「2027年の改定まで、大きな動きはないはずでは?」と思っていた介護現場に、大きなニュースが飛び込んできました。政府は、止まらない物価高騰と、2026年度の診療報酬改定(医療職の賃上げ)との格差を埋めるため、介護報酬の「臨時改定」を実施することを決定しました。
今回の改定は、あくまで「緊急的な賃上げ」に特化したものですが、経営者や事務担当者は「また新しい手続きが必要なのか…」と頭を抱えているかもしれません。
本記事では、発表されたばかりの臨時改定のポイントを整理し、「いつ、誰が、何をすべきか」を分かりやすく解説します。6月のスタートに向けて、今から準備を始めましょう。
本来、介護報酬改定は3年に1度(次回は2027年)です。しかし、今年は「臨時」での改定となります。背景には以下の2つの理由があります。
➀他産業との賃金格差の拡大、春闘での大幅な賃上げが続く一般企業に対し、公定価格である介護業界は取り残されがちです。人材流出を食い止めるための緊急措置です。
②医療との連動、2026年は診療報酬(医療)の改定年です。看護師やコメディカルの賃上げが行われる中、連携する介護職の賃金だけが据え置きでは、現場のバランスが崩れてしまいます。
今回の改定は、以前の「介護職員処遇改善支援補助金」のように、将来的に本体報酬(処遇改善加算)に組み込まれることを前提とした、先行実施的な「補助金」が2025年12月から開始しており、今回も要件等が同様に引き継がれる見込みです。
施行日:2026年6月1日(予定)
改定率:プラス2.03%
処遇改善の拡充:介護職員等処遇改善加算の対象を、訪問看護、訪問リハ、居宅介護支援、介護予防支援へも拡大
賃上げ目標:月額1万円〜1万9000円相当(事業所の定期昇給込み)
食費の基準費用額:物価上昇に伴い、日額100円の引き上げ(2026年8月施行)
その他:生産性向上・ICT・DXの推進、LIFEの活用促進

令和7年度 介護分野の処遇改善補助金について(2025年12月~2026年5月)
そして、居宅介護支援が加算の対象となっていることに、大きな注目が集まっています。
加算率については、2026年度(令和8年)介護臨時報酬改定における改定事項について、社会保障審議会介護給付費分科会にて、令和8年1月17日に取りまとめられました。

今回の改定では、介護職員等処遇改善加算が拡充され、以下の2階建て構造で賃上げが行われます。
これに定期昇給分(0.2万円)を加味し、政府は「合計で最大常勤換算で月1名1.9万円(+6.3%)程度」の賃上げを実現するとしています。
既存の「処遇改善加算Ⅰ~Ⅳ」に対し、それぞれ新しい上位区分(加算Ⅰロ、Ⅱロなど)が設定されます。つまり、「ベースアップ分」+「生産性向上分」の両方を取るためには、最上位の区分を取りに行く必要があります。
これまで処遇改善加算の対象外だった以下の職種に、「処遇改善加算」が新設されます。
訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援(ケアマネジャー)
「月1.9万円のアップ」を目指す場合、生産性向上の取り組みが必須ですが、「今からシステム導入なんて間に合わない!」と焦る必要はありません。
令和8年度に限っては、以下の「特例要件(誓約)」が認められています。
特例ルール:加算の申請時点では、「令和8年度中に対応することの誓約」で算定可能です。
具体的な要件内容
訪問・通所系:「ケアプランデータ連携システム」への加入。
施設系:「生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡ」の取得。
つまり、「まずは誓約書を出して加算を取り、年度内にシステム導入(ケアプランデータ連携など)を完了させる」というスケジュールで動けば間に合います。
また、ケアプランデータ連携システムは年間で2万1千円のシステム使用料がかかりますが、加算で入る金額と比較しても、十分加入するメリットが有ると言えます。
提出前に新たに取る加算はもちろん、これまで算定していた加算の情報にも注意してください。
今回の臨時改定は、私たち事業所にとっては大きなインパクトがあります。6月(予定)からの算定開始、および8月からの食費改定に向け、以下の準備を進めましょう。
①「新・加算区分」のシミュレーション
現在取得している加算区分から、「生産性向上要件(上乗せ)」を取りに行くかどうかを経営判断する。
②「ケアプランデータ連携システム」等の検討
上乗せ分を取るなら必須です。今のうちにベンダー情報の収集を始めましょう。
➂介護支援専門員・訪問看護部門の規定整備
④新設の加算を取るためのキャリアパス要件等の整備が必要です。
「手続きが面倒だから」と見送れば、月2万円近い給与格差が他事業所とついてしまいます。