障害福祉サービス事業所の皆様、日々の業務お疲れ様です。
近年、障害福祉サービスの事業所数や利用者が増加する一方で、一部の事業所による不適切なサービス提供や不正請求が社会問題化しています。
これを受け、厚生労働省は「障害福祉分野における運営指導・監査の強化」を打ち出しました。本日は、厚生労働省の最新資料に基づき、この「強化」の概要と、事業所が実際に気を付けるべきポイントを推測なしで解説します。
この書類は、令和7年3月14日付で障害福祉サービスの急増に伴う不正防止や質の向上を目的に、厚生労働省とこども家庭庁が示した運営指導および監査の強化策についてまとめたものです。
現状、自治体による指導実施率が低迷し、全国一貫した処分基準やマニュアルも不足しているため、管理体制の抜本的な見直しが図られています。具体的には、営利法人が運営する事業所への重点的な立ち入り検査、大規模法人に対する書面・実地検査の義務化、さらには実効性を高めるための研修内容の刷新が盛り込まれました。国と自治体の情報連携を密にすることで、利用者が安心してサービスを受けられる体制の再構築を目指しています。これら一連の改革により、不適切な運営を行う事業者への監視機能を大幅に底上げする狙いがあります。
具体的には、優良な事業所への負担を減らしつつ、指導が必要な事業所や不正の疑いがある事業所に対しては、的確かつ厳格に監査を行う体制への移行を意味します。これは、限られた行政の人員で、より多くの事業所を効果的に確認するための仕組みづくりでもあります。
資料に記載されている「強化」の具体的な概要は以下の通りです。
・国保連の給付データや、指定等の申請システムのデータを活用し、指導前に「リスクの兆候」を分析・抽出する。
・書類の事前提出の電子化や、オンライン会議システムを用いた「オンライン指導」を導入し、現場の滞在時間を短縮する。
・著しい基準違反や不正の疑いがある場合は、通常の「運営指導」から即座に「監査」へと切り替える。
・過去に指導を受けた事業所や、新設の事業所など、指導の必要性が高いところに重点的に入る。
・悪質な不正請求、度重なる指導にも関わらず改善が見られない(改善報告の未提出等)事業所、利用者への虐待等が認められた場合は、指定の取消しや効力の停止など、厳格な処分を行う。
特に指導が重点化されるとしているサービス類型は、以下の5つです。
・就労継続支援A型
・就労継続支援B型
・共同生活援助(グループホーム)
・児童発達支援
・放課後等デイサービス
これらのサービスは、他のサービスと比べて事業所数、特に営利法人が運営する事業所数が急増しているため、重点的な指導の対象となります。
具体的には、これら5つのサービス類型については、「3年に1回以上」の頻度で運営指導が行われるよう見直されます。また、指定後間もない事業所については指定後3年以内に運営指導が行われます(就労継続支援A型については、従来どおり新規指定の半年後を目処に初回の運営指導が実施されます)。
大規模な法人(2以上の都道府県に事業所を展開する国所管の法人)に対する書面検査は、これまで実施されていなかった状況から、以下のように大幅に強化・導入されます。
現在は、実地検査の対象となった法人以外には書面検査等が全く実施されていません。今後は、**全ての国所管の法人に対して「2年に1回程度(年間450法人程度)」**の頻度で定期的に書面検査が実施されるようになります。
書面検査の実施にあたっては、介護分野の検査項目を参照しつつ、保育分野の方式を取り入れ、当該法人が運営する「全ての事業所の状況一覧」の添付が求められます。
新たに国所管となった法人に対しては、原則として、業務管理体制の届出があった初年度に必ず書面検査が実施されます。
これらの書面検査を経た上で、実地検査の件数も現在の年間30法人程度から、2倍相当の年間60法人程度へと強化されます。また、100事業所以上を運営する大規模事業者(24法人)に対しては、法人本部だけでなく各事業所に対しても2年に1回程度の実地検査が行われるようになります
マニュアル(監査マニュアル)が作成され「処分基準の考え方の例」が示されることで、行政処分の基準は全国で標準化され、自治体ごとの不合理なばらつきがなくなることになります。
具体的には以下のような変化や見直しが行われます。
これまでも処分の程度を決定する際の基本的な考慮要素(公益侵害の程度、故意性の有無、反復継続性の有無、組織性・悪質性の有無など)は研修等で示されていましたが、介護保険分野のような具体的な「処分基準の考え方の例」は作成されていませんでした。令和7年度中にこれらを盛り込んだ監査マニュアルが作成されることで、全国標準の基本的な考え方が明確化されます。
全国標準の基準が示されることで、自治体間で「処分の理由や内容に不合理な差異が生じないようにする」ことが最大の狙いです。
マニュアル作成と併せて、都道府県等が行政処分を行う前に、国が必要に応じて助言を行えるよう、国へ事前に情報提供をする運用の導入も検討されています(令和7年度より運用開始予定)。これにより、処分の妥当性や一貫性がより一層担保されるようになります。
これまでの指導監査の強化方針を踏まえ、障害福祉サービス事業所が取るべき具体的な対策は以下の通りです。
令和7年度中に、介護保険分野を参考にした「運営指導・監査マニュアル」が作成される予定となっています。これに伴い、これまでの指導における着眼点が見直され、新たに「確認項目及び確認文書」として整理される予定です。事業所は、国や自治体から示されるこの「確認項目及び確認文書」のリストを注視し、指定された帳票類や記録が日常的に漏れなく作成・保管されているかを点検しておく必要があります。
今後の運営指導では、「過去の指導内容や通報等により、不適切な運営や報酬請求が疑われる事業所」に対して優先的に指導を行う方針が示されています。過去の実地指導等で指摘された事項があれば、表面的な改善にとどめず、原因を究明して確実に是正し、日々の適正な報酬請求と運営を徹底することが求められます。
就労継続支援A型・B型、共同生活援助(グループホーム)、児童発達支援、放課後等デイサービスの5類型を運営している場合、今後は「3年に1回以上」または「新規指定後3年以内(A型は半年後目安)」の頻度で確実に運営指導が入ります。監査がいつ来ても問題ないよう、平時から人員基準や運営基準の遵守状況をセルフチェックしておくことが不可欠です。
事業拡大などにより、事業所が「2つ以上の都道府県」にまたがる状態になった場合、業務管理体制の所管が自治体から「国」へと変わります。この際、国に対して「業務管理体制の整備に関する届出」を確実に行う必要があります。また、国所管の法人に対しては今後「全事業所の状況一覧」を提出させる定期的な書面検査(2年に1回程度)が導入されるため、法人本部は全事業所のコンプライアンス状況や運営実態を常に正確に把握・統括するガバナンスの強化が求められます。
運営指導マニュアルは介護保険にも存在していますが、特に介護報酬(加算・減算)の指導については各自治体で大きなばらつきがあります。
国のルールではここまで行えば大丈夫とされるものが、自治体のルールでは「足りない」とされて「困ってしまいました」という話を本当に多く聞きます。今後は、一律で国の基準を確認すべきもの、自治体個別に確認を行うべきもの、これらをしっかりと見極めていくことも私たちには必要になってきます。