本記事では、算定要件を満たすために必要な『環境』について、詳しく解説いたします。
特定事業所加算は、平成18年度に出来た加算であり、既に14年もの間、介護給付費の中に存在しています。
特定事業所加算が出来た平成18年当初は、直行直帰の職員が多く所属する訪問介護事業所の課題であった『ご利用者の支援に必要な申し送りが出来ない』『訪問介護事業所と訪問介護員との連携が取りづらい』等の、事業所と所属する訪問介護員との情報連携における課題を解決する施策を講じる事業所を評価するものでした。
このため、『ご利用者の留意事項伝達』『定例で行う会議』『健康診断の実施』等の算定要件は、対面で実施することを想定して作られています。
時代は14年の月日を経て令和2年。
現在ではITの進化に伴い、ネットショッピングが普及し、リモート担当者会議が当たり前の様に開催される様になり、14年前に『対面で行われることが当たり前』だった事が『パソコン上で行われることが当たり前』の時代になりました。
インターネットやパソコン、IOTの普及を進める動きは、未だ書類の手書きが多い介護業界にもどんどんと波及しています。
国が求めている必要な環境とは、14年前の特定事業所加算設立当初には『対面で連携が実施できる環境』でした。
令和2年現在では『対面と同等の連携が取れる環境』へと変化しているのです。
特定事業所加算取得のために必要な環境は『対面と同等』の連携が取れることです。
このため、少なくとも事業所にはパソコンやインターネット環境、訪問介護員と連絡を取り合う通信機器は必要不可欠だと言えます。
その他、算定要件を満たすためには以下が必要になります。
【必要な環境例】
〇パソコン
〇通信機器
※指示・報告のやりとり等に使用
〇研修実施のための講師・場所(インターネット上でも可)・資料
〇会議開催のための司会・場所(インターネット上でも可)・資料
〇健康診断受診のための病院(個人のかかりつけ医や自治体で実施しても良い)
〇法改正に合わせて更新された重要事項説明書
など
いくらITが進化したと言え、特定事業所加算の取得には第三者が見て【質が高い】と評価してもらえるほど、他の事業所とは違う取り組みを実施していることが必要です。
特定事業所加算の算定には、機器などの環境整備だけでなく、算定要件を満たすことが出来る情報、場所、人の3つが必要不可欠だと言えます。
情報は算定要件や返還事例などの正しい知識、場所は研修や会議を実施する場所や環境、人は研修や会議を実施する人のことを指しますが、特に『情報』については、全国的に実地指導で多額の返還事例が多く続いていることからも、整備することが困難であることが分かります。
特定事業所加算は、以前の記事でお伝えをした通り、介護報酬が下がることが想定される今後の業界を生き抜いていくためには、取得が不可欠になってきます。
しかしながら、算定要件を満たした運用をしていくことは、情報、場所、人を用意し、いざ実地指導に入ってもお金を返すことの無いように正しく運用していかなければいけません。
実地指導で返還が生じた後、新たに弊社に申し込みのご相談を頂く事がありますが、事業所の皆さんからの声で、共通している言葉が1つだけあります。
その言葉は、『(算定要件を正しく)知らなかった』という言葉です。
国や自治体が出す資料は、言葉も言い回しも曖昧な事が多く、使われる言葉も難しいです。
これでは読む人間によって捉え方も異なるだろうと思われるものが殆どです。
実地指導で多額の返還が出てしまった事業所は、悪意があったわけでも無く、不正を行っていたわけでもありません。
『特定事業所加算の算定要件を正しく知らなかった』
この1つだけなのです。
新型コロナウイルスの影響は免れないと言っていいほど厳しくなることが予測されており、それに伴って、介護報酬は厳しくなることが予測されます。
特定事業所加算を含め、成果に対して評価する制度は加速するものと思われます。
そして、仮に加算を取得できたとしても、運用を継続できなければ、返還請求されることも少なくありません。
自前で運用が可能であれば問題ありませんが、万が一難しいようであれば、代行会社に依頼するのも一つの手です。