介護保険は2000年(平成12年)からスタートした制度です。高齢者の方や高齢者のお世話が必要な人は、一度は介護保険という言葉を聞いたことがあると思います。
今回の記事では、介護保険法とはなにか、介護保険法の目的、介護保険法の対象サービス、2021年の介護保険改正などについて詳しく解説します。
目次
介護保険法とは、年齢を重ねることによって生じた心身の変化のために、行政等の支援を受けながら、介護が必要な人が介護を受けて日常生活を送ることができるように定められた法律です。
具体的には、入浴、排せつ、食事などの介護が含まれます。また、機能訓練、看護、療養などの医療の分野も介護保険法に含まれています。
ポイントとは、年齢を重ねることで生じた変化が介護保険の対象となります。生まれながらの障害などで介護が必要な場合など、年齢を重ねなくても介護が必要な方は、障害者総合支援法でサービスが提供されます。
ただし、介護保険法で定められた特定疾病も介護保険の対象となります。
厚生労働省の資料で介護保険の目的は、「介護保険制度は、高齢化や核家族化の進行、介護離職問題などを背景に、介護を社会全体で支えることを目的として2000年に創設されました」と書かれています。
「介護を社会で支え合い、老後の不安を軽減する」ために創設された制度です。
社会の高齢化、介護期間の長期化など、介護が抱えるニーズは増えています。介護に起因したニュースが報道されることもあります。
介護をする人も高齢者であったり、家族では負いきれない介護負担を負うことがあります。
介護保険法により、こうした状況を無くし、高齢者も介護者も安心して生活できるようにサポートしてもらうことができます。
引用:厚生労働省
実際に介護者の介護負担を軽減したり、介護が必要な高齢者が介護を受けながら日常生活が送れるようにするために、介護保険法では介護サービスが定められています。
介護者や介護が必要な人が適切なサービスを受けられるようになっています。どのような介護サービスがあるか見てみましょう。
「要支援」の認定を受けた人が受けることができるサービスです。
要支援1や要支援2の人の状態が重くなることがないようにサービスを受けながら状態を維持したり、軽減するためにサービスを受けます。
予防給付では、さまざまなサービスを受けることができます。訪問入浴、訪問リハビリ、居宅療養管理指導、訪問看護などのサービスがあります。
予防給付の多くは、地域包括支援センターの担当者がご本人やご家族の状態を見て、適切なサービスをマネージメントしてくれます。
どのようなサービスをいつ使うのが良いか、相談すると良いでしょう。
高齢者が今まで住み慣れた環境でサービスを受けられるようにするサービスです。通所サービス、訪問サービス、施設サービス、複合サービスの4つがあります。
例えば、通所サービスを使うと地元の人しかいないので、知り合いや友人と会うことができ、楽しくサービスを受けられる人がいます。
また、知り合いや友人と一緒にサービスを受けることで、サービスが継続できるという利点があります。
訪問サービスはヘルパーが来て、できないことを一緒に行ってくれます。ヘルパーのサポートを受けて自宅で生活し続けることができます。
地域密着型サービスは、地元で暮らしたい高齢者をサポートするありがたいサービスと言えるでしょう。
介護保険施設とは、介護保険サービスとして入所できる施設のことを言います。
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)の3つのタイプがあります。
特別養護老人ホームは比較的介護が必要な高齢者が入所する施設です。公的な施設であり、比較的コストもかかりません。
医師や看護師が施設にいる時もあり、軽度の医療処置を受けることも可能です。
ただし、常時医療的ケアが必要な場合は、特別養護老人ホームに入所することができません。
介護的ケアが重く、医療的ケアが比較的少ない高齢者が対象となります。
看取りを行う施設もあり長期的に入所が可能です。
介護老人保健施設は、リハビリを受ける施設です。リハビリを受け自宅での生活を復帰するための施設です。
そのため、長期的な入所はできず、リハビリが終了したら対処する必要が生じます。
介護療養型医療施設は、医療行為が必要な人が入所する施設です。一般的な介護施設よりも医療設備が整っています。
ただ、イベントやレクリエーションなどが行われないことが多い施設です。医療的ケアが非常に手厚いので、医療的ケアを必要とする人が入所します。長期療養が可能です。
多くの高齢者はできるだけ自宅で生活したいと思っています。
しかし、自分でできることが限られたり、介護負担が大きくなると自宅での生活が難しくなります。
居宅介護支援は自宅で生活したいと希望する高齢者が、どんなサービスを受けることで自宅で生活できるかをマネージメントしてくれるところです。
ケアマネージャーが担当してくれて、さまざまなサービスを組み合わせて、高齢者にも家族にも良いサービスが受けられるように助けてくれます。
自宅で介護を受けるほとんどの人は、居宅介護支援のサポートを受けて自宅での生活を継続しています。
介護が必要な高齢者は何ができず困っているか、介護する家族はどんなことを負担と感じているかを伝えると、ケアマネは高齢者が自宅で生活でき、家族の負担を減らせるプランを計画し、関係する介護事業所へサポートを依頼してくれます。
介護保険の自己負担分がどれくらいかかるかも計算してくれて見積もってくれます。前もって自己負担分が分かるので、後から請求書が来て金額にびっくりするということはありません。
さらに、高齢者の介護は時間と共に変化していく可能性があります。その都度、ケアマネに相談できるので心強い味方となってくれます。
その時々の高齢者や家族の状況に合わせて、どのようなサービスが必要か見極めて提案し、サービスが受けられるように段取りしてくれます。
介護保険法のサービスを受けるためには、要介護認定が必要になります。要介護認定とは、介護サービスの必要度を判断するものです。
要介護認定を受けるためには、地元の役所や地域包括支援センターで申請を出します。
その後、担当者がご本人の状態をチェックしに自宅などへ伺います。主治医の意見書やコンピュータ判定、介護認定審査会を経て決定します。決定後、自宅へ決定通知が届きます。
ご本人の状態によっては、認定が付かないという場合もあります。申請すれば、必ず認定される訳ではないので注意が必要です。
介護保険法が施行されて20年以上が経過し、高齢者の状況や家族の状況も変化してきました。
それに合わせて介護保険法も改正され、時代のニーズにあった法律へと変化していきます。これまでにどのような改正が行われてきたか、年表で見てみましょう。
年 | 改正内容 |
---|---|
2000年 | 介護保険法の施行 |
2005年 | 要支援者に対する予防給付の創設 地域包括支援センターの領域の拡大 |
2008年 | 不正をした事業者に対する処分逃れ対策 不正事業の再発防止 |
2011年 | 地域包括ケアシステムの取り組み 介護福祉士の資格取得方法の見直しを延期 |
2014年 | 地域包括ケアシステムの構築 医療法や介護保険法の整備 予防給付の見直し |
2017年 | 高齢者の自立支援、要介護状態の重度化防止 |
2020年 | 介護士士悦を医療している低所得高齢者の月額自己負担額を引き上げ高所得高齢者の月額上限を引き上げ |
2021年 | 介護人材確保及び、業務効率化の取り組み 地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援 |
この他にも改正の度に、介護給付単価が調整されて高齢者や家族が負担する自己負担の金額が変更されています。
時代のニーズに合わせて介護保険法がほぼ3年ごとに改正されていることが分かります。
2021年に介護保険法が改正されました。
内容としては、「地域包括支援システムの構築及び支援体制の強化」・「認知症対策・介護サービス提供体制の強化」・「医療・介護レセプト情報を管理するデータベースの強化」・「介護業界の人材確保・業務効率化の支援」・「社会福祉連携推進法人制度の新設」が挙げられます。
ここからは2021年の改正についてポイントを絞って解説します。
「住み慣れた地域で暮らしたい」、「自宅でできるだけ生活したい」という高齢者の自然な気持ちをできるだけ叶えられるように、地域の中で行う支援やサービスを一体的に行う体制づくりが推進されました。
では、介護保険サービスでは、福祉用具をレンタルすることができます。車椅子や介護ベッド、立ち上がりの時に必要なタッチアップなどをレンタルすることができます。
しかし、このレンタル価格は同じ商品でも業者によって価格に差があり、借りる側は言われるままにレンタル料を支払っており、相場も分かりませんでした。
こうした状況を踏まえ、全国平均価格を公表したり、レンタル価格の上限を設定することになりました。
2021年の介護保険法改正によってどのような影響があったのでしょうか。
介護保険法が改正されることにより、高齢者の尊厳がより守られるように体制が強化されていることを知ることができました。
また、福祉用具のレンタル価格についても適正に行われるようになりました。
介護保険法が改正されることにより、社会全体で高齢者を支えていくという目的がより果たされやすくなっていることが分かります。
2021年の介護保険法改正について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
令和3年・2021年度介護報酬改定の情報まとめ!注目ポイントは?
介護保険法についてよくある質問を取り上げます。
老人福祉法とは、高齢者福祉を担当する機関や施設、事業に関するルールを定めた法律です。都道府県と市町村に老人福祉計画を義務付けています。
6つの老人居宅生活支援事業、7つの老人福祉施設も規定されています。
有料老人ホームは老人福祉施設に該当しませんが、老人福祉法の対象になっています。
介護保険法は、社会全体で高齢者や家族をさせる仕組みとなっているので、老人福祉法と目的や対象が異なります。
介護保険法の対象となる特定疾病は16あります。
1.がん(医師が回復の見込みがない状態と判断したもの)
2.関節リウマチ
3.筋萎縮性側索硬化症
4.後縦靭帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8.脊髄小脳変性症
9.脊椎管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
高齢者の意思を尊重すること、また高齢者の権利を損なわないことを意味します。
具体的には、高齢者には本人の希望や好みがあり、その希望や好みを尊重することを意味します。
よく話を聞くこと、高齢者を尊ぶこと、害になる言動を避けることが含まれます。
尊厳を損なう行動は、高齢者を尊ばない話し方や接し方、プライバシーに配慮しない介護、介護士の側の理由で身体拘束を行う、などが含まれます。
高齢者は年齢を重ねて、心身に病気を抱えることがあります。
できないことがあったり、上手にできないことがあっても、高齢者は尊重され敬われる存在として接する必要があります。
介護保険には第1号被保険者と第2号被保険者があります。
第1号被保険者は、65歳以上の高齢者です。
第2号被保険者は、40歳から64歳までの医療保険加入者です。
なぜ40歳から対象になるかというと、本人が老化に伴う病気になり、介護が必要になる可能性が高くなることや、本人の親が介護が必要になる状態になる可能性が高くなるため、介護保険法の対象となります。
介護保険法があることで介護サービスがより身近になっています。
介護保険法を理解することで、自分や家族に介護が必要な時に、介護サービスを利用でき、安心した生活を継続する助けになることでしょう。