新型コロナウイルスが第5類に移行したことに伴い、しばらく実施が見合わせられたり、延期になったりしていた運営指導が活発になってきています。
運営指導は、私たち事業所にとって改めて守るべきルールを知る貴重な場でもありますが、基本的な事業を運営するためのルールが守られているかを確認される場でもあります。
改めて運営指導では何が確認されるかを知り、運営するためのルールを守れるよう自己確認をしてみましょう。
目次
運営指導とは、下記の3つについて、原則、実地にて行われる運営の指導です。
6年に1回又は3年に1回の頻度で実施されることを原則のルールとし、人員基準・運営基準・設備基準が守られているか、介護報酬算定が適切に行われているかの確認が行われます。
また、確認の結果指導すべき事項が有る場合には指導が行われ、誤った請求が確認されれば自主点検の上介護報酬の返還も求められることとなります。
1.介護サービスの実施状況指導
施設・設備や、利用者へのサービスなど介護サービスの質に関する指導です。
2.最低基準等運営体制指導(オンライン可)
人員基準など、運営体制に関する指導です。
3.報酬請求指導(オンライン可)
加算等の介護報酬を正しく請求しているかに関する指導です。
運営指導は毎年度、自治体ごとに目的が定められ、何を重点的に、何件、どこに指導に入るか等を計画として定めたうえで実施されます。
参考:厚生労働省介護保険最新情報Vol.1061令和4年3月31日
運営指導(旧実地指導)の実施頻度は、提供している介護サービスによって事業所ごとに違います。
下記のサービスは、3年に1回以上指導が行われます。
・居宅サービス(居住系サービスに限る)
・地域密着型サービス(居住系サービス又は施設系サービスに限る)
・又は施設サービス事業所
上記以外の介護サービスに関しては、6年に1回以上指導が行われます。
原則、1か月前までに、下記の事項について文書にて指導通知が届きます。
1.運営指導の根拠規定及び目的
2.運営指導の日時及び場所
3.指導担当者
4.介護保険施設等の出席者(役職名等で可)
5.準備すべき書類等
6.当日の進め方、流れ等(実施する運営指導の形態、スケジュール等)
運営指導当日の1週間程度前までに、前項の通知で定められた書類を事前に提出します。
事前提出資料の提出までの最短では14日、最長では56日と自治体により大きな差があるので注意が必要です。
当日準備すべき書類を準備して当日を迎えます。
準備した書類の中を行政の方が確認していきますが、不明点等は質問を受けることになります。
返答が出来る管理者さんをはじめとする職員さんの同席が必要です。
実施される時間については、運営指導に名称変更があってから、これまで1日かけて行われていた指導を半日で実施する行政が増えてきました。
とは言え、まだまだ1日かけてじっくり行われる場合もありますので、しっかりと対応できるようにしておきましょう。
指導内容としては、令和3年度の改定事項に対する進捗確認が多く、運営体制の確認や、法令に関する指導周知を目的としている印象です。また、介護報酬算定について疑義があれば詳細の確認が入り、従来通り算定誤りであれば返還を求めらます。
1番多い運営指導の手法としては、年1回実施が定められている運営状況点検書(書式は自治体任意)をもとに、基準を守れているか根拠を示す書類の提示が求められ、不明点についてはヒアリングを求められます。
指導実施から概ね1か月程度で指導の結果が文書で届きます。(行政によっては指摘事項がない場合、文書が届かない場合もあり)
この文書に書かれている指導の結果を踏まえ、指摘事項がある場合は改善を行い、改善したことを示す根拠資料とともに改善報告書の提出を行います。
運営指導を行う旨の通知が届いてから、改善報告の完了までには2か月から3か月程度の時間を要することになります。
サービス付き高齢者住宅における運営指導での注意点は以下の通りです。
①運営指導は『介護保険制度』のもとで行われる
②施設の指導と介護保険制度の運営指導は異なるものとして取り扱う
③人員基準に特に注意が必要
サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームと併設されている事業所様より運営指導のご相談を頂く際に、まずお伝えしているのがこのことです。
施設におけるサービスと介護保険におけるサービスは管理されている管轄が異なります。
それぞれに遵守すべきルールが定められており、行政から指導の通知があった場合は『介護保険法』なのか『施設サービス』の指導なのかを判別するところから始まります。
運営指導と呼ばれるものは『介護保険法』のもとで行われますので、この目的は『介護保険上のルールが遵守されているか』を確認すべきものとなります。
一方、有料老人ホームに実施される指導は『老人福祉法』のもとで行われるものとなります。
前項の通り、介護保険法と老人福祉法の指導は異なるものであり、それぞれの法の元ルールに沿って運営していくことが必要となります。
介護保険法 指導参考:厚生労働省介護保険最新情報Vol.1061令和4年3月31日
老人福祉法 指導参考:厚生労働省 有料老人ホーム指導監督の手引き
サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームと併設して実施される介護保険の運営指導で特に注意をしなければいけないのは、介護保険法・厚生省令に定める『人員基準』です。
併設している施設の場合、職員の皆さんは今自分が行っている業務が『介護保険上の請求となるのか』『施設業務の1つなのか』を十分に認識しておられないことが多く見受けられます。
介護保険法・厚生省令の人員基準については、特に遵守しなければならない重要事項ですので、施設職員と訪問介護職員を兼務したときにはその日に何時間訪問介護、何時間施設職員で働いたのかの内訳が分かるようにしておきましょう。
介護保険法・厚生省令の人員基準の確認では、この『何時間訪問介護として働いたか』の合計で、常勤換算がいくつかを確認する必要があります。
前項の通り、介護保険法における運営指導での確認事項や準備すべき書類は、老人福祉法とは区別されています。
このため、サービス付き高齢者住宅でも、有料老人ホームでも、介護保険法による運営指導が実施される場合は、これらと併設されていない通常の訪問介護事業所と同様です。
運営指導時に必要な書類は行政により異なりますが、以下のようなものが求められることとなります。
参考:茨城県 介護保険法に基づく運営指導(旧:実地指導)に係る事前提出書類等
実地指導から、運営指導に変わり、そして集団指導が追加されて変わった点は下記の3つです。
①頻度について
②文書削減について
③監査と指導のメリハリ
それぞれについて解説していきます。
コロナ禍において、実地指導の延期や中止となるケースが多発しました。
それを改善すべく、下記のように変更されました。
・3年に1回または6年に1回は委託業者を使用してでも実施する
・コロナが終息しなくても、オンライン上で画面を繋いで実施する
コロナ禍でオンライン化が進み、行政指導においても文書を削減するため、下記のように変更されました。
・指導の際はPC上での確認がメインになる
・集団指導は動画がメインになり、資料は自分たちで用意する
これまで指導なのか、監査なのかわかりにくい点がありました。
それを改善するため、指導中に疑いがある場合は、すみやかに監査へ切り替えることが推奨されました。
ここからは、実際に行われている運営指導時の内容等の疑問についてお答えします。
運営指導は、指定を行った行政が行う事が義務付けられています。このため管轄の行政の指導を担当される方が来てくれます。
当日は2名~5名程度でいらっしゃることが多く、運営面を確認される方とご利用者のファイルを確認される方等で役割分担をされて確認が行われることが多いです。
時間は半日から1日行われることが多いようです。事業所の運営や日々の業務を把握されている方の同席が必要です。
この上でやむを得ずご利用者様の対応を行わなくてはいけない事情が発生した場合や、私用により出勤が出来なくなってしまった場合は、行政の担当者へすぐにご相談をしましょう。
普段の自分の仕事をチェックされるのは、本当に怖いものです。普段と違う雰囲気の中行われる運営指導は、何度立ち会っても慣れないものです。
しかしながら、運営指導は私たち介護事業所に向けて行政が分からないところを教えてくれる貴重な機会です。普段から疑問に感じていることや、困っている事をご相談してみるのも良いでしょう。
緊張せず、ありのままを見ていただき、間違いがあれば訂正できる良い機会でもあります。
一方で、認識が間違っていて返還に繋がってしまったということは有ります。
今一度、自己点検を行い法令の意味が分からない場合は調べること、『行えている』という事であれば『何をもってそれが確認できるか』という根拠となる資料を確認してみてください。
行政の指導計画により異なりますが、原則のルールとしては3年に1回、または6年に1回とされています。
指定更新の前1年や、新規指定から1年以内に来ていただけることが多いようです。
令和5年に入り、コロナが落ち着いてきたと同時に運営指導が活発になっています。
普段から書類整備を行い、法令についても理解を深めていきましょう。
実地指導とは何か、監査との違いについてわかりやすくまとめています。
<目次>
・実地指導の処分対象となる主な原因
・実地指導とは
・監査とは