本記事では
介護職員の平均賃金についてご紹介していきます。
目次
公益財団法人介護労働安定センターが、令和 2 年度に実施した「事業所における介護労働実態調査(事業所調査)」、「介護労働者の就業実態と就業意識調査(労働者調査)」結果の概要を発表しました。
この調査は昨年10月に実施されたもので、全国の約1万7500事業所が対象で、9244事業所における有効なデータを調査したものです。
介護事業所における人材の不足感は、年々上昇傾向にあったところ、事業所全体での不足感(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)は全体で 60.8%(65.3%)と前年度に続き改善傾向を示している様です。
職種別でみると、訪問介護員の不足感が 80.1%(81.2%)で最も高く、次いで介護職員の66.2%(69.7%)で、不足している理由としては、「採用が困難である」が 86.6%(90.0%)あり、その原因としては「他産業に比べて、労働条件等が良くない」が 53.7%(52.0%)、「同業他社との人材獲得競争が激しい」が 53.1%(57.9%)と高くなっています。
令和元年 10 月 1 日から令和 2 年 9 月 30 日までの1年間において、2 職種計(訪問介護員、介護職員)の離職率は 14.9%(15.4%)で、平成 17 年度以降最低の離職率となりました。
また、3 職種計(訪問介護員、介護職員、サービス提供責任者)では、採用率は 16.0%(18.0%)、
離職率は 14.9%(15.3%)で、前年度と比較して離職率は 0.4 ポイント低下しています。
離職率 14.9%は、全産業の平均離職率 15.6%(厚生労働省令和元年雇用動向調査結果)を 0.7 ポイント下回っているという結果です。
職種別で見ると訪問介護員とサービス提供責任者では離職率が採用率を上回っており、介護職員では採用率が離職率を上回る状況であり、サービス提供責任者の採用率が他の 2 職種と比較して低いのは、入職経路の一つとして、訪問介護員からの内部登用があることが考えられるとのことです。
全従業員数(無期雇用職員と有期雇用職員の合計)に占める 65 歳以上の労働者の割合は12.3%で、職種別では訪問介護員が最も割合が高く、4 人に1人が 65 歳以上という結果になりました。
一般労働者、管理者の所定内賃金、賞与は、ともに前年より増加しています。
一般労働者の所定内賃金(無期雇用職員、月給の者)は、平均 243,135 円(234,439 円)で前年度より 8,696 円の増加。管理者の所定内賃金は、平均 382,036 円(355,425 円)で 26,611 円の増加という結果でした。
賞与を支給している事業所における一般労働者(無期雇用職員、月給の者)の平均賞与額は626,094 円(599,506 円)で 26,588 円の増加。管理者の平均賞与額は 866,872 円(748,659 円)で118,213 円の増加となっています。
介護職員処遇改善加算の算定状況は、「算定していない」が 8.4%(7.7%)、「算定した」が
75.9%(78.0%)であり、技能・経験のある介護職員の更なる処遇改善を進めることを目的に、令和元年 10 月に創設された介護職員等特定処遇改善加算(介護職員処遇改善加算に上乗せ)の算定について、対象となる事業所を対象にした調査では「算定した」が 55.5%(48.4%)、「算定する予定」が 5.0%(15.1%)で、6 割の事業所で算定することが分かっています。
以下は職種別の平均賃金です。
■訪問介護員:22万4277円
■介護職員:22万1555円
■サービス提供責任者:25万9072円
■介護支援専門員:26万3379円
■生活相談員:25万6892円
また、最新調査 ボーナスの平均は年62.6万円で、介護職の賃金とボーナスの平均を足すと年354万3714円になります。
国税庁の令和元年「民間給与実態統計調査」による年齢別平均賃金は以下の通りです。
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 278万円 | 248万円 |
25~29歳 | 403万円 | 328万円 |
30~34歳 | 470万円 | 321万円 |
35~39歳 | 529万円 | 313万円 |
40~44歳 | 582万円 | 318万円 |
介護職員の平均賃金はどの女性の年代も上回る結果となり、介護業界内でのキャリアアップ次第では男性も全産業の平均に近くなる水準まで上がってきていることが分かります。
今回の結果を見ると、離職率は下がり、平均賃金は上がると言う明るい話題のように思えます。
平均賃金が上がったことと同時に注目すべき点は『特定処遇改善加算の取得が進んでいる』という点です。
特定処遇改善加算の加算率の良い(Ⅰ)の取得には、特定事業所加算の取得が欠かせません。
大手を中心に賃金をあげる取り組みのために『特定事業所加算』の取得と『特定処遇改善加算』の取得が進み、中小企業も人材採用競争に負けない様、両加算の取得が進んできました。
この結果、『質の良い介護が提供できる事業所』に『高賃金の人材が集まる』という土台が出来て来ています。
労働者の労働条件・仕事の負担に関する悩み等において、今回公表された調査結果では前年より改善されているものの「人手が足りない」が 52.0%(55.7%)で最も高く、次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が38.6%(39.8%)で、労働者の悩みは賃金よりも人手不足が大きく上回っています。
また、「健康面(感染症、怪我)の不安がある」は 20.5%(11.2%)で、新型コロナウイルス感染症の影響から、前年よりも倍近くの増加となっていることにも注目しなければいけません。
賃金をあげる取り組みだけではもう、人を集める事はできません。
高賃金で介護職を採用するという時代が終わろうとしています。
今回の調査結果は『労働環境の改善』がポイントになってくることを示しています。
作業の効率化を図り、残業のない、公休はもちろん、有休もしっかりと取得できる事業所でなければ、人を集める事は困難になってきていることに着目しなければいけません。