訪問介護は、介護保険制度の中の公的なサービスですが、訪問介護に来てくれる人は『法人』から派遣されます。
派遣される訪問介護員は『介護福祉士』『実務者研修』『ヘルパー2級』等、国家資格をはじめとする有資格者のみに限られ、派遣元である訪問介護の法人は行政の指定受けなければ、介護保険制度の中の訪問介護は提供することが出来ません。
また、行政の指定を受けた後も、少なくとも3年~6年に1度行政による運営指導という『実地で行われる指導』を受けており、介護保険法に則った適正な運営をしているか否かが常に問われています。
目次
訪問介護とは、要介護認定を受けた方が利用できる介護サービスの内、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に訪問し、家事や身体に伴う支援を提供するサービスを指します。
訪問介護サービスを受ける方が在宅で生活を継続するにあたって、課題であることを訪問介護員(ホームヘルパー)が手伝うことによって解決し、在宅での日常生活の継続を可能にするのが訪問介護です。
介護サービスは生活援助と身体介護に区分され、必要な時間に訪問介護員(ホームヘルパー)が介護サービスを実施し、必要な費用は1割から3割の範囲内です。
訪問介護を受けることができる対象者は、要介護認定を受け、要介護1~5と認定された方です。また、要支援1~2と認定された方には、『総合支援事業』という市町村が行う訪問介護サービスの提供を受けることが出来ます。
訪問介護の事業所に属しているのは管理者、サービス提供責任者、訪問介護員(ホームヘルパー)の3職種の方達です。
【役割】
1:管理者
訪問介護事業所の全体を取り仕切る責任者で、サービス提供責任者と兼務している場合と管理者と経営者を兼任していることも有ります。
【保持資格】
管理者のみを行うだけであれば、介護保険上の資格の定めは有りません。次項のサービス提供責任者や訪問介護員と兼務する場合には、資格の定めが有ります。
2:サービス提供責任者
サービス提供にあたっての責任者で、ご利用者様40名(※)に対し1名の配置が義務付けられています。ご利用者様のお体、生活における課題を確認し、これを解決するための『訪問介護計画』をご利用者様・ご家族様と立て、訪問介護員(ホームヘルパー)がこの計画に則って訪問介護サービスを行うために指導を行います。その他訪問介護サービスに関する調整等を行っており、訪問介護における介護サービスの窓口となる担当者です。
(※)一定の条件を満たしている場合に限り50人に対して1名の配置となっています。
【保持資格】
介護福祉士、実務者研修修了者、ホームヘルパー1級課程修了者相当等、直接介護が出来る資格の保持者であり、かつその中でも上位資格と呼ばれる資格の保持者のみがサービス提供責任者となります。
3:訪問介護員(ホームヘルパー)
予めサービス提供責任者によって定められた『訪問介護計画』に沿って訪問介護サービスを提供します。
【保持資格】
サービス提供責任者になることが許されている資格に加え、初任者研修終了者、ホームヘルパー2級相当等の有資格者となります。訪問介護においては、無資格者による派遣が認められていないため、必ず有資格者が訪問して介護サービスを提供することとなります。
介護サービスを受ける際は『単位』というものを用いて計算を行います。
『単位』は、介護の世界の通貨単位をとらえると分かりやすく理解が可能です。
要介護認定を受けると、その介護度ごとに『区分支給限度額』というものが割り振られます。
これが介護の世界で使える月のお金の上限であり、介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネージャー)はこの上限額を超えないように毎月ケアプランを作成します。
介護サービスには、商品のように提供を受けるひとつひとつに単位数が定められています。
例えば生活援助(掃除、調理等)の基本単位は20分以上45分以内で183単位、45分以上で225単位、身体介護(入浴や食事介助等)の基本単位は20分~30分250単位、30分~60分396単位と決定しており、この単位は日本全国共通です。
これに地域に応じて決定されている『地域区分』の数字をかける事で介護の世界の通貨単位を現実の『円』に変換させることが出来ます。
さらに個人個人の収入に応じた負担額を割合計算することで、訪問介護サービスを受けた方の負担額(利用者負担額)を算出することが出来ます。
例)身体介護60分を月4回実施した場合 利用者負担額1割 地域区分11.4円
396単位(身体介護60分の値段)×4回(その月の実施回数)×11.4円(地域区分)=18076.6円
18076.6円÷10=1805円(利用者自己負担額)
この他、基本単位や月の総単位数に対し増減される制度を『加算』『減算』と呼び、以下のようなものが有ります。
これらを掛け合わせたものが月の利用額となります。
正式な金額は、毎月介護支援専門員(ケアマネージャー)から提供がある『サービス利用表の2枚目(別表)』の、利用者負担欄で確認することが出来ます。
サービスを受けるまでの流れは以下の通りです。
アセスメントは訪問介護計画を立てるためのもととなる物です。
訪問介護計画書とは、訪問介護の介護サービスを受けるにあたって必ず必要となる書類で、書式は法人によって様々ですが以下の内容が記載されています。
【訪問介護計画書】
訪問介護サービスを受ける本人が在宅で生活を継続するにあたって、課題であることを訪問介護員(ホームヘルパー)が手伝うことによって解決し、在宅での日常生活の継続を可能にするのが訪問介護ですので、目標には『訪問介護サービスを受けることでどのような状態になることが目標か』が記載されることとなります。
また、訪問介護サービスはこの訪問介護計画書に定められたこと以外は実施が出来ないルールになっていますので、変更したい場合はその旨をサービス提供責任者や居宅介護支援専門員(ケアマネージャー)へ相談する必要が有ります。
また、訪問介護サービスの対象外となる支援を必要とする場合(家族の調理等)は、介護保険外の支援として訪問介護事業所が独自に設けているサービスが存在する場合も有ります。
サービス提供責任者が立てることの出来る訪問介護サービスは、国のルールによって決定しています。老計10号(リンク)
ここに記載の有る行為以外を訪問介護サービスとして訪問介護計画に組み込むことはできず、万が一実施していたことが分かった場合は介護保険外のサービス提供として、介護保険の料金からは外れる(国の負担対象外)こととなります。
【前提条件】
例えば本人以外の家族や来客のための調理、家族と共用で使用する場所の掃除や洗濯は実施することが出来ません。
【生活援助】
生活援助とは、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものをいいます。
実施可能項目:掃除、洗濯、ベットメイク、衣類の整理・被服の補修、一般的な調理、配下膳、買い物・薬の受け取り
【身体介護】
身体介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)がご利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)等の訪問介護サービスを指します。
実施可能項目:排泄介助、食事介助、清拭・入浴、身体整容(髭剃り、爪切り等)介助、更衣介助、体位変換、移乗・移動介助、通院・外出介助(同行)、起床及び就寝介助、服薬介助、
自立生活支援のための見守り的援助(ご利用者様の動作補助を行いながら生活援助の内容等を一緒に行います)特段の専門的配慮をもって行う調理(嚥下困難者のための流動食の調理を行います)
直接介助を行う訪問介護サービスと、お声がけをして誘導を実施し本人の行動を援助する場合等が有ります。
上記の他、準備、健康チェック、環境整備、相談援助、情報収集・提供、介護記録の作成等を実施します。
訪問介護では、下記3点の条件を満たさなければ訪問介護サービスを提供することが出来ません。
この3つの条件を満たし、初めて訪問介護員(ホームヘルパー)がご自宅に訪問しての訪問介護サービスを行うことができるようになります。
また、下記に記載するご支援については介護保険のサービスとして実施することが出来ません。万が一居宅サービス計画や訪問介護計画に記載があっても実施することが出来ませんので注意が必要です。
【実施出来ない訪問介護サービスの事例】
【同居家族がいる場合の訪問介護サービス】
同居家族がいる場合は原則的に生活援助の訪問介護サービスで家事の支援は出来ないことになっています。これは、同居家族がいるのであれば、家事は家族が実施できるだろうというのが前提に有ります。
例えば『同居家族が家事を行うことが出来ない』『住民票上では同居家族は居るが単身赴任で帰ってこない』等、同居家族が家事を行うことが出来ない理由がある場合には訪問介護サービスによる支援が可能です。
家族の分の洗濯物を一緒に洗ってほしい、本人だけの料理だけではなく夫婦2人分を調理してほしい等の希望がある場合は、『介護保険外のサービス』として訪問介護事業所が実施している場合が有ります。
ただし、車に乗せたことによる料金を発生させる場合は一般乗用旅客自動車運送事業の届出を運輸支局輸送担当へ行う必要があります。
また、医療行為については保険外保険内問わず医師法に定められた者以外の実施が法律により禁止されていますので実施することはできません。
医療処置を伴う医学的なサービスや、訪問介護以外のサービス提供を依頼したい場合は介護支援専門員に相談をしましょう。
平成17年7月26日に医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈についてという通知が、それまで介護業界全体において「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されていたという背景から厚生労働省より出されることとなりました。
ここでいう「医業」とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為を、反復継続する意思をもって行うことであるという説明がされています。
下記に定められた行為は、『医療行為に該当しない』という解釈がされ、医師法に定めらえた医師や歯科医師等の医療従事者以外の者に実施が認められている行為です。
【医療行為に該当しない行為(訪問介護員が実施できる行為)】
具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包
化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助
すること。
※患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
※副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要
である場合ではないこと
※内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用
の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと
※ 挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12歳未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの
前項は『医療行為ではない』という解釈のもとに介護従事者でも実施が定められているものですが、医療行為と呼ばれる医師法に定めらえた医師や歯科医師等の医療従事者以外の者に実施が認められている行為の内、以下のものについては一定の条件のもと、介護従事者でも実施が可能となっています。
【一定条件のもと訪問介護員(ホームヘルパー)に実施が認められている医療行為】
【実施可能な者とは】
医師及び看護師との密接な連携のもと、下記いずれかに該当する者
【喀痰吸引等研修の種類】
訪問介護サービスを利用する際には、下記の書類を確認して契約を締結する必要が有ります。
【契約時に必要な書類】
特に重要事項説明書は訪問介護サービス提供の開始に際し説明を受けるもので、その訪問介護事業所が提供する訪問介護サービスの詳細や、利用するにあたってのルール、担当者の名前と相談先の電話番号等が記載されています。
また、契約時には以下について確認するようにしましょう。
【訪問介護を利用するときの主な確認事項】
調理の場合:調理器具やガス、水道等の使い方を案内しておきましょう。また、洗い物の際に使用するスポンジ、ふきん、ごみの捨て方等も案内をするようにしましょう。
排泄介助の場合:使用するタオル、排せつ物の捨て方、更衣後の洗濯物の置き場所を案内しましょう。
※家庭により洗い物の仕方1つについても異なります。訪問介護サービスを利用する場合は、『このやり方が当たり前』ではなく、『私たちの生活ではこのやり方です』ということを予め伝え、その通りに実施してもらう打合せがとても重要になります。
訪問介護サービスでは、ご家庭の中に入り家事を行ったり、ご利用者様のお体に直接触れて身体介助を行ったりします。
家事には物損がつきものですし、身体介助では事故が100%無いと保証出来るものも有りません。
このような不測の事態に備え、訪問介護事業所には『損害賠償保険加入』が義務付けられていますので、万が一破損事故や身体に傷がつくような事故が有った場合は、この損害賠償保険から保険がおりることになります。
また、『訪問介護員(ホームヘルパー)が来ない』『対応が悪い』等の苦情を申し出ることも可能であり、この場合まずは訪問介護事業所の相談窓口に相談を行い、解決しない場合は居宅介護支援専門員や市役所や区役所等の行政窓口等へ相談することとなります。
身体や生命に関わるトラブルの際は、あらかじめ訪問介護事業所と打合せをして対応方法を決定しておく事がとても大切で、緊急連絡先だけでなく普段服薬している薬の情報や、既往歴等の情報はもちろん『どのような状態であれば救急車を呼ぶ』といった詳細まで決定しておくことが重要です。
ここでは、訪問介護サービスの実際の流れについてご紹介していきます。
【一人暮らしの方の掃除、洗濯の訪問介護サービス】
10:00 訪問、ご挨拶、体調確認、本日の支援の流れ説明
10:05 洗濯(洗濯籠に有る契約者本人のもの、ポケットの中等確認)
10:15 居室掃除(掃除機掛け、ウェットクイックルワイパーがけの実施)
10:35 洗濯(ベランダへ干す)
10:45 トイレ掃除
10:55 支援記録の記入
11:00 退室
【家族と同居の方の食事介助・水分補給・服薬介助の訪問介護サービス】
17:30 訪問、ご挨拶、体調確認、本日の支援の流れ説明
17:35 食事介助・水分補給(家族が用意したご飯を安全に食べて頂き、食器を流し台におく)
18:15 服薬介助(一包化された処方薬をお渡しして服薬されたことを確認する)
18:25 支援記録の記入
18:30 退室
【家族と同居の方の通院介助サービス】
10:00 訪問、ご挨拶、体調確認、本日の支援の流れ説明
10:05 準備(更衣介助、診察券の確認、車いすへの移乗)
10:08 移動(車いすにて家から3分程度離れた内科へ移動)・病院受付
10:10 診察待ち時間・診察(介護保険外サービス)
10:30 会計・移動(薬局への移動介助)
10:40 薬局待ち時間(介護保険外サービス)
10:45 会計・移動(薬局からご自宅への移動介助)
10:50 更衣介助、水分補給
10:55 支援記録の記入
11:00 退出
上記は事例であり、実際に訪問介護サービスを受ける場合は事前にサービス提供責任者と打ち合わせを実施して決定します。
訪問介護と同じく『訪問〇〇』という様に、訪問して介護サービスを実施する事業が有ります。
【訪問看護】
看護師等が訪問し、その方の病気や障がいに応じた看護を行います。健康状態の悪化防止や、回復に向けてお手伝いします。主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置も行います。自宅で最期を迎えたいという希望に沿った看護も行います。
看護の専門職(保健師、看護師、准看護師、助産師)内容によっては、リハビリテーションの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が訪問する場合も有ります。
【訪問リハビリテーション】
病院、診療所、介護老人保健施設の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、心身の機能の維持・回復、日常生活の自立を支援するために、理学療法、作業療法等のリハビリテーションを行うサービスです。病院やリハビリテーション施設への通院が困難な場合、退院・退所後の日常生活に不安がある場合など、主治医により訪問リハビリの必要性が認められた場合にサービスを受けることができます。
【訪問入浴】
訪問入浴とは、看護師1名を含めた3名(または2名)のスタッフが自宅に訪問し、専用の浴槽を使って入浴をサポートしてくれる介護サービスです。ご本人の自力での入浴が困難、またはご家族のサポートだけでは入浴が難しい場合に提供され、所要時間は1時間程度です。
流れ:浴槽準備(お部屋の中に浴槽を準備し、お湯をはります)⇒看護師による体調確認⇒更衣介助⇒入浴
お部屋の中で実施されるため、浴槽の中で体を洗う事になります。
訪問介護は、在宅において生活をしていくために、その本人がこれまで出来ていたことが出来なくなってしまった時に支援を行う介護サービスです。
何かしらの理由により買い物が出来なくなってしまった、買い物が出来ればこのまま家でこれまでのように生活できるという課題に対し、買い物の訪問介護サービスを提供することで『これまでと同じ生活が家で出来ること』を支援します。
また、買い物を一連の作業として考えた場合に『買い物には行けないけど冷蔵庫にしまう事はできる』という事であれば、『冷蔵庫にしまう』作業はこれまで通り本人が行い、『現在出来ていることはこのまま出来る状態にある努力をする』という事が前提です。
『これをしてくれたら豊かになるな』『これをしてくれたら面倒が減る』といったことには介護保険外のサービスを使用することに注意が必要です。
訪問介護サービスは家に入り、その家の生活に沿って介護サービスを提供しますが、『生活の仕方』は十人十色で洗濯物のたたみ方、味付けの仕方すべてにおいて同じ家は有りません。
介護サービスを受けるにあたっては、必ずやってほしいこと、やってほしくないことを予め明確に伝えておくことも大切です。