通院時情報連携加算は、2024年の介護報酬改定で算定要件が見直される予定です。この加算は前回の介護報酬改定で新設されたばかりで、算定している事業所も少ないため、詳細な情報を知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、通院時情報連携加算の算定要件や単位数、2024年の介護報酬改定で変更される内容などについて詳しく解説します。この記事を読むことで、通院時情報連携加算の算定に向けてやるべきことが分かります。
目次
通院時情報連携加算とは、ケアマネジャー(介護支援専門員)と医療機関との連携を評価する加算で、2021年の介護報酬改定で新設されました。
この加算は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者の診察に同席し、担当医師との情報連携を行うことで算定できます。
厚生労働省が実施した調査によると、令和4年4月サービス提供分のデータで通院時情報連携加算の算定率は0.5%でした。このデータから、通院時情報連携加算が新設されてから時間が経過しているにもかかわらず、依然として算定率は低い状態であることが分かります。
将来的に医療機関と介護施設との連携を強化していきたい厚生労働省としても、通院時情報連携加算の算定率の低さは問題だと考えているようです。
令和5年11月に実施された介護給付分科会でも、2024年の介護報酬改定へ向けて「通院時情報連携加算の算定要件見直し」が論点になっています。
通院時情報連携加算の算定要件や単位数などの情報については、以下の表をご参照ください。
【概要】
居宅介護支援について、医療と介護の連携を強化し、適切なケアマネジメントの実施やケアマネジメントの質の向上を進める観点から、利用者が医療機関において医師の診察を受ける際に介護支援専門員が同席し、医師等と情報連携を行い、当該情報を踏まえてケアマネジメントを行うことを一定の場合に評価する新たな加算を創設する。【告示改正】
【単位数】
50単位/月
【算定要件等】
- 利用者1人につき、1月に1回の算定を限度とする
- 利用者が医師の診察を受ける際にケアマネジャーが同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報提供を行い、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けた上で、居宅サービス計画(ケアプラン)に記録した場合
通院時情報連携加算を算定する際には、情報連携の内容をケアプランに記載する必要があります。ケアマネジャーが診察時に同席するだけでは通院時情報連携加算を算定できないため注意しましょう。
2024年の介護報酬改定で、通院時情報連携加算の算定要件が緩和されます。また、同時期に行われる診療報酬改定でも医療機関とケアマネジャーとの連携を強化する内容が含まれる予定です。これらの変化によって、今まで以上に通院時情報連携加算を算定しやすくなるでしょう。ここでは、2024年の介護報酬改定以降の変更点について詳しく解説します。
厚生労働省の資料「令和6年度診療報酬改定の概要【同時改定における対応】」によると、2024年の診療報酬改定でもケアマネジャーとの連携を強化する方向性で進めていることが分かります。
【地域包括診療料等の算定要件の見直し】
地域包括診療料等の算定要件に介護支援専門員との相談に応じること等を追加する。また、担当医がサービス担当者会議又は地域ケア会議への参加実績又は介護支援専門員との相談の機会を確保していることを施設基準に追加
引用:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【同時改定における対応】」
2024年の診療報酬改定以降は、担当医師はケアマネジャーの相談に必ず対応しなければならず、その旨を院内掲示することなどが地域包括診療料の算定要件に追加される予定です。
診療報酬の改定でもケアマネジャーとの連携強化に向けて動いていることで、これまで以上に通院時情報連携加算を算定しやすくなるでしょう。
2024年の介護報酬改定では、歯科医師との情報連携でも通院時情報連携加算を算定できるように要件が変更される予定です。具体的な変更内容については以下の表をご参照ください。
【概要】
通院時情報連携加算について、利用者の口腔衛生の状況等を適切に把握し、医療と介護の連携を強化した上でケアマネジメントの質の向上を図る観点から、医師の診察を受ける際の介護支援専門員の同席に加え、利用者が歯科医師の診察を受ける際に介護支援専門員が同席した場合を同加算の対象とする見直しを行う。【告示改正】
【算定要件】
利用者が病院又は診療所において医師又は歯科医師の診察を受けるときに介護支援専門員が同席し、医師又は歯科医師等に対して当該利用者の心身の状況や生活環境等の当該利用者に係る必要な情報の提供を行うとともに、医師又は歯科医師等から当該利用者に関する必要な情報の提供を受けた上で、居宅サービス計画に記録した場合は、利用者1人につき1月に1回を限度として所定単位数を加算する。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
2023年11月6日に実施された介護給付分科会では、ケアマネジャーが歯科医療機関と情報共有を行ったことでケアマネジメントに一定の効果がみられたことを指摘した上で、通院時情報連携加算の算定要件に歯科医師を含めることが論点となっていました。
2024年の介護報酬改定後は、歯科医師との情報連携でも加算を算定できるようになるため、より多くの利用者に対して通院時情報連携加算を算定できるようになります。
通院時情報連携加算を算定する際には、利用者や医療機関に確認することや記録の記載方法など、注意すべきポイントがいくつかあります。ここでは、通院時情報連携加算を算定する際に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
利用者によっては、病院での情報をケアマネジャーに知られたくない方もいらっしゃるでしょう。そのため、医療機関での診察に同席する際には、必ず利用者からの同意を得る必要があります。
診察への同席について同意を得る際には、医療機関とケアマネジャーが連携することで、より質の高い支援ができることを説明するとよいでしょう。
また、ケアマネジャー同席の可否について医療機関に確認することも大切です。
患者以外の人が診察に同席することで、治療方針に悪影響を与える場合もあります。必ず事前に医療機関へ確認を取ってから同席するようにしましょう。
通院時情報連携加算を算定する際には、情報連携に必要な情報提供を受け、その内容をケアプラン上に記載する必要があります。
厚生労働省の資料「令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」では、通院時情報連携加算における情報連携の内容について以下のように記載されています。
【通院時情報連携加算】
医師又は歯科医師等に対して当該利用者の心身の状況や生活環境等の当該利用者に係る必要な情報の提供を行うとともに、医師又は歯科医師等から当該利用者に関する必要な情報の提供を受けた上で、居宅サービス計画に記録した場合は、利用者1人につき1月に1回を限度として所定単位数を加算する。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」
通院時情報連携加算を算定する際には、ケアマネジャーから「利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報」を提供し、医師又は歯科医師からは「利用者に関する必要な情報」を受け取る必要があります。
そして、これらの情報連携を行った内容をケアプランに記載することで、1月に1回算定できます。
医師とケアマネジャーで話し合いをするだけでなく、必要な情報を交換し、その内容をケアプランに記載していなければ算定できないため注意しましょう。
診察に同席して通院時情報連携加算を算定するためには、利用者との信頼関係だけでなく、医療機関との信頼関係も重要です。
日常的に利用者が通う医療機関と情報を共有して、担当医師との信頼関係を構築しておくことで、スムーズに診察へ同席できるでしょう。
また、通院時情報連携加算の算定だけでなく、普段から医療機関と情報を共有していることで、ケアマネジメントもスムーズに進められます。
通院時情報連携加算とは、ケアマネジャーが利用者の診察に同席し、担当医師と情報を共有することで算定できる加算です。
通院時情報連携加算は、2024年の介護報酬改定で算定要件が見直されます。報酬改定以降は、歯科医師との情報連携も算定要件に含まれるため、より多くの利用者に対して算定できるようになるでしょう。
また、診療報酬改定でもケアマネジャーとの連携が強化される方向性が示されているため、より医療機関との情報を共有しやすくなります。
ただし、通院時情報連携加算を算定するためには、利用者だけでなく担当医師との信頼関係も重要です。
通院時情報連携加算の算定へ向けて、普段から医療機関との情報連携を強化し、信頼関係を作っていくとよいでしょう。
【参考資料】
厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【同時改定における対応】」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」
厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援(改定の方向性)」
厚生労働省「介護保険最新情報 令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.3)」