介護業界の仕事内容といえば、介助を行う介護職を思い浮かべるかもしれませんが、事業所を運営するためには、介護知識を持っている事務員の存在も重要です。
介護事務管理士は、介護サービスを実施するために事務的な側面を専門的に管理し、サービスの質の向上に貢献する重要な役割を担う専門職で、介護保険制度の知識・医療や介護に関係する文書の管理・請求業務などのさまざまな知識が必要です。今回は、介護事務管理士の仕事内容・資格取得のための方法、そして資格を持つことのメリットなどを詳しく紹介します。ぜひ、最後までお読みください。
目次
介護施設における事務作業のスペシャリストで、介護事務に必要なスキルを有していることを証明する民間資格です。
そんな介護事務管理士ですが、介護保険制度が創設された2000年に、医療・福祉関連事務の技能認定試験を主催している技能認定振興協会(JMSA)が新設されてから多くの方が資格を取得しており、主に下記の仕事を行っています。
介護事務管理士の主な業務は介護報酬請求業務です。
介護サービスの利用料は利用者が1〜2割負担し、残りの8〜9割が介護保険から介護報酬として支払われる仕組みとなっています。そのため、介護施設や事業所に支払われるべき介護報酬を「国民健康保険団体連合(国保連)」へ請求するために、提供した介護サービス料金を月ごとに計算してレセプトを作成します。
この介護報酬請求は1ヵ月に1度の業務となり、期日に間に合うように利用者全員のレセプトを作成するため、月末~月初にかけて多忙になりやすい傾向です。
介護事務管理士は介護報酬請求業務だけでなく、ケアマネージャーの補助業務・施設利用者の問い合わせ対応なども行います。
ケアマネージャーの補助業務は、施設に勤務するスタッフのシフト作成などが主な業務ですが、それ以外にも実際の介護業務の補助を行う場合もあるなど、事務業務だけではない幅広い対応が必要です。
介護事務管理士はさまざまな場所で働くことができます。ここでは、主に働く場所を紹介します。
働く場所 | 介護サービスの特徴 | 仕事内容 |
訪問介護事業所 |
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通所介護 |
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訪問看護ステーション | 看護師・リハビリ職員などが居宅を訪問して、主治医の指示や連携によって看護・医療サービスなどを提供。 |
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グループホーム | 認知症のある高齢者が、スタッフの介助を受けながら5〜9人程度の少人数単位で共同生活をおくる施設。 |
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ショートステイ | 自宅での介護が一定の期間できなくなった際に、その期間だけ介護施設などに入所するサービス。 |
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特別養護老人ホーム | 在宅での生活が困難な要介護状態の高齢者が入居できる介護保険施設。 |
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上記以外でも、「クリニック」「居宅介護支援事業所」「国保連合会」「保険請求審査機関」「介護コンピューターのシステム会社」「損害保険会社」など多くの場所で活躍できます。
実際に介護事務管理士を取得するための方法は下記です。
介護事務管理士になるためには、JSMA技能認定振興協会が実施する介護事務管理士技能認定試験に合格する必要があります。
介護事務管理士の試験は国家試験ではなく、実務経験も必要ではないため受験資格は特に設けていません。
また、年齢制限もないため希望すれば誰でも受けられます。
技能認定試験は下記のような内容で学科と実技に分かれます。
試験形式 | 試験内容 | |
学科 |
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実技 |
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介護事務管理士の資格を取得すると多くのメリットがあります。ここではその中でも主要なメリットについて紹介します。
介護事務管理士の仕事は多々あるため、仕事の幅も広く、勤務スタイルも多様です。施設によっては、介護の事務作業だけでなく実際の介護業務も任されることもあります。その他にも事務作業のみを希望するのであれば、介護業務のない職場を探すことも可能です。
このように、介護事務管理士資格を取得すると、自分の希望に合った業務を行えるだけでなく、施設によっては雇用形態が選択できるため、自身のライフスタイルに合わせて柔軟な働き方が可能です。
今後、日本国内は今まで以上に高齢化が深刻になります。実際、厚生労働省の発表によると、2025年における高齢者人口は65歳以上が30.3%、75歳以上が18.1%となっていることから、約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上になると予測されています。その後も高齢化率は増加し、2036年には33.3%と3人に1人、2065年には38.4%と国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となると予測しています。
この予測から介護サービスの需要は今後ますます高まることが分かるはずです。介護サービスの需要が高まれば、介護職員はもちろんですが、介護保険のスペシャリストである介護事務管理士の需要も高まり将来性が今後さらに高まるはずです。
参考:
厚生労働省「我が国の人口について」
内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節 1)」
年齢が40歳になると誰もが介護保険に加入し、介護保険料を支払う義務が発生しますが多くの場合は介護に関する専門的な知識がありません。
しかし、介護事務管理士の資格を取得しておけば、介護保険に関する専門的な知識を取得しているため、事務に関する業務だけでなく、利用者やその家族に対しても介護に関するアドバイスを行うなど介護の現場をサポートできます。
介護に関連する求人は非常に多く存在し、その中でも有資格者は、どこの事業所でも重宝されます。
介護事務の仕事自体は、資格を取得していなくても働けますが、就職・転職の際は資格の有無が大きく影響を及ぼします。さらに、有資格者は採用だけでなく、給与・福利厚生の面で優遇されやすい傾向です。少しでも就職や転職を有利に進めるためにも、介護事務管理士の資格を取得しておくことは重要なアピールポイントです。
ここからは、介護事務管理士に関してよくある質問を紹介します。
試験自体は在宅試験です。在宅試験は自宅でテキスト・ノートなどの資料や計算機を使用して答案作成を行います。
申し込み方法としては、「インターネットからの申し込み」、「コンビニ端末を利用しての申し込み」の2種類ありますが、それぞれ支払い方法・支払期日が異なるため注意が必要です。申し込んだ試験問題は、受験日の3日前頃に郵便にて届くため、試験後提出期限までに、試験問題に同封した提出用封筒でポストに投函します。
参考:JSMA技能認定振興協会「在宅試験とは」
試験日は「毎月第4土曜日翌日の日曜日」となり、2024年2月現在公開されている詳細な日程は以下の通りです。
合格基準は下記です。
学科・実技ともに、60%以上の得点で、かつ全問題の得点合計が80%以上に達した場合に合格と判定されます。詳細な合格率は公開されていませんが、実施団体によると70%程度で、テキストなどを見ながら試験を受けることができるので比較的合格しやすい試験です。
介護事務管理士の資格取得は独学でも可能です。なるべくお金をかけずに勉強したい、自分の生活に合わせて資格を取得したいなどの場合は独学での資格取得を目指しましょう。
実際に介護事務管理士の資格を取得するにはテキスト・問題集を繰り返し行います。なお、介護事務管理士には公式テキストがあるため、これを中心に進めていくことで独学でも効率的に勉強ができます。テキストは学科試験・実技試験ともに載っており、内容も最新情報に更新されているだけでなく、本番と同じ形式の模擬問題も2回分も付いているため、合格に向けた対策を十分に行えます。
また、問題集も合わせて購入できますが、3年に1回の頻度で介護保険制度が見直されるので、最新の法改正に対応した内容となっているかは必ず確認しましょう。なお、介護事務管理士の試験内容が知りたい場合は、JSMA技能認定振興協会のホームページに過去の試験問題がありますので、参考にしてください。
介護事務管理士は十分独学にて資格の取得ができますが、それでも不安な場合は通信講座で勉強できます。実際の通信講座はさまざまな種類がありますが、標準学習期間は4ヵ月程度・費用は4万円程度が一般的です。
介護事務管理士は、介護報酬請求をするなど、介護事務に特化した資格です。一方、ケアクラークは、日本医療教育財団が主催団体となっており、介護事務だけでなく介護福祉、医学、コミュニケーション、高齢者・障がい者心理、介護報酬請求など、介護・福祉・医療を幅広く学ぶことからそれぞれは異なる資格といえます。
今後、国内は今まで以上に高齢化が進むため介護業界の需要はより高くなります。介護業界の仕事といえば、介護福祉士などの介護職などをイメージする方も多いですが、それだけでなく事業所を運営するには適切な介護報酬の請求が必要です。
介護事務管理士の資格を取得すれば事務系の仕事だけでなく、施設によっては実際の介護業務も併用して行うことができます。資格の取得も基本的に独学にて可能なため、ぜひ今回をきっかけに資格の取得を目指しましょう。