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サービス付き高齢者住宅等における指導は、2つ存在します。
1つは有料老人ホームに実施される老人福祉法を根拠としたもの、もう1つは併設する事業に対し実施される介護保険法を根拠としたものです。
介護保険法における指導
介護保険法においては、運営指導と呼ばれる指導が行われることとなります。
令和4年3月31日に、指導の基本的事項を定めることによりご利用者様へ対し、サービスの質の確保及び保険給付の適正化を図ることを目的とし、介護保険施設等運営指導マニュアルが発行されました。
介護保険最新情報Vol.1062:介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知)の送付について
実地指導が運営指導に名称変更し、1部指導をオンライン上で実施することは令和3年3月7日に開催された全国課長会議の中で話がありました。
今回の通知は、この時の会議を踏まえて詳細が決定され示された形となります。
詳しくはこちら:運営指導(実地指導)について
有料老人ホームの類型には大きく以下4つの類型が存在します。
①介護付有料老人ホーム(一般型特定施設入居者生活介護)
介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。
介護が必要となっても、当該有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護を利用しながら当該有料老人ホームの居室で生活を継続することが可能です。(介護サービスは有料老人ホームの職員が提供します。特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームについては介護付と表示することはできません。)
②介護付有料老人ホーム(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護)
介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。
介護が必要となっても、当該有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護を利用しながら当該有料老人ホームの居室で生活を継続することが可能です。(有料老人ホームの職員が安否確認や計画作成等を実施し、介護サービスは委託先の介護サービス事業所が提供します。特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームについては介護付と表示することはできません。)
③住宅型有料老人ホーム
生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。
介護が必要となった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら当該有料老人ホームの居室での生活を継続することが可能です。
④健康型有料老人ホーム
食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければなりません。
③④について、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないホームにあっては、広告、パンフレット等において「介護付き」、「ケア付き」等の表示を行ってはいけないこととされています。
老人福祉法における運営指導は、大きく下記2点に分けられます。
有料老人ホームについて、定期的な立入調査を実施するほか、必要に応じ適宜調査を実施するとされています。
立入調査に当たっては、介護保険担当部局(管内の市町村の介護保険担当部局を含む。)とも連携を図り、重要事項説明書の記載内容等に照らしつつ、居室の状況や介護サービスの実施状況等について調査が行われ、指導指針に基づく指導が行われます。
また、理由なく指導に従わない場合は、老人福祉法に基づく改善命令等が行われ、特に、立入調査において、入居者の処遇に関する不当な行為が認められたときは、入居者の保護を図る観点から、迅速にその改善を指示されることとなりますので、指導を受けた場合は即日の改善を図る必要があります。
指導に従わずに悪質な事業を続ける場合など、入居者の保護のため特に必要があると認めるときは、老人福祉法に基づきその事業の制限又は停止が命じられることとなります。
有料老人ホームに対する指導として、個別の有料老人ホームへの立入調査のほか、必要に応じて、複数の事業者を一定の場所に集めて講習等を行う集団指導が行われます。
開催にあたっては、あらかじめ集団指導の日時、場所、出席者、指導内容等を文書により事業者に通知が行われた上で、指導指針の内容、制度改正内容及び過去の指導事例等について講習やオンライン等の方式で実施されます。
老人福祉法が改正され、都道府県に届出のあった有料老人ホームの情報を市町村に通知することが義務づけられ、未届の疑いのある有料老人ホームを市町村が発見したときは、都道府県に通知するようになったこと、および令和3年度介護報酬改定が行われたこと等を踏まえ、令和3年4月1日付けで標準指導指針が改正されました。
処分内容
有料老人ホーム:改善命令(再発防止計画を策定し、 適正に実施すること)
訪問介護:指定の一部効力の停止(新規利用者の受入れ停止 3 か月)
処分事由
(1) 入居者に対する身体的虐待及び心理的虐待(老人福祉法第 29 条第 13 項該当)
職員 2 名が入居者 1 名に対し、 暴言を吐いたり、 暴力を振るったりした。
(2) 不適切な身体拘束の実施(老人福祉法第 29 条第 13 項該当)
入居者 14 名に対し、 柵に紐やベルトで四肢を固定する過剰な身体拘束など不適切な身体拘束が実施されていた。
処分詳細
人格尊重義務違反 (介護保険法第 77 条第 1 項第 5 号該当):訪問介護のサービス提供時間中に、 12 名の利用者に対し、 その必要性を検討することもなく、 四肢を固定するなどの過剰な身体拘束が実施されていた。これは、 介護保険法第 74 条第 6 項に規定される 「指定居宅サービス事業者は、 要介護者の人格を尊重するとともに、 この法律又はこの法律に基づく命令を遵守し、 要介護者のため忠実にその職務を遂行しなければならない。」という義務規定に違反している。
【参考】 身体拘束を行う際の要件について 〈次の 3 要件をすべて満たすことが必要〉
• 切迫性 : 利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い場合
• 非代替性 : 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
• 一時性 : 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
処分内容
住宅型有料老人ホーム:老人福祉法第29条第13項に基づき, 改善に必要な措置をとるべき命令措置
処分事由
当該施設の職員が入居者に対し故意に暴行した結果, 外傷性くも膜下出血という怪我を負わせたほか,
過去にも複数回暴力を振るっていた。
平成○○年〇月〇日から平成○○年○○月〇日まで管理者が不在であり, 職員の管理体制が不十分であった。
処分詳細
高齢者虐待の防止のための具体的な措置を講ずること。
職員の管理,業務の実施状況の把握,その他の管理を一元的に行う立場として管理者を配置するとともに,今後, 変更が生じたときは, 一月以内に届出を行うこと。
処分内容
訪問介護・看護:指定の一部の効力の停止 (新規利用者の受入の停止6か月)
処分理由
【指定訪問介護事業所 ・ 指定訪問看護事業所】
(1) 人格尊重義務違反 (介護保険法第77条第1項第5号該当)
(2) 運営基準違反 (介護保険法第77条第1項第4号該当)
(3) 虚偽書類の作成及び虚偽報告 (介護保険法第77条第1項第7号該当)
【指定介護予防訪問看護事業所】
(1) 人格尊重義務違反 (介護保険法第115条の9第1項第5号該当)
(2) 運営基準違反 (介護保険法第115条の9第1項第4号該当)
(3) 虚偽書類の作成及び虚偽報告 (介護保険法第115条の9第1項第7号該当)
このように、有料老人ホームには『改善命令』が行われるのに対し、併設する介護保険の事業についてはその程度の重さにより1部効力停止や指定の取り消し等、もっとも重い処分が行われることにも注意が必要です。
「有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査」という調査が厚生労働省にて実施されています。毎年3月にこの調査結果が公表されるとともに、未届の有料老人ホームをはじめ有料老人ホームに関する一層の指導強化が必要であることから、都道府県・指定都市・中核市に対し通知が行われています。
通常の指導に加え、下記について促進を図っていく目的からより強く確認が入ることとなることに注意してください。
これまで有料老人ホームの届出促進が各自治体にて行われてきましたが、現状でもまだ多数の未届の有料老人ホームが確認されています。
その一方で、未届の有料老人ホームの件数は令和2年度調査の 641 件(4.2%)に対し、令和3年度調査では656件(4.1%)と件数は増加したものの、有料老人ホーム全体に占める割合は減少しているという結果になっています。
また、令和2年度調査で未届であった有料老人ホーム641件については、令和3年6 月 30 日までに、82 件が届出され、52 件が有料老人ホームに該当しなかったもの等であることが確認されており、未届けの施設は年々減少しています。
届出が行われていない場合であっても、有料老人ホームに該当する事業については、届出されている有料老人ホームと同様に、老人福祉法の規定が適用されることになります。
老人福祉法第29条第 9 項に基づき前払金の保全措置を講じる必要があるとされていますが、講じていない有料老人ホームが一定数確認されています。
検査の拒否や改善命令に対する違反等を行った事業者に対しては、同法に基づく罰則の適用も視野に、より厳正な対応を図ることとされており、この保全措置については徹底する必要があります。
未届の有料老人ホームを含めた有料老人ホームにおける防火上の安全性の確保に向けた取組を行う必要があり、消防法施行令(昭和36 年政令第37 号)の改正により、平成27 年4 月1 日以降、火災発生時に自力で避難することが困難な者が入所する社会福祉施設(同令別表第一⑹項ロに掲げる施設)については、原則として延べ面積にかかわらずスプリンクラーを設置することが義務付けられています。
併設事業に入る運営指導については、その事業における運営のルールが守られているかの目線で行われます。有料老人ホームが併設している事業所でも、単独の事業所でも行われる指導は同じ法令に基づくものです。
その中でも特に認識を間違えやすいルールについては、再度確認を行う事が必要です。
訪問介護事業については、その事業で配置すべき人員の基準が定めれれています。
訪問介護事業所に勤務している時間かどうかは職員の勤務の実態により判断することとなりますので、例えば、有料老人ホーム等の夜勤職員の配置をもって、訪問介護事業所の勤務時間とすることはできません。
時間帯により有料老人ホーム等と訪問介護事業所で勤務時間を明確に区分できる場合には、当該時間帯により区分し整理してください。
事業所の管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務に従事し、又は同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することができます。住宅型有料老人ホーム等が併設される場合もこれに該当します。
ただし、同一敷地内であっても、他の事業所の直接処遇業務の兼務は、基本的に認められませんので、ご留意ください。(自治体や状況により異なるため、管轄の自治体に確認しましょう)
訪問介護事業所の人員基準で配置が必要とされている常勤のサービス提供責任者は、専従要件があるため、有料老人ホーム等の職務に従事することはできません。当該訪問介護事業所の管理者のみ兼務可能です。
人員基準で配置が必要とされている非常勤のサービス提供責任者又は人員基準を超えて配置されているサービス提供責任者については、サービス提供責任者として勤務していない時間帯について、有料老人ホーム等の職務に従事しても問題ありません。
訪問介護事業に準備されている加算の内、特に注意が必要なのが以下です。
特定事業所加算:訪問介護の特定事業所加算とは?令和4年最新版
同一建物減算:訪問介護の同一建物減算とは?単位数や減算要件について徹底解説!
処遇系加算:処遇改善加算に関する記事
加算については特に正しい知識が必要になりますので、しっかりと確認をしておきましょう。
「プロサポ!」は特定事業所加算の運用代行を行うサービスです。
申請書作成及び体制要件の充足を目的とし、申請後に円滑な運用が出来るように支援いたします。
<主な支援内容>
・研修計画の作成&研修システムの提供
・議事録、出席簿の作成
・指示報告システムの提供
・健康診断の受診規定作成
・緊急時案内マニュアルの作成