訪問介護事業所を安定的・継続的に運営するためには、「研修の計画」と「実施体制の整備」が不可欠です。特に管理者やサービス提供責任者は、制度的に求められる研修を把握し、全スタッフのスキル維持・向上を図る役割を担っています。
この記事では、2025年の最新制度に基づき、
- 必須研修の内容
- 年間および個別の研修計画の考え方
- 実際のスケジューリングのコツ
についてわかりやすく解説します。現場で活用できる実務知識として、ぜひ最後までご覧ください。
訪問介護における研修は、以下の2種類に分類されます。
- 年間(全体)研修計画
法令に基づく研修の実施計画(全スタッフ対象)- 個別研修計画
個人の能力や経験に応じた育成支援・OJTなど
いずれも、「介護保険法施行規則」および「指定基準(訪問介護)」の規定に基づき、運営指導の際には計画の提示と実施記録の保管が求められます。
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年間研修では、以下の指定基準条文に対応した研修内容を組み込むことが重要です。
- 第30条:勤務体制の確保
- 第30条の2:業務継続計画(BCP)
- 第31条:衛生管理
- 第37条の2:虐待防止・ハラスメント対策
これらに基づいて、以下の通り「必須研修10項目」がございます。
- 基礎知識、接し方、家族との連携を学ぶ
- 2025年には認知症高齢者は約700万人(※新オレンジプラン)
運営指導では「全職員が受講しているか」がチェック対象です。
- 個人情報保護法、同意取得、データの安全管理など
- 2022年の法改正(改正個人情報保護法)により実務面での対応強化が必要
- 挨拶、言葉遣い、訪問時の振る舞い、報連相の徹底
- 苦情対応やカスタマーハラスメントも含める
- 介護保険法、労働法、高齢者虐待防止法など関連法の理解
- 特に新任職員には制度構造を丁寧に伝えることが重要
- ヒヤリハットの共有、事故対応マニュアルの確認
- 訪問介護は単独作業が多く、事前の予測・準備が鍵
- 急変時の応急処置、救急対応、連絡体制の周知
- BCP(業務継続計画)との連動も図ることが求められています
- 衛生管理の徹底(手洗い、消毒、PPEの使い方)
- 感染症対策の基本は「持ち込まない・拡げない・持ち出さない」
- 働きやすい職場づくりのための意識啓発
- 義務化に伴い、2024年度より多くの事業所で外部研修を導入
- 身体的・心理的・経済的虐待の防止策、通報義務の理解
- 利用者と職員双方の「人権」を守る姿勢が問われます
- 2024年度より運用義務化されたBCPに対応
- 災害や感染症発生時の対応マニュアルを共有し、訓練も実施
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以下は、実務で活用できる年間スケジュールの一例です。
月 | 研修テーマ(例) |
4月 | 新任職員研修、倫理法令研修 |
5月 | 感染症予防研修、衛生管理 |
6月 | 虐待防止・人権研修 |
7月 | 緊急時対応研修 |
8月 | ハラスメント防止研修 |
9月 | 認知症ケア研修 |
10月 | 事故防止・再発防止研修 |
11月 | 接遇・マナー研修 |
12月 | プライバシー保護・個人情報研修 |
1月 | BCP対応・災害時研修 |
2月 | 年度振り返り/未受講者のフォロー研修 |
3月 | 翌年度研修計画策定ミーティング |
訪問介護事業所の研修は、「加算算定の基盤」であり「職員定着の鍵」でもあります。制度的義務としての側面だけでなく、「現場力の底上げ」として捉え、年間を通じた継続的な研修体制を整備しましょう。