要介護認定を受けて、通院が困難な人でも自宅で健康管理や指導を受けることができるサービスに、「居宅療養管理指導」があります。病院・診療所・薬局などの事業所では、居宅管理指導費として加算を算定することが出来ます。
今回は、居宅管理指導についてサービス内容について紹介し、算定要件や報酬体系について詳しく解説します。
目次
居宅管理指導とは、利用者が要介護状態になった場合でも、可能な限り居宅において、持っている能力に応じて自立した日常生活を送れるように支援する介護給付サービスのことです。
医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士又は歯科衛生士等が、通院が困難な利用者の居宅を訪問して、心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導をおこなうことによって、利用者の療養生活の質の向上を図る目的があります。
医師による居宅療養管理指導は、あくまでも「健康の管理や指導」であり、医療行為ではありません。そのため、医療保険の対象外です。
診察を受けたい、薬を処方してもらいたい等の場合は、医療行為に当たります。そのため、居宅療養管理指導の対象にはならず、医療保険による往診、在宅診療の利用が必要です。
居宅療養管理指導を提供することが出来るのは、病院、診療所、薬局等です。それぞれの職種ごとにサービス内容や訪問回数が異なりますので順番に紹介します。
- 診断に基づく継続的な健康管理や指導をおこなう。
- 処方薬の服用方法や副作用に関する説明をおこなう。
- 使用する医療器具の管理をおこなう。
- ケアプランに必要な情報提供をケアマネジャー等におこなう。
- 医師、歯科医師の指示のもと、処方薬の管理方法や服薬の指導、副作用の説明などをおこなう。
- 居宅介護支援事業者に対して、居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供をおこなう。
- 医師の指示のもと、栄養バランスを整える「栄養ケア計画書」を作成する。
- 身体の状況に応じた献立や調理方法の指導など栄養管理に係る情報提供、指導、助言を30分以上おこなう。
- 歯科医師の指示、訪問指導計画書のもと、正しい歯磨きの方法や義歯の手入れ方法の指導をおこなう。
- 歯科医師の指示、訪問指導計画書のもと、嚥下機能の維持・回復のためのアドバイスをおこなう。
それぞれの職種の訪問回数を表にまとめましたので、ご覧ください。
医師・歯科医師 | 薬剤師 | 管理栄養士 | 歯科衛生士 | |
訪問回数 | 月2回 |
| 月2回 | 月4回 |
上記のように訪問回数の上限が定められていますが、歯科衛生士は終末期がん患者の歯科衛生を充実させるために、算定回数の上限が緩和されています。
また、管理栄養士も、終末期等の多様な栄養管理のニーズに応じるために、一時的に細やかな介入が必要と医師が判断した場合には、一定期間内に追加訪問することができます。
居宅療養管理指導と訪問診療は、どちらも利用者宅を訪問するサービスですが、目的や適用保険、対象者などが異なります。表にまとめましたのでご覧ください。
居宅療養管理指導 | 訪問診療 | |
目的 | 療養上の指導や管理、自立した日常生活の支援。 | 診察や治療などの医療サービス。 |
適用保険 | 介護保険 | 医療保険 |
対象者 |
| 通院が難しい利用者 |
介護保険である居宅療養管理指導を利用するためには、ケアマネジャーが作成する介護サービス計画書(ケアプラン)に情報提供、医師の指示が必要になります。
適用保険は異なりますが、居宅療養管理指導と訪問診療を併用することもできます。訪問診療ではおこなえない介護サービス、居宅療養管理指導ではおこなえない医療サービスがあるため、自宅での治療・療養にはサービスの併用が不可欠です。
算定要件は以下の4つです。
ケアマネジャーへの情報提供は「サービス担当者会議に参加すること」とされていますが、場合によっては書面で情報提供がおこなわれます。
先ほど紹介した算定要件を満たしていない場合は、居宅療養管理指導を算定することはできません。また、以下のいずれかに該当する場合も居宅療養管理指導を算定できません。
居宅療養管理指導が算定できない施設は以下の4つです。
施設名 | 医師、薬剤師の配置義務 |
介護老人保健施設 | 医師、薬剤師 |
特別養護老人ホーム | 医師 |
養護老人ホーム | 医師 |
軽費老人ホームA型 | 医師 |
居宅療養管理指導の算定単位数は、サービスを提供する職種、また利用者の居宅状況によって異なります。
以下の表をご確認ください。
算定単位数 | |||||
職種 | 単一建物居住者1人 | 単一建物居住者2~9人 | 単一建物居住者10人以上 | 情報通信機器を用いておこなう場合 | |
医師 | 居宅療養管理指導費(Ⅰ) | 515単位 | 487単位 | 446単位 | ― |
居宅療養管理指導費(Ⅱ) | 299単位 | 287単位 | 260単位 | ― | |
歯科医師 | 517単位 | 487単位 | 441単位 | ― | |
薬剤師 | 病院又は診療所 | 566単位 | 417単位 | 380単位 | ― |
薬局 | 518単位 | 379単位 | 342単位 | 46単位 | |
管理栄養士 | 指定居宅管理指導事業所の管理栄養士 | 545単位 | 487単位 | 444単位 | ― |
指定居宅管理指導事業所以外の管理栄養士 | 525単位 | 467単位 | 424単位 | ― | |
歯科衛生士 | 362単位 | 326単位 | 295単位 | ― |
※居宅療養管理指導(Ⅰ)は在宅時医学総合管理料(在医総管)を算定している場合、居宅療養管理指導(Ⅱ)は在宅時医学総合管理料を算定していない場合。
居宅療養管理指導の料金は地域によって細かく変わりますが、概ね1単位10円で計算されます。利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は、2割又は3割負担となります。
居宅療養管理指導は、通院をおこなわずに医師などの専門家が自宅に訪問し、健康管理や指導をおこなうサービスです。
しかし、医師や歯科医師による医学的な処置はおこなわないため、サービス内容についてしっかりと理解しておくことが必要です。
利用者やその家族に自宅療養をする上での大切なことを伝えると同時に、ケアマネジャーや他の介護サービス事業者と連携を図りながら、利用者の自宅での生活を地域全体でサポートしていきましょう。