福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者の方々が安全で快適に生活するために住環境を整える専門家で、実際に福祉住環境コーディネーターになるためには、専門的な資格を取得する必要があります。
今回は、福祉住環境コーディネーターの仕事内容から、資格試験の概要、合格率や試験に向けた準備について詳しく紹介していきます。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
福祉住環境コーディネーターは医療・福祉・建築の幅広い知識を活かして高齢者や障がい者が住みやすい環境を提案するアドバイザーです。民間資格として1999年に設立されており、2022年3月時点において約65万人が福祉住環境コーディネーター検定の資格を取得しています。
今後、国内の高齢化は今まで以上に深刻になります。厚生労働省は、2025年の高齢者割合は65歳以上が30.3%、75歳以上が18.1%となるだけでなく、その後も割合は増加し、2036年には33.3%と3人に1人、2065年には38.4%と国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となると予測しています。
参考:厚生労働省「我が国の人口について」
内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節 1)」
このことからも、福祉住環境コーディネーターの需要も今まで以上に高くなることが分かるはずです。そんな福祉住環境コーディネーターの主な仕事内容は下記です。
メインの仕事は、ケアマネージャーや建築士など、医療・福祉・建築に関わる専門家と連携をとりながら、高齢者・障がい者などに対して安全で快適な住環境を整えられるように下記のようなアドバイスを行うことです。
種類 | 内容 |
手すりの取り付け | 廊下・トイレ・浴室・玄関などに手すりを取り付けることで、転倒の防止・家の中で移動しやすくする。 |
段差の解消 | 玄関・廊下・脱衣所・浴室などにある段差を解消することで、足の引っ掛かりがなくなったり、場合によってはスロープを設置することで車椅子での移動が可能になる。 |
扉の取り替え | 開き戸のドアの開閉時に転倒する方も多いため、引き戸やアコーディオンカーテンへと変えることで、開閉が楽になるだけでなく、安全性を高められる。 |
床や通路の材質変更 | 畳からフローリングなどへの変更や、浴室やトイレを滑りにくい床材へ変更することで転倒を予防できる。 |
便器の取り替え | 和式便器から洋式便器に取り替えることで、便座から立ちやすくする。 |
上記の内容を中心に、各個人に応じた方法で住環境を整えるためのアドバイスを行います。その他にも、場合によっては介護施設のコーディネートを行う場合や、バリアフリー住宅の建設・リフォームを検討する方の相談に応じる場合もあります。
福祉用具・介護用具など、日常的に使う道具のアドバイスも行います。福祉用具や介助用具は非常に多くの種類があるため、その方にあった適切なモノを福祉住環境コーディネーターがアドバイスします。なお、福祉用具や介助用具はレンタルと購入に分かれており、下記のようなモノがあります。
車いす、車いす付属品、歩行器、歩行補助つえ、手すり、スロープ、介護ベッド、介護ベッド付属品、体位変換器、床ずれ防止用具、認知症老人徘徊感知機器、自動排せつ処理装置、移動用リフト(つり具の部分は購入対象)
腰掛便座(ポータブルトイレなど)、自動排せつ処理装置の交換が可能な部品、入浴補助用具(入浴台、入浴用いす、浴槽内いす、 浴槽用手すり、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)、簡易浴槽、移動用リフトのつり具部分
介護保険を取得している方の場合、改修工事を行う際に自治体に申請することで、20万円以内であれば改修費の一部を負担してもらえるため、実質的な負担額が改修費の1〜2割に抑えることができます。その時に必要となるのが、「住宅改修費支給申請の理由書」です。この理由書は誰でも作成できるのではなく、下記の職種しか作成できません。
つまり、福祉住環境コーディネーター2級以上を取得することで、住宅改修に必要な理由書を作成できます。
福祉住環境コーディネーターは3級~1級の3段階に分かれます。ここではそれぞれの試験概要や合格率について紹介します。
福祉住環境コーディネーター3級の詳細情報は下記です。
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基準 | 福祉と住環境の関連分野の基礎的な知識についての理解度を確認します。
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受験資格 | 学歴・年齢・性別・国籍による制限なし |
年間の試験回数 | 年2回 |
受験方式 | マークシート方式 |
試験時間 | 90分 |
合格点 | 100点満点とし、70点以上をもって合格 |
合格率 | 2023年度:40.9% |
試験概要 |
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受験料 | 5,500円(税込) |
受験会場 | 自宅や会社、全国各地のテストセンター |
福祉住環境コーディネーター2級の詳細情報は下記です。
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基準 | 3級レベルの知識に加え、福祉と住環境等の知識を実務に活かすために、幅広く確実な知識を身につけていることを確認します。また、各専門職と連携して具体的な解決策を提案できる能力を求めます。
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受験資格 | 学歴・年齢・性別・国籍による制限なし |
年間の試験回数 | 年2回 |
受験方式 | マークシート方式 |
試験時間 | 90分 |
合格点 | 100点満点とし、70点以上をもって合格 |
合格率 | 2023年度:38.1% |
試験概要 |
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受験料 | 7,700円(税込) |
受験会場 | 自宅や会社、全国各地のテストセンター |
福祉住環境コーディネーター1級の詳細情報は下記です。
基準 | 2級で得た知識をもとに、新築や住宅改修の具体的なプランニングができ、さらに安全で快適なまちづくりへの参画など幅広い活動ができる能力を求めます。
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受験資格 | 学歴・年齢・性別・国籍による制限なし |
年間の試験回数 | 年1回 |
受験方式 | 前半:マークシート方式 後半:記述式 |
試験時間 | 前半・後半ともに90分ずつ |
合格点 | 前半・後半ともに100点満点とし、それぞれ各70点以上をもって合格 |
合格率 | 2022年度:5.6% |
試験概要 | 各地のテストセンターで、備え付けのパソコンで受験(CBT方式) |
受験料 | 12,100円(税込) |
受験会場 | 全国各地のテストセンター |
福祉住環境コーディネーターの多くは、他にも保有している資格があり、その多くは下記のように医療・福祉・建築系であることが、2・3級アンケート集計結果から分かります。
職種 | 割合 |
福祉用具専門相談員 | 19.5% |
介護福祉士 | 18.3% |
介護初任者研修 | 13.8% |
理学療法士 | 8.7% |
宅地建物取引士 | 5.9% |
ケアマネージャー | 5.6% |
作業療法士 | 5.1% |
二級建築士 | 4.2% |
その他 | 18.9% |
(東京商工会議所「福祉住環境コーディネーター検定試験とは」をもとに作成)
下記のポイントを押さえることで、福祉住環境コーディネーターとして働きやすくなります。
福祉住環境コーディネーター3級でも働くにあたって必要な知識を取得できますが、実務的には何もできません。
しかし、福祉住環境コーディネーター2級以上を取得すると、住宅改修費支給申請の理由書が作成でき、介護福祉業界や建築業界での評価も高くなるため、2級以上の取得がおすすめです。
福祉住環境コーディネーターの資格取得は独学でも可能ですが、実際に働くためには医療・介護・福祉・建築の知識が必要です。実際に介護や福祉の学校に通うことで必要な知識だけでなく、現場の経験ができるため、より鮮明なイメージを持つことができます。
福祉住環境コーディネーターの仕事は、高齢者や障がい者の方が自宅でできるだけ自立した日常生活を送れるようにすることです。それを実現するためには、その方々が何に困っており、何を必要としているのかを正確に対応しなければいけません。
そのためには、医療・介護・福祉・建築の知識だけでなく、相手の話をしっかり聞いて不明な点は質問できる、相手が悩みを気軽に相談できるようなコミュニケーションスキルが必要です。
資格を取得することで下記のようなメリットがあります。
福祉住環境コーディネーターの資格を取得することで、現在働いている業界の知識や経験に加えて、他業界の知識も身に付けられるため、大きなスキルアップにつながります。幅広い専門知識と関われるため、仕事の幅が広がった結果、給与アップも図れる場合もあります。
引き続き過ごしてきた住宅で生活したいものの、住環境的に難しいかもしれないと、悩んでいる方は多く、その傾向は増加するはずです。そのような利用者や家族の悩みに対して住環境を改善することで、これまでの住宅で生活できるという満足感を高めることができます。
「少しでも長く住み慣れた自宅で暮らしたい」という希望を多くの方が持っていることから住宅の改修を検討する人が増えており、その傾向は今後も増加するはずです。
実際に住宅を改修するためには、医療・福祉・建築の専門職だけでなく、利用者との仲介役も非常に重要となり、その仲介役として福祉住環境コーディネーターの活躍が期待されます。今回で少しでも資格が気になった方は、ぜひ一度資格の取得をご検討ください。