本記事では
訪問介護事業所における新型コロナワクチン接種についてご紹介をしていきます。
目次
令和3年2月に医療従事者から始まった新型コロナワクチンの優先接種は、医療従事者の後に介護職員も対象に含まれることとなりました。
ただし「介護施設の場合、たとえクラスターが発生したとしてもそのままサービスを提供していく必要がある。」とされ、施設従事者のみが優先接種の対象でした。
令和3年3月3日には、衆議院予算委員会にて新型コロナウイルスワクチンの優先接種の対象について、在宅系サービスの介護職も条件付きで含める意向が表明されましたが、一定の条件をもとに優先接種が認められるという条件付きでの優先接種となりました。
3日の衆議院予算委員会では、在宅系サービスの従事者が優先的に接種を受ける場合、『自宅療養を余儀なくされる感染者・濃厚接触者に対し、直接的に対応する機会があると想定される介護職を新たに加える。訪問介護や小規模多機能などの事業所のうち、感染者らが生じてもサービスを継続する意思のあるところに登録してもらう。』という条件付きでの優先接種が可能と言う状況になりました。
自治体より事業所へこの旨の通知が届いていますが、多くの事業所は『ワクチンを打ったからといって感染しないわけではない』『感染者に対しサービスを継続することを約束できない』という理由で優先接種をしないと決定している事業所が大半を占めています。
全国の約8万6000人の介護職で組織する労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオ(NCCU)」が今月10日に発表した、介護職のワクチン接種の進捗を探った調査の結果によると、全ての介護職が2回のワクチン接種を既に済ませている事業所の割合は、施設系で71.0%と高い水準に至っていますが、施設併設無しの在宅系では12.6%に留まっています。(調査期間7月14日~2日)
多くの事業所が直面しているのが、『副反応が出ても休みが取れない』という事です。
施設系であればシフトの調整は可能ですが、訪問介護事業所ではギリギリの人員でシフトを組んでおり、休みを取らせてあげるという決断がしにくいのが現状で、非常勤職員に対しても摂取した日や副反応で休みを取る場合の給与保障はなく、任意である新型コロナワクチンの接種を強く勧められないことも大きな課題として存在しています。
現在では、自治体の判断で一定の条件(罹患者へ介助を提供)をこなすことなく、在宅系の介護職員も摂取が可能となっている状況ですので、自治体によっては優先接種の対象と言えます。
しかしながら接種が進まない背景には、もともとの課題である『人材不足』が大きく関係しています。
新型コロナワクチンが接種出来ないまま、『職員の家族がコロナにかかった!』『利用者が通っているデイサービスでコロナが出た!』『いよいよコロナがそこまで来ている!』と言った会話は、今となってはどこの事業所でも聞くようになりました。
人材不足で有るがためにワクチン接種が進まず、結果として新型コロナで職員が休まざる得ない状況になっては意味が有りません。
現在、訪問介護事業所が新型コロナワクチン接種を進めるために工夫をしている策は主に以下です。
①ご利用者に説明し、休み又は振り替えてもらう
本来であれば、ご利用者様に対して休みを提案したり、振替をお願いすること等あってはなりませんが、接種をしない事で起こり得る『感染させてしまった』『職員が2週間行けなくなった』というリスクに比べれば、1日2日の休み、又は振替にご協力していただけるご利用者が殆どです。
代替えの職員がたてられない場合は説明を尽くし、ご理解を頂く事が大切です。
②他事業所に協力を仰ぐ
他事業所が曜日別で同じサービスに入っているご利用者には、他事業所と相談、連携を取り数日だけ代わりに担当していただくと言う方法があります。
今回の新型コロナに関する事だけでなく、同サービスの連携はご利用者にサービス提供する上でもとても大切です。
同サービスで売り上げを取り合うライバルではなく、協力し合う体制をとる良い機会にしましょう。
新型コロナは一時落ち着きを見せていたものの、このところ毎日のように『感染した』『濃厚接触者になった』という話が身近に聞こえてきます。
施設系で接種率が高く、在宅系で接種が進んでいない理由は『担当制で代えがきかない』『人がいない』という理由に他なりません。
もともと、人材不足で人も集まりにくい訪問介護事業所には『給与をあげる』『待遇を改める』といった改善策を進めている事業所が大手を中心に多くなってきています。
10月の改正に向けて、特定事業所加算や処遇改善加算、特定処遇改善加算の取得はマストになると言えそうです。