訪問介護は、高齢者が自分らしく自立した生活を送るためにサポートする重要な役割があります。
厚生労働省の令和元年度介護給付費等実態統計では、ここ数年訪問介護の利用者が増加しています。
これからもますます需要が高まる訪問介護。訪問介護の仕事を始めたいという方の中には、「訪問介護の給料はいくらもらえるの?」「1日何件ぐらい訪問するの?」など疑問に持つ方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、訪問介護員は1日何件担当するのか、1日の流れ、1日の訪問件数が多いのに給料が低い時の対処法などについて詳しく解説します。
目次
訪問介護員が1日何件担当するのか知る前に、訪問介護員の仕事内容について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護ってどんな仕事なの?具体的な業務内容や1日のスケジュールを紹介!
これから訪問介護員を目指す人にとっては、1日だいたい何件ほど利用者を担当するのか、把握しておきたいところです。
また、担当する件数により給料や休憩などにも関わってくるため、大きなポイントになります。
そこで、次に正社員とパート・アルバイト、それぞれ1日の訪問件数の違いについて、ご紹介します。
今回は、1日の流れについても紹介しますが、夜間対応に特化した訪問介護を行っている事業所も存在します。
夜間対応では利用者が自宅で24時間安心して生活できるように、入居型の介護施設のような手厚いサポートが受けられます。
勤務形態が正社員の場合、1日全体の訪問件数は5件前後になります。
内訳は午前が2件、午後が2〜3件ほどです。
もう少し多い件数を訪問できそうにも感じますが、訪問介護は利用者宅へ訪問するために1件ごとに移動時間がかかるため、5件が平均になります。
ただし、事業所によっては7〜8件ほど訪問するところや、若い訪問介護員が中心だと10件以上訪問するところもあります。
そのため、訪問件数を重視して仕事を探す際は、事業所のヘルパーの年齢構成も重要なポイントとして、頭に入れておきましょう。
また、正社員の仕事は訪問介護だけでなく、介護記録の作成などの事務作業も重要になります。
パートやアルバイトの場合、次の2つの働き方に分けられます。
・フルタイム
・空いた時間で勤務する
フルタイムで働く場合は、正社員同様1日5件前後の担当と考えて良いでしょう。
一方、火曜午後の休みだけといったように、空いた時間で勤務する場合は、1日1〜2件ほど訪問をする方が多いようです。
注意しておきたいこととして、もう少しだけ訪問回数を増やしたい場合でも、労働を希望する時間と利用者の希望時間が合わないことがあります。
また、短時間だけの勤務であれば、移動や休憩の時間も考えると、訪問件数を増やすことは難しいでしょう。
訪問介護員は、利用者の自宅を訪問して、次のようなサービスを行います。
なお、下記すべてのサービスを行うわけではなく、利用者ごとによってサービス内容は変わってきます。
・「身体介護」→入浴、排せつ、食事などの介助を行う
・「生活援助」→調理、洗濯などの家事全般を行う
・「通院介助」→病院や施設への通院の介助を行う
・「医療的ケアの一部」→軟膏を塗る、湿布を貼る、目薬をさすなど
次に、サービスを提供する訪問介護員の仕事の一日の流れを詳しく説明します。
正社員とパート・アルバイトでは任せられる仕事も変化するため、仕事内容の違いについても確認していきましょう。
次に、基本的な正社員の1日のスケジュールをご紹介します。
なお、正社員でも在籍する訪問介護の事業所によりスケジュールが異なります。
・正社員の1日の流れの例
08:30 | 出勤 |
09:00~09:30 | 移動 |
09:30~10:30 | Aさんに介護サービスの提供 |
10:30~11:00 | 移動 |
11:00~12:00 | Bさんに介護サービスの提供 |
12:00~13:00 | 昼食、休憩 |
13:00~13:30 | 移動 |
13:30~14:30 | Cさんに介護サービスの提供 |
14:30~15:00 | 移動 |
15:00~16:00 | Dさんに介護サービスの提供 |
16:30 | 帰社 |
16:30~17:30 | 記録、引継ぎ |
上記は、移動時間を30分で設定しているため、1日の訪問件数は4件になりますが、
移動時間をもう少し短縮することも可能でしょう。
利用者宅で介護サービスの提供業務が終了しましたら、次の現場へ向かう流れになります。
また、正社員でも直帰が可能な場合もあり、仕事内容の詳細は求人情報をチェックしましょう。
パートやアルバイトは、正社員に比べて柔軟な働き方ができます。
そのため、子育てや家事などで時間に限りのある人や、副業で空き時間を活用したい人が働けます。
また、パート・アルバイトの場合は事業所へ出社した後、利用者宅へ向かう場合と、直接利用者宅へ向かう場合があります。
すべての訪問が終わったら、その日の介護業務は終了となります。
その後、事業所へ戻り日報などを書いてから退社するのが一般的です。
一方、利用者宅から直帰できる事業所も多いようです。
直行直帰が希望な方は、求人情報の内容などを確認しておくと良いでしょう。
訪問介護員の1日の流れについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【例あり】訪問介護員の一日の流れを徹底紹介!どんな仕事内容?
訪問介護は、利用者宅でサービス提供をしている時間しか時給が発生しないため、時給が低いと、どうしても給料は低くなってしまいます。
時給が低ければ、訪問介護で1日に多くの件数を回ったとしても思うように稼げなくなるため、仕事を探す際は時給を必ず比較しましょう。
次に、現在訪問介護員として働いている方で、1日の訪問件数が多いのにもかかわらず給料が低い方に対処法をお伝えします。
主に、下記のような方法があります。
・移動時間を少なくする
・資格・異動手当のある事業所を選ぶ
・身体介護を積極的に行う
それぞれについて、詳しく確認していきましょう。
訪問介護の移動時間は、時給に含まれないため、移動時間が長いと稼ぐことは難しくなります。
そのため、1件でも多く回りたい場合は、距離や移動手段を考える必要があります。
距離は、1件1件の距離間隔が長い場合や、効率の悪い回り方をしてしまうと多く回れません。
また、移動手段は徒歩や自転車で訪問している場合は、移動範囲が限られてしまいます。
その上、移動時間もかかってしまうため、訪問件数を増やすのは難しくなります。
一方、バイクや車を利用している場合は、移動距離が長くても短時間で移動ができるため、多く回れる確率が高くなります。
訪問介護も一般の企業と同じように、事業所ごとに基本給や各種手当、福利厚生などが変わってきます。
今から訪問介護を考えている方は、時給以外にも、資格や移動の手当がある事業所を選ぶと、効率よく稼げるようになります。
また、資格手当がある事業所は、スキルアップできる環境が整っている事業所である可能性が高いです。
スキルアップは、給料アップにもつながってくるため、求人募集の詳細はチェックしておきましょう。
現在訪問介護事業所で働いている方は、あなたの業務内容と給料や待遇が見合わないと感じているのなら、転職を検討してみても良いでしょう。
ホームヘルパーの給料は、調理・洗濯などの家事全般をサポートする生活援助より、入浴・排せつ・食事などの介助を行う身体介護の方が、高めに設定されています。
事業所にも違いはありますが、身体介護の方が生活援助より、時給にして300円ほど高い傾向です。
そのため、生活援助のみ担当している場合は、件数が多くても稼げなくなってしまいます。
身体介護は、生活援助に比べて仕事の難易度は上がるものの、利用者に提供できるサービスが増えたり、今後のスキルアップにつながります。
現在、生活援助を中心に仕事をしている方は、事業所に身体介護の業務を中心に担当することができないか相談してみると良いでしょう。
また、給与を上げる方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護の給料相場はどのくらい?正社員か非常勤で給与はどう違う?
次に、正社員の一般的な給料を厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」のデータを参考に紹介します。
訪問介護事業所で働く介護職員(ヘルパー)の平均給与額は、常勤で31万4,590円、非常勤は、20万1,120円でした。
なお、現在も経験年数にもよりますが、国が主体となって処遇改善を行っていることから、まだまだ改善の余地があります。
また、事業所で経験を積んでスキルアップしていくと、給料アップも期待できます。
さらに今後、訪問介護事業所の運営に関わる業務を担えるサービス提供責任者になれば、より給料アップが見込まれます。
アルバイト・パートの場合、月の労働時間がフルタイムの介護職と比較して少ないことを考えると、時給の単価は比較的高いとも言えます。
厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」における調査によると、常勤のホームヘルパーの時給は約1,400円、非常勤の場合は約1,660円でした。
この数値は、あくまで平均的な数値によるもので、初任者研修以上の資格があるかどうかも給料に反映されます。
また、業務内容などによっても違いがでてくるため、生活援助より身体介護の方が時給が高くなります。
さらに、地域性や時間帯などが時給に反映されるケースもあるため、求人内容を確認してみましょう。
次に、訪問介護員(ホームヘルパー)の働き方に関して良く聞かれる質問を集めました。
・訪問介護は1日の件数を増やせば稼げる?
・訪問介護でできた空き時間の活用方法は?
・訪問介護の移動時間は勤務時間に含まれる?
給料の上げ方や空き時間の活用、勤務時間の細かいところについて詳しく回答していきます。
特に、空き時間の活用はそれぞれ過ごし方が異なるため、タイプ別にまとめましたので、参考にしてください。
事業所によっては相談した上で、訪問件数を増やせる場合があります。
時給の場合は、基本的に訪問件数のサービス提供時間に応じた給料が支払われるため、回数を増やせば少なからず稼げる可能性は高くなります。
しかし、訪問件数を増やそうとしても、利用者宅でのサービス提供や移動時間、休憩時間など総合的に考えてみると、1日で回れる件数には限りがでてきます。
また、訪問件数を増やすには、身体介護で初任者研修以上の資格が求められるケースも多くあるため、資格の有無もポイントです。
もちろん、給料や充実感のためにも件数を増やすことは大切ですので、時給の高さや手当が充実した事業所を選ぶことをおすすめします。
訪問介護では、利用者のサービス時間に合わせて自宅を訪問し、サービスを提供します。
そのため、パートやアルバイトとして働いていると、前の現場から次の現場まで時間が空いてしまうことも日常茶飯事です。
空き時間の過ごし方はライフスタイルにより異なりますので、分けてご説明します。
・家事や用事に活用
→一度家に戻り、家事を進める
→買い物や銀行など
・スキルアップに活用
→別の副業
→別の事業所で掛け持ち
→資格取得に向けた勉強時間
・休憩時間として活用
→読書など休憩にあてている
→好きなお店でランチ
・仕事として活用
→カフェなどで事務作業をしている
→一度、事業所に戻って内勤の業務
また、事業所に相談して、別に内勤業務を振ってもらうケースもあります。
厚生労働省では移動時間についての労働について、次のように明記しています。
「移動時間とは 事業場、 集合場所、 利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、 使用者が 業務に従事するために必要な移動を命じ、 当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には 労働時間に該当するものであること」
この場合の移動時間が労働、いわゆる給料が支払われる条件として認められるには、次の2つが必要です。
1つ目は、事業所から業務を命じられて、業務に従事するために、利用者宅の間を移動すること。
2つ目は、買い物など自由に利用できる時間がないことです。
事業所によっては「介護サービスを提供している時間ではないため」という理由で、無給扱いにしている事業所があるため、勤務前に確認が必要です。
参考:厚生労働省
今回は「訪問介護の社員やパートの違いについて!1日何件訪問できるの?」について説明しました。
訪問介護pixabayの需要の高さや働き方についてご理解いただけましたでしょうか?
訪問介護員の一歩目を歩み出す方や、今の訪問介護員からさらなるスキルアップを目指す方の良いきっかけになれれば幸いです。