介護保険にて訪問介護で提供できるサービスの範囲は定められています。
しかし、訪問介護サービスの中には、サービス提供が可能かどうかの判断が難しい「グレーゾーン」が存在します。
この記事では、訪問介護のグレーゾーンとグレーゾーンの事例について解説していきます。
目次
訪問介護で提供できるサービスは、『老振第76号』と『医政発第0726005号の厚生労働省医政局長通知』『老計10号』にてサービスの基本が定められています。
グレーゾーンの対応は、依頼を受けた訪問介護員の力量で対応するものではありません。
依頼を受けた場合は、訪問介護事業所のサービス提供責任者へまずは報告しましょう。
サービス提供責任者から担当ケアマネジャーを交えて協議する必要があります。
また、グレーゾーンの介護について、報告をせずにサービス提供を行うと、トラブルになる恐れがあります。
グレーゾーンの介護は内容を理解した上で対応しないと、不適切なケアを生むことになりかねません。
参考:厚生労働省
参考:厚生労働省
参考:西宮市
グレーゾーンとは、訪問介護サービスにおいて、そのサービスを提供できるか否かの境目の部分を指します。
グレーゾーンの介護は、正しい介護とは言えず、あいまいな部分が多い介護です。
以下は、訪問介護におけるグレーゾーンの行為の事例です。
①同居家族がいる利用者への生活援助サービスの提供
②訪問介護の時間を変更せずにサービスを提供し続ける
③訪問介護員による親族の介護
この3点について解説していきます。
訪問介護サービスを提供する際、同居家族がいる利用者には生活援助のサービスを提供することができません。
しかし、日中に家族が同居していない「日中独居」が起きている場合は生活援助サービスはどうなるのでしょうか。
生活援助は、原則として利用者が独り暮らしである場合に限られるため、仮に日中は独居状態であったとしても生活援助サービスを提供することは原則的にできません。
ただし、疾病、怪我、筋力の低下などの原因により、同居する家族にも家事の継続が困難な場合は生活援助サービスの提供が認められる可能性がありますが、これも個人の判断では決めることができないため注意してください。
訪問介護サービスの提供時間は、利用者の状態、目標達成状況などに応じて変更していかなければなりません。
平均的なサービス提供時間などで利用者の介護時間を設定することはできません。
そのため、利用者のその時々の状態を正確に把握し、適切な時間でのサービス提供が行えるように注意しましょう。
訪問介護員が同居している親族へと訪問介護サービスを提供することは禁止されています。
別居している親族へのサービス提供は認められていますが、自治体によっては、サービス提供開始前に自治体による協議を行うことを義務づけている場合もあります。
また、親族介護の目的でヘルパーの資格を取得させることは不正請求に抵触する可能性もあるため、注意してください。
参考:厚生労働省
参考:西宮市
訪問介護事業所や訪問介護員としてグレーゾーンの行為を起こさないように対策を行うことも大切です。
以下はグレーゾーン行為への対策例です。
①教育体制の確立
②その場での判断を行わない
この2点について解説します。
グレーゾーンの行為を行わないために最も重要であることは、職員への教育です。
行っていい行為、行ってはいけない行為についてしっかりと理解していることで、グレーゾーンの行為を利用者へ施してしまうことを防ぐことができます。
訪問介護員の方は、仮に事業所でのグレーゾーンに対する教育が無かったとしても、自分で積極的に情報を集めるなどして把握に努めるようにしましょう。
訪問介護を行っていると、グレーゾーンに抵触する可能性のある行為を求められることがあるかもしれません。
しかし、その行為の可否を現場で決めてしまうことは、後にトラブルにつながる可能性があります。
また、グレーゾーンの行為についてある程度理解していたとしても、判断をその場で行ってしまうことは危険です。
相談を受けたら、必ず一度その内容を事業所内で共有し、サービス提供責任者などの指示を仰ぐようにしましょう。
訪問介護では、グレーゾーンにあたる行為を行うことによって、利用者とのトラブルに発展したり、ペナルティ対象になることもあります。
事業所として訪問介護員への教育は欠かせません。
一方で、「グレーゾーンの行為はだめ」という教育ではなく、なぜやってはいけないのか、やってしまうことによってどのような弊害がもたらされるのかを考える教育を行うことが必要です。