訪問介護のヘルパーの方で、以下のような悩みを持つ方はいませんか。
「業務外の雑用を頼まれた場合、どのように対応すれば良いかわからない」
「利用者からのハラスメントに困っている」
「仕事がきつく、続けていく自信がない」
訪問介護は基本的に一人で対応するため、サービス提供中に困り事が起こっても、すぐに解決できない場合があります。
そのため、どのように対応すれば良いのかわからず、途方に暮れている方もいるかもしれません。
そこで本記事では、訪問介護のヘルパーのよくある悩みと対処方法について紹介します。
目次
訪問介護員によくある悩みと対処法について知る前に、訪問介護の具体的な仕事内容や、働き方について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護ってどんな仕事なの?具体的な業務内容や1日のスケジュールを紹介!
訪問介護員のよくある悩みは以下の5つです。
訪問介護員は利用者宅でサービスを提供するため、介護施設の介護職員とは違った悩みがあります。
「介護保険適用外のサービスを頼まれてしまう」
「残業がしんどい」
「仕事内容が大変なのに、給料が割に合わない」
「利用者が新型コロナの感染対策に協力してくれない」
「利用者からの理不尽な要求や、ハラスメントを受けている」
では、さっそく訪問介護員が悩むポイントや対処方法について紹介していきます。
訪問介護のヘルパーのよくある悩みは、介護保険適用外のサービスを依頼されたときの対処に苦慮することです。
なぜならヘルパーは対応できないことを知りつつも断りにくいと感じたり、介護保険の範囲内なのか判断に迷ったりするためです。
例えば庭の草刈りや、ペットの餌やりを依頼される場合は介護保険適応外とわかりやすいでしょう。
しかし居室の掃除であれば、どこまでが範囲内なのか判断がつきにくいケースもあります。
ヘルパーはこのような事態に対応するためには、まず「できること」「できないこと」を把握することが大切です。
訪問介護で利用者に提供できるサービスは、「身体介護」「生活援助」「通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービス」の3つで、具体的に提供できるサービスは以下のとおりです。
できること | できないこと | |
身体介護 | ・排泄介助 | ・散髪 |
生活援助 | ・利用者が主に生活している部屋の掃除 | ・利用者が使用しない居室・場所の掃除 |
通院介助 | ・乗車介助 | ・受診待ち時間中の付き添い(保険外として事業所独自に支援体制がある場合有り) |
参考:厚生労働省
参考:茨木市
大まかにまとめるとヘルパーのできないことは、「利用者以外の援助になること」「最低限の生活に必要ではないこと」「日常生活の援助といえないこと」になります。
それでは、ヘルパーが対応できないサービスを依頼されたときの対処方法を紹介します。
介護保険適応外のサービスを依頼されたとき、ヘルパーはしっかりと断ってください。
なぜなら利用者のなかには、制度について十分な知識がない方もいるためです。
制度上、対応できないことを知らずに依頼している場合もありますので、対応できること・対応できないこともあわせて伝えましょう。
ときには同居の家族から依頼されることもあります。
例えば買い物支援の際に、家族分の買い物を依頼されるといった具合です。
このような場合も同様に、対応できないことを伝えて断ります。
反対にこの程度ならと安易に引き受けてしまうと、他のヘルパーにも同様のサービスを求めてしまうかもしれません。
そこからトラブルに発展することもありますので、介護保険適用外のサービスを依頼されたときは必ず断りましょう。
どうしてもとお願いされた場合は、一度話を持ち帰り事業所の判断を仰ぐのがトラブルを避けるポイントです。
できないと断っても何度も要求してくる場合、断りづらいと感じて悩んでしまう方もいるでしょう。
断るのがつらいと感じるほど何度も要求してくる場合は、サービス提供責任者から「対応できない」と伝えてもらうのがおすすめです。
事業所の判断として「できない」と明確に伝えることで、より強いメッセージを発信できます。
それでも過度な要求が続くようであれば、家族やケアマネジャーと相談することも検討しましょう。
訪問介護のヘルパーのなかには、残業がしんどいと悩んでいる方もいます。
訪問介護は決まった時間内に必要な介護サービスを提供するため、残業とは無縁と感じる方もいるかも知れません。
しかし訪問介護のヘルパーは、移動と介護サービスの提供に多くの時間を費やすため、書類の作成業務などの時間を確保するのが困難です。
そのため書類の作成や、業務内容を記録するために残業することもあります。
また介護業界は慢性的な人手不足が続いており、訪問介護も例外ではありません。
人材が不足すると、サービスを必要とする利用者に対応するには、一人のヘルパーが受け持つ件数を増やす必要があります。
しかし対応する件数が増えるほど、残業も増えやすくなります。
訪問介護のヘルパーで「残業がしんどい」と悩んでいる方におすすめの解決策は、タイムスケジュールや仕事量を見直すことです。
残業を減らすためには、移動時間を考慮したタイムスケジュールの管理が大切です。
なぜならヘルパーの仕事は利用者宅へ移動するのに、多くの時間を費やすためです。
反対に、移動時間をあまり考慮せずにスケジュールを組むと、移動でトラブルがあった際にスケジュールが狂ってしまいます。
例えば、通常5分で到着するのに、道が混んでいたため10分以上かかってしまう場合などです。
スケジュールをしっかりと管理できると、空いた時間に書類業務をするなど、時間の有効活用にもつながり残業も減らすことができるでしょう。
残業に悩んでいる方は、そもそも受け持っている仕事量が多すぎるのかもしれません。
自分の能力に応じた仕事量にすることで、残業の悩みを解決する方法もあります。
例えば、1日に訪問件数が1件減るだけでも時間にゆとりがうまれ、残業を減らせるでしょう。
自分の能力を超えていると感じる場合には、上司と相談し1日の担当件数を見直してもらうのがおすすめです。
訪問介護のヘルパーは身体的な負担が大きく、一人で臨機応変に対応しなければいけないなど、ハードな仕事内容に対して給料が割に合わないと感じている方もいます。
そこで訪問介護の給与について把握するためにも、介護老人福祉施設や通所介護事業所、全産業の給与を比較します。
厚生労働省の調査によると、2021年の平均給与は以下のとおりです。
常勤 | 非常勤 | |
介護施設全体の給与平均 | 31.6万円 | 19.8万円 |
介護老人福祉施設 | 34.5万円 | 20.2万円 |
訪問介護事業所 | 31.4万円 | 20.1万円 |
通所介護事業所 | 27.8万円 | 17.3万円 |
全産業の平均賃金 | 32.3万円 | 21.6万円 |
参考:厚生労働省
参考:厚生労働省
調査データより訪問介護員は、介護施設全体の平均給与と同水準であるとわかります。
しかし介護施設のなかで給与の高い、介護老人福祉施設と比べると常勤で月3万円の大きな開きがあるのも事実です。
この開きの理由は、介護老人福祉施設では夜勤があるためと考えられます。
夜勤をすると夜勤手当が支給されるため、給与の開きとなっているのです。
また介護士の給与は少ないと思われがちですが、制度の見直しなどにより給与は改善傾向にあります。
全産業との開きも約1万円で差がないといえませんが、全産業平均よりもやや下回る程度の水準です。
このような状況のなか、訪問介護のヘルパーが給料をアップさせるには、「資格を取得する」「転職する」の2つの対処方法があります。
給料の悩みには、より上位の資格を取得することで給料アップを目指す対処方法があります。
そもそも訪問介護のヘルパーとして勤務するためには、介護に関する資格が必要です。
そのためヘルパーのみなさんは、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修以上の資格をお持ちでしょう。
介護士に関する資格は主に以下の4つがあります。
もし国家資格である「介護福祉士」の資格を取得していないのであれば、取得を目指してみましょう。
介護福祉士の資格を取得すると、資格手当として給料アップできる事業所も多いためです。
資格を取得するメリットは、転職をする際にも有利となる点です。より給料の高い事業所に転職したいなどの希望を叶える際にも役立ちます。
給料アップを転職で叶える方法もあります。
より給料の高い事業所に転職すれば、給料アップにつながるためです。
例えば近隣の訪問介護事業所の給料体系を調べて、今の勤務先よりも高い事業所に転職するといった具合です。
ほかにも、介護老人福祉施設に転職し夜勤をする方法もあります。
転職は簡単にできそうにないと思うかもしれませんが、介護業界は慢性的な人手不足です。
資格と経験のあるヘルパーが働ける事業所は数多くあります。
その証拠に2022年9月の「介護サービスの職業」の有効求人倍率は3.25倍でした。
つまり介護業界は、転職者に有利な売り手市場です。
給料に悩んでいる方は好条件の事業所がないか、求人情報を日ごろからチェックするのをおすすめします。
参考:厚生労働省
ヘルパーの悩みには新型コロナの感染リスクがあります。
なぜなら利用者が新型コロナの感染対策に協力してくれない場合があるためです。
例えば居室の換気を許してくれなかったり、マスクの着用を拒否したりといった具合です。
認知症により、新型コロナ対策についての理解が難しい利用者もいるため、対応に困っているヘルパーも少なくないでしょう。
ヘルパーは利用者と1対1で接する時間も長いため、「新型コロナに感染したらどうしよう」と不安を抱えるのは当然のことです。
また自分が感染すると、ほかの利用者にも感染させるリスクがあるため、自分が原因で感染を広げるのも怖いものです。
そこで、利用者が新型コロナ感染対策に協力してくれない場合の対処方法について解説します。
利用者によっては病気や障がいの関係で、新型コロナ感染対策ができない場合もあります。
そのため、まずは自分でできる感染対策を徹底することが重要です。
ヘルパー自身ができる感染対策についてまとめました。
・マスクの着用
・使い捨て手袋の使用
・使い捨てエプロンの使用
・手指消毒用アルコールの携帯
・ソーシャルディスタンスの実践
・帰宅後の消毒
感染リスクを下げるためには、マスクの着用、換気、ソーシャルディスタンスが効果的です。
しかしヘルパーの場合は、ソーシャルディスタンスをとることが難しいこともあります。
そのためマスクや手袋・エプロンを装着して、もし利用者が感染していても、手や服にウィルスがつかない工夫が大切です。
またどこでも消毒できるように、手指消毒用アルコールを携帯し、こまめに使用しましょう。
ヘルパーが自分でできる新型コロナ感染対策をしても対応が難しい場合は、サービス提供責任者やケアマネジャーに相談します。
例えば発熱や咳などの症状がみられる場合や、利用者が新型コロナ感染者と接触した場合です。ほかにも家族が感染拡大地域から帰省する場合なども該当します。
ヘルパー個人では利用の中止や延期などを判断できないため、新型コロナの感染リスクが高いと感じた場合には、サービス提供責任者やケアマネジャーに相談して指示を仰ぎましょう。
訪問介護は利用者のプライベートな空間で行われるため、利用者から理不尽なことを言われたり、ハラスメントを受けたりして悩んでいるヘルパーもいます。
厚生労働省では以下の3つを介護現場における、利用者から介護職員へのハラスメントと規定しています。
ハラスメント | 例 |
身体的暴力 | ・ものを投げつけられる ・殴られたり蹴られたりなどの暴力を受ける ・唾をかけられる |
精神的暴力 | ・大声で怒鳴る ・ヘルパーに対して嫌がらせをする ・理不尽なサービスを要求する |
セクシャルハラスメント | ・必要性がないのに体を触られる ・性的な嫌がらせを受ける |
参考:厚生労働省
ハラスメントを受けると、ヘルパーは心身ともに疲弊するでしょう。
ときには「介護をやめたい」と感じてしまうかもしれません。
どのように対応すれば良いのかわからず、一人で抱え込んでいるヘルパーも多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは理不尽なことを言われた場合や、ハラスメントに対する対処方法について紹介します。
利用者との関係性や、ハラスメントに悩んでいる場合の有効な解決策は、同僚に話を聞いてもらうことです。
なぜなら、同僚も同じような利用者で困っている可能性もあり、対応策を見出しているかもしれないからです。
例えば対応策として、不要に体を触ってくる利用者との距離の取り方や、理不尽な要求に対するかわし方などがあります。
このように同僚と意見交換することで、新たな対処方法をみつけられることもあります。
一人で悩まずに、事業所全体の問題として同僚と話し合うことが大切です。
理不尽な要求やハラスメントが耐えられない程ひどい場合は、上司に報告しましょう。
上司に報告することで担当を変えてもらったり、利用者と話し合ってもらえたりなど、ヘルパー個人ではできない対応方法もあるためです。
しかし、上司に相談しても何も変わらないと思っている方もいるかもしれません。
訪問介護事業所側に立って考えると、ホームヘルパーは大切な介護人材です。
ヘルパーが嫌なことを我慢し続けて、心身に不調をきたし離脱するほうがダメージは大きくなります。
そのため、ヘルパーがハラスメントで困っているのであれば、相談に応じてくれるはずです。
上司に相談することで、家族やケアマネジャーを含めた話し合いで解決できる場合もあります。
訪問介護のヘルパーの悩みに関するQ&Aをまとめましたので、是非参考にしてください。
訪問介護の仕事に向いている人の特徴として
・コミュニケーション能力がある人
・責任感がある人
・些細なことに気づける人
などが挙げられます。
訪問介護の仕事に向いている人、向いていない人の特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護を辞めてしまう理由として、以下の6つが挙げられます。
①給与に対する不満
②利用者との人間関係の悩み
③移動の負担
④一人で介護する時の責任・プレッシャー
⑤訪問先の環境が良くない
⑥ステップアップの為
訪問介護員を辞める理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護を辞めた理由は?最初にするべきこと・対象方法を徹底紹介
訪問介護のヘルパーは様々な悩みを抱えています。一人で悩まずに、上司や同僚に相談して解決策を検討しましょう。
本記事で紹介したように、悩みには様々な解決方法があります。対処方法がわかれば、より長く仕事を続けられるはずです。