訪問介護の仕事を始めたいという方の中には、
「介護の仕事をしてみたいけど、訪問介護の仕事って忙しい?」「一人で介護するのが不安」「訪問介護の一日の流れを知りたい」
といった疑問や不安を持つ方は多いのではないでしょうか。
訪問介護とは、要介護者等の自宅に訪問し、入浴や排泄、食事など身体介助をすること。
また、調理や洗濯、掃除などの生活を支援する介護保険のサービスです。
訪問介護員の仕事は、常勤や非常勤など勤務形態によって一日の流れが変わります。
介護の仕事をしてみたいと考えている方や、資格を取ったけどどの介護職で働こうか迷っている方のために、今回の記事では、訪問介護の一日の流れや仕事の内容を紹介していきます。
訪問介護の仕事に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
訪問介護は、利用者さんの日常生活を支援する仕事です。主な仕事は下記の3つとなります。
訪問介護員は利用者さんとの契約内容や、サービス提供責任者が作成する計画書にそって支援をしていきます。
「自立の支援」という介護保険の理念に基づき、利用者さんのできることは自分でやってもらい、できない事を介助するという視点が必要です。
できることまで支援をしてしまうと、今までできていたことができなくなってしまうことも。
また、訪問介護員への依存につながる可能性も出てきます。
利用者さんの残存機能をいかすためにも、できることとできないことの見極めをしていきましょう。
また、個人宅を訪問するので施設のように設備が整っているわけではありません。
自宅にあるもので代わりになるものはないかなど考える必要も出てきます。
一人ひとりに合わせた支援や対応が求められる仕事です。
身体介護とは、食事介助や入浴介助、排泄介助など直接身体に触れる介護となります。
例えば、おむつ交換をするにしても利用者さん一人ひとりの身体の特徴ややり方も違います。
その方の状況や特徴を把握することが必要となります。
また、訪問介護員は褥そうの処置や摘便などの医療行為は行うことができません。
しかし喀痰吸引や経管栄養については、平成24年4月から一定の研修を受け、条件を満たしていれば行うことが可能となりました。
医療行為に該当するため訪問介護員ができないこと。
生活援助とは、掃除や洗濯、調理など日常生活をサポートする仕事となります。
利用者さんが日常生活を送るための生活援助なので、同居している家族の部屋の掃除や洗濯などはすることができません。
また、犬の散歩や趣味活動の支援も含まれません。
生活援助でできないこと。
利用者さんからできない支援をお願いされると、断ることが心苦しいかもしれません。
利用者さんに嫌われてしまったら今後の仕事に支障が出ると思ってしまいます。
しかし、しっかりと断る勇気を持つことが必要です。
将来的に別の訪問介護員に変わる場合、前の人はやってくれたのに…とクレームにつながる可能性もあるからです。
介護保険の範囲内で介護サービスを提供するので、できることとできないことがあることを理解し、支援に取り組むことが必要でしょう。
利用者さんにもしっかりと説明をし、納得してもらうことが重要となります。
通院等乗降介助は、利用者さんを病院まで送り迎えする仕事です。
訪問介護員が事業所の車を運転し、利用者さんを乗せます。付き添う家族がいる場合は、その家族も一緒に同乗する場合も。
院内は病院のスタッフが介助してくれるため、送り迎えのみの仕事となります。
送迎だけの仕事ですが、体調不良や寝たきりの利用者さんだと気を遣うことが多くなります。
もちろん危険な運転はできません。
安全に、またなるべく揺れが少なく運転することが必要となります。
乗車している利用者さんの体調が悪化しないように注意を払うことも忘れないようにしないといけません。
通院等乗降介助にも、できない事があります。
デイサービスやデイケアへの送迎は、その事業所が送迎する役割を持っているので通院等乗降介助ではできません。
利用者さんの仕事に関わる送迎も、介護保険制度では対象外となります。
冠婚葬祭やお墓参りは、日常生活に必要な事ではないためできません。
また、要支援1と要支援2の方は対象外です。
訪問介護の仕事内容や、働き方について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護ってどんな仕事なの?具体的な業務内容や1日のスケジュールを紹介!
訪問介護の仕事をするには資格が必要となります。
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)か、実務者研修(旧ホームヘルパー1級)は最低必要となります。
訪問介護の仕事を始めるにあたって資格の取得を考えている方には、より難易度の低い介護職員初任者研修の取得をおすすめします。
訪問介護に必要な資格について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護の仕事は一日でいろいろな利用者宅に行くため、朝は一日の流れを確認し、訪問漏れのないようにします。
常勤者は基本的に一日中外に出て、利用者宅を訪問していることが多いです。
早朝の支援が入っていると、常勤者も利用者宅に直行することがあります。
9:00 | 出勤、本日訪問する利用者さんの情報確認と準備 |
9:30~10:00 | 移動 |
10:00~11:00 | Aさん宅で生活援助を提供 |
11:00~11:30 | 移動 |
11:30~12:30 | Bさん宅で身体介護を提供 |
12:45 | 帰社 |
12:45~13:45 | 昼食、休憩 |
13:45~14:00 | 移動 |
14:00~15:00 | Cさん宅で身体介護を提供 |
15:00~15:30 | 移動 |
15:30~16:00 | Dさん宅で身体介護を提供 |
16:00~16:20 | 移動 |
16:20~17:20 | Eさん宅で生活援助を提供 |
17:30 | 帰社 |
17:30~18:00 | 記録、引継ぎ |
18:00 | 退勤 |
訪問前の利用者さんの情報確認は重要となります。
特にがんの末期や難病をかかえている利用者さんは、急に体調が悪化することがあります。
訪問ごとに体調の変化をチェックし、チームで情報交換を行うことが重要となります。
利用者宅に訪問し身体介護や生活援助を行いますが、それぞれのお宅で設備や備品も異なり、またその家独自のルールがある場合も。
個別の対応をしていくことが必要です。
サービスの時間が決まっているので、オーバーしないように支援をしていかなければなりません。
利用者さんの話しが終わらず仕事が進まないこともあります。
話しを聞きながらも手を止めず、支援をしていくなどスキルが必要となってきます。
訪問介護員は一人で支援を行うため、訪問中の体調悪化など不測の事態にも一人で対応しないといけません。冷静に対応できる能力が求められます。
また、サービス実施記録も重要な業務の一つとなります。「どんな支援をしてきたのか、利用者さんの様子はどうだったか」など記入をすることで、次のサービスに活かすこともできるし、他の介護サービスのスタッフが見ることで情報の共有ができます。
常勤の訪問介護員は、非常勤の訪問介護員のピンチヒッターになる役割もあります。
急な体調不良や用事で仕事ができなくなった場合、常勤者が代わりに訪問することになります。
非常勤の訪問介護員の場合、自宅から利用者宅への直行と、利用者宅から自宅への直帰が多くなるでしょう。
そのため、利用者さんや支援内容に変化がないか、事業所に確認する必要があります。
毎朝本日の訪問予定を事業所に電話をし、月曜日には1週間分の予定を電話する。
2重チェックで漏れのないようにしている事業所もあります。
12:30 | 自宅から利用者さん宅へ直行 |
13:00~14:00 | Aさん宅で身体介護を提供 |
14:00~14:30 | 移動 |
14:30~15:30 | Bさん宅で生活援助を提供 |
16:00 | 利用者さん宅から自宅へ直帰 |
訪問介護は移動することが多い仕事です。
車や自転車で移動している訪問介護員が多いため、雨や雪など悪天候でも訪問することが求められます。
特に身体介護は、訪問介護員が休んだら困ってしまう支援内容だと休むことは難しいです。
雪の日は路面が滑るため、自動車はスタッドレスタイヤに交換をしておきましょう。
訪問介護員は介護の職種の中では給料が高いといわれています。
身体介護は利用者さんの体に直接触れる支援であり、大きな責任を負っています。
掃除や洗濯など生活援助を行うこともあり、仕事の内容はさまざま。
そして、訪問介護は移動も業務に占める割合が高くなっています。
移動時間も含まれた賃金体系となっている事業所が多く、時給が高い理由となっているのでしょう。
訪問介護員の給料は、他の介護職と比べると高くなっています。
福祉施設介護員の平均時給は、男性1,158円、女性1,137円。訪問介護員の平均時給は、男性1,479円、女性1,445円でした。
時給者は、身体介護か生活援助か仕事内容によって時給も変わりますが、福祉施設介護員と比べると、高くなっています。
また、早朝や深夜に仕事をした場合、手当がつく事業所もあります。
参考:厚生労働省
常勤者の場合、介護職員は全国平均で月給252,300円。
訪問介護員は全国平均で月給260,200円という結果でした。
月給で比べても、訪問介護員の方が少しですが高くなっています。
参考:厚生労働省
訪問介護員の給料について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護の給料相場はどのくらい?正社員か非常勤で給与はどう違う?
訪問介護の仕事は、利用者さんとマンツーマンになるという特徴があります。
最初はお互い緊張してコミュニケーションもあまりとれないかもしれません。
しかし徐々にお互いのことがわかり信頼関係も築けるようになれば、支援もしやすくなり、やりがいや喜びも感じられるようになるでしょう。
病院や施設ではなく、自宅で生活をしたいという高齢者が多くいます。
2015年の法改正で「特別養護老人ホームに入所できるのは原則要介護3〜5の方」となってしまったため、自宅で生活をされる要介護者も増えています。
その方たちの毎日の生活を支えていくのが訪問介護員です。
最近は一人暮らしの高齢者も増えてきており、訪問介護員を心待ちにしている方も多いです。
そして、訪問介護員が自宅に来て、家族が負担に感じている身体介護をしてくれるのはとても助かります。
買い物や調理を支援することで、自宅で日常生活が送れている利用者さんもいます。
訪問介護員は、在宅生活を支える重要な役割を担っているのです。
訪問介護の仕事にはさまざまな働き方があります。
常勤か非常勤かでも一日の動きが変わってきます。
常勤のスタッフは1日に5件から8件ほどの訪問が多いようです。
非常勤のスタッフは会社との契約にもよりますが、一日1件の方もいれば、常勤並みに5件訪問する方もいます。
自分の都合に合わせた働き方ができるのが、訪問介護のメリットです。
しかし非常勤の場合、利用者さんの急な体調悪化で入院したり、家族の都合などでショートステイに行ったりすれば仕事は減ってしまうので、いつも一定の件数というわけではありません。
受け持ち件数にムラが出るのが常となります。
件数が減ってしまえばそれだけ収入が減るということです。
訪問介護員が1日何件訪問するかについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護の社員やパートの違いについて!1日何件訪問できるの?
訪問介護は日中の仕事のように思われるかもしれませんが、夜間の仕事もあります。
夜間や深夜の支援は、服薬介助やおむつ交換、体位交換、就寝介助をすることが多いです。
定期巡回・随時訪問サービスを行っている事業所では、夜間でも定期的に訪問をしているので夜勤はあります。
夜間に訪問するときに注意することがあります。
夜間に何か起きても一人で対応しないといけないことが多く、できる準備は事前にしておきましょう。
厚生労働省の介護保険最新情報によると、令和2年3月に「訪問介護における移動時間は、原則として労働時間に該当する」と通達が出ています。
移動時間は労働時間に含まれるということです。
移動時間とは、事業所、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間。事業所としてこの移動が「仕事をするために必要な時間」という指示を出せば労働時間に該当するということになります。
例えば、事業所から利用者宅への移動、利用者宅から次の利用者宅への移動などが該当します。
訪問介護は、件数が多ければ多いほど移動の時間が増えてきます。
参考:厚生労働省
ただ、自由利用が可能な時間と判断される場合は、労働時間には含まれないので注意が必要です。
この記事では、訪問介護の一日の流れや、仕事内容を解説しました。
「地域包括ケアシステム」が国によって推進され、住み慣れた地域や場所で最期まで自分らしく生活ができるようにサポートすることが必要となっています。
その中で、訪問介護員はとても重要な存在となるのです。
訪問介護員は非常勤の雇用形態が多いです。
利用者さんの急な体調悪化による入院や、家族の都合でショートステイを利用するなど、安定した収入が得られにくいというデメリットもあります。
しかし、施設勤務などと違い自分のペースに合わせた柔軟な働き方もできるため、家事や育児と両立しやすい職種ではないでしょうか。
訪問介護員は、利用者さんに一人で対応しないといけないので大変な面もあります。
困ったことがあっても周囲に誰もスタッフがいないため、自分で判断をすることが多くなります。
しかし、利用者さんとの信頼関係を築きやすいというメリットもあります。
他の介護職と比べると給料は高くなっており、自分のペースで仕事をしたいという方にはおすすめの環境です。
一人で現場に出て仕事をするのは不安という方は、一度介護施設で働いて一通りの介護技術を身につけてから、訪問介護の仕事に就いてもいいかもしれません。
訪問介護の仕事をしてみたいと思ったら、まず介護職員初任者研修を取得してみましょう。
その後、仕事を続けていく中でスキルアップして介護福祉士を目指してみてはいかがですか?
仕事の幅が広がりますよ。