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居宅療養管理指導を算定できない場合や訪問診療との併用について解説

2024-09-25

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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要介護認定を受けて、通院が困難な人でも自宅で健康管理や指導を受けることができるサービスに、「居宅療養管理指導」があります。病院・診療所・薬局などの事業所では、居宅管理指導費として加算を算定することが出来ます。

今回は、居宅管理指導についてサービス内容について紹介し、算定要件や報酬体系について詳しく解説します。

居宅療養管理指導とは?

利用者が安全な日常生活を送るために医療従事者がおこなう介護給付サービス

居宅管理指導とは、利用者が要介護状態になった場合でも、可能な限り居宅において、持っている能力に応じて自立した日常生活を送れるように支援する介護給付サービスのことです。

医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士又は歯科衛生士等が、通院が困難な利用者の居宅を訪問して、心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導をおこなうことによって、利用者の療養生活の質の向上を図る目的があります。

医師の居宅療養管理指導は医療保険の適用ではない

医師による居宅療養管理指導は、あくまでも「健康の管理や指導」であり、医療行為ではありません。そのため、医療保険の対象外です。

診察を受けたい、薬を処方してもらいたい等の場合は、医療行為に当たります。そのため、居宅療養管理指導の対象にはならず、医療保険による往診、在宅診療の利用が必要です。

居宅療養管理指導をおこなう医療従事者とサービス内容

居宅療養管理指導を提供することが出来るのは、病院、診療所、薬局等です。それぞれの職種ごとにサービス内容や訪問回数が異なりますので順番に紹介します。

医師・歯科医師

  1. 診断に基づく継続的な健康管理や指導をおこなう。
  2. 処方薬の服用方法や副作用に関する説明をおこなう。
  3. 使用する医療器具の管理をおこなう。
  4. ケアプランに必要な情報提供をケアマネジャー等におこなう。

薬剤師

  1. 医師、歯科医師の指示のもと、処方薬の管理方法や服薬の指導、副作用の説明などをおこなう。
  2. 居宅介護支援事業者に対して、居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供をおこなう。

管理栄養士

  1. 医師の指示のもと、栄養バランスを整える「栄養ケア計画書」を作成する。
  2. 身体の状況に応じた献立や調理方法の指導など栄養管理に係る情報提供、指導、助言を30分以上おこなう。

歯科衛生士

  1. 歯科医師の指示、訪問指導計画書のもと、正しい歯磨きの方法や義歯の手入れ方法の指導をおこなう。
  2. 歯科医師の指示、訪問指導計画書のもと、嚥下機能の維持・回復のためのアドバイスをおこなう。

居宅療養管理指導をおこなう職種別の訪問回数

それぞれの職種の訪問回数を表にまとめましたので、ご覧ください。

医師・歯科医師薬剤師管理栄養士歯科衛生士
訪問回数月2回
  • 病院・診療所勤務
    月2回
  • 薬局勤務
    月4回
月2回月4回

上記のように訪問回数の上限が定められていますが、歯科衛生士は終末期がん患者の歯科衛生を充実させるために、算定回数の上限が緩和されています。

また、管理栄養士も、終末期等の多様な栄養管理のニーズに応じるために、一時的に細やかな介入が必要と医師が判断した場合には、一定期間内に追加訪問することができます。

居宅療養管理指導と訪問診療の違い

居宅療養管理指導と訪問診療は、どちらも利用者宅を訪問するサービスですが、目的や適用保険、対象者などが異なります。表にまとめましたのでご覧ください。

居宅療養管理指導訪問診療
目的

療養上の指導や管理、自立した日常生活の支援。
※医療行為は含まれない。

診察や治療などの医療サービス。
適用保険介護保険医療保険
対象者
  1. 要介護1~5の65歳以上の方
  2. 特定疾病による要介護認定を受けた40~64歳の方
通院が難しい利用者

介護保険である居宅療養管理指導を利用するためには、ケアマネジャーが作成する介護サービス計画書(ケアプラン)に情報提供、医師の指示が必要になります。

居宅療養管理指導と訪問診療は併用可能

適用保険は異なりますが、居宅療養管理指導と訪問診療を併用することもできます。訪問診療ではおこなえない介護サービス、居宅療養管理指導ではおこなえない医療サービスがあるため、自宅での治療・療養にはサービスの併用が不可欠です。

居宅療養管理指導の算定要件

算定要件は以下の4つです。

  1. 利用者が通院困難状態である。
  2. 利用者やその家族に療養上の指導をおこなっている。
  3. ケアマネジャーに対して、ケアプランの作成に必要な情報を提供している。
  4. ほかの介護サービス事業所への情報提供や助言をおこなっている。

ケアマネジャーへの情報提供は「サービス担当者会議に参加すること」とされていますが、場合によっては書面で情報提供がおこなわれます。

居宅療養管理指導を算定できない場合

先ほど紹介した算定要件を満たしていない場合は、居宅療養管理指導を算定することはできません。また、以下のいずれかに該当する場合も居宅療養管理指導を算定できません。

  1. かかりつけの医師(歯科医師)、薬剤師が複数いる場合。
    利用者1人につき、居宅療養管理指導を算定できる医師または歯科医師、薬剤師は1人までと定められています。そのため、他の医師、歯科医師、薬剤師が居宅療養管理指導を算定している場合、算定できません。
  2. 薬剤師の場合、同月内の指導が、前回指導から6日以上空いていない場合。
    薬剤師が居宅療養管理指導を月2回以上おこなう場合、算定日は6日以上空けることが定められています。もし6日以内に訪問をおこなった際には、どちらか一方の本紋日は、居宅療養管理指導を算定できません。
    しかし、がん末期患者や中心静脈栄養を受けている方への居宅療養管理指導では、6日以内の訪問でも、居宅療養管理指導が算定できます。
  3. 算定限度を超えた回数
    居宅療養管理指導は利用者1人辺りの算定限度が定められています。そのため、規定の訪問回数を超えた場合も、その分の算定はできません。
  4. 医師または薬剤師の配置義務がある施設
    施設内に医師や薬剤師が配置されている場合には、在籍の医師・薬剤師が継続的な健康管理や服薬指導をおこないます。訪問指導をおこなう必要がないため、居宅療養管理指導を算定できません。

居宅療養管理指導が算定できない施設は以下の4つです。

施設名医師、薬剤師の配置義務
介護老人保健施設医師、薬剤師
特別養護老人ホーム医師
養護老人ホーム医師
軽費老人ホームA型医師

居宅療養管理指導の点数(報酬・単位数)

居宅療養管理指導の算定単位数は、サービスを提供する職種、また利用者の居宅状況によって異なります。

以下の表をご確認ください。

算定単位数
職種単一建物居住者1人単一建物居住者2~9人単一建物居住者10人以上情報通信機器を用いておこなう場合
医師居宅療養管理指導費(Ⅰ)515単位487単位446単位
居宅療養管理指導費(Ⅱ)299単位287単位260単位
歯科医師517単位487単位441単位
薬剤師病院又は診療所566単位417単位380単位
薬局518単位379単位342単位46単位
管理栄養士指定居宅管理指導事業所の管理栄養士545単位487単位444単位
指定居宅管理指導事業所以外の管理栄養士525単位467単位424単位
歯科衛生士362単位

326単位

295単位

※居宅療養管理指導(Ⅰ)は在宅時医学総合管理料(在医総管)を算定している場合、居宅療養管理指導(Ⅱ)は在宅時医学総合管理料を算定していない場合。

居宅療養管理指導1回あたりの料金の目安(1割負担の場合)

居宅療養管理指導の料金は地域によって細かく変わりますが、概ね1単位10円で計算されます。利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は、2割又は3割負担となります。

居宅療養管理指導を正しく理解し利用者の在宅生活を支えよう

居宅療養管理指導は、通院をおこなわずに医師などの専門家が自宅に訪問し、健康管理や指導をおこなうサービスです。

しかし、医師や歯科医師による医学的な処置はおこなわないため、サービス内容についてしっかりと理解しておくことが必要です。

利用者やその家族に自宅療養をする上での大切なことを伝えると同時に、ケアマネジャーや他の介護サービス事業者と連携を図りながら、利用者の自宅での生活を地域全体でサポートしていきましょう。