訪問介護(高齢者のご自宅へヘルパーが訪問してサービスを提供する、介護保険のサービス)では、身体介護と生活援助という2つのサービスがあります。
身体介護とは具体的にどのようなサービスを行うのでしょうか。
身体介護と生活援助の違いは何でしょうか。
この記事では、訪問介護における身体介護の定義、サービス内容、身体介護をするのに必要な資格、身体介護と生活援助の違いなどについて詳しく説明します。
訪問介護の仕事内容、働き方について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護ってどんな仕事なの?具体的な業務内容や1日のスケジュールを紹介!
目次
身体介護とは、ヘルパーが高齢者の体に直接触れて行う介護サービスのことです。
おむつを交換する、食事が自分で食べられない人に食事を提供する、体が不自由でお風呂やトイレに行けない人をサポートするといったサービスがあります。
2018年(平成30年)の介護報酬改定(数年に1度、介護保険法が改定されこと)で身体介護に「自立生活支援のための見守り的介助」が含まれるようになりました。
それまでは、高齢者と一緒に調理することや一緒に掃除をすることは生活援助とされていました。
この介護報酬改定で、高齢者と一緒に行う生活援助が身体介護に含まれることになりました。
他にも一緒に行わない調理でも、「厚生労働大臣が定める特別食」の調理が身体介護に含まれます。
例えば、糖尿病の方に食事を提供するときは、特別な配慮が求められます。
そうした食事を作る場合も身体介護となります。
訪問介護で実際に行う具体的なサービス内容を詳しく説明します。
食事を自分で摂りにくい方や自分で摂れない方が、バランスの良い食事を摂り健康が維持できるように介助します。
脳梗塞などで体の半分が麻痺した方は口に食事を入れても、噛みにくいことがあります。
口からご飯が落ちてしまうこともあります。そのような場合はしっかり食事が摂れるよう介護します。
寝たきりの方がベッド上で食事が摂れるようにも介助します。
ベッドの背中部分をできるだけ上げることで、誤嚥(肺へ通じる道に食事が入ってしまうこと)を避けて食事を提供することができます。
食事介助は単に食事を口へ持っていくだけではなく、高齢者のペースで食事を提供することも大切です。
食事の始めや途中で水分を摂ることで、食事が喉に詰まることを予防することができ、飲み込みやすくなります。
高齢者でひとり暮らしの人は入浴中に事故が起きないか心配で、ひとりでは入浴できない人がいます。
高齢者が安全にお風呂に入れるように見守りを行います。
また、背中など自分で洗えない部分をヘルパーが洗ってきれいにします。
ご自宅のお風呂の浴槽が深くて転倒が心配だったり、浴槽の壁がまたげない場合も介護します。
体が麻痺して不自由な場合や病気がありふらつきがある場合も、ヘルパーが介護することで安全に入浴することができます。
入浴のタイミングは服を着ていない無防備の状態です。
また、お風呂は滑りやすい場所なので、転倒してケガをしないように注意しながら入浴してもらいましょう。
入浴介助のタイミングで、体の状態を観察します。
ケガがないか、あざができていないか、かぶれはないかなどを確認して、必要な場合はご家族に報告します。
体調が悪くベッドの上で生活している人は、自分で洗面所に行って顔を洗ったり歯磨きしたりできません。
ヘルパーが口腔ケア(歯磨きや舌磨き)を行うことで口の中を清潔に保てます。
熱いタオルで顔を拭いて気分がさっぱりするように配慮したりもします。
ヘルパーは専門的な技術を習得しているので、ベッド上でシャンプーやドライヤーも可能です。
男性の場合、電気髭剃りを使って髭を剃ることもします。ヘルパーは爪切りも可能ですが、水虫があるなど通常ではない爪の場合は爪切りを行うことはできません。
ふらつきがある場合や体に麻痺がある場合はヘルパーが手伝って着替えてもらいます。
パジャマから普段着に着替えたり、靴下を履いてもらいます。
冬場は寒いと風邪の原因になるため、更衣する場所を考えたり温める配慮をします。
ベッド上で生活している方もヘルパーが介護をして着替えてもらいます。
できるだけ利用者の負担がないようにベッド上で着替えを行います。
ベッド上で着替えを行う場合でも、冬場の着替えは高齢者にとって、布団を取るだけでも寒い場合があります。
部屋を十分に温めることを忘れないようにしましょう。
近くのお店へ買い物に行くなど、必要な外出の介助もします。
病気のためにふらつきがあり一人で外出できない人や、車椅子で移動する人が外出するための介護を行います。
どの道を通ると歩きやすいか、どの道が危険なのかなどを考えて外出します。
外出介助が必要な高齢者は、私たちでは気づかないちょっとした段差でつまづくことがあります。外出中は気を抜かないようにしましょう。
外出のための準備も外出介助の一部です。
着替えや靴を履き、必要であれば車椅子へ乗るための介護をします。
準備のタイミングでも服がしっかり着れているか、靴がしっかり履けているかチェックします。
転倒につながることを未然に防ぎ、安全な外出を心がけましょう。
ベッドで寝たきりになっている人は、自分で体の位置を変えることができません。
体が同じ状態なのはストレスに感じる場合があります。
また、体の同じ部分がずっとベッドと接していると、褥瘡(皮膚の病気)になってしまいます。
ヘルパーが定期的に体の違う部分がベッドと接するように介護します。
体の右側にクッションを入れて、左側が下になるようにしたり、左側にクッションを入れて右側が下になるようにしたり、クッションを外して体全体がベッドに接するようにしたりします。
こうすることで褥瘡になることを防ぐことができます。
足のかかとやくるぶし、仙骨の部分は褥瘡ができやすい場所です。
体位交換の時には仙骨が浮いているか確認しましょう。体を浮かせても踵部分はベッドに接したままのケースがあります。
足首の部分にクッションを入れるなどして、かかとも褥瘡にならないように注意しましょう。
高齢者の尿や便のお世話をします。ヘルパーが付き添ってトイレに行ける人はトイレへ行って排泄します。
体は起きれるものの長く歩くことができない人は、ポータブルトイレをベッド近くへ設置してポータブルトイレで排泄します。
自分でポータブルトイレで排泄できる人でも、ポータブルトイレを片付けられない人のために、ポータブルトイレも片付けます。
ベッドで寝たきりの方にはオムツ交換をします。
寝たきりの方は定期的に隠部を洗ってもらうことで清潔になり、かぶれを予防することができます。
また、尿や便の状態を観察します。尿の色や量に異常がないか、便の硬さや量、頻度はどうかを記録してご家族や医療関係者へ報告することもあります。
自宅内を移動するときや外で移動するときに転倒しないように介助します。
高齢者はその時の体調や気温や気分などにより、歩行に影響があります。
いつも安定して歩けている人が急によろけることもあるので注意が必要です。
外出して買い物などに付き添う場合も事故にあわないように注意します。
自宅から少し距離がある場合は、その時の体調で急に歩けなくなった時の対応を考えておくと良いでしょう。
ベッドで寝たきりの方は入浴できないので、清拭(体を拭く)を行います。
少し熱めのお湯を用意し、必要があれば清拭料などを入れます。
あまり強く拭くと、皮膚が剥がれてしまう場合があるので、その人の状態に合った拭き方をします。
体に褥瘡(皮膚の病気)がないかあざはないかなど、可能な範囲で皮膚の状態も観察します。
ベッドといつも接している部分が赤くなっている場合は、褥瘡になりかけている可能性があるので、ご家族や医療関係者に連絡して診てもらうと良いでしょう。
訪問介護で仕事するヘルパーは初任者研修修了者(旧ヘルパー2級)以上の資格が必要です。
デイサービスや介護施設では無資格でも仕事ができますが、訪問介護は有資格者のみ訪問介護のヘルパーとして仕事ができます。
訪問介護では基本、ヘルパーひとりで訪問して仕事を行うので、高い技術や広い知識、判断力が求められます。
また、自宅へ訪問するということは、訪問先ごとに環境が変わります。
訪問介護で働くヘルパーはご自宅で高齢者に合ったサービスを提供するので、柔軟性も求められる仕事と言えるでしょう。
訪問介護に必要な資格について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
身体介護の単位数を表にまとめました(令和5年1月時点)
サービス名 | 単位数 | 時間 | 主なサービス |
身体介護01 | 167 | 20分未満 | 簡単なおむつ交換や透析の迎えなどの短いサービス |
身体介護1 | 250 | 20分以上30分未満 | おむつ交換など |
身体介護2 | 396 | 30分以上60分未満 | 入浴介助など |
受けるサービスのかかる時間により、単位数が異なります。
1単位あたり10円の料金となりますが、地域によって10円ではない場合があります。
訪問介護における身体介護に関するQ&Aをまとめました。
身体介護は主に体に触れる介護のことを言います。
よく行うサービスとして、おむつ交換、入浴介助、移動介助などがあります。
生活援助は高齢者ができない家事を代行します。
洗濯、掃除、調理、買い物などが含まれます。
生活援助でも高齢者と一緒に行う場合は、身体介護になります。
ヘルパーが硬い野菜を切り高齢者が調理や味付けをする、一緒に掃除をする、洗濯物を一緒にたたむなどの行為です。
訪問介護での軟膏塗布は身体介護に含まれます。
ただし、条件があります。条件については、その地域により解釈が異なる場合があるため、ケアマネや行政担当者へ確認し、ヘルパーが可能かどうか確認することをお勧めします。
ケアマネージャーが作成する、居宅介護計画書に身体介護として位置付けられている場合は、身体介護に含まれます。
高齢者に病気があり転倒の可能性がある場合や、病気の後遺症で同行が必要な場合は、ヘルパーの介助が必要になります。
高齢者の状態は急に変化する場合があるので、買い物に同行する場合は、気を抜かずに同行し、転倒しないようにサポートしましょう。
訪問介護での調理は身体介護に含まれる場合と含まれない場合があります。
「厚生労働大臣が定める特別食」を提供する場合は、身体介護に含まれます。
例えば、糖尿病の人に食事を提供する場合は、塩分を控えるなどの特別な配慮が必要です。
こうした特別な調理を行う場合は、身体介護に含まれます。
通常の食事を調理して提供する場合は、生活援助に含まれます。
訪問介護の身体介護について解説しました。
身体介護とは体に触れて行う介護と言い換えることができます。
また、生活援助のサービスでも、特別食を提供したり、高齢者と一緒に行う家事は身体介護に含まれます。
訪問介護はひとりでサービスを提供することが多いので、正しくサービスを提供できるように身体介護について理解することは大切なので、この記事を役立てていただきたいと思います。