録には目標達成のために介護サービスを提供した結果がどうなのか?という視点も大切です。
【目標が〇〇できるようになること】
目標に対し、出来るようになっていること、出来るようになりそうなことや、出来そうにない等の達成状況を記録するのも良いでしょう。
〇室内であれば歩行器を使い数メートルの距離を歩けるようになっています
〇かがまなくていい場所の雑巾がけが出来るようになってきました
〇意欲も見られず、座っている時間を好まれており、自分で買い物に行くという目標達成にはしばらく時間がかかりそうです
特に基礎疾患が有る場合や服薬管理が有る場合は日々の健康観察の記録が大きく役に立ちます。
〇バイタルは安定しているものの、肩で息をしています
〇ヘルパー訪問時の服薬は安定して出来ていますが、声掛けが無いと忘れてしまう様で夕方の分は飲み忘れがあります
〇血圧の測定をご自身で行っており、近頃は高めであることを気にされています
介護記録については、簡潔に事実だけを残すことが求められます。一方でご利用者様やご家族様も目にする書類でもあります。
日々の常態の記録をしっかり残してくれるヘルパーと、汚い字で『特変なし』と記載するヘルパーでは、前者の方が信頼をおいて仕事を任せることができると思われることに違いありません。
今一度基本的な会社のルールを確認するとともに、『誰のために』『何の目的をもって』残すものなのかを意識して残していきましょう。